サウナを通してレッツマインドフルネスな話ーマインドフルネスも簡単に紹介ー(ABA:応用行動分析コラム35)


Enせんせい

ABA応用行動分析コラム35は「サウナを通してレッツマインドフルネスな話ーマインドフルネスも簡単に紹介ー」というタイトルで書いていきます


最近「マインドフルネス(Mindfulness)」という言葉を良く聞きませんか?

本屋さんへ行くとマインドフルネスと書かれた書籍を目にすることがあると思います。


実はABAではかなり前からこのマインドフルネスを取り入れた支援が行われてきました。

例えば「ACT(Acceptance and Commitment Therapy:アクセプタンスコミットメントセラピー)」(Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson, 2012)や、

「DBT(Dialectical Behavior Therapy:弁証法的行動療法)」(Marsha M. Linehan, 1993)ですね。


Steven C. Hayes他 (2012)のACT、Marsha M. Linehan (1993) のDBTについての日本語マニュアル

また近年では対象者への直接指導ではなく、例えば自閉症や知的障がいを持つお子様の母親へマインドフルネスを使用した介入を行い、子育てストレスの低減が示されたという研究もあります(Singh NN・Lancioni GE・Karazsia BT・Myers RE・Hwang YS・Anālayo B, 2019)


上のSingh NN他 (2019) の研究ではマインドフルネス以外に「Positive Behavior Support」という介入変数も加えての介入なので、単純にマインドフルネスのみの効果ではないかもしれませんが、

心理療法の中にギミックとしてマインドフルネスを組み込むことには個人的にはかなり関心を寄せているところです。


さて、私自身もまだ「マインドフルネス」を完全に理解しているわけではないと思うのですが、少しは理解していると思います。

今回のコラムでは私が行っているマインドフルネスについて書いて行きましょう。



マインドフルネスについて簡単に解説

簡単にマインドフルネスについてご紹介をします。

熊野 宏昭 (2016) によればマインドフルネスはジョン・カバット・ジン博士(マサチューセッツ大学名誉教授)マインドフルネスストレス低減法という方法を開発して、それが世界中で使われるようになり、マインドフルネスがよく知れ渡るようになりました。


ジョン・カバット・ジン博士のマインドフルネスストレス低減法は日本語でも書籍が出ていて、それは以下の写真の書籍です(Jon Kabat – Zinn, 1990)


Jon Kabat – Zinn (1990)

熊野 宏昭 (2020)マインドフルネスについて今この瞬間の「現実」に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情に囚われないでいる心の持ち方、存在の有様と紹介しています。


マインドフルネスのトレーニングでは上のような状態を作り出すことを目的に行われるのですが、Jon Kabat – Zinn (1990) はマインドフルのトレーニングに瞑想を取り入れました。

Jon Kabat – Zinn (1990) によれば「マインドフルネス瞑想法」は”注意集中力”を高めるためのトレーニングを体系的に組み立てたものです。

そしてそれはアジアの仏教にルーツをもつ瞑想の一つの形式を基本としています。


マインドフルネスの状態を作り出すトレーニングとして良く用いられるのが「瞑想法」なので、「マインドフルネスとは瞑想をすることだ」と思っている人もいるかもしれません。

ただ私が思うにマインドフルネスはイコール瞑想法ではありません。


マインドフルネスとは、熊野 宏昭 (2020) が述べているような、


今この瞬間の「現実」に常に気づきが向けられること

その現実をあるがままに知覚できること

それに対する思考や感情に囚われないでいる心の持ち方、存在の有様であること


という状態のことです。


そのような状態を作り出すトレーニングをするために瞑想法が良く用いられる、というように考えるようにしましょう。


例えばPatricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008) は一部の人にとってはマインドフルネスはメディテーション(瞑想)と同義語であるが、私たちはメディテーションはマインドフルネス訓練の一形態ではあるものの、メディテーションよりも広義なものであるという立場をとることとする、

とACTの専門書で述べました。


Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008)

私自身もマインドフルネスとは「状態」のことであって、瞑想をすることと同義ではないという立場で以下、「サウナを通してレッツマインドフルネスな話」を書いていこうと思います。



サウナを通してレッツマインドフルネス

最近はコロナ禍のためサウナに行くことは控えていますが、以前、サウナに足繁く通っていた時期がありました。


サウナで行うことは「サウナに入る」→「水風呂に入る」→「サウナに入る」→「水風呂に入る」というルーティンを繰り返すのですが、私は、

サウナ室には8分〜12分入る、水風呂には2分〜5分入る

ということで以上のルーティンを6ー7回は繰り返していたと思います。

1回行くと、だいたい2時間くらいサウナを堪能していました。


実はもともとサウナに行くことでマインドフルネスの状態になることを期待してサウナに行き始めたわけではありません。

最初は泊まったホテルにたまたまサウナが併設されていたので入ってみるか、というところから始まりました。

サウナを体験したときに「あれ?これ、マインドフルネスの状態なんじゃね?」ということに、サウナに入っている途中に気がつきました。

そのことに気が付いてからは、実際にサウナに行くとマインドフルネスな状態で1時間から1時間半程度過ごせます。

私は普段、入浴は10分程で出てしまうためそのような長い時間入っていられることにも驚きました。


「おぉぉ、これは・・・なんだ・・・」という感じ

2時間サウナを行い、マインドフルネスな状態で1時間から1時間半程度な理由は、最初のサウナ1−3クールの間はまだマインドフルネスな状態に持っていけていない時間があるからです。

途中からマインドフルネスな時間に入ったなと感じ、その時間が1時間から1時間半程度続くことになります。


Enせんせい

さてではマインドフルネスに入った状態であるとはどういったことでしょうか?

私のサウナの体験からお伝えして行きましょう


私たちは日頃常に考えが頭を巡っています。

例えば「今日は何を食べようか?」、「朝、もう少し早く起きればよかったな」、「明日から仕事か」、「昨日のテレビ面白かったなー特にあの場面で・・・」などです。

上のような考えが巡っているようなときはほとんど苦しくはないのですが、もっと生活の中でプレッシャーがかかっている状態のときはとても苦しくなります。


もっと生活の中でプレッシャーがかかっている状態のときは、以上のような考えよりももっと深刻な考えが頭の中をずっと巡っていることでしょう。

例えば「やばい、大切な仕事の期限に間に合わない」、「上司に送ったメールで上司が怒っている」、「友達を裏切ってしまった」、「彼女に振られるかもしれない」、「またやってしまった。今回の失敗はとても大きい」などです。

もっと生活の中でプレッシャーがかかっている状態の考えが頭をずっと巡るようなときは自分の人生に「問題が生じた」と感じるときで、

今回の件がある程度の時間ずっと後を引くだろうと考えてしまうときが多いと思います。


ちなみに私自身はもっと生活の中でプレッシャーがかかっている状態のときにサウナに行きマインドフルネスの状態を求めたことがありますが、このときはあまりマインドフルネスの状態に没頭することはできませんでした。

サウナに行く前より爽快感はありましたが(少しはマインドフルネスの時間を持てたから?)、

普段ほどの爽快感は得られなかったと思っています。


Enせんせい

これは私がマインドフルネスを日頃からトレーニングしていなかったからかもしれません

ただ少し爽快感が得られ、ストレスも下がった気持ちになりましたので、効果はあるのだろうと感じています


さて話を戻して、上記のように私たちの頭の中では何かしらの考えがずっと巡っていることが普通です。

私がサウナでマインドフルネスを感じるとき、どういった状態になっているかといえば、


・ サウナ室にいるとき・・・頭皮から汗が滲んできて、それが顎を伝って落ちていることを感じる。また吐く息が暖かくなり、体の内側から唇を通して出ていくのも分かる

・ 水風呂にいるとき・・・・身体の表面温度で特に冷たくなっている(例えば水風呂の中で足の指をひらけば、足指の間の表面温度が下がる)ことを体験する。吐く息が冷たくなり、体の内側から唇を通して出ていくのも分かる


このような体感の中で「気持ちいい」という状態の時間を味わいます。

またサウナと水風呂を繰り返すことによる効果かもしれませんが徐々に「ボーっ」としてくるのもとても心地よいです。


ちょっとしたコツとして「今、俺は気持ちいいのだろうか?」などと考えないことです。

「今気持ちいいかどうか」というのは評価をつけていることになり、頭の中で考えていることになります。

ですので「気持ちいい」という評価をつけずただ感じる、そのように過ごしてください。


そのような時間を過ごしたあとは、かなり頭の中もリセットされてとても爽快感があり、体感的にはストレスも減っているように感じます。


上で、


2時間サウナにいてマインドフルネスな状態で1時間から1時間半程度な理由は、最初のサウナ1−2クールの間はまだマインドフルネスな状態に持っていけていない時間があるからです


と書いたのですがもちろんサウナに入った最初は頭の中には多くの考えがあり、自身の身体体験に注意を向けようとしてもなかなかすぐには上手く行きません。

ただ1−2クールほど繰り返す中で徐々にその体験に没頭していけます。

個人差があると思いますが、個人的にはサウナに入っている時間よりも水風呂に入っているときにそのような体験を多く感じなと思うところです。




さいごに

マインドフルネスの状態について説明することは非常に難しいのだろうと感じます。

心の中で生じていることの言語化は簡単ではありません。


例えば「不安」や「恐怖」という感情については、私たちはマインドフルネスよりももっと、共通言語として理解し合えると思います。

エクスポージャーという「不安」や「恐怖」に対する支援方法があるのですが、「不安」や「恐怖」については「下がった」、「上がった」という体感がもっと得られやすいでしょう。

マインドフルネスはもう少し説明のしにくい状態です。


私自身は、私がサウナで体験している心の状態はマインドフルネスの状態だと考えています。

上でもご紹介した熊野 宏昭 (2020) が述べたマインドフルネス、


今この瞬間の「現実」に常に気づきが向けられること

その現実をあるがままに知覚できること

それに対する思考や感情に囚われないでいる心の持ち方、存在の有様であること


に当てはめて考察すれば、


『今この瞬間の「現実」に常に気づきが向けられること』や「その現実をあるがままに知覚できること」については、

サウナの中で汗の移動、身体の表面や呼気の温度変化という現実に生じていることを知覚できていますし、

「それに対する思考や感情に囚われないでいる心の持ち方、存在の有様であること」という点も、特に考え(思考)や特別な情緒(感情)を挟まない時間なので達成しているでしょう。

コロナ禍が収まったら自分自身のマインドフルネストレーニングの一環としても、またサウナを通してレッツマインドフルネス生活も再開したいと思いました。


私はサウナで汗の動き、身体の表面や呼気の温度変化という現実に今起きていることに注意を向け、知覚しその時間を体感する、という方法でマインドフルネスの状態を味わっています。

でもこれは日常の生活の中で散歩をして風の冷たさを感じるとか、入れたコーヒーの匂いを楽しむとか、そういったことでも良いのです。


皆様の生活にそういった今起きている現実に注目し、思考を切り離した状態を体感するマインドフルネスな時間を取り入れてみてはいかがでしょうか?



【参考文献】

・ Jon Kabat – Zinn (1990)FULL CATASTROPHE LIVING 【邦訳:春木 豊 (2007) マインドフルネスストレス低減法 北大路書房】

・ 熊野 宏昭 (2016) 実践!マインドフルネス 今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン 株式会社サンガ

・ 熊野 宏昭 (2020) 実践!マインドフルネスDVD 体験に気づき、反応を止め、パターンから抜け出す理論と実践 株式会社サンガ

・ Marsha M. Linehan (1993) Skill Training Manual for Treating Borderline Personality Disorder 【邦訳: 小野 和哉 (2007) 弁証法的行動療法実践マニュアル 境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ 金剛出版】

・ Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008)ACT in Practice Case Conceptualization in Acceptance & Commitment Therapy.  【邦訳 武藤 崇・吉岡 昌子・石川 健介・熊野 宏昭 (2009) ACTを実践する 星和書店】

・ Singh NN・Lancioni GE・Karazsia BT・Myers RE・Hwang YS・Anālayo B (2019) Effects of Mindfulness-Based Positive Behavior Support (MBPBS) Training Are Equally Beneficial for Mothers and Their Children With Autism Spectrum Disorder or With Intellectual Disabilities. Front Psychol. 2019; 10: 385. Published online 2019 Mar 6. doi: 10.3389/fpsyg.2019.00385

・ Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson (2012) Acceptance and Commitment Therapy The Process and Practice of Mindful Change 【邦訳: 武藤 崇・三田村 仰・大月 友 (2014) アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版ーマインドフルな変化のためのプロセスと実践ー 星和書店】