(ABA自閉症療育のエビデンス4)準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説

このページではエビデンスのヒエラルキーにおいてメタ分析が一番上位に来る理由について述べる。

先のページで「(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/o-ivar-lovaas1987/)」

で紹介をした、O. Ivar Lovaas (1987)の研究は研究法で言えば「準実験」というカテゴリーに入る。

下に示した画像で四角で赤く囲まれた「ココ!」と記載されているエビデンスのヒエラルキーに位置する実験である。

「(ABA自閉症療育のエビデンス3)科学性のヒエラルキー(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-1/)」

で紹介したヒエラルキーの表をみて欲しい。



準実験とRCT

前ページ(3)科学性のヒエラルキーで紹介したエビデンスのヒエラルキー、
「準実験」の位置を示す


O. Ivar Lovaas (1987)は「準実験」であったが、「準実験」の1つ上のランクに「ランダム化比較試験(RCT)」というものがある。

「準実験」と「RCT」の違いは、



「準実験」と「RCT」の違い


イラストのように研究開始前、グループ分けをする際に「ランダム化」を行ったかどうか?という点の違いである。

「ランダム化」の方法として例えばコンピューターにより乱数を作り支援前に研究の参加者をランダムに分ける方法がある。

「準実験」と「RCT」の違いについてO. Ivar Lovaas (1987)の研究を紹介した際「ランダム化していないことへの指摘を」記載をしたが、「ランダム化」できた方がより客観的な結果となり科学性のヒエラルキーは「準実験」よりも位置が高くなる



系統的レビュー

次は「系統的レビュー」である。

位置が少し曖昧だが、「準実験」や「RCT」より上位に置いた。「系統的レビュー」は下に示した画像で四角で赤く囲まれた「ココ!」と記載されているエビデンスのヒエラルキーに位置する。



前ページ(3)科学性のヒエラルキーで紹介したエビデンスのヒエラルキー、
「系統的レビュー」の位置を示す


「系統的レビュー」は例えば「1995年から2015年」など期間を定め、「PsycINFO」、「ERIC」、「CINAHL」などの論文のデータベースにアクセスしてキーワードを選定し、該当論文を検索することから始まる。

検索を行い、その期間内データベース内で該当する既出論文を全て網羅する。その後、網羅した論文を「包括基準と除外基準」という査定にかけ厳選し、残った論文を全てまとめレビューした研究が「系統的レビュー」と呼ばれるものである。

「包括基準はこの論文は扱う」、「除外基準はこの論文は扱わない」という判断基準で、これらを通して研究の中で扱う論文を決定していく。

「系統的レビュー」はかなり幅広い論文を網羅し、全体をまとめて結論を出す研究である。高い客観性が保障されることから、科学性のヒエラルキーで上位に来る。



メタ分析

次は「メタ分析」である。

「メタ分析」も「系統的レビュー」と同じように個々の研究をまとめる。

まとめ方は「系統的レビュー」と同じである。データベースにアクセスし、既出論文を網羅して包括/除外基準の査定にかけ、研究で扱う論文を決定する。

星野 崇宏・吉田 寿夫・山田 剛史 (2014)「系統的レビューにおいて複数の研究結果を統計的に統合する手法がメタ分析である」と述べている。

「メタ分析」では扱う論文を決定した上で「系統的レビュー」では行わなかった「統計の検定」を行う。「系統的レビュー」ではまとめた論文を文章でレビューするが、「メタ分析」では「統計の検定」が加わった内容がレビューされる。



メタ分析と系統的レビューは個々の研究をまとめたもの


ヒエラルキーの最上位、メタ分析

個々の既存論文をまとめ統計処理し、レビューを行うメタ分析は現在の研究法において最高のヒエラルキーに位置するものであると覚えておいて欲しい。

また、メタ分析では「特定の方法と他の方法の平均値の差」から、「効果量」というものが計算できる(参考,山田 剛史・村井 潤一郎,2004)



ABA療育で重要なSCD

表中で比較的下位の「6.事例研究(シングルケーススデザイン:SCD)」が、実は私がこのブログを通して皆様に一番獲得して欲しい知識である。

Ghaleb H. Alnahdi (2013) SCDについて実際にお子さんへ行っている治療法の有効性を評価し、これらの治療法のどれが効果的かを判断できる方法であると述べた。

「自閉症全体に対してこのような支援は効果的だろう」と判断するとき主に使用されるのが、

1.ランダム化比較試験(RCT)のみのメタ分析

2.ランダム化比較試験(RCT)と準実験のメタ分析

(系統的レビューとSCDメタ分析この辺)

3.準実験のみのメタ分析

4.ランダム化比較試験(RCT)

5.準実験

これらの研究法である。

対して「SCD」はヒエラルキーこそ下位ではあるものの「自閉症全体に対して効果的かどうかという根拠こそ比較的薄くはなるが、行っている支援があなたのお子さんに対して効果的か判断する」ことに関しては上記の(1)ー(5)よりも長けている分析方法である。

我が子に対して今行っている療育が効果的かどうか?が、あなたにとって最大のトピックになると思う。加えて「SCD」は数値を使った統計手法がほとんど必要ないためかなり親しみやすい。

SCDはABA療育ですごく大切な知識のため、SCDについては別の章で取り扱っていく。



最後に、テレビ、雑誌、ネット上などで引用されている、皆様が一番多く目にしたり気にしてきたであろう「専門家の意見」は、実は一番低いヒエラルキーに位置するものと付け加えておく。

「専門家の意見」が信頼できない。と言いたいわけではなく、「専門家の意見」よりも上位のヒエラルキーに位置しているものは「専門家の意見」よりも信頼できると伝えたい。

次のページでは、Lovaasの行った「Early Intensive Behavioral Intervention (EIBI:早期集中行動介入)」についてメタ分析の結果を紹介していこう



「個々の研究」と「ここの研究をまとめた研究」を分類した


【参考文献】

・ Ghaleb H. Alnahdi (2013) Single-subject designs in special education: advantages and limitations. Journal of Research in Special Educational Needs 

・ 星野 崇宏・吉田 寿夫・山田 剛史 (2014)メタ分析  心理・教育研究の系統的レビューのために(研究委員会企画チュートリアルセミナー1) The Annual Report of Education Psychology in Japan Vol53 p232-236

・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.

・ 山田 剛史・村井 潤一郎 (2004) よくわかる心理統計 ミネルヴァ図書