では、どうするか?(ABA自閉症療育のエビデンス8)

先の「EIBIに必要な要素と診断の課題点(ABA自閉症療育のエビデンス7)https://en-tomo.com/2020/04/05/eibi-essence/)」で、

EIBIを実施することの難しさを感じたかもしれない。

EIBIを本格的にするとなれば求められる療育時間・期間が長いように感じただろう。



イラストのような感情になってしまった人に対して、私から「では、どうするか?」についてまとめたものを表にしたので見て欲しい。



ABA自閉症療育に対して8つの提案

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(1) あなたが(も)、家庭で療育をする

(2) 自閉症が疑われた場合、すぐ介入を行う

(3) お子さんが2歳以下であればNBIを採用する

(4) 自分ができる範囲で、やれることをやる

(5) ABAの基礎理論について知っておく

(6) シングルケーススタディ(SCD)について知っておく

(7) 親側があまりストレスを溜め込まない

(☆) 親御さんも成功体験を積む

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以下、解説して行こう。


【(1)あなたが(も)、家庭で療育をする】

研究では1週間に少なくとも25時間の介入を行うことが推奨されているが、突然そんな内容を突きつけられても難しい。

もし可能ならば、まずはあなたができる範囲から家庭でABA療育をやるのが良いだろう。

「あなた(も)」としたのは、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」という公費サービスや民間の療育機関がある。そこで専門家と関わる中でタッグを組むことも必要である。

専門家だけでは無く家族全体で支援するという姿勢も大切となる。

平日は母親、休みの日は父親など、役割分担をすることが大切だ。母親は遊びを教え、父親は知識を教えると、いうことでも良いだろう。


【(2)自閉症が疑われた場合、すぐ介入を行う】

すぐに行う介入方法について私はABA療育を推す

今まで紹介してきたEIBIで使用するDTTでも良いし、のちのページで紹介していく「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:自然主義的行動療法)」というものでも良い。

NBIもABAを元にした療育手法となる。

EIBIよりもNBIを推奨している研究者も多い(例えば、Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar,2008)。


【(3)お子さんが2歳以下であればNBIを採用する】

NBIで行う手法は特徴としてDTTよりも構造化されていない。

個人的には「お子さんが2歳以下」など、まだ「お勉強」という設定に不自然さを感じる年齢の場合、NBIのような自然場面でのアプローチが良いと考えている

どういったものなのか、イメージがわかない、分からないと言った人も想定して、できるだけわかりやすく、このブログでは方法についてのちのページで伝えていきたいと思っている。


【(4)自分ができる範囲でやれることをやる】

突然1週間に少なくとも25時間、それを2年から3年の間と言われても厳しい。

あなたの人生設計が大幅に崩れる音がしたかもしれない。

まずは自分ができる範囲の時間内で良いので、お子さんに対してABAを通した関わりを行う時間を作って行こう

1週間の時間数や長い期間については一旦考えずに置いて、今できることから行っていけば良い。

良い情報として私がABA療育を仕事にしている中で感じていることとして、親御様が積極的に療育に取り組まれている家庭はお子さんの成長が早い。

あなたの努力が実を結ぶ可能性は高いだろう。

ABA専門機関よりも安価で人を雇う選択肢もある。Catherine Maurice (1993) は大学に学生バイトの募集を出し、我が子のための療育チーム作りを行った。EIBIの研究でお子さんに直接介入している専門家と書かれている人物もだいたい「訓練された学部生や院生」であることが多い。

良い人材を集めることができればお子さんにとって良い環境が整えられる。


【(5)ABAの基礎理論について知っておく】

サイトで扱っている療育手法はABAを背景としている。そのためABAの行動原理について基礎くらいは知っておくべきである。

特に問題行動を扱う際はABAの基礎理論について知っておくことで解決できることが多い。

ABAの基礎理論を用いて、機能分析というものを行うことができる。

ABAの基礎理論、機能分析については別の章で書いていく。


【(6)シングルケーススタディ(SCD)について知っておく】

SCDについて紹介した際、実は私が皆様に一番獲得して欲しい知識であると述べた。

Ghaleb H. Alnahdi (2013) はSCDについて実際にお子さんへ行っている治療法の有効性を評価し、これらの治療法のどれが効果的かを判断できる方法であると述べている。

ABA療育ではお子さんに対してオーダーメイドでプログラムを組んでいく必要があるため、「今行っているプログラムは子どもに効果的か?」を判断するSCDは必要となる。

SCDについては別の章で解説を行う。


【(7)親側があまりストレスを溜め込まない】

ここまでのページであまり紹介はしてこなかったが実は母親の関わり(父親の関わりはまだあまり研究が進んでいないようだ)が自閉症児の将来に影響を与えるという文献も多い

例えば、Lisa A. Osborne・Louise McHugh・Jo Saunders・Phil Reed (2007) は65人の自閉症の人とその家族を対象に研究を行った。彼らは多くの時間介入を行った場合、親が子育てストレスへの高い感情を報告した場合には、介入から得られる利益が少ないことを述べている。

他にも、Ashley C. Woodman・Leann E. Smith・Jan S. Greenberg・Marsha R. Mailick (2014)の約10年間、406人の自閉症の人とその家族を追った研究がある。

この研究では、家族内における母子関係の改善は不適応行動の減少と関連していたことや、母親の子どもへの賞賛が多いほど家族間の不適応行動の減少が予測されることがわかった。

例えば彼らの研究を参考にすれば、あまりストレスを溜め込んでしまうと将来お子さんの不適応行動が増加してしまうリスクもあるだろう。

このようなことをご家族様に話すと「いや、でもイライラしますよ先生」と言われることが多い。このことについてのどうすれば良いか?の回答も必要であろう。「自閉症児の親のストレスを下げる最新の研究結果」について、のちのページで解説する。


【(☆)親御さんも成功体験を積む」】

(☆)マークをつけた理由として、ここの部分は重要なことだと思っているからである。

いかに自分がやっていることがお子さんに対して効果的であると「他人から言われても」、実際に「自身で実感」しないと療育モチベーションは維持されない。

親御様側も療育をやる中でお子さんの成長という成功体験を積むべきである。

コツは「お子さんがすぐに獲得できそうなものから始める」、「親御さん側がここが変わって欲しいと動機付けを高く持てるところから始める」、「生活の中で教える機会を多く持てることを教える」、「他の人も協力してくれる」など、いろいろ考えられる。

このブログを通じて、みなさまが療育を行って良かった、上手くいったと言っていただけるように頑張って行こうと思っている。

次のページはもう少し、この内容を引き継いだものとなる。


このページのまとめ


【参考文献】

・ Ashley C. Woodman・Leann E. Smith・Jan S. Greenberg・Marsha R. Mailick (2014) Change in Autism Symptoms and Maladaptive Behaviors in Adolescence and Adulthood: The Role of Positive Family Processes. Journal of Autism and Developmental Disorders, DOI 10.1007/s10803-014-2199-2

・ Catherine Maurice (1993) LET ME HEAR YOUR VOICE 【邦訳: 河合 洋=監修 山村 宣子=訳 (1994) わが子よ、声を聞かせて 自閉症と闘った母と子 ,NHK出版】

・ Ghaleb H. Alnahdi (2013) Single-subject designs in special education: advantages and limitations. Journal of Research in Special Educational Needs 

・ Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008) AUTISM SPECTRUM DISORDER IN INFANT AND TODDLERS:Diagnosis, Assessment, and Treatment 【邦訳: 竹内 謙彰・荒木 穂積 (2010) 乳幼児期の自閉症スペクトラム障害 診断・アセスメント・療育 ,クリエイツかもがわ】

・ Lisa A. Osborne・Louise McHugh・Jo Saunders・Phil Reed (2007)Parenting Stress Reduces the Effectiveness of Early Teaching Interventions for Autistic Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders Jul;38(6):1092-103. Epub Nov 20.