(ABA自閉症療育の基礎5)レスポンデント条件付けの原理1

このページではレスポンデント行動を引き起こすレスポンデント条件付けの基本原理を解説していきます。

「(ABA自閉症療育の基礎4)レスポンデント条件付けの基本ユニット(https://en-tomo.com/2020/07/17/respondent-basic-unit/)」では、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・(US:unconditioned stimulus,無条件刺激):URを誘発する刺激

・(UR:unconditioned response,無条件反応):USによって勝手(自動的、自分の意思とは別に)に誘発される反応・行動

・(CS:conditioned stimulus,条件刺激):CRを誘発する刺激

・(CR:conditioned response,条件反応):CSによって勝手(自動的、自分の意思とは別に)に誘発される反応・行動

・中性刺激:特定の反応を引き起こさない刺激

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

5つのユニットを紹介しました。

今回は上の基本用語を使ってレスポンデント条件づけについての基本原理を解説していきますが、難しいと思った場合は「オペラント条件付け」まで飛ばしてください。



レスポンデント条件付け

レスポンデント条件付けで使われた装置

Niklas Törneke (2009)は「行動分析額のための2つの基本原理は、オペラント条件付けとレスポンデント条件付けである。レスポンデント条件づけはI. P. Pavlovが20世紀のはじめに犬を使って行った、あの有名な実験に基づいている」と述べました。

I. P. Pavlovのこの実験は大学で心理学の授業を受けたことがある人は耳にしたことがあるでしょう。

この実験がどういう実験であったかということから、レスポンデント条件付けの原理について解説していきます。

I. P. Pavlovの実験は以下にある画像のような装置を使って行われました。


I. P. Pavlovの実験装置

イラストはI. P. Pavlovの実験で使用された装置のイメージです。

実験では犬の頬にで描かれているようなチューブが通され唾液分泌の際に唾液が接種できるように手術されました。

えさ皿はえさを入れるお皿です。

摂取された唾液はビーカーに送られ記録計で唾液の分泌反応が記録されます。



レスポンデント条件付けの基本原理

以下実験の内容について書いていきます。

下のイラストのように「えさ(US:無条件刺激:無条件にURを引き起こす刺激)」は犬の「唾液(UR:無条件反応:USによって無条件に自分の意思とは関係なく誘発される反応)」を引き起こします


えさ(US:無条件に唾液を引き起こす刺激)によって、UR(唾液)が誘発されます

「えさ(US:無条件刺激)」を与えるほんの少し前「メトロノームの音(中性刺激)」を犬に聞かせます(対提示)。

「中性刺激」とは本来唾液を誘発する機能を持たない刺激です。

「えさ(US:無条件刺激)」と「メトロノームの音(中性刺激)」の対提示を繰り返し行うと、「メトロノームの音(中性刺激)」が徐々に「CS:条件刺激」の機能を持つという学習が進みます。


「えさ(US:無条件刺激)」と「メトロノームの音(中性刺激)」の対提示を繰り返し行うと「メトロノームの音(中性刺激)」がだんだんと「CS:条件刺激」であるという学習が進む

メトロノームの音」が「CS:条件刺激」の機能を持つという学習が進むと「メトロノームの音」が「唾液」を誘発するようになるのです。

この時「メトロノームの音(CS:条件刺激)」によって引き起こされた唾液は「CR:条件反応」と呼ばれます。


メトロノームの音が「中性刺激」から「CS:条件刺激」の機能を持つと、
「唾液:CR」を引き起こすようになる

以上のように「メトロノームの音(中性刺激)」と「餌(US:無条件刺激)」の対提示を繰り返す中で、「メトロノームの音(中性刺激)」が「CS:条件刺激」の機能を有するよう学習が進み、メトロノームの音(CS:条件刺激)が唾液(CR:CSによって引き起こされた反応)を引き起こすことを、「レスポンデント強化」と言います。

これが「レスポンデント条件付け」の基本形です。



日常から考えるレスポンデント条件付けの例

日常の例から考えてみましょう。

例えば「うめぼし」を食べると「唾液」が自分の意思とは別に出てくることがあります。

これは「うめぼしの酸味」という「US:無条件刺激」が「唾液」という「UR:無条件反応」を引き起こす日常例です。

そのような経験を何度かした後に「うめぼし」の写真(CS:条件刺激)を見せられると「唾液(CR:条件反応)」が分泌されることを体感します。写真でなくとも、「うめぼしを想像してください」という声かけであっても「唾液」は分泌されるでしょう。

もともと唾液を出すという行動を引き起こす機能を持たなかった「刺激(中性刺激:メトロノームの音やうめぼしの写真)」が、「US(えさやうめぼしの酸味)」と対提示されることで学習が起こり「唾液:CR」を引き起こすのです。



レスポンデント条件付けのバリエーション

いくつかレスポンデント条件付けのバリエーションについても紹介していきましょう。

「メトロノーム(CS)が提示されてから少しして餌(US)」このような上の例で見てきたような、CSがUSに先立って提示されるものを「順行条件付け」と言います。

「メトロノーム(CS)と全く同じタイミングで餌(US)を出す」このようなCSがUSと同時に提示されるものは「同時条件付け」と言います。

他にも「逆行条件づけ:(CS)と(US)のタイミングを逆にしたもの」などのバリエーションがありますが、ここで紹介をした「順行条件づけ」がメジャーなものだと思います。

レスポンデント条件づけによって「まさにあらゆる刺激が、USと繰り返し対提示されることによってCSとなりうる」Raymond G. Miltenberger (2001)は書きました。

私たちが意識をしていなくとも、日常の様々なシチュエーションでレスポンデント条件付けが生じ、学習が起こることで私たちの行動に影響を与えています。


次のページではレスポンデント条件付けの原理についてもう少し見ていきましょう。



【参考文献】

・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店

・ Raymond G. Miltenberger (2001) Behavior Modification:Principle and Procedures/ 2nd edition 【邦訳 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】