行動をどう測定する?(ABA自閉症療育での行動の見方7)

行動の捉え方は分かったが、どう測定するか?

「行動の何を測定する?(ABA自閉症療育での行動の見方6)(https://en-tomo.com/2020/07/05/behavior-view-base3/)」のページで行動の何を測定すればよいのか?

について迷ったらとりあえず「頻度」か「パーセンテージ」、「持続時間」を選びましょうということを書きました。

このページでは測定する指標ではなくその指標をどのように測定するのかについて書いていきます。

まだこのページを読んでもあまり意味がわからないかもしれません。

行動測定はとりあえず自分でやってみないとあまり良くわからないと思いますし実感しないとピンと来ないでしょう。


Enせんせい

最初から上手くはできませんがやっていくと上手くなるものだと思います。

測定する行動がわからない場合は
「死人テスト・行動の過剰と不足(ABA自閉症療育での行動の見方2)(https://en-tomo.com/2020/06/29/behavior-view-base/)」



「行動の何を測定する?(ABA自閉症療育での行動の見方6)(https://en-tomo.com/2020/07/05/behavior-view-base3/)」

のページでなんとなくの概要を掴んでいただければ幸いです。


このページは「測定する行動はなんとなくわかったけれども、どうやって測定して良いかわからない」という問題を解決するヒントを書いていくページです。

適した「記録用紙」などはまた別でアップしていこうと思っていますのでこのページでは概要を掴んでいきましょう。

Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) は著書で観察記録法のバリエーションとして「事象記録法」、「インターバル記録法」、「時間サンプリング法」、「持続時間記録法」、「潜時記録法」の5つをあげました。

このページではこれら5つを簡単に紹介します。



事象記録法、インターバル記録法、時間サンプリング法、持続時間記録法、潜時記録法


事象記録法、インターバル記録法、時間サンプリング法、持続時間記録法、潜時記録法をこのページで概要を紹介します


事象記録法

「事象記録法」は行動が生じた回数を最も直接的に反映する方法です。

「決められた期間(時間や反応機会)の中で何回測定したい行動が出現したのか」を記録するもので頻度やパーセンテージをカウントする場合この事象記録法を行うことになります。

「事象記録法」が適切とされない場合は、例えば走っている時の歩数や自閉症のお子さんの手をひらひらとさせる行動、授業中椅子に座らずに立ち歩く行動のようなカウントすることがが難しい場合や行動の始まりと終わりが分からない場合です。

とは言ってもだいたいの問題行動はこの「事象記録法」で事足りることが多いように思います。

かなり使用頻度の高い記録法です。

例えば「(ABA自閉症療育のエビデンス6)EIBIの特徴とDTTの解説(https://en-tomo.com/2020/03/31/dtt/)」で紹介したDTT(Discrete Trial Teaching:離散施行訓練)で記録するようなデータ(例えば、10回中でX回正当した)といった記録も事象記録法になります。



インターバル記録法

「インターバル記録法」には「部分インターバル法」と「全体インターバル法」の2種類があります。

「事象記録法」が苦手としたカウントが難しい場合や行動の始まりと終わりが分からない場合に向いている方法が「インターバル記録法」です。

例えば15分を1分単位に15個に分けます。

その1分間の間に測定したい行動が起こっていた場合にチェックを入れる方法です。

例えば「授業中の立ち歩き」を計測するとして最初の1分目で立ち歩きが起こっておりそれが2分3分と続き3分目の終わり頃、4分には至らない時間に着席したという行動があったとします。

「部分インターバル法」の場合は最初の1分目にだけチェックを入れ、「全体インターバル法」の場合は1-3分の部分にチェックをします。

個人的には「インターバル法」を使う時は「全体インターバル法」しか使ったことがありません。

「インターバル記録法」とは時間をインターバルに分けて、測定したい行動があった/なかったについて分けたインターバルにチェックを入れて記録するものと思ってください。問題行動が「維持時間」で測定する必要があるものに適した記録法と言えるでしょう。



時間サンプリング法:タイムサンプリングとも書かれることが多い

「時間サンプリング法」も「インターバル法」と同じように一定の時間を同じ間隔(インターバル)に分けて記録するものです。

「インターバル法」では記録の総時間を15分と決めた場合は15分間ずっと観察をしている必要があります。

しかし「時間サンプリング法」は違い、ずっと観察をしている必要はありません。

「時間サンプリング法」は「インターバル法」と違ってずっとお子さんを見ていることは難しい場合に使用をします。

例えば、「インターバル法」よりも長い時間行動を記録する場合などが当てはまるでしょう。

例えば1時間(60分)を1個10分として6個に分けるとします。10分の終わりの時だけ(例えば残り1分)お子さんを観察し、測定したい行動を行っているかどうか記録します。

その時(10分の終わりの時だけ)に測定したい行動があった/なかったを観察し、あった場合チェックを入れる。

「時間サンプリング法」は「インターバル記録法」と比べてコストが低いため、1時間と言わずお子さんが起きている時間を通して(例えば30分毎にチェックをする等)記録することも可能です。

記録することはコストがかかるため、例えば数時間単位で取る場合は「インターバル記録法」ではなく「時間サンプリング法」が適しているケースがあるでしょう。

1時間を6個の間隔(インターバル)に分けたとして1個10分。

例えばお子さんが「宿題をしている時、宿題に取り組んでいる(例えば、ワークに向かって鉛筆を動かす行動など)」を1時間、「インターバル記録法」で記録を取るとなった場合は1時間ずっとお子さんを観察している必要がありますが、「時間サンプリング法」は違います。

例えば1時間を6個のインターバルに分け1つのインターバルを10分で作り、10分の内最後の1分だけ観察すると決めれば残りの9分は家事ができるのです。

このようなメリットは家庭生活を送る上で大きなメリットと言えるでしょう。

ただしデメリットはコストが低い分、事象記録法やインターバル記録法よりもデータの精度が劣ることです。

加えてお子さんに記録する時間の規則性がバレてしまった場合、「お母さんが記録するときだけちゃんとやっていればいい」などという誤った学習を導く可能性もあります。



持続時間記録法

例えば授業中の着席を記録したい場合などに使用します。

「持続時間記録法」はチャイムが鳴り45分間授業のうち何分座れていたか、座れていなかったのか?など一定の時間内でどの程度行動が持続したかを記録する方法です。

特に「行動の維持時間を増加させたい」ことをターゲットと捉えた場合に使用する頻度の高い記録法となります。

「静かにしていて欲しいので、先生が話している時には口をグッと紡いでおく」、「宿題をやっていて欲しいので、宿題をやるよう指示があった際のペンを動かしている時間」、「座っていて欲しいので、座っている時に手を膝に置いている時間」など適切な行動の時間を伸ばしたい際に使用する記録法です。



潜時記録法

例えば指示を出しその指示に反応するまでにかかった時間を記録するものです。

これは朝起きて準備をして家を出るまでにかかった時間や、園の下駄箱に着いて靴を履き替えるまでにかかった時間でも構いません。

「今から時間を計りますよ。よーい、スタート」というタイミングを一定にしそのタイミングから、行動が終了するまでの時間を計測するものです。

「事象記録法」で回数をカウントする際にも重要ですが潜時記録法でも「行動が終了するまで」というのもデータを均一にするためにはどの段階で行動の終了(完了)とするのかを事前に決めておく必要があります。

潜時記録法を使用する場合は、支援をする人は心の中で一定のスピードで「10カウント」できるよう練習しておくと便利でしょう。

行動が始まった時にストップウォッチを準備していては遅いです。

「動き出しが遅い」、「終了するまでに時間がかかる」というのは問題行動と捉えられることが多いです。

「着替えるのが遅くて困っている」、「食事時間に1時間かかるので、もう少し早くしたい」など、対応したことはあります。

「潜時記録法」は「行動してから完結するまで早めたい」というニーズがあった際に適している記録法です。



事象記録法、インターバル記録法、時間サンプリング法、持続時間記録法、潜時記録法まとめ

「頻度」や「パーセンテージ」を測りたい時には「事象記録法」を用い、「維持時間」を測りたい時には「インターバル記録法」か「時間サンプリング法」、「持続時間記録法」を用います

「インターバル記録法」、「時間サンプリング法」、「持続時間記録法」は行動の「維持時間」を測る時に適しているため、「維持時間」を測る際に「インターバル記録法」、「時間サンプリング法」、「持続時間記録法」のどれを使えば良いのか迷ってしまうかもしれません。

私個人の答えとしては「問題行動を減らしたい場合はインターバル記録法や時間サンプリング法」、「今できている行動を増やしたい場合には持続時間記録法」を用いれば良いと思います。

子どもの行動が遅いために困っていて早くしたいといった場合には「潜時記録法」を使いましょう。


最初は慣れないかもしれませんがお子さんの困った行動に対応する際、その行動を測定する場合、「適した記録法」を用い正しくデータを測ることは大切です。

小難しく感じるかもしれませんが、慣れてくればだんだんと上手くなっていくと思います。

「行動を記録する」ことはABA療育の「基本の”き”」だと思いますので、是非チャレンジしてみてください。

Twitterもそのうち動かして行きますので、分からなければ直接メッセージをいただいても構いません。

よろしくお願いします。



【参考文献】

・ Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) Applied Behavior Analysis for Teachers:Fifth Edition 【邦訳 佐久間 徹・谷 晋二・大野 裕史 (2004) はじめての応用行動分析 二瓶社