(ABA自閉症療育の基礎14)エクスポージャー(曝露療法)の療育適応のコツ

「(ABA自閉症療育の基礎13)エクスポージャー:言葉の理解が遅い子、偏食指導編(https://en-tomo.com/2020/08/01/exposure-therapy-point3/)」では

Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) の研究を参考に言葉の理解が難しいお子さんに対して行った偏食指導のエクスポージャーの事例研究を見ました。

Robert L. Koegel他 (2012) の研究や私の経験などから、お子さんへの療育でエクスポージャーを適応する際に気をつけたいことやコツについてこのページでは書いていきましょう。


エクスポージャーを療育適用する際のコツを書いていきます。
少し長いですが、お付き合いいただけると幸いです


エクスポージャーの療育適用のコツ

その1:「〜できない」場合に検討を考える

1つ前のページではRobert L. Koegel他 (2012) の偏食指導の研究から、新しい食べ物にチャレンジできないお子さんに対してエクスポージャーを行った研究を紹介しました。

エクスポージャーはこのように「~~できない」という場面で困っている場合、使用を検討するケースが多いと思います。

それは例えば、

「お友達に話しかけられない

「音に敏感で、外に出られない

「ゲームに負けてしまうと強い癇癪を起こすので、お友達とゲームをさせられない

「特定の踏切を通過とき、電車が1本通ってからでないと通過できない

「トイレに怖くていけない

「登園拒否・登校拒否

などの場合は支援手続きの中にエクスポージャーを組み入れることが考えられます。

こういったケースでは不安や恐怖、嫌悪感などによって、そのような刺激や場面に抵抗感を感じており、避けることによって問題が生じている可能性があるのです。


ただし「~~できない」という場面で困っている場合であっても、「言葉が出ない」や「ジャンプができない」など今まで1度も他の場面や過去にできたことが確認されない場合はエクスポージャーの適用事例ではないと思います。

この場合はエクスポージャーというより「プロンプトフェイディング+オペラント強化手続き」「シェイピング」によって「できるように教える」ように支援することが大切です。

※ 「プロンプトフェイディング」「オペラント強化手続き」「シェイピング」についてはまたのちのページで解説を行なっていきます。オペラント条件付けによる支援手続きです

エクスポージャーのコツその1は、他の場所や他の人または過去にはできていたにもかかわらずできない場合、エクスポージャー手続きを支援方法に適応する可能性を考えることです。



その2:お子さんが自発的に関われる活動にエクスポージャーを巻き込む

「(ABA自閉症療育の基礎10)エクスポージャー(曝露療法):言葉の理解が少しある幼児療育編(https://en-tomo.com/2020/07/24/exposure-therapy2/)」

では、療育を通して不安にエクスポージャーする際の一例を見ました。

その中で太郎くんが最近気に入っている特撮ヒーローごっこを取り扱い、人との関わりを拡大していくよう支援の計画をしています。

このようにお子さんが自発的に「やってみたい」というシチュエーションの中に避けている課題を埋め込みむことが懸命でしょう。

エクスポージャーのコツその2は、本人が自発的に関わっていける活動に不安や恐怖や嫌悪感などを誘発する刺激や場面を巻き込み、自然と馴化が促進される支援計画を組むことです。

キーワードは「楽しんでやる」、そして「無理やりさせない」ということでしょう。

お子さんが自発的に参加できることは

「(ABA自閉症療育の基礎12)エクスポージャーのポイント2:安全希求行動と反応妨害(https://en-tomo.com/2020/07/26/exposure-therapy-point2/)」

で見て来た「安全希求行動」の「内的活動」を生じさせないためにも必要なことです。


しかし少し無理を通す場合もあります。例えば錠剤を飲む必要があるお子さん(飲まなければ健康被害が出る)では親御様の許可を取り、飲ませる練習をする必要があるかもしれません。

自閉症のお子さんの場合、私の過去の経験上、例えば「てんかん発作」があり、どうしても飲まなければいけない薬が飲めない場合などがこのようなケースに当たります。



その3:できそうなところからやる

Robert L. Koegel他 (2012) の研究では新しい食べ物にチャレンジするために「新しい食べ物を食べる」行動をスモールステップ化し、徐々にレベルを上げることで課題の難易度設定を行いました。

これは、言い換えればできるところから無理なくやっていくということで、エクスポージャーのコツその3は本人がやってもいいかな?というシチュエーションから始めて、成功をさせることです

Robert L. Koegel他 (2012) とは違う偏食指導の研究もあります。

例えばAbby Hodges・Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017) は自閉症を伴う1人の男の子と1人の女の子に対して偏食指導を行っています。

女の子のお子さんは自閉症以外にてんかん、ADHD、知的障がいの診断も過去に受けたことがありました。

Abby Hodges他 (2017) の研究でも2名のお子さんが食べられる物の拡大が見られたのですが、この研究では「新しい食べ物にチャレンジするレベル」を以下のように分けています。

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レベル0:全拒否:参加者が食品に触れなかった場合

レベル1:食べ物を唇に触れる:お子さんが対象の食料品に手で触れ、指示が提示されてから2分以内に唇に触れる

レベル2:食べ物を口に入れる、食べ物を飲み込まない:お子さんが自分の手で食べ物を持ち、それを2分以内に指示に続いて唇を越えて口に入れる

レベル3:食べ物を飲み込む:お子さんが手で食料品を持ち、それを2分以内に指示に続いて唇を通り過ぎ口に入れ、顎を上下に1回動かして咀嚼したあとに飲み込む

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Abby Hodges他 (2017) の研究でも新しい食べ物にチャレンジするために「新しい食べ物を食べる」行動をスモールステップ化し、徐々にレベルを上げることで課題の難易度設定を行っています。

最初から食べることを強要するのではなく、できるところから無理なくやっていくことが分かるでしょう。

特にこの研究では「2分以内に」と達成基準に時間の基準が組み入れられています。

この研究のように達成基準に「〜〜分以内に」という時間基準を取り入れることは必要である場合が多いです。


今回「偏食指導」を例に書いていますが、本人が解決したい動機付けが高い場合でも「エクスポージャーをやる必要がある」ことに納得してもらったのち「どこからだったらできそうか?」ということを以下のような形で最初に話し合い課題設定するようにします。

例えば大人を支援する場合、以下のように最初にこれからの達成目標について話し合って決めることが多いです。


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「上司から意見を求められた際に緊張して考えがまとまらない」ケースの一例

最終目標:上司から意見を求められた際に自分の意見を伝える。

「私の意見としてはーーーーーーーー、もし、ご指摘あれば教えていただければ幸いです」など、自分の意見を伝えることを目的とする。

・・それを達成するためには?・・・・・・

レベル5:上司に対して自分が取り組んでいて、ある程度完遂したプロジェクトについて報告をし、意見を求める。もし、意見が返って来てすぐに答えられない場合は「ご指摘、ありがとうございます。ご意見を取り入れて一度考えさせていただき、またご報告いたします」と言ってその場を離れて良い

レベル4:上司に対して自分が取り組んでいて、ある程度完遂したプロジェクトについて報告をする(報告内容は事前に文書化し、文書を読む形で上司に報告して良い)

レベル3:上司に対して褒めることを探し、上司に対し何か目を見て褒める(例えば「髪型決まっていますね」や「お洒落ですね」など外見的な部分でも良いし、「的確にご指示いただいてありがとうございます」や「お話お上手ですね」など内面的な部分でも良い)。その後、上司のリアクションを観察する

レベル2:上司にあいさつをしたのち、今日の天気の話題などで2-3回会話を交わす

レベル1:上司の目を見てあいさつをする

レベル0:上司と関わらない

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のように、

どういったルートで課題達成まで行うのか?ということをトップダウンで話し合い遂行していくことになるでしょう。

しかし具体的なルートが最後まで見えないときには、とりあえずできそうなところを短期的な目標と捉えて行っていくこともあります。

坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) は「恐怖症の治療」の一例としてエクスポージャーを取り上げ、一般的なエクスポージャーは最初患者にとって比較的弱い恐怖反応を引き起こす刺激を用い、それに繰り返しさらすことで馴化を生じさせ、その後徐々に強い刺激にさらしていくことで治療を進めていくと述べました。

エクスポージャーはできそうなところから行っていきましょう。



その4:言葉の獲得状況によってやり方を変える

エクスポージャーのコツその4はお子さんの言葉の獲得状況によってエクスポージャーを計画する方法を変えることです。

以下に例を書いていきますが、言葉の遅れが少ないお子さんではどういった設定で行っていくのかを「交渉」し、言葉の遅れの大きいお子さんではある程度こちら側で設定を組んでおく必要があるなど、エクスポージャーを実行する際の計画に違いが出てくるでしょう。

ここまで言葉に遅れのあるお子さんに対しての偏食指導の手続きを紹介して来ましたが、言葉に遅れのないお子さんに対して指導する際には偏食指導の方法も少し変わってきます。


Enせんせい

例えば言葉に遅れのない小学校1年生の自閉症児「太郎くん」がいたとしましょう


この子はお野菜を一切食べないため、困っていたとします。お母さんは家で食べられないことにも困っていますが、学校の先生からも給食で野菜を食べるように促すと強い抵抗感を太郎くんが示すため、家庭でも頑張って食べられるようになって欲しいと訴えがありました。

今この記事を書いているのが8月ですので、このエピソードは7月後半の小学校1年生の夏休み前の時期をイメージしてもらった上で、以下のやりとりの一例を見てみましょう。

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Enせんせい:今日も暑いね

たろうくん:うん

Enせんせい

最初から本題に入るのではなく、最初はたわいない話から始める方が良いと思います

Enせんせい:先生、暑いの嫌い。太郎くんは暑いの好き?嫌い?

たろうくん:きらい

Enせんせい:だよね。もう直ぐ夏休みだけれども太郎くん、学校は楽しい?

たろうくん:楽しいよ

Enせんせい:それは良かった!先生も嬉しいよ。何の時間が楽しいの?

たろうくん:休み時間に虫を探すのが楽しい

Enせんせい

少しずつ、本題(給食)の話に近づけるため、学校のエピソードに導入します。「先生も」ということを伝え、共感的な関わりで展開していきましょう

Enせんせい:いいね!先生も昔虫が大好きだったよ。虫探し楽しいね。そっかー、他に楽しい時間はある?

たろうくん:んー、わかんない

Enせんせい:そっかー、わかんないか。じゃあ、この時間はいやだなって時間はある?

たろうくん:ない

Enせんせい:いいね!太郎くん学校、楽しくて何よりだよ。あ、そうそう先生、節分のときに食べるお豆が嫌いなんだよね。小学校に行っているとき、節分の豆を食べる時間があったな。節分って知っている?

たろうくん:知っているよ

Enせんせい:来年の2月、2年生になる前太郎くんも食べなきゃいけないかもしれないよ。豆好き?

たろうくん:きらい

Enせんせい:一緒だね!あと先生は、キャベツのサラダも嫌いだな。なんか「キュッ」ってはの中で音がする時があって、うげって思うよ。太郎くんはキャベツ生で食べられる?

たろうくん:食べられない

Enせんせい

嫌悪感を感じているであろう場面(給食)の本題に近づけていきます

Enせんせい:太郎くんも先生と一緒だね。ていうか、給食ってサラダ出るっけ?お野菜は出るよね?

たろうくん:うん

Enせんせい:お野菜、食べられてる?

たろうくん:食べてない

Enせんせい:え?何もお野菜食べてないの?

たろうくん:うん

Enせんせい:全部残しているの?

たろうくん:うん

Enせんせい:そっかー。食べたいと思う?

たろうくん:思わない

Enせんせい:そうなんだねー。まぁ、嫌いなものは仕方ないか。お母さん、太郎くんはお野菜を家で食べないって言っていたけれども、やっぱり家で食べられないものは学校でも食べられないよね

Enせんせい

お子さんから「給食」のエピソードが出ない場合は上のようにこちらから切り込んで行きますが、「残していること」を責めるのではなく理解を示す気持ちを持って関わります

たろうくん:うん

Enせんせい:もし、お母さんが食べて欲しいっていったらどうする?

たろうくん:いやだ

Enせんせい

ここで「いいよ」と行ってくれることもないわけではないですがそのようなケースは少ないですね。仮に「いいよ」と言ってくれてもお子さん本人はあまり現実味を持っておらずよくわからず「OK」を出すことも多いように思います

Enせんせい:だよね。じゃあ、別に吐き出してもいいから、口に入れてみるだけはどう?今日は特別にお野菜口に入れられたら、先生が何か太郎くんの喜ぶことをしてあげようかなぁ

たろうくん:うーん、いやだなぁ

Enせんせい:そうだよね。いやだよね。じゃあ、触るだけだったらどう?できたら、うーんそうだな。何かしてあげたいけれど?

たろうくん:えー。なんでやるの?

Enせんせい:例えばそーだなー、ここに「きゅうり」がある(きゅうりなど、あらかじめ用意しておき出す)んだけど、(ツンツン触るモデルを見せる)。ほら、これなら嫌じゃなくない?

たろうくん:んー、なんできゅうりあるの(笑)触るだけだったらいいよ

Enせんせい

できそうな条件を引出します。できればこの例のように「できたら〇〇あげる」という結果条件なしに行ってもらえる方が良いです。触った後に「触って良かった!」と太郎くんが思えるくらいくすぐったり、抱っこしたりして褒めてあげましょう

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少し長かったですが上記のようにお子さんとの話し合いの中で「できそうなこと」の基準を明確にして、何をするかを話し合っていきます

「そんなうまくいくの?」と思われるかもしれませんが、後輩育成をしてきた経験から特に「お子さんと遊ぶのが上手い人」であれば成功確率は高いです。

上の会話の例は言葉の遅れが少ない子で、会話によって条件交渉できるお子さんの偏食指導の例でした。

言葉に遅れのあるお子さんの場合には上記の例のような「交渉」は難しいのでRobert L. Koegel他 (2012) や、Abby Hodges他 (2017) が行ったようにこちら側であらかじめ難易度設定をスモールステップに分け、課題を行うことになるでしょう。



その5:エクスポージャーは丁寧にやる

「(ABA自閉症療育の基礎9)エクスポージャー(曝露療法)(https://en-tomo.com/2020/07/23/exposure-therapy1/)」

でも記載したようにエクスポージャーは受ける側に大きなストレスを生じさせます

そのためドロップアウト(治療をやめる)の結果につながることがあるでしょう。

お子さんの療育に取り入れる際も、ある程度支援する側とお子さんの信頼関係ができてから実行していくことが賢明かもしれません。

エクスポージャーのコツその5は支援者側は受ける側に大きなストレスがあることを理解し、不安や恐怖や嫌悪感などに共感し、丁寧に進めていく必要があることを自覚することです。

Michael Neenan & Windy Dryden (2006) はエクスポージャーはクライアントが本来避けている状況に身を置くことや普段避けている活動を「あえて行う」ことを求めると述べました。

そのため支援を受ける側の動機付けを最大限にあげる努力が必要です。


動機付けをあげることも必要ですが、あまりに不安や恐怖や嫌悪感などが大きい場合、最初イメージでエクスポージャーを行う場合があります。

例えば不登校のお子さんに「想像してみてね。目を瞑って。今、太郎くんは家にいるんだけれども、家の玄関を出て、何が見える?」・・・「もう直ぐ学校に着くよね。何が見える?」・・・「どういったことが今、頭の中で不安に思っているかな?」

など、最初から不安や恐怖や嫌悪感などを生じさせる刺激や場面に直接触れるのではなくイメージでリハーサルを行うことでエクスポージャーを行うことが必要になる場合があるでしょう。

このようなイメージで行うエクスポージャーを「イメージエクスポージャー(Image exposure)」と言います。

エクスポージャーを受ける側からしてもこれならば安心感があり抵抗感は幾分か低いです。

※ただし、うまくイメージエクスポージャーができた場合、実際に不安や恐怖や嫌悪感などが誘発されますので本人にストレスはかかっています

イメージでのエクスポージャーについて私はEdna B. Foa・Elizabeth A. Hembree・Barbara O. Rothbaum (2007) の手続きを参考に、できるだけ受ける側に話してもらうことを意識します。

Edna B. Foa他 (2007) はPTSDの専門書です。

PTSDのような「フラッシュバック」、「トラウマ」、などの日常的に強い印象を持つキーワードを伴う精神疾患についてもエクスポージャーは効果が期待できます。



エクスポージャーの療育適用のコツまとめ

エクスポージャーの適応範囲は非常に多岐にわたるものです。

適応範囲の広さを伝えるとすれば、最近例えば伊藤 理紗・矢島 涼・佐藤 秀樹・樋上 巧洋・松元 智美・並木 伸賢・国里 愛彦・鈴木 伸一 (2019) は研究でゴキブリの恐怖感に対してエクスポージャーを行っています。

丁寧に行うことを念頭に、適応範囲の広いエクスポージャーを必要であればあなたが、もしくは専門家に依頼しお子さんに行っていくことも療育支援の1つとして選択肢に入れておいてください

※ 「家庭療育の勧め」ということでブログを書いていますがエクスポージャーに関しては結構、専門性が高い支援手続きのように思います


このページではエクスポージャーのコツについて以下の5点を紹介しました。

エクスポージャーのコツその1:「〜できない」場合に検討を考える

他の場所や他の人または過去にはできていたにもかかわらずできない場合、エクスポージャー手続きを支援方法に適応する可能性を考える


エクスポージャーのコツその2:お子さんが自発的に関われる活動にエクスポージャーを巻き込む

本人が自発的に関わっていける活動に不安や恐怖や嫌悪感などを誘発する刺激や場面を巻き込み、自然と馴化が促進される支援計画を組む


エクスポージャーのコツその3:できそうなところからやる

本人がやってもいいかな?というシチュエーションから始めて、成功をさせること


エクスポージャーのコツその4:言葉の獲得状況によってやり方を変える

エクスポージャーのコツその4はお子さんの言葉の獲得状況によってエクスポージャーを計画する方法を変える

例えば言葉の遅れが少ないお子さんではどういった設定で行っていくのかを「交渉」し、言葉の遅れの大きいお子さんではある程度こちら側で設定を組んでおく必要があるなど、エクスポージャーを実行する際の計画に違いが出てくる


エクスポージャーのコツその5:エクスポージャーは丁寧にやる

支援者側は受ける側に大きなストレスがあることを理解し、不安や恐怖や嫌悪感などに共感し、丁寧に進めていく必要があることを自覚する



さいごに

大人にエクスポージャー手続きを行う場合「あなたにとっての価値のある人生とはどういったものですか?それを手に入れるために、どういった方法があるでしょうか?」など「本人の価値」に目を向けることが近年(私が学生時代の頃から)注目を浴びているように思います。

これは「行動療法の第三世代」と呼ばれるものの考え方です。


Enせんせい

のちの記事でも触れるかもしれませんが、気になる人は調べてみてください。「臨床行動分析」や「ACT」がキーワード


それまでは「不安で困っているのですね?では、不安を下げましょう」や「恐怖で行動が制限されているのですか。恐怖を克服しましょう」と言ったように「マイナスをイーブンに戻す」という方向でのエクスポージャーが主流だったように思います。

本人の価値を重要とした場合は「マイナスをイーブンに戻す」ではなく「今の状態(イーブン)をプラスに動かす」といったような姿勢でエクスポージャーに挑むことになるでしょう。

療育でエクスポージャーを用いる場合についても、お子さんが自発的に不安や恐怖や嫌悪感などを誘発する場面や刺激に当たっていけるよう、エクスポージャー手続きを設計し、本人が受け入れられる中でエクスポージャーを行なっていける環境を整えることが賢明です。

エクスポージャーは専門性も高く、「どうやってやるのん?」と思ってしまうかもしれません。

Twitterで連絡をいただければ今のところ対応できますので、その場合にはまたご連絡をいただければ幸いです。


次のページではここまでのページをまとめ、その後オペラント条件付けについて書いてきます。

ABAの真骨頂はオペラント条件付け!

どうぞよろしくお願いいたします。



【参考文献】

・ Abby Hodges・Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017)Using Shaping to Increase Foods Consumed by Children with Autism. Autism Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 47:2471-2479

・ Edna B. Foa・Elizabeth A. Hembree・Barbara O. Rothbaum (2007) Prolonged Exposure Therapy for PTSD: Emotional Processing of Traumatic Experiences, Therapist Guide 【邦訳 金 吉晴・小西 聖子 (2009)PTSDの持続エクスポージャー療法 星和書店】

・ 伊藤 理紗・矢島 涼・佐藤 秀樹・樋上 巧洋・松元 智美・並木 伸賢・国里 愛彦・鈴木 伸一 (2019) 恐怖の高まりを伴う安全確保行動がエクスポージャーの治療効果に与える影響. 認知行動療法研究,45(1), 13–22

・ 坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ

・ Michael Neenan & Windy Dryden (2006) Cognitive Therapy in nutshell 【邦訳 監訳:大谷 彰 訳:玉井 仁 (2007)わかりやすい認知療法 二瓶社】

・ Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 42(8): 1574–1581