成人以下の自閉症児・者の不安と不安レベル、自閉症児・者は不安が高いのか?年齢やIQとの関係(ABA自閉症療育のエビデンス28)

本ブログページでは自閉症児・者の抱える不安、そして不安のレベルについてまとめていきましょう。


本ブログページでは自閉症児・者の不安についてみていきます


自閉症児の抱える不安についての系統的レビュー研究

Susan W. White・Donald Oswald・Thomas Ollendick・Lawrence Scahillc (2009) 1990年から2008年の間に刊行された40件の自閉症児の不安についての研究を系統的レビューしました。

Susan W. White他 (2009) は研究から、自閉症児のお子様、そして青年に関しては不安を持っていることが一般的であったと述べました。

40件もの研究が網羅されているため、パーセンテージの振れ幅は大きくなってしまっていますがSusan W. White他 (2009) の研究では11パーセントから84パーセントの自閉症のお子様がある程度の不安障がいを経験していることがわかりました。

※ ちょっとこの振れ幅は大きすぎてあまり参考にならないかもしれません・・・


Susan W. White他 (2009) の研究では自閉症児に最も頻繁に報告された不安障がい及び不安の症状は単純恐怖症、全般性不安障がい、分離不安障がい、強迫性障がい、および社会恐怖症でした。


レビューされた研究では親御様からの報告や、お子様の自己報告で不安が測定されています。

Susan W. White他 (2009) の研究はIQが低めのお子様の研究は数がかなり限られているため、比較的IQの高いお子様を対象とした研究のレビューと言えそうです。

但しこれはSusan W. White他 (2009) が選択的にIQの高めのお子様の研究を集めてレビューしたのかといえばそうではありません。


Susan W. White他 (2009) 系統的レビューという研究方法の中で論文を探索しています。


Enせんせい

そのため、IQの低めのお子様の研究も網羅して探索した結果、そのような研究が全体として少なかったと解釈すべきです


Susan W. White他 (2009) によれば自閉症児にとって不安は稀に起こる現象ではなく、不安は年齢とIQの影響を受けている可能性が非常に高いと述べています。

Susan W. White他 (2009) 年齢の幼い自閉症のお子様は軽度の不安を経験している可能性があり、年齢の高い自閉症児のお子様はさらに高い不安を経験している可能性があると述べました。

またIQについては高いお子様の方が低いお子様と比較して不安を経験しているようです。


Susan W. White他 (2009) の研究時、2009年の段階では不安を含む学齢期のお子様や自閉症を持つ青年が頻繁に提示する行動的および感情的な問題を対象とした、経験的に裏付けられた支援方法はないと述べています。

※ 確立された方法はないという意味です。現代でもそうかは不明、また調べておきます

但し、例えば正しい親の関与は親の自信と子どもを助ける能力を構築する可能性があるとも述べており、「共同療育家」としてトレーニングを受けた親は家庭内や他の自然主義的な環境での子供たちのスキルの使用を促し、指導することができるかもしれないと述べました。


Susan W. White他 (2009) はレビューした研究は不安の測定方法に一貫性がなかったことなど研究の限界はあるものの、自閉症児のかなりの数の人にとって不安問題があることは明らかであると述べています。

以上、私が系統的レビュー研究を見て大事だなと思った内容をまとめたものです。


自閉症児といってもさまざまで年齢が高い、低いということもありますし、またこの研究で測られていたIQの高い、低いというお子様による違いもあります。

Susan W. White他 (2009) の研究を参考にすればIQが高く、年齢が高いお子様の場合は特に不安の問題が生じやすいと分析することが可能です。


「IQが高いってどれくらい?」、「年齢が高いってどれくらい?」という点について、

個人的な意見となってしまいますが、

IQは75くらいから上の数値で小学校の入学先が特に普通学級に相当した場合は高い(支援学級であっても高いと判断して良いお子様もいる、また実際のIQは高いと推測されるものの検査時に高い不安などで数値が低めに出てしまうお子様もいる)、

年齢では年長さんくらいから意識したいですが、年齢が上がって行くにつれて意識して行く必要があり、特に小学校中学年以降は意識することが必要といったところでしょうか?(但しそれよりも年齢の低いお子様でも例えば母子分離不安など、不安の問題を抱えるお子様もいらっしゃいます)


自閉症と言ってもお子様により状況は様々

次の項では自閉症児に対して行われた不安レベルについて研究したメタ分析をみていきましょう。



自閉症児の不安レベルを研究したメタ分析研究

Francisca J. A. van Steensel・Emma J. Heeman (2017) 平均年齢が19歳未満である研究83件についてメタ分析研究を行なっています。

研究の結果Francisca J. A. van Steensel他 (2017) 研究からも自閉症のお子様は自閉症ではないお子様と比較して不安のレベルが高いことがわかりました。


Francisca J. A. van Steensel他 (2017) は研究の考察で、


(1)自閉症の青年は、自閉症ではない青年と比較して特に高い不安レベルを持つ

(2)自閉症のお子様(青年以下のお子様)の不安のレベルは自閉症ではないお子様と比較して高い

(3)自閉症のお子様の不安は外向性や精神発達に問題を持つ非自閉症のお子様と比較しても高い(※例えば自閉症ではない他の疾患を持つお子様と比較しても高いという意味です)

(4)IQが高くなると自閉症のお子様の不安のレベルが高くなる

(5)年齢が高くなれば、例えば他の問題で臨床的に紹介された人と比較しても自閉症の人の不安レベルの差が大きくなる(※例えば自閉症ではない他の疾患を持つ人と比較しても高いという意味です)


以上のように述べています。


Francisca J. A. van Steensel・Emma J. Heeman (2017)

本ブログページで紹介してきたSusan W. White他 (2009) Francisca J. A. van Steensel他 (2017) の研究で共通していた、


(1)自閉症のお子様はそうでないお子様と比べて不安が高い可能性がある

(2)年齢が上がると不安も高くなる可能性がある

(3)IQが上がると不安も高くなる可能性がある


という3点については知っていて良いと思います。


Francisca J. A. van Steensel他 (2017) 年齢の高い自閉症、そしてIQの高い自閉症の人は自分の抱える困難をより認識しているのかもしれないと述べ、周囲から求められる「適合」の要求の高さからストレスや不安が高くなってしまっている可能性があると述べました。


またABA自閉症療育のエビデンスの章1つ前の「自閉症者の不安障がいとうつ病、生涯有病率のエビデンスー成人自閉症者のデータから(ABA自閉症療育のエビデンス27)(https://en-tomo.com/2021/05/28/autism-anxiety-depression-lifetime-prevalence/)」のブログページでは、

成人の自閉症者の不安障がいとうつ病について生涯有病率(一生のうちに一度はかかる割合)をご紹介しました。

本ブログページでは成人前の自閉症のデータを扱いましたが、成人のデータをみてもやはり自閉症の人は高い不安を示すようです。

全ブログでご紹介した、

Matthew J Hollocks・Jian Wei Lerh・Iliana Magiati・Richard Meiser-Stedman・Traolach S Brugha (2018) の研究では成人の自閉症者の不安障がいの生涯有病率は42パーセントという結果でした。


厚生労働省の2002年から2006年の間に行われた調査データでは日本では何らかの不安障がいにかかる生涯有病率は9.2パーセントだったことを考慮すれば、成人期においても尚、自閉症の方達への不安に対してのケアが必要であることがわかります。



さいごに

本ブログページでは成人以下の自閉症児・者の不安に関する論文をまとめてきました。

いかがだったでしょうか?


実際は自閉症児といっても十人十色で本当にさまざまな方がいらっしゃいます。

そのため「自閉症=高不安を持つ」と一概にラベル付けすることは危険です。

とはいえ、自閉症を持つ人にとって「不安」というものはそうでない人と比較してリスクが高いことである、ということを知っていることはABA自閉症療育においても参考となるでしょう。


ではどのようにすれば良いのか?というと例えば「幼いうち、新しい対人関係場面に出会うときにはロールプレイをしてあまり失敗をしないように保険をうってあげる」とか「抑制がかかるほどは怒りすぎない」など、

毎日の生活の中で気をつけてできることはたくさんあるでしょう。


私の認識では抑うつは行動が抑制され全体的に低下しますが、不安の場合は行動が低下するかもしくは過剰になるかに二分します。

抑うつのアセスメントは行動だけでなく感情表現なども抑制されることが多いので、不安よりも少しだけ発見しやすい印象です。

不安については常時の行動(ベースライン)と比較して筋緊張があるか?話し方が早くなっていないか?などでアセスメントします。


Enせんせい

なかなか難しいと思いますが「不安高まってないかな?」という視点も子育ての中で持ってあげるようにしましょう

(とはいえ、親御様がそこに過敏になり親御様の不安が過剰に上がりすぎると良くありませんが・・・)


またもし本格的に不安の問題にぶち当たり、例えば不安障がいというレベルにまで問題が発展したとしたら?


本ブログでご紹介している「エクスポージャー」を上手く使用することで解決することができると思います。

エクスポージャーは幅広い臨床技法に適用されているエビデンスのある治療法です。

例えば「ACT:Acceptance and Commitment Therapy」や、「行動療法」「認知療法」「認知行動療法」などでは不安に対して取り入れられます。

※ ACTではエクスポージャーと呼ばないこともあると思いますが


特に不安の問題を本人が解決したいと思っているケースではエクスポージャーは有効です。

もし本人の解決する動機付けが高くない場合は難しいケースとなりますが、丁寧に動機付けを上げるプロセスを積み重ねることで解決の糸口も見えてくるでしょう。


また個人的に不安障がいで難しいケースは、言語能力があまり発達していないお子様のケースです。

不安障がいは基本的には言葉を介したやりとりの中で行うことが多く、例えば5W1Hや因果関係の理解が乏しいお子様の不安障がい(個人的にはやった中では特に強迫性障がい)は難易度が高くなる印象があります。


ここまでの文章を見てきて少し怖い気持ちになったでしょうか?

ただ「私の思う精神疾患とは何か?どういう状態か?(ABA:応用行動分析コラム13)
https://en-tomo.com/2021/04/02/mental-disorders/)」でも書きましたが、私は不安障がいやうつ病などの基本的な精神疾患はなんとかなると思っている派です。


私の思う精神疾患とは何か?どういう状態か?(ABA:応用行動分析コラム13)のサムネイル

上のブログページで記載したように私自身は精神疾患はなんとかなると思っている人間なので、精神疾患をあまり過剰に怖がらなくても良いと思います。


もちろん精神疾患と呼ばれるレベルにまで発展しないことが重要ですが、なったらなったでなんとかしましょう。


本ブログページでは自閉症児・者の不安について研究を見てきました。

またABA自閉症療育のエビデンスに書いていきたい内容があればこの章も更新していきたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。



【参考文献】

・ Francisca J. A. van Steensel・Emma J. Heeman (2017)Anxiety Levels in Children with Autism Spectrum Disorder: A Meta-Analysis. Journal of Child and Family Studies. 26:1753–1767

・ 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html

・ Matthew J Hollocks・Jian Wei Lerh・Iliana Magiati・Richard Meiser-Stedman・Traolach S Brugha (2018)Anxiety and depression in adults with autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis. Published online by Cambridge University Press:  04 September

・ Susan W. White・Donald Oswald・Thomas Ollendick・Lawrence Scahillc (2009)Anxiety in Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorders. Clinical Psychology Review. Apr 29(3): 216–229.