(ABA自閉症療育の基礎15)ABA療育、レスポンデント条件付け・エクスポージャー(曝露療法)まとめ

ここまでのページを振り返っていきましょう。

「ABA自閉症療育で使う基礎理論」の章、ページ一覧は「ABA自閉症療育で使う基礎理論(https://en-tomo.com/aba-basic/)」のページにまとめられています。

もしこのページから見始めた人で、内容が気になる人は上のURLを踏んでみてください。


このページは、ここまで見てきたレスポンデントとエクスポージャーについてまとめたページ



レスポンデント行動とオペラント行動

『「(ABA自閉症療育の基礎1)ABAから見る行動の種類「レスポンデント行動とオペラント行動」(https://en-tomo.com/2020/07/11/learning-theory-respondent-operant1/)』

ではレスポンデント行動とオペラント行動があるということを学びました。


ページの中で

小野 浩一 (2005) を参考に、

レスポンデント行動は「行動の先立つ環境変化によって誘発される行動」

オペラント行動を「行動ののちの環境変化によってその生起頻度が変化する行動」

と紹介しています。

レスポンデント行動は「誘発される行動」、これから学んでいくオペラント行動は「自発される行動」です。

これから学んでいくオペラント行動は「自発される」と覚えておきましょう。


「(ABA自閉症療育の基礎2)研究は現在も進行中(https://en-tomo.com/2020/07/12/research-in-progress/)」

ではまだレスポンデント行動もオペラント行動も研究が行われている理論であり、発展の余地があることに触れています。


「(ABA自閉症療育の基礎3)レスポンデントとオペラントの関係(https://en-tomo.com/2020/07/13/respondent-operant-affect-each-other/)」

ではレスポンデント行動とオペラント行動がどのように日常の中で絡み合うのかの例を紹介しました。

実はこの「レスポンデント行動とオペラント行動がどのように日常の中で絡み合うか」というトピックは大変重要なことだと感じています。

そのためオペラントについて学んだのちにまた新しく、さらに詳しくこのトピックを扱っていきます。



レスポンデント条件付け

「(ABA自閉症療育の基礎4)レスポンデント条件付けの基本ユニット(https://en-tomo.com/2020/07/17/respondent-basic-unit/)」

「(ABA自閉症療育の基礎5)レスポンデント条件付けの原理1(https://en-tomo.com/2020/07/18/responsive-conditioning-base1/)」

「(ABA自閉症療育の基礎6)レスポンデント条件付けの原理2(https://en-tomo.com/2020/07/19/responsive-conditioning-base2/)」

ではレスポンデント条件付けについての基本的なキーワードとI. P. Pavlovが20世紀のはじめに犬を使って行った有名な実験をもとにレスポンデント条件付けについて解説をしています。

「US:無条件刺激」と中性刺激を繰り返し対提示すると、中性刺激が本来引き起こさなかった、USが引き起こす反応を誘発するという学習が生じ「CR:条件刺激」の機能を獲得するという「レスポンデント強化」を解説し、レスポンデント条件付けの成立条件について解説をしました。


そして、

「(ABA自閉症療育の基礎7)恐怖条件付けーアルバート坊や(https://en-tomo.com/2020/07/20/fear-conditioning-classical-study/)」

では実際にレスポンデント条件付けを用いて子どもに恐怖を条件付けた古典的な「恐怖条件付け」の研究を紹介しました。


また『(ABA自閉症療育の基礎8)レスポンデント条件付けと「情動」(https://en-tomo.com/2020/07/21/response-conditioned-emotional/)』

からは恐怖以外の情動についても、レスポンデント条件付けによって条件付けることが可能であることを紹介しています。



エクスポージャー(曝露療法)

日常の中で条件付けられた情動や、日常の中で問題を発生させる不安・恐怖・嫌悪感などについての対処法略としてエクスポージャー(曝露療法)を紹介しました。

「(ABA自閉症療育の基礎9)エクスポージャー(曝露療法)(https://en-tomo.com/2020/07/23/exposure-therapy1/)」

では「馴化」によって不安や恐怖や嫌悪感などの程度が下がることを解説し、

エクスポージャーとは「不安」や「恐怖」や「嫌悪感」などが本人の受け入れられるレベルに下がるよう、それらを引き起こす刺激に曝露(さらされる)ことを計画的に行っていく支援方法

という私の思っているエクスポージャーの定義も紹介しています。


では、どのようにエクスポージャーを療育に適用していけばいいのか?

このテーマについて数ページにわたって解説をしていきました。

「(ABA自閉症療育の基礎10)エクスポージャー(曝露療法):言葉の理解が少しある幼児療育編(https://en-tomo.com/2020/07/24/exposure-therapy2/)」

のページで、言葉の理解が少しあるお子さんい対してのエクスポージャーの一例を書いています。

エクスポージャーのページでは度々出てきますがキーワードは「楽しい」、「お子さんがやりたいと思う」ということです。


「(ABA自閉症療育の基礎11)エクスポージャーのポイント1:エクスポージャーでの馴化プロセス(https://en-tomo.com/2020/07/25/exposure-therapy-point1/)」

でエクスポージャーを行う中でどのように「馴化」が生じていくのかについて紹介しています。

馴化が生じるように充分に「不安」や「恐怖」や「嫌悪感」などにさらす、ということの大切さを書きました。

この知識はエクスポージャーを行う際のポイントになるでしょう。

別のエクスポージャーのポイントとして、

「(ABA自閉症療育の基礎12)エクスポージャーのポイント2:安全希求行動と反応妨害(https://en-tomo.com/2020/07/26/exposure-therapy-point2/)」

というものを紹介しています。

「安全希求行動」を知っていることで、エクスポージャーを行う際に受け手にどのような気持ちで関われば良いのかのヒントになれば幸いです。

「嫌なものは、嫌だ」と理解しながら関わってあげましょう。

「安全希求行動」が生じるので、エクスポージャー中は「反応妨害」の手続きを行うことについても触れています。


「(ABA自閉症療育の基礎13)エクスポージャー:言葉の理解が遅い子、偏食指導編(https://en-tomo.com/2020/08/01/exposure-therapy-point3/)」

では言葉の理解の成長がまだ遅いお子さんに対して「偏食指導」をテーマにエクスポージャーを行ったRobert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) の研究を紹介しました。

またこのページでは、

治療的なエクスポージャーは「さらす」と同時に、その刺激を抑制・逃避する反応を生起させないような環境設定が付加される。つまり、治療的なエクスポージャーの目的は、不安が高まっているときに、逃避・回避ではない、代替行動のレパートリーを拡大させ、さらに不安を引き起こす刺激を探し出し、それに積極的に接近するよう促していくことである

という日本行動分析学会 :The Japanese Association for Behavior Analysis(2015) の記述も載せています。

最後に、

「(ABA自閉症療育の基礎14)エクスポージャーの療育適応のコツ(https://en-tomo.com/2020/08/02/exposure-therapy-point4/)」

では私がエクスポージャーを療育適応する際に気をつけていることについて書いています。

かなり長い分量になってしまいましたがエクスポージャーの療育適用について5つのポイントを紹介しました。



さいごに

ここまでで「レスポンデント条件付け」と「エクスポージャー」を紹介してきました。

「レスポンデント条件付け」で条件付けられた行動は「誘発される行動」です。

「(ABA自閉症療育の基礎3)レスポンデントとオペラントの関係(https://en-tomo.com/2020/07/13/respondent-operant-affect-each-other/)」

「環境から誘発される(環境に誘発されて、自分でコントロールができない行動)」行動はレスポンデント行動と書いたのですが、

情動などのレスポンデント行動はコントロールできない行動であると考えられています。

「100パーセント誘発される行動」と考えて良いでしょう。

※ 訓練すれば100パーセント誘発されなくなる可能性もありますが、療育では気にしなくても良いと思います

そのため「怖がらなくてもいい」とか、「あんまり不安に思うのは良くない」などの言葉掛けは、「恐怖や不安が100パーセント誘発される」と考えたならば、無理なことを本人に要求しているので非常にナンセンスです。

同じようにエクスポージャーが治療の対象とする「特定の刺激や場面によって誘発される不安や恐怖や嫌悪感など」も「誘発される行動」になります。

本人に「特定の刺激や場面によって誘発される不安や恐怖や嫌悪感など」は「考えないようにしようや、たいしたことない」というアドバイスはかなり難しい(というよりは、無理かも)なので控えるようにしましょう。

「誘発される行動」に対して、ここから学んでいくオペラント条件付けで条件付けられる行動は「自発される行動」です。


オペラント条件付けの理論を展開したB. F. Skinner (1950) は『もし私たちが行動を予測しようとするのならば(そしてそれを制御しようとするならば、「反応の確率」を扱わなければならない)』と述べました。

オペラント条件付けは私たちの行動を予測するときに「予測」、そして「制御(コントロール)」するための強力な理論です。

次のページからはオペラント条件付けについて見ていきましょう。



【参考文献】

・ B. F. Skinner (1950)Are theories of learning necessary? Psychological Review, 57, 193-216 【邦訳 スキナー著作刊行会 (2019) B. F.スキナー重要論文集Ⅰ 心理主義を超えて 勁草書房】

・ 日本行動分析学会 責任編集:山本 淳一・武藤 崇・鎌倉 やよい (2015) ケースで学ぶ行動分析学による問題解決 金剛出版

・ 小野 浩一 (2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館

・ Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 42(8): 1574–1581