(ABA自閉症療育の基礎16)オペラント条件付けの基本ユニット

先のページ「(ABA自閉症療育の基礎15)ABA療育、レスポンデント条件付け・エクスポージャーのまとめ(https://en-tomo.com/2020/08/05/aba-basic-conclusion1/)」

ではここまで学んできた「レスポンデント条件付け」と「エクスポージャー(曝露療法)」についてまとめました。


このページからは「オペラント条件付け」と呼ばれる理論を学んで行きましょう。

オペラント条件付けとは「道具的条件付け」と呼ばれることもあります

このページではオペラント条件付けで使用する基本ユニットを紹介していきますが、少し難しく感じるかもしれません。

そういった場合はのちのページを見ていく中で「あぁ、なんかそのキーワード見たな」という程度にこのページは流し読みをしてもらって大丈夫です。



ABA自閉症療育の基礎、オペラント条件付け


このページからはオペラント条件付けに入っていきます。オペラント条件付け面白いですよ!

実はレスポンデント条件付けは「行動の前」がのちの行動に影響を与える学習です。

対してオペラント条件付けは「行動の後(の結果)」がのちの行動に影響を与える学習といえます。

佐藤 方哉 (2001) 「オペラント行動(operant behavior)とは、その行動が生じた直後の環境変化(刺激の出現もしくは消失という結果)に応じて、その後にその行動が生じる頻度が変化する行動である」と述べました。

行動を行った後の結果によって、今後その行動を行うかどうかの頻度や生起確率などが変化していく、というものがオペラント条件付けの考え方です。


B. F. Skinner (1966) は「行動の科学において自然に得ることのできるデータは、ある任意の行動がある時間において生起する確率である」と述べています。

B. F. Skinner (1966) がこのように述べているようにオペラント条件付けで扱う行動は100パーセント生じる行動ではないということも知っておきましょう。

オペラント条件付けはレスポンデント条件付けのように「行動の先立つ環境変化によって誘発(100パーセント出現)される行動」とは違います。

オペラント条件付けは「行動を生起させる確率」を扱う理論です。

またオペラント条件付けは「行動の後」の結果から影響を受ける学習です。

お子さんが任意で行う行動の生起確率を上げることが期待できます。


Enせんせい

療育に使用した際に期待される効果は「お子さんが、自発的に(私たち、主にはお母さん)にとって望ましい行動を行うようになる確率を上げる」ということです



オペラント条件付けの基本ユニット

レスポンデント条件付けを学ぶ際も「(ABA自閉症療育の基礎4)レスポンデント条件付けの基本ユニット(https://en-tomo.com/2020/07/17/respondent-basic-unit/)」で最初に基本ユニットを紹介しましたが、このページでも最初にオペラント条件付けの基本ユニットを紹介します。


オペラント条件付けの基本ユニットです。以下、解説を行っていきます

オペラント条件付けの基本ユニットは専門書によって書き方がいろいろあります。

このブログではイラストのようにオペラント条件付けの基本ユニットを考えることとしましょう。

イラストにあるキーワードをこのページでは紹介をしていきます。

まずは「AーBーC」、行動に先立つ環境を「A」、行動を「B」、行動の後の環境を「C」と分けました

それぞれ、

「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」

「B(Behavior):行動」

「C:(Consequence):結果」

の3つのフレームに分けています。

以下、解説を行っていきます。



A(Antecedent)のフレーム

「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」

のフレームの中に「SD」と「EO」を記載しました。

それぞれ

「SD(Discrimination stimulus):弁別刺激」

「EO(Establish operation):確立操作」

を示します。

「SD:弁別刺激」とはその後の行動に影響を与える行動に先立つ環境であり、目で見えたり、鼻や皮膚で感じることができたり、聞こえる音といったように五感で感じる刺激と思ってもらって良いでしょう。


「EO」とは五感で感じる刺激というよりは身体の中で内的に生じる、その後の行動に影響を与える反応です。

例えば「空腹感」や「眠気」、「イライラ」や「不安感」などが当たります。

レスポンデント条件付けやエクスポージャーのところで見てきた不安や恐怖や嫌悪感などをオペラント条件付けで捉えるときは、この「EO」のところで考え、捉えるようにしましょう。

また「EO」は「強化子の効力に関わる(参考 坂上 貴之・井上 雅彦,2018)」と言われています。

詳しいことはのちのページで書いていきますが「EO」については「反応遮断化理論(response deprivation)」などの理論(参考 Kevin P Klatt and Edward K. Morris,2001)があり、大変興味深いです。

「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」のフレームの中にある「SD」と「EO」という「行動に先立つ環境」が、

次の「B(Behavior):行動」というフレームにある「R:反応」を引き起こします。

そのためイラストの中では矢印が引かれ影響を与えることを表しています。



B(Behavior):行動のフレーム

「B(Behavior):行動」

というフレームには「R」と記載しました。

「Responses:反応」の頭文字「R」をとっていますが、「行動」と読み替えてください。

私は後輩指導する際も「R」と記載することが多いです。

私は学生時代にABAを学び始めたころから、オペラント条件付けで行動を扱う際は行動を「R」と呼んできました。


あまり違和感なくそう呼んできたのですが、後輩指導をしていく中で「なんで行動なのにRなんですか?」と聞かれることがありました。

私自身も答えとして「そう学んできたから」と答えることが多かったのですが、大人になってから出会った本で

G. S. Reynolds(1975) の書籍から「オペラント条件付けでは、行動を反応(Responses)と呼ばれる単位に分割し、環境を刺激(Stimulus)と呼ばれる単位に分析して考察する」というも記載を見つけました。

「ABAでは昔からこのような考え方があったため、私にABAを教えてくださった先生や先輩が行動を「R」と呼ぶことがあったのだろう。そのため、私も自然とそう呼ぶようになった」

と、今では答えるようになりました。

このページで基本ユニットとして記載している「R」は「行動」を示します

※ 行動を「R」と呼ぶだけでなく、G. S. Reynolds(1975) の書籍にあるように、行動の前後の環境についてABAでは「刺激」と呼ぶことも多いので覚えておきましょう



C:(Consequence):結果のフレーム

「C:(Consequence):結果」

というフレームには「O」と記載しました。

「O:outcome(結果)」のことです。「C:(Consequence)」と「O(outcome)」は同じ「結果」を示します。

オペラント条件付けで最も大切なのはこの「O:outcome(結果)」の部分でしょう。

例えばSidney W. Bijou & Donald M. Baer (1961) は「環境における行動の結果と関数的な関係があるものとして最も良く理解される行動がオペラントと呼ばれる」と述べました。

「関数的な関係」という言葉は難しく聞こえますね。

簡単にいえばオペラント行動(自発的な行動)は結果によって、生起頻度等が増減する

このような関係を関数関係と呼ぶと覚えておいてください。


Enせんせい

もっと専門的には

行動の結果は独立変数であり、行動は従属変数という関数関係にあります」

このことについてはまたのちのページで


行動の後に生じる結果の種類

「C:(Consequence):結果」というフレームには「O」と記載し、

「正の強化子:Positive Reinforcement」

「負の強化子:Negative Reinforcement」

「正の罰刺:Positive Punishment」

「負の罰子:Negative Punishment」

「消去:Extinction」

と記載しています。

自発的に行ったオペラント行動に伴う結果は上記5点のいずれかになると考えており、後輩にもこのように指導しています。



三項随伴性とABC分析

三項随伴性

オペラント条件付けでは「三項随伴性(three-term contingency)」という行動の捉え方があります

三項随伴性は一般的にこのページで見てきた

「SD(Discrimination stimulus):弁別刺激」 →   「R(Response):反応、行動」 →   「O(Outcome):結果」

の3つの単位で行動を分析するときに使われることが多いでしょう。

この3つの単位にこのページでも見てきた「EO(Establish operation):確立操作」

を加えて随伴性を捉えて私はオペラント行動を分析します(参考 Henry D. Schlinger Jr,1995)

三項随伴性はオペラント条件付けの重要キーワードです。

三項随伴性についてはまた別のページで解説をしていきます。



ABC分析

このページでは行動を

「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」

「B(Behavior):行動」

「C:(Consequence):結果」

の3つのフレームに分けて紹介しました。

小野 浩一(2005) によればアメリカでは「先行刺激のA:Antecedent」、「行動のB:Behavior」、「結果のC:Consequence」の頭文字をとってABC分析と呼ばれることもあるとのことです。

私は学生時代から「ABC分析」という言葉を知っていましたが小野 浩一(2005) を参考にすればアメリカ由来の呼び方だったのかもしれません。

ABC分析は問題行動の意味(問題行動の機能)を考えるときに必要な枠組みになってきます。

私は「ABC分析」という呼び方ではなく、個人的には「機能分析(Functional Analysis)」という呼び方の方が好きです。

機能分析は「(自閉症ABA療育のエビデンス8)では、どうするか?(https://en-tomo.com/2020/06/01/that-way/)」

で「療育に必要な重要な8つの提案」の中の、【(5)ABAの基礎理論について知っておく】という中にキーワードとして入っています。

機能分析はABA療育の重要キーワードです。

機能分析についてはまた別の章で解説をしていきます。



さいごに

このページではオペラント条件付けで使用する基本ユニットを紹介しました。

このページで紹介したユニットを使用して考えられるオペラント条件付けですが、オペラント条件付けを学ぶ理由は何でしょうか?

次のページではABA療育、オペラント条件付けを学ぶ理由について考えていきましょう。



【参考文献】

・ B. F. Skinner (1966) What is the experimental analysis of behavior? Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 9. 213-218 【邦訳 スキナー著作刊行会 B. F. スキナー重要論文集Ⅰ 勁草書房】

・ Kevin P Klatt and Edward K. Morris (2001) The Premack principle, response deprivation, and establishing operations. The Behavior Analyst, 24, 173-180 No. 2 (Fall)

・ G. S. Reynolds (1975) A Primer of Operant Conditioning 【邦訳 浅野 俊夫 (1978) オペラント心理学入門ー行動分析への道 株式会社サイエンス社】

・ Henry D. Schlinger, Jr (1995) A Behavior Analytic View of Child Development 【邦訳 園山繁樹・根ヶ山 俊介・山根 正夫・大野 裕史 (2003) 行動分析学から見た子どもの発達 二瓶社】

・ 小野 浩一(2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館

・ 坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ

・ 佐藤 方哉 (2001) 【浅野 俊夫・山本 淳一・日本行動分析学会 (2001) ことばと行動―言語の基礎から臨床まで ブレーン出版】

・ Sidney W. Bijou & Donald M. Baer (1961) CHILD DEVELOPMENT Ⅰ A Systematic and Empirical Theory 【邦訳 山口 薫・東 正 (1972) 子どもの発達におけるオペラント行動 日本文化科学社】