(ABA自閉症療育のエビデンス11)PRTのエビデンス

PRTとは?

このページでは「PRT:Pivotal Response Treatment(機軸行動発達支援法)」のエビデンスについて紹介をする。

これは、前の「(ABA自閉症療育のエビデンス10)NBI(自然主義的行動療法)とDTTの対比https://en-tomo.com/2020/06/04/dtt-nbi/

で紹介した、「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:自然主義的行動療法)」の1つである。



William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016) によればPRTはカリフォルニア大学サンタバーバラ校でRobert L. Koegel・Lynn Kern Koegelによって生まれた

PRTの「P」とは「Pivotal」の略語で、「ピポタル」とは直接介入をした行動だけでなく、広範囲の行動にその成果が及び、獲得しにくい行動や問題行動の改善に波及する領域のことである(Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel,2012)。

Isabel M. Smith・Robert L. Koegel・Lynn K. Koegel・Daniel A. Openden・Kristin L. Fossum・Susan E. Bryson (2010) PRTについて子どもの社会的相互作用、コミュニケーション、その他適応能力を高める自然環境で行われるABAベースの介入と述べている。



PRTのメタ分析

PRTについてはLovaasのEIBIのように「準実験」や「RCT」をまとめた「メタ分析」は確認できなかった(2020年6月5日現在)

※これは

「(ABA自閉症療育のエビデンス3)科学性のヒエラルキー(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-1/)」

「(ABA自閉症療育のエビデンス4)準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-2/)」

に記載しているがEIBIよりもエビデンスは低いと言えるだろう

ただPRTでは「SCD」をまとめた「メタ分析」の研究が確認できている(2020年6月5日現在)

※「SCD」はシングルケースデザインというもので、このワードについてはまた別の記事で書いていきます。

Gulden Bozkus – Genc・Serife Yucesoy – Ozkan (2016) は自閉症のお子さんに対して1979年から2012年の間でPRTを行った34の論文(125人分)をまとめ研究した。

彼らはPRTは「診療所」、「学校」、「家庭」、「地域社会」、「複数の場面」、「専門家」、「親や関わる人や仲間」などさまざまな設定で適用されており、概ね34件の研究のうち3分の2以上の研究が非常に効果があるから効果的であったと述べている。

研究の結果として、彼らはPRTは自閉症児に対して様々な行動を教えることに効果的であったと結論付けた。

PRTでは「様々な場所や様々な人」の中で研究を実施してきている。このような研究実績の違いはEIBIと比べて強みといえるだろう。

※ EIBIでは研究者の施設にお子さんが来談し、基本的にはそこで支援を行うといった研究が多いように思う



PRTの系統的レビュー

Gulden Bozkus – Genc他(2016) の研究以外にPRTについて系統的レビューの研究も確認できた。

Rianne Verschuur・Robert Didden・Russell Lang・Jeff Sigafoos・Bibi Huskens(2014) は研究で、2012年12月から2013年6月までの43の論文をレビューしている。

43の論文のうちの、子どもの行動を対象とした35の研究からは、15の研究(42.9%)で大きな改善を示す肯定的な結果が報告され、20の研究(57.1%)では一部改善したという比較的肯定的な結果が報告された。

上記のRianne Verschuur他(2014) の研究からPRTを行うことで子どもの変化が促される可能性があることがわかる。

※ 少なくとも35の論文の内20件(57.1%)では肯定的な結果が得られている

Rianne Verschuur他 (2014) の研究では研究内で扱った論文のリストが記載されている。

リストには論文についての簡単(研究に参加した人数など)な情報がまとめられていた。



PRTの研究特徴

以下その情報を基にEIBIと比較して、PRTの研究特徴をまとめた。

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(1)専門家が親にペアレントトレーニングを行い、療育効果を測るものが多い

(2)リスト中、研究期間は最長で1年。3ヶ月ほどのものや数時間のものまである

(3)1週間あたり25時間ー40時間の介入はあまり強調されない

(4)IQや教育的配置というよりは主にコミュニケーションの向上に重きを置いている

(5)実験参加者が少ない。例えばEIBIでは20人(EIBI)と20人(対照群:その他の支援)をグループ比較し、結果について検討するものが多いが全体参加者が10人を切るものが目立つ

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以下、上の内容からいくつか抜粋し言及していく。



PRTの実施者

「専門家が親に指導・訓練し、親がお子さんにトレーニングを行う」と言った方法を「ペアレントトレーニング(Parent training)」と呼ぶ。

PRTではペアレントトレーニングによって療育効果を求めた研究が多かった。

EIBIでも研究の中でペアレントトレーニングは行われるのだが、メインは専門家の指導であり、どちらかといえば副次的要素としてペアレントトレーニングが捉えられていることが多いように思う。しかし対してPRTではペアレントトレーニングをメインにした研究が多い



PRTの研究期間

PRTはEIBIと比較して研究期間が短いものが多い。これは、

「(ABA自閉症療育のエビデンス7)EIBIに必要な要素と診断の課題点(https://en-tomo.com/2020/04/05/eibi-essence/)」

で記載した「EIBIはコストがかかる」という課題を意識してのことのように思う

オレンジ色のところで記載されているように3ヶ月ほどのものや数時間のものまである。

Rianne Verschuur他 (2014) の研究でリスト化され紹介されていた論文の中で研究期間が最長の研究は1年間の研究であった。

その研究はIsabel M. Smith・Robert L. Koegel・Lynn K. Koegel・Daniel A. Openden・Kristin L. Fossum・Susan E. Bryson (2010) の研究である。彼らは6歳までの45人のお子さんに対してPRTを通じて1年間介入を行った。

1週間のペアレントトレーニングに加え、最初6ヶ月間は1対1の専門家によるトレーニングが最大週に15時間提供された。

この研究では対照グループが設置されておらず、介入前と介入後のお子さんの値がを比較し、統計によって有意か評価をしている。

この研究では参加したお子さんを事前に、IQ50以下、IQ50以上に分けて分析をしたことも特徴的であった。

結果IQ50以下、IQ50以上のお子さんそれぞれ成長がみられたものの、特にIQ50以上のお子さんについては大きな結果が得られたようで「言語とコミュニケーション」、「認知」、「適応行動」、「問題行動」、「自閉症症状」において有意な成長が見られた。

効果は確認されたもののこの研究は対照グループが存在しないため、Lovaas (1987) の「準実験」よりエビデンスヒエラルキーは低い。

※Lovaas (1987) の研究については

「(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/o-ivar-lovaas1987/)」参照



PRTで必要な療育時間

William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016)PRTにおいても週25時間以上の介入時間が必要であると述べている。

NBI(自然主義的行動療法)でもEIBIと同じようにある程度の療育時間の確保が大切なようである。私もそのことには賛同する。

ただしNBIはEIBIと比べて構造化されていないことも特徴となる。

「お買い物中」や「食事中」、「お風呂の中」など生活しながら支援を行うというスタイルもEIBIよりもっと推奨されており、療育時間の確保についてのハードルはEIBIよりも低いように思う



さいごに

EIBIについては少なくとも8つのメタ分析が確認

「(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/)」

できたが、PRTについてはほとんど確認ができなかった

研究背景として「EIBIはグループ比較研究」、「PRTはシングルケーススタディ(SCD)」の研究を主に行ってきた経緯があるため、そのことによるものだと思われるが、

「(ABA自閉症療育のエビデンス3)科学性のヒエラルキー(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-1/)」

「(ABA自閉症療育のエビデンス4)準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-2/)」

のページで示した内容からEIBIと比べてPRTのエビデンスは弱いと感じている。



次のページでも「PRT」のエビデンスを紹介していこう。

PRTのRCTが確認ができている。

次のページで紹介するRCTは「DTTとPRT」を比較した研究である。

この研究を知る中であなたの療育スタイルで参考になる点もあるだろう。

次のページではその点に注目して読んで欲しい。



【参考文献】

・ Gulden Bozkus – Genc・Serife Yucesoy – Ozkan (2016) Meta-Analysis of Pivotal Response Training for Children with Autism Spectrum Disorder. Education and Training in Autism and Developmental Disabilities  51(1) p13–26

・ Isabel M. Smith・Robert L. Koegel・Lynn K. Koegel・Daniel A. Openden・Kristin L. Fossum・Susan E. Bryson (2010) Effectiveness of a Novel Community-Based Early Intervention Model for Children With Autistic Spectrum Disorder. American Association on Intellectual and Developmental Disabilities, VOLUME 115, NUMBER 6 p504–523

・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.

・ Rianne Verschuur・Robert Didden・Russell Lang・Jeff Sigafoos・Bibi Huskens (2014) Pivotal Response Treatment for Children with Autism Spectrum Disorders: A Systematic Review. Review Journal of Autism and Developmental Disorders, 1 p34–61

・ Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2012) Pivotal Response Treatment for Autism Spectrum Disorders 【邦訳 小野 真・佐久間 徹・酒井 亮吉 (2016) 発達障がい児のための新しいABA療育 PRT  Pivotal Response Treatmentの理論と実践 二瓶社】

・ William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016) Comparisons of Pivotal Response Treatment (PRT) and Discrete Trial Training (DTT). University of Utah Department of Educational Psychology School Psychology Program