(ABA自閉症療育のエビデンス6)EIBIの特徴とDTTの解説

EIBIの特徴

このページでは前のページで紹介をしたEIBIの特徴をまず見ていく。

その後EIBIでお子さんに教える際、主に使用される「DTT(離散型試行訓練:discrete trial teaching)」と呼ばれるものについての簡単な解説を行う。


先のメタ分析のページ

「(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/)」

の表に載せていたMaria K. Makrygianni・Angeliki Gena・Sofia Katoudi・Petros Galanis (2018)は研究で「ABA介入(Applied Behavior Analytic Interventions)」という名称を使用している。

しかしMaria K. Makrygianni他 (2018) が研究中で定義した「ABA介入」は「EIBIそのもの」であったためサイト内ではEIBIとして取り扱う。最初に彼らが行った研究で書かれているEIBIの要素について見て行こう。

Maria K. Makrygianni他 (2018)によれば、EIBIは以下の要素が組み込まれる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(a)ABA(応用行動分析)の原則に従い、体系的に実装される

(b)子どもの人生のできるだけ早い時期、できれば3歳前に適用される

(c)通常は一般化促進プログラムの前に、お子さんと指導者が1対1で介入する

(d)プログラムは個別化されており、包括的に多数のスキルを教えることを対象とする

(e)健常発達にの発達段階に基づいて、段階的に対象となるスキルを教える 

(f)ペアレントトレーニングのサービスと組み合わせて使用​​される

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上記の内容について私の意見も少し入れてまとめると、以下のように表現できるだろう。

「EIBIは年齢の早い時期に始められ、ABAの原則に従いお子さんに対してオーダーメイドでプログラムが組まれる。プログラムで教える内容は、健常発達のお子さんが辿る発達段階に基づいて選定される。初期は1対1で介入しその後、一般化を促進するプログラムとしてグループ介入へ移っていく。プログラム外の時間、親御様は生活の中で介入することが推奨される」



DTTで子どもに教える

「(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析」(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/

でEIBIで使用されるテクニックは主に「DTT(離散型試行訓練:discrete trial teaching)」であると述べた。

DTTとは「はじまりとおわりが決まっているトレーニング」である。

DTTの例をO.Ivar Lovaas (2003) のマニュアルを参考に例を1つ出すと、



動作模倣の場合


最初、指導者のキュー(指示など)があり、お子さんが適切にキューに従って行動ができた時、行動に対して「お子さんにとって魅力的な結果」を伴わせる。

他の例としては、



カード課題の場合


このように絵カードを使用することも多い

絵カードは市販されているカードや手作りのもので良い。

絵カードを使用する理由として、自閉症児は言葉をあまり上手く表現できないことも多い。

その場合、言葉で「これは何?」と聞いても、答えられないことがある。そのような時イラストのような形式で「りんご」を高確率で選択できたとすれば「りんご知っているんだ」と確認できる


Enせんせい

DTTではお子さんに教えたいことに対し、
(1)「キュー(指示など)」の下で、
(2)お子さんが適切な行動をした、ことに対して
(3)「お子さんにとって魅力的な結果」を提示することによって(2)の「お子さんの適切な行動」の増加を狙う



DTTのコツ

以下、いくつかDTTについてのコツを記載して行こう。

【コツ1:お子さんにとって魅力的な結果】

「お子さんにとって魅力的な結果」についてHOWARD COHEN・MILA AMERINE-DICKENS・TRISTRAM SMITH (2006)最初、食べ物・感覚や知覚を刺激する物や活動といった結果を使用するが、徐々に人からの賞賛やくすぐりなどへと置き換えて行くと述べた。



伴わせる結果を、徐々に人と一緒に楽しめる結果に移行していく


このことについては色々な文献でも書かれているが上のイラストのように最初は「物」をお子さんの行動の結果として伴わせるが、途中から「人との楽しい関わり」を伴わせるようにする。

これは自閉症児の特徴として「人への興味関心の薄さ」があるためであろう。自閉症児の社会性を伸ばしていくための大切なことだと感じる。

私個人の意見としてはもし最初から「賞賛」や「くすぐり」などの人との関わりによって、お子さんが楽しんで参加する様子があれば、特にお菓子などは使用しなくても良い。


コツ2:お子さんにとって魅力的な結果を提示する速さ】

キューを出し子どもが適切な行動を行ったのち「お子さんにとって魅力的な結果」を提示するまでの時間が大切である。

例えば、O.Ivar Lovaas (2003) はReynoldの1968年の実験を参考に子どもが行動をしてから強化するまでの時間について行動してから強化までが1秒の場合は0.5秒の場合と比べ、行動を強める効果が25%にまで落ちてしまうと述べている。

適切な行動を子どもが行ったのならばできるだけ早く「お子さんにとって魅力的な結果」をお子さんに与えた方が良い。

特に言葉の獲得がまだ未熟なお子さんの場合はそうした方が良いと思う。


【コツ3:無誤学習(エラーレスラーニング)】

DTTでは「無誤学習(エラーレスラーニング)」と言うものが推奨される。

無誤学習はH. S. TERRACE (1963)がハトで行ったエラー(間違い)が生じないよう最初から正解できるようヒントを多めに入れ、正解をさせる中で学習をさせた方が学習が早いという実験結果に基づいている。

彼らは実験でハトに対して赤色と緑色を区別することを教えた。

これを療育で考えれば、例えば下のイラストのように行われる。



「無誤学習(エラーレスラーニング)」の例


O.Ivar Lovaas (2003) 無誤学習についてマニュアル内で、理想的な指導環境のもとでは成功と失敗は4対1の割合になり、成功が失敗を凌駕することで子どもはずっと学習に参加するようになると述べている。

個人的には「子どもによる」とは思うが、しかし、確かにずっと不正解が続けば子どもはやる気を失っていく。

また子どもが間違えそうになった時にはヒントを出し、できるだけ間違わせないようにすることもある。



プロンプトの例


このようなヒントのことを専門用語で「プロンプト(prompt)」と呼ぶ。



ここまでを一旦まとめよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■このページに出てきたDTTのポイント

(1)最初に指導者からのキューがあり、お子さんがキューに対して行動したのちに結果を提示する

(2)必要であれば最初は結果にお菓子などを使い、徐々に人との関わりが必要な結果へと移行していく

(3)結果は行動の後すぐに提示する

(4)設定を簡単な場面から始めたり、ヒントを出すなどして無誤学習(エラーレスラーニング)を行う

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



DTTを学ぶために必要な時間

以上のようにいくつかポイントが存在するDTTだが、DTTについてJustin B. Leaf・Wafa A. Aljohani・Christine M. Milne・Julia L. Ferguson・Joseph H. Cihon・Misty L. Oppenheim-Leaf・John McEachin・Ronald Leaf (2018) 「DTTテクニックを使用する人側」について研究を行なっている。

Justin B. Leaf他 (2018) は過去の論文を調べ、DTTのやり方を指導されたことのある人たちを研究した。彼らの研究は(URL)で紹介をした「系統的レビュー」にあたる。彼らは40の論文をまとめDTTを学ぶために費やされたトレーニングの平均量は353分(5時間53分)であったと述べた。

実際に施設で後輩育成をしている私個人の体感でも、DTTは集中して6時間研修すれば「なぜそれを行っているのか?」の理解までは難しいものの「なんとなく使える」というレベルにはなる人は多いと思う。

ただDTTを行っていく中で生じるいろいろなイレギュラー(突然子どもが泣く、教材を手で払われる、プロンプトがなかなか抜けないなど)にも対応できる、となれば「6時間」では難しいだろう。

しかしとりあえず形だけでも良いので、自閉症のお子さんに何かを教えたいと思い方法を模索している場合はDTTを学ぶことに価値があるだろう。

このページでは記載をしていないがDTTの実施は「データを取ること」やDTT中に問題行動が起こった際の「機能分析」も重要になる。

「データの取り方」や「機能分析」についてはまた別のページで解説を行なっていく。



このページではEIBIでお子さんに教えていく方法、DTTについて紹介をした。

次のページではDTT以外の要素で、EIBIによって効果を出すために必要なことを記載をする。



【参考文献】

・ HOWARD COHEN・MILA AMERINE-DICKENS・TRISTRAM SMITH (2006)Early Intensive Behavioral Treatment: Replication of the UCLA Model in a Community Setting. Journal of developmental and behavioral pediatrics Vol. 27, No. 2, April

・ H. S. TERRACE (1963)ERRORLESS TRANSFER OF A DISCRIMINATION ACROSS TWO CONTINUA. JOURNAL OF THE EXPERIMENTAL ANALYSIS OF BEHAVIOR VOLUME 6, NUMBER 2

・ Justin B. Leaf・Wafa A. Aljohani・Christine M. Milne・Julia L. Ferguson・Joseph H. Cihon・Misty L. Oppenheim-Leaf・John McEachin・Ronald Leaf (2018) Training Behavior Change Agents and Parents to Implement Discrete Trial Teaching:a Literature Review. Review Journal of Autism and Developmental Disorders. Published: 15 October

・ Maria K. Makrygianni・Angeliki Gena・Sofia Katoudi・Petros Galanis (2018) The effectiveness of applied behavior analytic interventions for children with Autism Spectrum Disorder: A meta-analytic study. Research in Autism Spectrum Disorders 51 p18–31

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS

 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】