ここまでのページでオペランと条件付けの基礎理論を学んでまいりました。
「ABA自閉症療育の基礎16」から「ABA自閉症療育の基礎52」まで、
ここまでオペラント条件付けの理論についてイラストにあるユニットについてまなんで来たのですが、その概略についてこのページでは見ていきましょう。
オペラント条件付けのユニットと B .F .Skinner以前の強化への考え方
「(ABA自閉症療育の基礎16)オペラント条件付けの基本ユニット(https://en-tomo.com/2020/08/07/operant-basic-unit/)」
では上のイラストを紹介しました。
ブログページ内ではオペラント条件付けで行動を捉えるとき、オペラント行動を分析する際は、
「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」
「B(Behavior):行動」
「C:(Consequence):結果」
という3つのユニットで捉えることを紹介しています。
「(ABA自閉症療育の基礎18)オペラント条件付けの起源「効果の法則」(https://en-tomo.com/2020/08/11/law-of-effect/)」
ではソーンダイクの「効果の法則(law-of-effect)」という B .F .Skinnerの強化理論以前の考え方を紹介しています。
小野 浩一 (2005) を参考に、
Thorndike(ソーンダイク)が
・ 「行動 → 好ましい環境変化:行動増加」、「行動 → 嫌悪的な環境変化:行動減少」
と考えたことに対して
B .F .Skinnerは
・ 行動に環境変化が随伴した結果その行動が増加したとき、その変化は好ましい変化
・ 行動に環境変化が随伴した結果その行動が減少したとき、その変化は嫌悪的な変化
というように捉え直したことを紹介しました。
このように行動について捉え直すことで結果による行動の増減の理由を、個体にとっての「好ましい(満足)」「嫌悪的な(不快)」という、
個体が感じる内部の事象に言及することなく行動を客観的に研究する道が開ました。
オペラント条件付けー強化
「(ABA自閉症療育の基礎19)オペラント条件付け−強化とは?(https://en-tomo.com/2020/08/13/operant-conditioning-basic-reinforcement/)」
のブログページで強化とは何かを書きました。
オペラント条件付けで条件付けできる行動を「オペラント行動」と呼ぶのですが、
このページで紹介したようにオペラント行動は「自発できて、自分でコントロールが可能」ということはポイントです。
島宗 理 (2019) はオペラント条件付けについて、手続きによってその反応が含まれる行動の先行事象がその行動を喚起または抑制するようになったときオペラント条件付けが成立したことになると述べています。
ここまでのページを見てきた人は島宗 理 (2019) の文章の意味がなんとなくわかるのではないでしょうか?
強化について私は、
特定の状況の下(A)で、特定の行動(B)が生起したとき、特定の結果(C)が伴う。
その後、特定の状況の下(A)で特定の行動(B)が増加した場合、それは強化と呼ぶ
と紹介しました。
「(ABA自閉症療育の基礎20)オペラント条件付けー正の強化と負の強化(https://en-tomo.com/2020/08/15/aba-positive-reinforcement-negative-reinforcement1/)」
のブログページでは強化について「正の強化」と「負の強化」に分けられることを書いています。
坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) は
環境に何かを付け加えることによる環境の変化を「提示型」=「正の強化」
環境から何かを取り去ることによる環境の変化を「除去型」=「負の強化」
と呼んでいます。
ページ内では日常例を記載し、
「行動」する前になかった環境が、行動の後に出現するという結果を受け、その後行動が増加した場合、「正の強化」
「行動」する前にあった環境が、行動の後に消失(もしくは低減)するという結果を受け、その後行動が増加した場合、「負の強化」
と紹介しました。
「(ABA自閉症療育の基礎21)オペラント条件付けー正の強化と負の強化で覚えておきたいポイント(https://en-tomo.com/2020/08/16/aba-positive-reinforcement-negative-reinforcement2/)」
のブログページではABA自閉症療育を行う上での「正の強化」と「負の強化」についてのポイントを3つ紹介しました。
ポイント1:「正」が良いとか「負」が悪いではないポイント
ポイント2:教えたい行動をアセスメントできるポイント
ポイント3:勝手に成長して欲しいから
ブログページ内ではという3つのポイントを紹介しています。
ポイントだよ
「(ABA自閉症療育の基礎22)オペラント条件付けー強化の効力に影響を及ぼす要因(https://en-tomo.com/2020/08/17/aba-positive-reinforcement-effect-point/)」
ABA自閉症療育では行動を強化して適切な行動を増やしていくことを狙うのですが、どのように強化することで行動を増やしていくことができるのでしょうか?
ブログページ内では強化の効力に影響を及ぼす要因について主にRaymond G. Miltenberger (2001)と島宗 理 (2019) を参考に5点紹介しています。
・ 即時性
・ 随伴性
・ 確立操作
・ 結果事象の特性
・ 十分な量や強度
の5点です。
「(ABA自閉症療育の基礎23)オペラント条件付けー強化スケジュール(https://en-tomo.com/2020/08/18/aba-operant-reinforcement-schedule/)」
では強化スケジュールについて簡単に紹介。
強化スケジュールは後輩指導を行なっていても良く「難しい」と意見が出るところですので、
ブログ内ではABA自閉症療育で最低限必要だろう、という内容に留めました。
主にABA療育で必要となる「連続強化スケジュール」と「間欠強化スケジュール」の内容について紹介し、
「連続強化スケジュール」とは「標的行動のたびに強化子を提示する手続き」
「間欠強化スケジュール」とは「標的行動が数回生じたときに1回強化子を提示する手続き」
と紹介しました。
最初お子さんに何か教える段階には「連続強化スケジュール」、学習が成立してその行動を維持させたいといった段階では「間欠強化スケジュール」が向いています。
この強化スケジュールはその後に研究が発展していき、「選択行動」や「対応法則」、「セルフコントロール」や「衝動性」に関連するテーマです。
「(ABA自閉症療育の基礎24)オペラント条件付けー強化子のタイプ(https://en-tomo.com/2020/08/19/aba-reinforcer-type/)」
ブログページでは強化子のタイプとして大枠で強化子は「無条件正強化子(一次生強化子)」と「条件性強化子(二次性強化子)」に分けて考えることができ、
「条件性強化子」は「社会的強化子」と「般性強化子」に分けられることを記載しました。
もっと先のブログページで「プレマックの定理」「反応遮断化理論」「不均衡理論」といった強化子についての最先端理論を紹介しますが、このブログページでも先で紹介していきます。
オペラント条件付けー罰
ここまで行動を増加させる強化について見てきたのですが、
「(ABA自閉症療育の基礎25)オペラント条件付け−罰(https://en-tomo.com/2020/08/20/operant-conditioning-basic-punishment/)」
のブログページからは行動を消失・減少させる「罰」を見ていきます。
「罰(Punishment)」については
特定の状況の下(A)で、特定の行動(B)が生起したとき、特定の結果(C)が伴う。
その後、特定の状況の下(A)で特定の行動(B)が消失・減少した場合、それは罰と呼ぶ
と紹介しました。
このブログページでは罰についての日常例も記載しています。
またこのブログページで覚えて欲しい大切なことは罰は行動を消失させたり減少させるのですが罰は強化の反対ではないということは覚えておいて欲しいです。
「(ABA自閉症療育の基礎26)オペラント条件付け−「正の罰」と「負の罰」(https://en-tomo.com/2020/08/21/aba-operant-conditioning-positivepunishment-negativepunishment/)」
のブログページでは罰も強化と同じように「正の罰」と「負の罰」に分けられることを書きました。
「行動」する前になかった環境が、行動の後に出現するという結果を受け、その後行動が消失・減少した場合「正の罰」
「行動」する前にあった環境が、行動の後に消失(もしくは低減)するという結果を受け、その後行動が消失・減少した場合「負の罰」
と紹介し「正の罰」と「負の罰」の日常例も記載しています。
オペラント条件付けー4つの随伴性まとめページ
一旦ここまででまとめ、
「(ABA自閉症療育の基礎27)オペラント条件付け−4つの随伴性と三項随伴性(https://en-tomo.com/2020/08/22/aba-contingency/)」
のブログページでは「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」を表にして紹介しました。
また、
「B(Behavior):行動」の変化が「強化」なのか「罰」なのか決定する
・ 行動は増えたときには「強化」
・ 消失・減少したときには「罰」
「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」と「C:(Consequence):結果」の変化が「正」なのか「負」なのかを決定する
・ 「A」のときに無かったものが、行動後「C」で出現した場合は「正」
・ 「A」のときにあったものが、行動後「C」で消失・低減した場合は「負」
という関係性を
のイラストにして解説しました。
またこのブログページではABAの基本用語「三項随伴性(Three-term Contingency)」についても紹介しました。
ABAでは「行動」とその前後の「環境」から成り立つパターンを「三項随伴性」と呼びます。
オペラント条件付けー罰についてのトピック
「(ABA自閉症療育の基礎28)オペラント条件付け−罰を使ったABA療育支援研究(https://en-tomo.com/2020/08/22/operant-conditioning-punishment-study/)」
では過去、罰を使用して自閉症のお子さんの行動改善を試みたO. Ivar Lovaas・James Q. Simmons (1969)の研究を紹介しました。
ブログページ内で出てきますがこの研究は自閉症のお子さんの自傷行為を「電気ショック」で改善しようとした内容です。
このブログページでは電気ショックの「罰」を使用し問題行動の改善を図る内容を書いたのですが、
次のブログページ
「(ABA自閉症療育の基礎29)オペラント条件付け−罰の副次的効果(https://en-tomo.com/2020/08/23/punishment-secondary-effect/)」
のブログページでは罰を使った行動改善のデメリットを記載しています。
現在はこのような支援方法が「倫理的にダメ」ということもあるのですが、
ブログページ内では倫理的な内容というよりABA自閉症療育で罰を使用する実施上のデメリットとして
1 :攻撃行動や情動反応を引き起こすことがある
2 :罰の使用者の負の強化を強める
3 :罰を使用された側の回避行動を強化する
4 :慣れることやもっと悪くなることがある
5 :罰の来ない状況でさらに悪くなる可能性がある
6 :全ての行動の全般的な抑制を導くことがある
7 :罰を受けた本人が罰を使用する可能性がある
8 :罰の使用者や場所以外では効果が期待できない可能性がある
9 :親以外が使いにくい
10:適切な何かを学ぶわけではない
の10点の罰に伴う副次的なデメリットの効果を紹介しました。
Jon・Baily & Mary・Burch (2006) は「罰」は副次的な効果が重大であり、誤用のリスクも高いためとても勧めることはできないと述べています。
「罰」の副次的効果については自閉症を含め「子育て」をする際に知っておくべき内容です。
「(ABA自閉症療育の基礎30)オペラント条件付け-「負の強化」と「正の罰」の相互作用(https://en-tomo.com/2020/08/24/negative-reinforcement-punishment-interaction/)」
では「負の強化」と「正の罰」が相互作用(互いに影響し合う)内容を書きました。
Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) は罰を使うことが負の強化を受け増大していくと述べています。
ブログページ内ではお母さんがお子さんに「罰」を使用し、その「罰」を避ける形で「負の強化」行動を行う循環について例を記載しました。
子育て、ABA自閉症療育で罰を使用しない方が良い、となんとなく知っている親御様がどうして罰を使用し続けてしまうのか?
ブログページを見てもらうと少し理解が進むと思います。
オペラント条件付けー消去
「(ABA自閉症療育の基礎31)オペラント条件付け-消去(https://en-tomo.com/2020/08/25/operant-extinction/)」
のブログページでは「消去(Extinction)」について紹介ています。
ABA自閉症療育で「消去」と言った場合、レスポンデント条件付けの消去ではなく、このページで紹介するオペラント条件付けの消去を指す場合が多いです。
ブログページでは実森 正子・中島 定彦 (2000) や小野 浩一 (2005) を参考に、
消去について、
「消去」とは「行動」に伴う(行動を増加させる)「強化子」を撤去することによる行動減少・消失が起こる現象
と紹介しました。
ABA自閉症療育で消去を手続きとして使用する場合、「消去手続き」と呼ばれます。
「(ABA自閉症療育の基礎32)オペラント条件付けー消去「消去バースト」と「自発的回復」(https://en-tomo.com/2020/08/26/extinction-burst-extinction-induced-variability/)」
のブログページでは「消去」に伴う「消去バースト(Extinction Burst)」と「自発的回復(Spontaneous Recovery)」について紹介しました。
ABA自閉症療育で消去手続きを実施する際に「消去バースト」と「自発的回復」の知識は必須です。
絶対に抑えておくようにしましょう。
ブログページ内では消去て手続きを行なったとき、どのタイミングで「消去バースト」と「自発的回復」が生じるのかについても、イラストで紹介しました。
「(ABA自閉症療育の基礎33)オペラント条件付けー「正の強化の消去」と「負の強化の消去」(https://en-tomo.com/2020/08/30/positive-negative-extinction/)」
のブログページでは「正の強化」の場合と、「負の強化」の場合では「消去手続き」の方法が変わってくることについて記載しました。
自分はお子さんの問題行動を消去しているつもりでも実は消去になっておらず「強化になっている」なんてことは、実は「負の強化」においては結構あることです。
「無視しているはずなのに、なんで問題行動が減らないんだろう?」と思っている方は是非、一読して見てください。
「(ABA自閉症療育の基礎34)オペラント条件付けー「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」を判断する(https://en-tomo.com/2020/09/03/operant-conditioning-assessment/)」
では提示した結果が「正の強化」「負の強化」「正の罰」「負の罰」「消去」のどれにあたるか?
ということを見極めることをテーマとしました。
ブログページ内では、
オペラント条件付けは主に「結果」によって行動が影響を受けると考えるため、その後の行動頻度の増減の度合いを見て結果から、「強化」だったのか、「罰」だったのか、「消去」だったのかを判断する
ことを書いています。
オペラント条件付けー弁別刺激
ここまでのページは、
の部分を見てきたのですが、
「(ABA自閉症療育の基礎36)オペラント条件付けー弁別刺激の確立、エピソード(https://en-tomo.com/2020/09/06/aba-operant-stimulus-control-episode/)」
のブログページからは
「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」
の内容に入っていきます。
まずは上のイラストの中の、
「ココ」と書かれている「弁別刺激(Discrimination Stimulus)」から見ていきましょう。
ブログページでは「弁別刺激」の確立がどのように起こるのか、お子さんがあいさつを通して弁別刺激を学んでいく日常のエピソードから紹介しています。
「(ABA自閉症療育の基礎37)オペラント条件付けー弁別刺激「弁別学習」(https://en-tomo.com/2020/09/10/discrimination-learning/)」
のブログページではH. S. TERRACE (1963)の行なったハトの実験を通して弁別学習がどのように生じるのかを紹介しています。
ブログページでは
特定の状況下では強化し、特定の状況下では強化しないということを繰り返すと、強化された特定の状況下は「弁別刺激」の意味を持つように確立され行動が制御される
と記載しましたが、行動したあとの結果からの経験によって弁別刺激が確立(弁別学習)されることはABA自閉症療育の大きな知っておくべきポイントだと思っています。
「(ABA自閉症療育の基礎38)オペラント条件付けー弁別学習としてのDTT(https://en-tomo.com/2020/09/13/discrimination-learning-dtt/)」
のブログページでは「DTT(離散型試行訓練:discrete trial teaching)」というABA自閉症療育の支援方法を使ってお子さんに言葉を教えていくとき、どういう方法で教えていくのかの一例を書きました。
DTTは弁別学習を促進させることが可能です。
DTTはABA自閉症療育の1つ「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」で使用される方法ですが、
EIBIには強いエビデンスがあります(参考 「(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/)」)。
「(ABA自閉症療育の基礎39)オペラント条件付けー般化(https://en-tomo.com/2020/09/14/discrimination-learning-generalization/)」
このブログページでは、
ある行動は特定の状況下(X)では出現するが、特定の状況下(Y)では出現しにくい
上の文章の特定の状況下(X)というものが「弁別刺激」であり、行動を出現させる刺激と言えます
このような刺激に反応した場合「弁別」している、と言うのです
このページでは「般化(Generalization)」という現象を解説しますが、「般化」は「弁別」とは対をなす概念だと言えるでしょう
と般化について紹介しています。
Shira Richman (2001) は般化について直接教えていない様々な場面や状況、人に応じて適切な行動を示すこと。また、教えられた型どおりではない応答を示すことと述べていますが、
ABA自閉症療育にとって般化を促すことは重要なこととされています。
「(ABA自閉症療育の基礎40)オペラント条件付けーABA療育における「ポジティブな般化」と「ネガティブな般化」(https://en-tomo.com/2020/09/18/discrimination-learning-positive-generalization-negative-generalization/)」
般化はABA自閉症療育では重要なこととされていますが、療育上般化には「ポジティブな般化」と「ネガティブな般化」があると思っています。
ブログページ内では「ポジティブな般化」と「ネガティブな般化」の例を紹介しました。
「(ABA自閉症療育の基礎41)オペラント条件付けー般化勾配(https://en-tomo.com/2020/09/20/generalization-gradient/)」
のブログページでは般化勾配(Generalization gradient)についてGEORGE S. REYNOLDS (1961) の行った実験から紹介しています。
教えた行動を別の状況でも使用して欲しいと思ったとき、この般化勾配を頭に入れ、できるだけ近いシチュエーションで練習をしていくことで般化場面を拡大していくことができることは覚えておいた方が良いでしょう。
「(ABA自閉症療育の基礎42)オペラント条件付けー強化法とプロンプト(https://en-tomo.com/2020/09/27/reinforcement-prompt/)」
のブログページではABA自閉症療育を通してお子さんになにか行動を教えていくための方法として「強化法」と「プロンプト」を紹介しました、
そして、
「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング(https://en-tomo.com/2020/10/04/reduction-fading/)」
のページではこれらの「強化法」と「プロンプト」は「強化子のリダクション」と「プロンプトフェイディング」という手続きを将来的には行わなければいけないことを書きました。
ブログページ内でも解説をしていますがこれらを行わなければ「強化子依存」や「プロンプト依存」という状況に陥ってしまうリスクがあります。
ABA自閉症療育で新しい行動、スキルを教えていく際には意識しておかなければいけないポイントです。
「(ABA自閉症療育の基礎44)オペラント条件付けープロンプトのポイント(https://en-tomo.com/2020/10/07/prompt-point/)」
ではプロンプトのポイントを紹介しました。
1:最適な侵襲度のプロンプト
2:対象者の注意を引く
3:弁別刺激を提示する
4:正反応をプロンプトする
5:適切な行動を強化する
6:刺激性制御の転移
7:プロンプトなしで生起した反応を継続的に強化する
8:プロンプトを出すタイミング
9:プロンプトよりも強化が大切
というプロンプトを出す際のポイント9点について書きました。
ABA自閉症療育にとってプロンプトは基本的な技法です。
「(ABA自閉症療育のエビデンス25)焦点介入(https://en-tomo.com/2020/06/27/focused-interventions/)」
で記載もありますが、プロンプトは自閉症療育効果のエビデンスがある支援テクニックになります。
オペラント条件付けー確立操作
ここからは、
「ココ」と書かれている「確立操作(Establish operation)」です。
「(ABA自閉症療育の基礎45)オペラント条件付けー確立操作(https://en-tomo.com/2020/10/10/establish-operation/)」
では私が普段、
「弁別刺激」は身体の外部で生じる行動を引き起こす刺激、
「確立操作」は身体の内部で生じる行動を引き起こす反応(もしくは、反応を引き起こす刺激や操作)
と捉えてABA自閉症療育を行い指導をしていることを書きました。
ブログページ内では、
Raymond .G .Miltenberger (2001)が「確立操作」について特定の時点や状況で強化子の効力を確立する操作と述べた内容を扱い、
上のイラストを紹介しています。
ここまで紹介してきた弁別刺激も確立操作も同じ、
「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」
のユニットに入るものです。
「(ABA自閉症療育の基礎46)オペラント条件付けー確立操作と弁別刺激の違い(https://en-tomo.com/2020/10/13/establish-operation-discrimination-stimulus-difference/)」
では弁別刺激と確立操作の違いについて解説をしています。
ブログページ内では
・ 生態の外部と内部
・ 弁別刺激が行動のきっかけ、確立操作は強化子・罰子の影響力を決定
・ 弁別刺激が長期的な行動傾向を決め、確立操作は瞬間を決める
という3つのトピックから弁別刺激と確立操作の違いについて解説しました。
「(ABA自閉症療育の基礎47)オペラント条件付けー「無条件性確立操作」と「条件性確立操作」(https://en-tomo.com/2020/10/16/establishing-operation-type1/)」
では確立操作には
「無条件性確立操作(Unconditioned Establishing Operation)」
と
「条件性確立操作(Conditioned Establishing Operation)」
があることを解説しています。
「無条件性強化子」に対しての確立操作が「無条件正確立操作」
「条件性強化子」に対しての確立操作が「条件正確立操作」
です。
※ 「無条件性強化子」や「条件性強化子」については「(ABA自閉症療育の基礎24)オペラント条件付けー強化子のタイプ(https://en-tomo.com/2020/08/19/aba-reinforcer-type/)」を参照
「(ABA自閉症療育の基礎48)オペラント条件付けー確立操作「遮断化」「飽和化」「嫌悪化」(https://en-tomo.com/2020/10/19/establishing-operation-type2/)」
では代表的な確立操作の手続き、「遮断化」「飽和化」「嫌悪化」について紹介しました。
「遮断化」、「飽和化」、「嫌悪化」を含む確立操作という状態や手続きは強化子や罰子の効力を変化させ行動を起こさせる要因となること、
ABA自閉症療育で適切な行動を引き起こしたいときまた、不適切な行動を引き起こしたくないときに、このブログページで学んだ確立操作を導入することを検討して欲しいことを書いています。
「(ABA自閉症療育の基礎49)オペラント条件付けー確立操作とレスポンデント条件付け(https://en-tomo.com/2020/10/24/respondent-operant-affect-each-other2/)」
このページは個人的にはめっちゃ大切だと思うページです。
ここまで学んできた「レスポンデント条件付け」と「オペラント条件付け」の融合です。
レスポンデント行動は「誘発される行動」=コントロール不可
オペラント行動は「自発される行動」=コントロール可
です。
ブログページでは
コントロール不可能な身体の内から湧き上がってくるレスポンデント行動が、
オペラント行動の確立操作として機能し、
自発的に行うオペラント行動に影響を与える
ことについて書きました。
学んできたレスポンデント条件付けとオペラント条件付けがここでマッチします。
オペラント条件付けー強化子の本質、循環論を解決せよ!
「(ABA自閉症療育の基礎50)オペラント条件付けー強化子の循環論と「要求/動因低減説」(https://en-tomo.com/2020/10/25/reinforcer-circular-theory/)」
では強化子の循環論問題を提起し、ABA(応用行動分析)がこの問題を解決する必要性について述べました。
強化子が循環論に陥ってしまうと、
と、結局「強化子ってなんなん?」、「強化子とは?」という答えが出せない問題に陥ってしまいます。
ブログページ内ではこの問題を解決するべく立ち上がった、
「要求低減説(Need Reduction Theory)」と「動因低減説(Drive Reduction Theory)」を紹介。
ただし、上手くいきません。
「(ABA自閉症療育の基礎51)オペラント条件付けー強化子「プレマックの原理」(https://en-tomo.com/2020/10/29/reinforcement-premack-principle/)」
では強化子の循環論問題についての1つの回答「プレマックの原理(Premack Principle)」を紹介しました。
プレマックの原理について、自由反応場面の中で多く行った行動(高頻度行動)は、あまり行わなかった行動(低頻度行動)の強化子になる
とブログページ内で紹介をしました。
このことを理解するためにはベースラインとの比較ということを理解する必要があります。
プレマックの原理はABA自閉症療育にも使用できる、非常に有用な理論です。
「(ABA自閉症療育の基礎52)オペラント条件付けー強化子「反応遮断化理論」と「不均衡理論」(https://en-tomo.com/2020/10/31/response-deprivation-theory-and-disequilibrium-theory/)」
のページでは強化子の最先端理論「反応遮断化理論(Response Deprivation theory)」と「不均衡理論(Disequilibrium theory)」を紹介しました。
反応遮断化理論とは
ベースラインで自由に行動(活動)できたときの行動量が制限(遮断)されると、その行動(活動)は強化子として機能する
ということを示した理論です。
そしてページ内では「不均衡理論」という理論も紹介しました。
Kenneth W.Jacobs ・ Zachary H.Morford・James E.King (2019) は不均衡理論が反応遮断化理論の最先端であると述べています。
さいごに
ABA自閉症療育で使用するオペラント条件付けのユニットについて、長かったですが無事書き終わることができました。
Skinner. B. F (1958) は 「Reinforcement today(強化の現在)」という論文の中で、
いかなる社会的な状況においても私たちは「誰が」「誰を」「何」で強化し、それが「どんな効果」を持つのかを発見しなければならないと述べ、
その後まず強化随伴性の存在が認識されなければならないと述べています。
このページで紹介をしてきたSkinner. B. F の発展させたオペラント条件付けの理論は自閉症の療育に役に立つことが多いです。
オペラント条件付けはABA自閉症療育の核となる部分ですので、このブログで(できれば、楽しみながら)学んでいただけたのでしたら、これ以上の幸せはございません。
ここまででオペラント条件付けの基本ユニットについての紹介を終わります。
次のページからはオペラント条件付けの「選択行動」について見ていきましょう。
【参考文献】
・ GEORGE S. REYNOLDS (1961)CONTRAST, GENERALIZATION, AND THE PROCESS OF DISCRIMINATION1. Journal of the Experimental Analysis of Behavior. October 1961 https://doi.org/10.1901/jeab.1961.4-289
・ H. S. TERRACE (1963) ERRORLESS TRANSFER OF A DISCRIMINATION ACROSS TWO CONTINUA. JOURNAL OF THE EXPERIMENTAL ANALYSIS OF BEHAVIOR ,APRIL VOLUME 6, NUMBER 2
・ 実森 正子・中島 定彦 (2000) 学習の心理 第2版 サイエンス社
・ Jon・Baily & Mary・Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー 岩崎学術出版社
・ Kenneth W.Jacobs ・ Zachary H.Morford・James E.King (2019)Disequilibrium in behavior analysis: A disequilibrium theory redux. Behavioural Processes Volume 162, May p197-204
・ O. Ivar Lovaas・James Q. Simmons (1969) MANIPULATION OF SELF-DESTRUCTION IN THREE RETARDED CHILDREN. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS No3, 143-157
・ 小野 浩一 (2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
・ Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) Applied Behavior Analysis for Teachers:Fifth Edition【邦訳 佐久間 徹・谷 晋二・大野 裕史 (2004) はじめての応用行動分析 二瓶社
・ Raymond G. Miltenberger (2001) Behavior Modification:Principle and Procedures/ 2nd edition 【邦訳 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】
・ Skinner. B. F (1958)Reinforcement today. American Psychologist. 13,94-99 【邦訳: 井上 雅彦・奥田 健次(2009/改訂版2015) 自閉症スペクトラムへのABA入門 親と教師のためのガイド 株式会社シナノ パブリッシング プレス】
・ Shira Richman (2001)Raising aChild with Autism A Guide to Applied Behavior Analysis for Parents 【邦訳: スキナー著作刊行会(2020) B. F. スキナー重要論文集 行動の哲学と科学を樹てる 勁草書房】
・ 島宗 理 (2019) 応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学 新曜社