(ABA自閉症療育の基礎41)オペラント条件付けー般化勾配

このページはイラストで言えば、


このページは赤い丸で囲まれている「弁別刺激」の内容が書いてあるページです

「ココ」と書かれている四角の中に、赤い丸で囲まれている「弁別刺激」のところのページです。

これまで「弁別刺激」について「弁別」と「般化」について学んできました。

般化についてShira Richman (2001) 直接教えていない様々な場面や状況、人に応じて適切な行動を示すこと。また、教えられた型どおりではない応答を示すことと述べています。

「般化」は「弁別」と同じようにABA療育ではとても大切な知っておくべき知識です。

ABA療育で「般化」が生じた際、その生じた状況が「ポジティブ」なときと「ネガティブ」なときがあることを

「(ABA自閉症療育の基礎40)オペラント条件付けーABA療育における「ポジティブな般化」と「ネガティブな般化」(https://en-tomo.com/2020/09/18/discrimination-learning-positive-generalization-negative-generalization/)」

で記載をしてきました。

このページではどういった刺激が「弁別」を生み、逆に「般化」を生じさせるのかについてのヒントとして「般化勾配(はんかこうばい):Generalization gradient」というものを解説します。



オペラント条件付けにおける般化勾配

実森 正子・中島 定彦 (2000) 「般化勾配(はんかこうばい)」について、

特定の刺激に安定して反応が出るようになった後、ある次元で刺激を変化させて反応数を測定する。

横軸に刺激次元、縦軸に反応数をとると、般化勾配が得られる。

測定次元に刺激性制御があれば、訓練刺激を頂点とし両側に反応が減少する勾配が得られる。

刺激性制御がなければ、勾配は平坦になる

と述べています。


そもそも「勾配(こうばい)」という言葉を日常で聞きません。

「勾配」とは「斜面」のことです。


また実森 正子・中島 定彦 (2000) の般化勾配の説明で出てきた「刺激性制御(しげきせいせいぎょ)」とは、

「(ABA自閉症療育の基礎37)オペラント条件付けー「弁別学習」(https://en-tomo.com/2020/09/10/discrimination-learning/)」のページで杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・リチャード W マロット・マリア E マロット(1998)を参考に、

杉山 尚子他 (1998) は「弁別訓練」を続けると「弁別刺激」が提示されているときに、その行動がより多くなり、このことを「刺激性制御」、または「刺激弁別が生じた」というと述べました

と紹介した内容のものです。

特定の刺激が「弁別刺激」として確立された場合「刺激性制御が確立された」と言われるのですが、詳細はURLをご覧ください。


上に書いた般化勾配についてGEORGE S. REYNOLDS (1961) の行った実験から解説を行っていきます。

GEORGE S. REYNOLDS (1961) は4羽のハト使って般化勾配の実験を行いました。

デカント(decant)という装置を使用し、ハトの般化勾配を調べた実験です。


GEORGE S. REYNOLDS (1961)の実験ではイラストのような、
まるで時計の針が動くようなデカントという装置を使ってハトに弁別学習を教えた

デカントが特定の位置に来たときハトがキーを突くと、餌が出てくるという実験装置のもとで実験が行われました

実験前にハトは体重を80パーセントまで落とされていましたので、餌はハトにとって強化子として機能します。

デカントには三角形の頂点が差す位置によって、1から10までの10種類の値が振り分けられました。

実験では、

「強化勾配(reinforcement  generalization)」というものと「消去勾配(extinction  generalization)」が調べられたのですが、

このページでは「強化勾配」の内容についてみていきましょう。


「強化勾配」を調べる手続きは、

「1」と「10」の2つの値にデカントが位置しているときにハトがキーを突くと強化(エサが出る)され、

残りの8つの値ではキーをつついても消去(餌が出てこない)されるという手続きでした。

このような実験を行った結果、


GEORGE S. REYNOLDS (1961)の実験を参考に作成
強化される「1」と「10」のデカントでは行動が最も多くなり、
「1」と「10」に近いデカントから遠いデカントに行くにつれ、
行動頻度が低下する「強化勾配(般化勾配)」が出現する

デカントで強化された値から遠ざかれば遠ざかるほど、ハトのキー突き行動は減少して行きました。


坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) ある刺激の物理的特性のもとで反応を強化した場合、その特性から遠ざかるに従って反応率が規則的に減少するが、その反応率の変化に従って現れる勾配を、般化勾配と呼んでいると述べました。

イラストで紹介したGEORGE S. REYNOLDS (1961) の実験からも、坂上 貴之他 (2018) が述べているように、

強化された状況(「1」と「10」の値)から離れれば離れるほど、強化子を取りに来る行動(この場合は、ハトのキー突き行動)が減少していることがわかります。

つまり「般化勾配」の実験から分かることは、

強化されている状況に似ている状況の下では、行動が出現しやすい

ということです。


「(ABA自閉症療育の基礎39)オペラント条件付けー般化(https://en-tomo.com/2020/09/14/discrimination-learning-generalization/)」 

のページでオペラント条件付けの般化について

・ 強化されてきた弁別刺激に似た刺激の下では、同じように行動する確率が上がる 

・ 強化されてきた特定の状況(刺激)に似た状況(刺激)の下では、同じように行動が出現しやすい 

・ 似た状況では、似た状況で強化されてきた行動を人間(人間以外も)は取りやすい 

と紹介しましたが、このような実験結果をもとに上記のように考えられています。



ABA自閉症療育に般化勾配の知識をどう活かすか?

では、ABA自閉症療育にこの般化勾配の知識をどう活かせば良いのでしょうか?

この章で今まで学んできた「強化」や「弁別刺激」の内容を振り返れば、

強化されたことがある刺激の下では、(同じように)強化を取りに来る行動が生起しやすい

※ 「弁別刺激」または「刺激性制御」が確立されたと言い換えられます

といえます。


ABA療育では例えば

「先生の前ではできるけれども、私の前ではできない」

ということがしばしば起こります。

例えば喃語の出ている無発語と呼ばれるお子さんへ言葉の支援をしている際、私の前で欲しいおもちゃを要求するとき、「あー」と言って言葉を使ったコミュニケーションを用いておもちゃを要求できるようになったとしましょう。

「先生の前ではできるけれども、私の前ではできない」

ということが起こった場合その理由はいくつか考えられるのですが、1つは以下のような原因でしょう。


(原因)

『先生の前では「あー」というと、おもちゃがもらえた』

→  「先生+おもちゃ」という先行状況の下で、「あー」という行動を行うと、結果としておもちゃが手に入ったことがあったので、

今後「先生+おもちゃ」という先行状況の下で、「あー」という行動を行う頻度が増える

先生へは、トレーニングを通して以上のような「強化」の随伴性が学習されたのですが、


『お母さんの前では腕を引くと、おもちゃがもらえた』

お母さんとお子さんは先生と違い、既に日常生活の中でおもちゃの受け渡しを何度も経験しています。

→  そのため「お母さん+おもちゃ」という先行状況の下で、腕を引く行動を行うと、結果としておもちゃが手に入ったことがあったので、

今後「お母さん+おもちゃ」という先行状況の下で、腕を引く行動を行う頻度が増える

という「強化」の随伴性がお母さんの下では既に学習されていしまっているため、お母さんの前では「あー」という言葉を使ったコミュニケーションの行動を行いません

昔からやっている普段通りの方法で、お子さんは要求を続けてしまいまうのです。

これはお子さんの行動が般化しない1つの要因となります。

専門的に言えばこのような現象を『お子さんが、先生とお母さんに対して「弁別」してしまっている』

と言います。


Enせんせい

「弁別」については、例えば

「(ABA自閉症療育の基礎37)オペラント条件付けー「弁別学習」(https://en-tomo.com/2020/09/10/discrimination-learning/)」を参照

上のURLでは「弁別」について『新しい知識を得ることがすなわち、「弁別」が確立したと同義語である場合が多い』と「弁別」のポジティブな側面を書きましたが、

あまりにも学習範囲が限定的であると困ったことで、応用が効かない、という状況と言えます。


私はこのお子さんに要求スキルを教える過程で「強化法」「プロンプトフェイディング」という技法を使用したとしましょう。

私の前ではまだ学習歴(私と関わった経験が少ない)ため、おもちゃをもらった経験も当然少ないです。

そのため、おもちゃをもらう行動として「あー」と言えばもらえたという新しい学習がスムースに進んでいくでしょう。

しかし母親の前ではすでに腕を引く行動を行うと、結果としておもちゃが手に入った学習が何度も何度も繰り返されてきていたため、わざわざ私の前で行う行動を示す必要性を当然お子さんは考えないでしょう。

お母さんの前でおもちゃが欲しいときには、今まで通り腕を引けば良いのです。


ではどうすれば良いかと言えば、私が行ったように

お母さんも、私と同じように「強化法」と「プロンプトフェイディング」という技法を使用し、お子さんに「あー」と言葉でコミュニケーションをとることによっておもちゃがもらえる

※ 多くの場合、「強化法」と「プロンプトフェイディング」に加えて「消去手続き」も必要となりますが、上手くやれれば「消去手続き」は必要ない場合があります。このことはまたあとのページで

「消去手続き」については

「(ABA自閉症療育の基礎31)オペラント条件付け-消去(https://en-tomo.com/2020/08/25/operant-extinction/)」を参照

ということを教えて行くという方法があります。



さいごに

私はこのようなコミュニケーションができるようになるために、例えばプロンプトフェイディングという技法を使って言葉を促進する支援を良く行います。

ABA療育ではお子さんに何かを教えるときは「強化法」と「プロンプト」という方法を使用して支援を行うことが多いのですが、「強化法」はリダクション、「プロンプト」はフェイディングというものを行っていく必要がある方法です。

「プロンプト」、「プロンプトフェイディング」は強力な支援技法ですが、ここまで見てきた「強化」、「弁別刺激」、「般化」、「般化勾配」などのキーワードが絡んで来る技法でしょう。

特に「プロンプトフェイディング」はこのページで見てきた、般化勾配を頭において行うべき支援方法だと私は考えています。


このページでみてきた「般化勾配」が教えてくれる知識は

強化されている状況に似ている状況の下では、行動が出現しやすい

ということでした。

もし、教えた行動を別の状況でも使用して欲しいと思ったとき、この般化勾配を頭に入れ、できるだけ近いシチュエーションで練習をしていくことで般化場面を拡大していくことができます

今まで強化されてきた類似状況では行動は出現しやすくなることは覚えておきましょう。

次のページでは「強化法」と「プロンプト」について紹介していきます。



【参考文献】

・ GEORGE S. REYNOLDS (1961)CONTRAST, GENERALIZATION, AND THE PROCESS OF DISCRIMINATION1. Journal of the Experimental Analysis of Behavior. October 1961 https://doi.org/10.1901/jeab.1961.4-289

・ 実森 正子・中島 定彦 (2000) 学習の心理 第2版 サイエンス社

・ 坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ

・ 杉山 尚子・島宗 理・佐藤 方哉・リチャード W マロット・マリア E マロット(1998)行動分析学入門 産業図書