療育に伴う、最良の結果とは別の価値(ABA自閉症療育のエビデンス9)

療育を行わない選択

私はご家庭でABAを用いて自閉症児に療育を行うことを推奨する「家庭療育推奨派」だが、療育を行わないことも1つの選択肢かもしれない。

自閉症は一般に生涯にわたる状態と考えらてはいるものの、近年では重度の障害から正常に近い状態まで成長する例があることが文献で述べられることがある

例えば、Deborah K. Anderson , Jessie W. Liang, and Catherine Lord (2014) は研究内で、様々な調査から1%から16%の自閉症のお子さんが思春期または成人期までに診断基準を満たさなくなるほど十分に回復することが報告されていると述べた。

時間の経過に伴って、特別にABA療育のような高密度の介入を行わなくても生活の中で自閉症症状がかなり少なくなる可能性についてこの研究以外でも言及されることがある。

※ABA療育の高密度介入については

「EIBIに必要な要素と診断の課題点(ABA自閉症療育のエビデンス7)」https://en-tomo.com/2020/04/05/eibi-essence/

「では、どうするか?(ABA自閉症療育のエビデンス8)」https://en-tomo.com/2020/06/01/that-way/

を参照してください)

ここについてのトピックについてはまた別の章で「自閉症」について掘り下げる章を作って記載していくこととするが、このような事実があるとすれば「療育をあえてしない」、そのような考え方を否定するつもりはない。



療育を推奨する理由

ただし冒頭記載したように私は「療育推奨派」である。

Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008)親が他の人に自分の子どもについて相談をした際、「あなたはただ心配しているにすぎない」とか「男の子は女の子よりも話すのが遅い」という、安心させるコメントが良く返ってくることについて述べている。

ただし親はそもそも不安を持って相談をしているため、そのことについて心の中でアンビバレント(葛藤)を持つだろう。「そうよね」と言葉で言いながら、同時に「でも」と思うのである。

Katarzyna Chawarska他(2008)によれば、これらの周囲からのコメントは善意かもしれないが、支援を遅らせる可能性を含む。特に、専門家からこのようなコメントを受けた場合、良く当てはまる。この点は注意して欲しい。

早期療育(年齢が若い段階から始める療育)が今(2020年)、科学的に効果があると言われている時代である。

「では、どうするか?(ABA自閉症療育のエビデンス8)」

で書いたように私は「自閉症が疑われた場合、すぐ介入を行う」ことを推奨する。

例えば薬の場合、服用を始めると副作用が考えられる。

この場合、副作用を考慮し「やる/やらない」という選択に頭を抱えることとなるだろう。

ただABA療育はコストこそかかるかもしれないが、正しく行うことで「やったために、悪くなった」という結果を導くことはないと思う。

また療育手法がABAでないにしても、療育は若い年齢から始めることが良いだろう。

※もちろん、やり方によるので、悪くなる療育もあるかもしれない。ただし、別のページで紹介をしていく機能分析や強化などの知識を学んでいくことでリクスはほぼないことをわかっていただけるであろう。



子は大きく育つ

例えば頑張って、頑張って家庭療育を行ったとして「最良の結果」が得られないこともあるだろう。

研究では専門家が介入しても「最良の結果50%」でかなり良い結果であるとされているが、個人的にはこの数値はパンチが弱いと感じる。

私のように50パーセントという数値がパンチが弱いと感じ、「頑張っても最良の結果が得られる確率はMAX50%」と聞くと悲観的に思うかもしれない。

しかし以下、個人的な見解になるが「最良の結果」を得られなかったとしても療育をした方が良い理由を書いていく。

これは「療育をしてお子さんが劇的に変化した」とかそういった結果を述べたものではない。


お子さんはこれからどんどん大きくなって行くだろう。対して親側は老いていくため、物理的に腕力で勝てない日がやって来る

そうなった日、別々に暮らすことも良いだろう。福祉を使うことで別々に暮らすことが可能になるかもしれない。

私はそのことは決して否定しない。

その理由は、1番大切なのは「家族全体の幸せ」だと思っているからだ。


お子さんも、成長して身体が大きくなる

兄弟やパートナー、自分の両親も自閉症児と同じように掛け替えのない大切な家族である。

ただ「一緒に暮らすかどうか選択できた」方が良いとも思っている。「別々に暮らす」といっても、「選択した上で別れて暮らす」のは「別れて暮らすしかなかった」とは違うだろう。

そのためには物理的に腕力で勝てない日が来る前からお子さんをコントロールできる術を何かしら身につけておくべきだ。

どうすればお子さんが聞き入れてくれるのか?お子さんに教えるためにはどうすれば良いのか?を、療育を通して親側が学んでいけるのだ。

もし最終的にコントロールを取ることが難しかったとしても「やってできなかった」のと「やらずにできなかった」は違うと思っている。



ここまで主にEIBI療育について主に述べてきたが、EIBIへの否定的な意見についても書いていこう。

例えばRianne Verschuur・Robert Didden・Russell Lang・Jeff Sigafoos・Bibi Huskens(2014) EIBIについて「コストがかかること」、「スキル般化をプログラミングする必要があること」という2つのデメリットを述べている。

ここまでの内容を読んで、特にコスト面について「根拠はあるみたいだけれどもEIBIは超高コスト」と思った人もいるだろう。

Rianne Verschuur他(2014)によればこれらの問題点を解決するため「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:自然主義的行動療法)」 が開発されてきた。

NBIは特徴としてDTTよりも構造化されていない方法で、個人的には「お子さんが2歳以下」など、まだ「お勉強」という設定に不自然さを感じる年齢のお子さんに療育を行う場合は、NBIのような自然場面でのアプローチが良いと考えている。

次のページからはNBIについてDTTとの対比を踏まえ紹介して行こう。



【参考文献】

・ Deborah K. Anderson , Jessie W. Liang, and Catherine Lord (2014)Predicting Young Adult Outcome among More and Less Cognitively Able Individuals with Autism Spectrum Disorders. Journal of Child Psychology and Psychiatry May  55(5) p485–494.  Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008)

・ Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008) AUTISM SPECTRUM DISORDER IN INFANT AND TODDLERS:Diagnosis, Assessment, and Treatment 【邦訳: 竹内 謙彰・荒木 穂積 (2010) 乳幼児期の自閉症スペクトラム障害 診断・アセスメント・療育 ,クリエイツかもがわ】

・ Rianne Verschuur・Robert Didden・Russell Lang・Jeff Sigafoos・Bibi Huskens (2014) Pivotal Response Treatment for Children with Autism Spectrum Disorders: A Systematic Review. Review Journal of Autism and Developmental Disorders, 1 p34–61