「(ABA自閉症療育の基礎16)オペラント条件付けの基本ユニット(https://en-tomo.com/2020/08/07/operant-basic-unit/)」
ではオペラント条件付けについての基本的なユニット(要素)について見てきました。
いくつかのユニットがあるのですが、
オペラント条件付けは「行動の結果」の部分が大切として、行動を分析し、支援していくもの覚えていただければ嬉しいです。
このページではお子さんの支援としてオペラント条件付けを学んで欲しい理由について書いていきたいと思います。
簡単にこのことに触れていきますが読んでいただいて、その後オペラント条件付けの知識を学ぶ動機付け向上につながれば幸いです。
また、ページ内では海外と日本における療育事情のギャップも記載しています。
このブログは「ABA家庭療育」を進めていますから、「なぜ家庭で行う必要があるのか?」という内容も併せて伝われば幸いです。
オペラント条件付け理論が効果的な療育で使用された
言いたいことは「効果的な療育方法」としてオペラント条件付けの理論を使用した療育がエビデンスを積み上げてきたということです。
O.Ivar Lovaas (2003) は、
「自閉症や発達に遅れのある子どもたちに言葉を教える効果的な方法が、弁別学習、不連続試行(※DTT:Discrete Trial Teachingのこと)、
プロンプティングとプロンプト・フェーディング、シェーピング、チェーニングなどのオペラント条件付けの実験室研究から導き出せることを、私たちの研究は示した」
と述べています。
O.Ivar Lovaasという人物は「Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children」(O. Ivar Lovaas, 1987)というかの有名な論文を発表した人物です。
O. Ivar Lovaas (1987) の研究結果は、
「ABA療育を行うことで、47%(19人中9人)のお子さんがプログラムを通して知的に正常域まで成長し、加えて付き添いなしで小学校の普通クラスで生活をすることできた」
というものです。
この研究については、
「(自閉症ABA療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/ivar-lovaas1987/)」
のページで概要をまとめているので内容が気になる人は是非ご覧ください。
Lovaasの行った支援法は「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」と呼ばれその後も研究が行われています。
「(自閉症ABA療育のエビデンス3)科学性のヒエラルキー(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-1/)」
のページに記載していますがエビデンスを硬くしていくためには「追加の研究(追試)」が絶対に必要です。
約30年前に行われた研究が現代まで続いていて、療育効果のエビデンスを積み上げています。
様々な追試が行われた「EIBI」ですがその効果について、
「(自閉症ABA療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/)」
で紹介をしました。
※このページでは、現在(2020年8月9日)、世界で刊行されている全てのEIBIのメタ分析研究を紹介できていると思います
このブログページではでEIBIを「エビデンスの王者」と記載しましたが、「EIBI」は本当に自閉症療育について効果を上げているエビデンス量がかなり多いです。
ABA、ABAのEIBI以外の療育方法を含めて最大級のエビデンスを保有しています。
上で「メタ分析(Meta analysis)」というキーワードを出しましたが、
「メタ分析」という用語を初めて目にしたかもしれません。
メタ分析とは現在科学の研究法において最高のヒエラルキーに位置する研究です。
気になる人は、
「(自閉症ABA療育のエビデンス4)準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-2/)」
をご参照ください。
URLのページ内で紹介される様々なエビデンスが示されている研究ではオペラント条件付けの理論をしようした支援がふんだんに盛り込まれているのです。
オペラント条件付けの療育方法は効果的とエビデンス有
このページで一番伝えたいことは、
エビデンスが確立されている療育手法の中にオペラント条件付けの理論が根強く関わっているということです。
本当に研究されている様々な療育方法にオペラント条件付けの理論は関わっています。
オペラント条件付けが関わっている療育手段の例
ここまで紹介してきた「EIBI」の他にこれまでブログ内で紹介したものだけでも、
NBI:Naturalistic Behavioral Interventions(自然主義的行動療法)
参考は「(自閉症ABA療育のエビデンス10)NBI(自然主義的行動療法)とDTTの対比(https://en-tomo.com/2020/06/04/dtt-nbi/)」
PRT:Pivotal Response Treatment(機軸行動発達支援法)
参考は「(11)PRTのエビデンス(https://en-tomo.com/2020/06/05/prt-evidence/)」
「(12)DTT VS PRT(https://en-tomo.com/2020/06/05/dtt-vs-prt/)」
「(13)PRTについて(https://en-tomo.com/2020/06/06/that-prt/)」
「(14)PRISM(Pivotal Response Intervention for Social Motivation(https://en-tomo.com/2020/06/07/prismpivotal-response-intervention-for-social-motivation/)」
Picture Exchange Communication System(絵カード交換式コミュニケーションシステム:いわゆる、ペクス)
参考は「(自閉症ABA療育のエビデンス15)PRT VS PECS(https://en-tomo.com/2020/06/11/prt-vs-pecs/)」
ESDM:Early Start DENVER Model(アーリースタートデンバーモデル)
参考は「(自閉症ABA療育のエビデンス16)ESDMの良点・EIBIとPRTの弱点(https://en-tomo.com/2020/06/12/esdm/)」
「(自閉症ABA療育のエビデンス17)ESDMのエビデンス(https://en-tomo.com/2020/06/13/esdm-evidence/)」
JASPER:joint attention symbolic play engagement and regulation(共同注意の象徴的な遊びの関与と調節)
参考は「(自閉症ABA療育のエビデンス18)JASPER研究から見える自閉症の研究課題(https://en-tomo.com/2020/06/14/jasper/)」
以上のようなものがあります。
ここまで紹介したどの療育方法を使用するとしてもオペラント条件付けの理論が使用されてきました。
自閉症のお子さんや発達に遅れのあるお子さんに対して「知っていれば使える理論」ということが過去の研究から示されています。
そのため家庭療育を行うのならば是非オペラント条件付けの知識について知っておいて欲しい知識だなと、私は思うのです。
オペラント条件付けは実際に療育支援を行う中でも非常に有用で幅広い問題を解決できる理論だと思います。
日本でもABA、オペラント条件付け支援は古くからある
このブログはABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析学)のエビデンス、療育方法などについて書いているブログです。
「アメリカがさー!」、「海外ではね」など言っていても・・・、
という気持ちもないわけではありません。
海外の研究を紹介することが多いですが、実はオペラント条件付けを使用したABA療育支援は日本でも昔から行われてきました。
私の師匠も日本人の「行動療法(Behavior therapy)」を専門とする先生でした。
行動をしっかり観察して、分析しろよ!
エビデンスはあるのか?
ここで「行動療法」と書きましたが、
ABAはオペラント条件付けを使用して支援を実施しますが、オペラント条件付けを使用して支援をする方法はABAだけではありません。
山上 敏子 (2007) を参考にすれば実はABAも「行動療法」という大きな支援枠の中にある理論の一つです。
「ABA」、「行動変容法」、「行動療法」、「CBT」、「ACT」、「臨床行動分析」、「弁証法的行動療法」、「認知行動療法」などは、少し違う考え方も持っている場合もありますが、オペラント条件付けの理論を使用します。
日本でのオペラント条件付けを使用したABA自閉症療育支援はいつ始まった?
Raymond G. Miltenberger (2001)は行動変容法の最も初期の研究としてAyllon(1963)やAyllon & Michael(1959)の研究があると紹介しています。
これらの研究が「自閉症」を対象にしたかどうかはAyllon(1963)やAyllon & Michael(1959)の原文を見てみなければわからないのですが、海外でのABAを使用した支援は1960年代前後から始まったようです。
杉山 尚子 (2005) は著書の中で「1930年代のはじめに成立した行動分析学は、1960年頃から、発見された行動の法則に基づいて、現実社会のさまざまな行動における問題を解決することに取り組んできて、今日に至っている」と述べています。
以上の著者たちがこのように述べていますので、
オペラント条件付けの理論を対人支援、臨床場面に活用し出したのは世界的に見ても1960年前後であると考えられるでしょう。
では日本では一体いつくらいから使用され出したのでしょうか?
杉原 一昭・河合 芳文 (1966) は分裂病者や自閉症児は行動のレパートリーが狭く、他の人とのコミュニケーションが困難なので、強化として食物などを用い、オペラント条件付け法によって治療が行われ、大きな成果を収めていると述べました。
意外にも日本でも1960年代にはオペラント条件付けによる支援が自閉症児に有効であると考えていた学者がいるのです。
※ 分裂病とは現代の診断では「統合失調症」にあたる精神疾患です
杉原 一昭他 (1966) では上記のように述べていますが、まだ日本の研究は少なかったのか論文で使用された参考文献は全て海外文献となっています。
杉原 一昭他 (1966)の論文は「海外の心理学」を日本で紹介するといった趣旨の論文だと読んでいて感じました。
そのためまだ日本ではオペラント条件付けを使用した自閉症児への支援が論文を含めた著作物では刊行されていなかった可能性が高いでしょう。
さぁここからが日本のABA自閉症療育の歴史になります。
梅津 耕作 (1975) は著書「自閉児の行動療法」の中で「わが国において、自閉児に対する行動療法の論文が公にされたのは、1969年の梅津耕作、篁 一誠の論文が最初である」と述べました。
梅津 耕作 (1975) の述べていることが真実だとすれば、
杉原 一昭他 (1966) の段階で日本のオペラント条件付けの理論を使用した事例研究が紹介されなかったのはやはりまだ日本に論文が無かったためである可能性が高いです。
梅津 耕作 (1975) は、
1969年に自閉症児に支援を行った論文が刊行されていると述べていますので、
我が国でも海外に遅れを取らず1960年代の終わりから自閉症児に対してオペラント条件付けの理論を使用したお子さんに支援が初まったと言えます。
意外にアメリカなど海外に遅れをとることなく、日本に導入されたようです。
1970年代に入ると例えば中山 治・中山 登美江 (1973) が「オペラント条件づけによる精神遅滞児の言語習得(Ⅰ)」という論文を刊行、
平野 信喜・藤原 義博・高木 俊一郎 (1977) が「自閉症児へのオペラント条件づけ法の適用ー完遂法および模倣学習の有効性ー」という論文を刊行、
とオペラント条件付けを使用した支援、徐々に発達に遅れのあるお子さんや自閉症児にオペラント条件付けを用いた支援の出現が確認されます。
中山 治他 (1973) は研究の中で精神遅滞時に対して動作の模倣(マネ)や音声の模倣を教えて行き結果、動作や音声の模倣を獲得させることができたと述べました。
しかしこの研究では「言葉としての意味的な側面」まではお子さんに学習させることは難しかったようです。
平野 信喜他 (1977) も研究の中で動作の模倣や音声の模倣を教えました。
結果「ピアノ」「犬」「イス」「ツクエ」などの言葉を話すことを学習したようです。
しかし平野 信喜他 (1977) の研究は約2年間とかなり長い研究期間を要しました。
日本と海外の自閉症児療育事情のギャップ
日本と海外のABA自閉症児療育事情のギャップについても触れておきます。
このギャップは2020年の現在も続いているお話です。
私自身はずっと日本で生活をしていますので読み物で得た知識でのみ語っていることにはご注意ください。
現状をリアルに知っている人、
是非TwitterでDM連絡をいただけると幸いです
このページ冒頭で紹介したように、アメリカではO.Ivar Lovaasが研究で行ってきた系譜があるのですが日本は事情が違うのです。
例えば日本独自の自閉症児へのオペラント条件付けを使用した方法として「HIROCo法(Human Interactionwith Response Outcome Control)」というものが存在するのですが、
杉山 雅彦 (1989) は「自閉児の治療教育に関するHIROCo法の適用」という論文の中で冒頭
「わが国では治療教育の事情をやや異にしており、これらの問題をそのまま当てはめることは危険である(例えば、わが国では週1~2回程度の指導回数が普通であるが、
Lovaasらは場合によっては毎日,1日数時問を指導に費やす)システムをとっている)」
と述べました。
平野 信喜他 (1977)や平野 信喜他 (1977) の研究も例外ではなく、Lovaasらと比べると与えられた療育時間が著しく短いのです。
エビデンスをみていると療育時間の違いはABA自閉症療育の効果に影響します。
杉山 雅彦 (1989) は30年ほど前の論文ですが、現在でも例えば公的機関の専門家にお子さんを見てもらうことをお願いしたとき「月に1度」や多くて「週に1度」といった頻度で1回1時間程度で療育を受けることが多いでしょう。
「(自閉症ABA療育のエビデンス7)EIBIに必要な要素と診断の課題点(https://en-tomo.com/2020/04/05/eibi-essence/)」
で述べていますがO.Ivar Lovaasの提唱した「EIBI」は「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2ー3年の期間、介入を続ける」ことを求めます。
「はぁ?」と思うかもしれませんね
「EIBI」は科学的なエビデンスがあるため例えばアメリカではこのような長時間・長期間の療育が保険適用となっている州も多いようです。
※ 参考 Applied Behavior Analysis Edu https://www.appliedbehavioranalysisedu.org/state-by-state-guide-to-autism-insurance-laws/
英語サイトです。苦手な人はGoogleなどで翻訳してください
加えて「EIBI」の研究を見ていくと、
専門家からお子さんがこれらのトレーニングを受けることは当たり前。
さらに専門家から親御様も指導を受け親御様が適切なお子さんへの関わり方を学ぶ。
親御様も学ぶことで1日中親御様からもお子さんに専門的な関わりを受けさせることが多い。
このような内容となっています。
自閉症療育のエビデンスのページを紹介している
「自閉症ABA療育のエビデンス(https://en-tomo.com/aba-therapy-evidence/)」
の章では主に海外のエビデンスを基に紹介していますので、
もし興味がある方はご覧ください。
「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2ー3年の期間、介入を続ける」、「親御様もトレーニングを受けてお子さんが起きている時間ずっとABA自閉症療育介入を続ける」
なかなか日本ではこのような支援を受けることは現段階では難しいように思います。
ABA療育は科学的なエビデンスはあるのですが海外と日本は事情が違うことは受け入れなければいけません。
そのため私たちは自分たちのできる中でやっていく必要があります。
先ほど紹介した杉山 雅彦 (1989) は研究でHIROCo法の基本として、嫌悪刺激の提示を避けまた先行刺激操作を最小限にし、正の強化機能を持つ刺激で結果操作をすることに上り、
対象児の「人」や周囲の状況に対するescapeを低減しさらに接近行動を形成することにより行動形成を促進しようとするものであると述べました。
杉山 雅彦 (1989) の研究ではHIROCo法を用いることで自閉症児の支援者との関わりの増加、発声回数(適切な声の使用)の増加と奇声の減少が示されました。
私はHIROCo法を専門としていませんがHIROCo法の基本、「嫌悪刺激の提示を避ける」、「先行刺激操作を最小限にする」、「正の強化機能を持つ刺激で結果操作をする」、『「人」や周囲の状況に対するescapeを低減しさらに接近行動を形成する』というHIROCo法のエッセンスがオペラント条件付けを基本とする療育では大切なことはわかります。
この先のページを読み進めていってもらう中で上記の内容が重要であることがみなさまに上手く伝えていくことができれば幸いです。
日本に住んでいる私たちが効果的なABA自閉症療育をするには?
杉山 雅彦 (1989) が述べたように日本と海外での療育事情(国からの支援)が違うことは「今」自閉症児や発達に遅れのあるお子さんがいて、療育をしたいと思っている親御様は受け入れなければならない事実かもしれません。
受け入れないといけない事実というのは、
「このような療育方法は療育効果のエビデンスがあるよ!」
と効果的な療育方法の情報だけは手に入るのですが、それが提供される環境がほとんど無いだろうという事実です。
大切な情報として自閉症療育で言えば療育の開始時期は早い方が良いです。
例えばHelen E .Flanagan・Adrienne Perry・Nancy L .Freeman (2012) は重回帰分析という統計手法を用い療育開始年齢の早さが良い結果の重要な予測因子である可能性があると述べました。
このような「療育の開始時期は早い方が良い」というエビデンスは探せばあなたも簡単に見つけることができます。
このような「早い年齢が効果に影響する」という事実から導き出されることは?
例えばあなたがお子さんのために活動家になり、政治家を動かしアメリカのようにエビデンスのある長期間・長時間のABA療育を国の保証とすることが成功できた時、あなたのお子さんは既に大きくなってしまっているということです。
あなたのお子さんが若かった時間は戻ってきません。
オペラント条件付けを使用する効果的な療育を行う意味
このような事実の経緯から私はオペラント条件付けを使用した「科学的に効果がある」と言われている療育方法を選択する、
そして自閉症療育に効果があるオペラント条件付けの理論を勉強する。
このことをお勧めします。
原田 隆之 (2015) はアインシュタインの言葉を引用し、
「現在のところわれわれ人間が用いる理解の道具として科学は一番ましな道具である」
と述べました。
科学は魔法とまでは呼べないないものの「最善」に近い選択肢を選ぶ1つの基準となると私は思っています。
この言葉は
「(自閉症ABA療育のエビデンス24)ABA療育を選ぶ理由(https://en-tomo.com/2020/06/22/aba-choice/)」
でも書きました。
私たちは何を信じるのか?
もし信じるものの指針がないのであれば、科学に頼ってもいいのではないかと私は本当に思います。
科学的に効果があるとされている、オペラント条件付けによる療育支援ついて学ぶことはいかがでしょうか?
エビデンスのある療育手法がオペラント条件付けの理論を取り入れてきました。
是非オペラント条件付けについての知識を学んで行ってください。
さいごに
このブログはABA、ABA療育についてABAのエビデンス、療育方法などについて書いてるブログとなります。
近年、ABA関係の図書がかなり増えているようです。
島宗 理 (2019) は行動分析学(ABA)の図書の累積数について、
2000年ごろから出版点数が増、初学者や一般向けの解説書、教員や保護者向けの教材なども含めたところ最初の10年と最近の10年間を比べると出版点数は5倍以上になっている
と述べました。
この累積記録には含めていないようですが、
特別支援教育に携わる教員やリハビリテーションに関わる理学療法士、看護師などの育成に使われる教科書で応用行動分析学の考え方や研究事例が取り上げられることも増えていると島宗 理 (2019) は述べています。
困難な行動問題を持つ個人を支援する方法としてABAは近年、過去と比べて注目されてきていると言って良いでしょう。
このブログでは自閉症児家庭療育を勧めています。
家庭で自閉症のお子さんを親御様が療育することをお勧めします。
これは「愛情を注いで」とか、「お子さんとの親子関係が」とかそういったものとは別の次元のお話です。
もちろん「愛情」や「親子関係」もとても大切でこれらがある方が良好なお子さんの成長があるでしょう。
例えば、
「(ABA自閉症療育のエビデンス20)親が自閉症児に与える影響(https://en-tomo.com/2020/06/16/parent-autism/)」
で書きましたが、お母さんがお子さんを専門家にポジティブに報告した家庭の方が、そうでない家庭と比較してお子さんが良い方向に育ちました。
こういった研究があるので「愛情」や「親子関係」を無視することはできませんが、
私が効果的に療育を行いたいのであれば「ABA自閉症療育を行い、且つしっかりとオペラント条件付けについて学べ」というのは科学的なエビデンスが確立されているから
という理由に他なりません。
ブログ内で「ABA療育は効果あるよ」とエビデンスを交えて訴えてきましたが、
「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」
「2ー3年の期間、介入を続ける」
などの条件があってこその効果的な療育のエビデンスになります。
ネット上で言われているようなこの国では寓話にも思えるような、
ABA自閉症療育の効果、具体的には「普通学級に通えるほどに回復(Recovery)する」と言われる内容はこのような支援を行って獲得されてきた結果です。
エビデンスのある療育を行うためには「適切な療育指針・療育方法を知ること」と「療育時間」が必要です。
このエビデンスは「自閉症のお子さんを持って、でも、普通学級に通わせたい」となった場合に意味をもつエビデンスになります。
では
「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」
「2ー3年の期間、介入を続ける」
ことをしなければ「オペラント条件付けを使用したABA自閉症療育は効果がないのか?」と言われると、そうでは無いと言えるところも実際のところです。
「効果」をどう捉えるかがミソなのですが、ここまでの条件で実施しなくても充分に恩恵を受けられる理論でもあるのです。
オペラント条件付けを使用した支援は効果的に、
問題行動を低減させたり、獲得させたい行動・スキルを獲得させたりすることは充分可能で、言葉の促進から怒りのコントロールなど広い範囲で効果を発揮することができるでしょう。
またこのページで、私自身はお子さんを絶対に普通学級に入れなければいけないという立場ではないことも伝えておきたいです。
海外の主な研究者はお子さんをできれば適切なモデルが多い
普通学級に入れることを推奨する、とたびたび述べますが、、、
考え方としては「(自閉症ABA療育のエビデンス9)療育に伴う、最良の結果とは別の価値(https://en-tomo.com/2020/06/02/another-value/)」
で紹介したような立場になります。
「絶対にお子さんを普通学級に入れなければいけない」という強い立場は取っていません。
オペラント条件付けの理論は「お子さんを普通学級に進学させたい」といった親御様のニーズにも必要ですし、そうでない親御様のニーズにも必要な理論でしょう。
例えば支援学級、支援学校に進学したお子さんを持つ親御様も、
「他害」、「注意散漫」、「多動」、「偏食」、「お買い物をしたい」、「数の概念を教えたい」、「トイレットトレーニング」、「会話をうまくしたい」など
様々な解決したい問題があるものです。
オペラント条件付けの理論にはそれらを解決する可能性が秘められています。
そのようなABAの理論の根幹、オペラント条件付けの理論についてこのあとのページから一緒に学んでいきましょう。
一緒にがんばっていきましょう!
【参考文献】
・ Applied Behavior Analysis Edu https://www.appliedbehavioranalysisedu.org/state-by-state-guide-to-autism-insurance-laws/
・ 原田 隆之 (2015) 心理職のためのエビデンス・ベイスド・プラクティス入門 エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」 金剛出版
・ Helen E .Flanagan・Adrienne Perry・Nancy L .Freeman (2012) Effectiveness of large-scale community-based Intensive Behavioral Intervention: A waitlist comparison study exploring outcomes and predictors. Research in Autism Spectrum Disorders 6 p673–682
・ 平野 信喜・藤原 義博・高木 俊一郎 (1977) 自閉症児へのオペラント条件づけ法の適用ー完遂法および模倣学習の有効性ー 行動療法研究 2(2), 110-120
・ 中山 治・中山 登美江 (1973) オペラント条件づけによる精神遅滞児の言語習得(Ⅰ) 特殊教育学研究 第11巻 第1号
・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】
・ Raymond G. Miltenberger (2001) Behavior Modification:Principle and Procedures/ 2nd edition 【邦訳 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】
・ 杉山 雅彦 (1989) 自閉児の治療教育に関するHIROCo法の適用 心身障害学研究 13(2):131-139
・ 杉原 一昭・河合 芳文 (1966) 行動療法と学種理論 心理学研究 第37巻 第3号
・ 島宗 理 (2019) 応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学 新曜社
・ 杉山 尚子 (2005) 行動分析学入門ーヒトの行動の思いがけない理由 集英社新書
・ 梅津 耕作 (1975) 自閉児の行動療法 有斐閣双書
・ 山上 敏子 (2007) 方法としての行動療法 金剛出版