言葉を使用したコミュニケーションを単語から多語文に拡張するー二語分、三語分と増やして行く方法をご紹介(ABA自閉症療育テクニック21)

例えばDee C. Tay (2016) は3歳児の特徴として「3〜6語からなる文章を話す」と述べていますが、

自閉症、発達障がいを持つお子様の中には普段、単語で話をしてばかりでなかなか多語文を使用しない、というお子様がいらっしゃいます。

そしてそのことをご相談されることも多いです。


本ブログページでは単語でお話をすることが多いお子様を、単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法について2つご紹介します。

単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法は、二語分を三語分に、三語分を四語分に・・・と、拡張して行くときにも使える方法です。


単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法をご紹介する前に本ブログページでは最初、

単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法をご紹介する前に、お子様はなぜ多語文を使用せず、(少なくともほとんど)単語のみを使用してコミュニケーションをとっているのかの理由の考察からはじめて行きます。


Enせんせい

そのところを考察することで本ブログページにてご紹介する方法の厚みが増すと思います


以下、見て行きましょう


お子様はなぜ多語文を使用しないのか?

お子様はなぜ多語文を使用しないのでしょう?

本ブログページでは3つの理由について考察したいと思います。


1つ目の理由

1つめの理由はシンプルで例えば「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言ったように語彙がまだ蓄積されていないという可能性です。

そのとき使用するべき「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言った場合には「知らないので使用できない」、

ということがあるでしょう。


この理由の場合は対策がシンプルです。

「使いながら覚えて行く」でも「覚えてから使う」でも良いですが、この理由への対策はまずは語彙を覚えて行くということとなるでしょう。


2つ目の理由

お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ないために使用しないです。


Enせんせい

もしあなたが英語が堪能でなくとも海外の方に何か親切にされたとき、

「サンキュー」という言葉はあまり億劫にならずに言葉にして伝えることができるのではないでしょうか?


私たちは日本で生活していても「サンキュー」という英語を日本人間でも使うことがあると思います。

外国の人に何か親切にされたとき「サンキュー」という言葉はあまり億劫にならずに言葉で伝えることができるのは、自分が何度か使用したことがあるからでしょう。

例えば「Where is the bank?(銀行はどこですか?)」という英語、頭でなんと言って良いか分かっていても言ったことがなければ「サンキュー」と比較して海外の方に言うとき、勇気がいると思います。


確かに海外に行って「Where is the bank?」って言うのは発音も正しくできるか不安だし億劫になるかも・・・


これは頭で分かっていたとしても、英語で「Where is the bank?(銀行はどこですか?)」という言葉を言ったことが無い、もしくは少ないからでしょう。

つまり、自信がないのです。

ABAの言い方をすれば「強化歴が無い(少ない)」、「強化履歴が無い(少ない)」と言った言い方をします。


この理由の場合の対策は「使いながら慣れて行く」でも「練習をして慣れてから使う」でも良いでしょう。

「使いながら慣れて行く」でも「練習をして慣れてから使う」場合でも、どちらの場合も最初の相手は親御様などのお子様が安心して使用できる相手、そして温かい雰囲気の中で行っていく(例えば「なんか言い方変だぞ」などの注意を受けない)ことが大切だと思います。


3つ目の理由

最後の理由ですが、この理由を考えるときに考えたいこととして、私たちはなぜ多語文を使うのでしょうか?


例えば「料理を 作って」という言葉をイメージしてください。

「料理を 作って」という言葉は二語分です。

状況によってこれで足りるときもあるし、足りないときもあるでしょう。


Enせんせい

足りるときとはどういったときでしょうか?


「足りるとき」「足りないとき」について見て行きましょう

例えば今の時間が夕方であと残す食事は夕食しかない、そして今日の献立はハンバーグと既に決まっている、そして作り手は奥さんとも既に決まっている。

ここまで決まっていればお腹が空いたタイミングで二語分の「料理を 作って」という言葉を使えば条件は整っていると思います。


聞き手も(奥さんだとする)、

私が、晩御飯の、ハンバーグを、今から作る、をして欲しいのね

と推測してくれるでしょう。


でもこれが例えば職場の昼休憩で言ったとしたら意味がわかりません。

「急にどしたん?」となると思います。


職場でこの「料理を 作って」という言葉の条件を整えるためにはどうすれば良いでしょうか?

例えばよく遊ぶ同僚(けいくんとする)に対して、

「けいくん 明日のよる ご飯作ってや この前の唐揚げ美味しかったわ」

などと言えば成立するでしょう。


けいくんも、

ぼくに、明日の夜、唐揚げを作る、をして欲しいのね

と推測してくれます。


さて、ここまででおおよそ伝えたいことがわかったかもしれませんが、ある程度に条件を詳しく言わないと言葉足らずになってしまい相手に伝えたいことが伝わらないときがある一方で、

既に条件さえ整っていれば少ない多語文の数でも相手に伝わって成立することがあるのです。


これを聞いたあなたがもし自閉症や発達に遅れのあるお子様を育てていたとして、


お母様

いやいや、うちの子、多語文を使わんけども、何が欲しいのかわからんとき多いで?


と思われたかもしれません。


これは、

お子様が少ない語文数で相手に伝えてはいるものの、条件が整っていないために親御様も理解できないことが多い

というここまでには無い新しいパターンになります。


「ここまでには無い新しいパターン」と書きましたが、ここまで出てきたパターンは2つです。

奥さんにハンバーグを作ってもらったエピソードと同僚のけいくんに唐揚げをお願いするときのパターンは言い換えると以下の2つ、


・ 条件が整っているため2、3の少ない多語文でもコミュニケーションが成立する

・ 条件が整っていないため比較的多くの多語文を用いコミュニケーションを成立させる


の2つのパターンと言い換えられます。


「いやいや、うちの子、多語文を使わんけども、何が欲しいのかわからんとき多いで?」

※ 上で書いた「お子様が少ない語文数で相手に伝えてはいるものの、条件が整っていないために親御様も理解できないことが多い」のパターン

というパターンは、上の2つのパターンとは違い、


・ 条件は整っていない、2、3の少ない多語文を用いるためコミュニケーションは成立していない


というパターンになります。


Enせんせい

この「条件は整っていない、2、3の少ない多語文を用いるためコミュニケーションは成立していない」のパターンとは、どういうことが生じている状況なのでしょうか?


「条件は整っていない、2、3の少ない多語文を用いるためコミュニケーションは成立していない」

このとき一度振り返って考えて欲しいのですが「コミュニケーションは成立していない」というのは、お母様は思っていたとしても、本当にお子様はそう思っているでしょうか?そう感じているでしょうか?


コミュニケーションの成立とはどういったことでしょう?

コミュニケーションの成立をお子様側から見たとき、自身がしたいコミュニケーションが達成されたかどうか、ということが大切です。

それが正しく使った上で達成されたものかどうかは関係ない、というところは着目点でしょう。


これは、

「お子様から見たときの」ではありますが、コミュニケーションの成立とは伝え方が正しいかどうかではなく、結果的に自身が成立させたいコミュニケーションを達成させれたかどうか(もしくは達成させる確率があるか)という観点です。


例えば「いやいや、うちの子、多語文を使わんけども、何が欲しいのかわからんとき多いで?」というとき、

「これが欲しいの?これが欲しいの?これが欲しいの?」とお子様の欲しそうなものにアテをつけてお子様の前に提示して行き、お子様が納得(納得したような様子を見せる)するアイテムがGETできていた場合は時間がかかっているものの短い文でコミュニケーションが成立している、

と言えるでしょう。


Enせんせい

少しわかりづらいかもしれませんが、このことについてまた本ブログページを読み進めて行く中でもう少し詳しい内容も出て来ます


このように考えたとき、

多語文を使用しなくとも短い文でコミュニケーションが成立する

はあり得るでしょう。

それは、既にご紹介したように周りの人が「これが欲しいの?これが欲しいの?これが欲しいの?」と気を回してくれて、最終的にコミュニケーションの成立(例えばお子様が欲しいものが手に入る)などです。


ではどうやってお子様の言葉を二語分、三語分と増やして行けば良いのでしょうか?


お子様の言葉を二語分、三語分と増やして行く方法

さて、ここまでで「お子様はなぜ多語文を使用しないのか?」の可能性について考察をしてきました。


ここまででご紹介した理由は3つで、


(1) 「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言ったように語彙がまだ蓄積されていない場合

(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合

(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合


の3つでした。


上でも書きましたが、

(1)の「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言った場合については、まずは名詞・動詞を覚えていくことを練習しいく方が賢明でしょう。


ここからは、


(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合

(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合


に該当する、単語でお話をすることが多いお子様を、単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法について2つご紹介します。

単語でのコミュニケーションを多語文に拡張する方法は、二語分を三語分に、三語分を四語分に・・・と、拡張して行くときにも使える方法です。


「どんな方法だろう?」


方法1:多語文を使用する練習をお勉強場面を設定して集中的に行う

1つ目の方法は「多語文を使用する練習をお勉強場面を設定して集中的に行う」になります。


この方法は特に、

(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合

に有用な方法となるでしょう。

特にあなたがお子様に何か質問をして答えてもらう場合の言葉を拡張したいときにお勧めです。


私は「言葉の使用」について「始発」と「応答」を区別して考えています。


Enせんせい

「言葉の使用」について「始発」と「応答」を区別して考える方が介入、支援方法を考えるときに有用でしょう


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「言葉の使用」についての「始発」とは?

「始発」とはお子様側から話しかけてくる場合です。

「始発」はコミュニケーションの開始がお子様スタートで、例えば「お腹すいた、何か作って」など、お子様から要求してくる場面などが多いでしょう。

他にもお子様からの質問、例えば「先生は昨日、何をしていたの?」などもあります。


「言葉の使用」についての「応答」とは?

「応答」は相手から話しかけられて答える場合です。

例えば「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合とか、「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合が考えられます。

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「言葉の使用」について「始発」と「応答」を区別して考えること、個人的には大切だと感じる!

1つ目の方法「多語文を使用する練習をお勉強場面を設定して集中的に行う」は特にあなたがお子様に何か質問をして答えてもらう場合の言葉を拡張したいときにお勧めと書きましたが、

つまり「応答」、例えば「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合とか、「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合の語分数を増やすときに有効な方法です。


例えば「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合と「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合、どちらが簡単でしょう?

私は「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合よりも「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合の方が簡単だと思っています。


理由は「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合は過去をイメージし「時制」や「幅広い範囲の中から答えを抽出する」などのスキルが必要になりますが、

「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合はイメージする点は同じであるものの、「形」や「色」、「用途」や「カテゴリー(仲間)」など比較的簡単な知識を知っていれば上手に答えられるからです。


例えば「りんごってどんなものか知っている?」と聞かれて答える場合は「赤くて、丸い、くだもの」と答えれば良いと思います。

確かに他にも「赤くて、丸い、くだもの」は「さくらんぼ」や「すもも」「アセロラ」などありますが、多くの人は「赤くて、丸い、くだもの」と言われて創造するくだものは「りんご」ではないでしょうか?

私はそれであれば「りんご」に対しての説明は「赤くて、丸い、くだもの」で良いと思います。


同じように「テレビってどんなもの?」と聞かれたときは「くろくて 四角い 観るもの」と答えてくれればそれで良いです。

「くろくて 四角い 観るもの」は「スマホ」や「カーナビ」などが考えられるかもしれませんが、「テレビ」も間違いではないのでそれで構いません。


Enせんせい

このような言い回しの練習がどうして必要なのでしょうか?


例えば、私自身も名前が思い出せなくて特徴だけが思い出される中で会話をすることがあります。

以下見て行きましょう。


「昨日何食べたん?」と聞かれて「なんやったっけかな?スーパーで買ってきた、いっつも売ってる魚を焼いたんよ!ちょっとでも魚の名前出てこん、青魚やったんけど大根おろしと醤油で食べて美味しかってん」と言ったとき、

相手が「サバを食べたの?」と言ってくれる

そこで私が名前を思い出し「そうそう!サバ」となれば、それで良いです

しかしもし私が名前をそこで聞いて「そういえばサバではないな」と思ったときは、私はサバを知ってますので「サバじゃないねん」と言います

すると相手はまた違う名前を言ってくれるかもしれません

相手は続けて「サワラか?」と聞いてきたとしましょう

私はサバやサワラの「サ」の文字もヒントになってか、思い出し「あ!そうそう!サワラちゃうねんけど、昨日食べたのはサンマやったわ!」というかもしれませんね?


このように、ものには名称(名前)の他に「色」「形」「材質」「用途」「仲間」、例で出した「置いてある(売ってる)場所」や「調理方法」などさまざまな次元(特徴とも言います)があります。

名称以外の次元からも、ものを説明したり、また相手が言った名称以外のものでものを理解したり解釈したりすることはコミュニケーションを取る上でとても大切なことでしょう。

直接、コミュニケーションの中に名称が出てきていなくとも、その次元から想像し、両者が同じイメージを持ってコミュニケーションを進めて行く例は思い返せば思い当たるものがあると思います。


Enせんせい

ものを名称(ものの名前のこと)以外の次元から説明する練習はどのようにすればよいでしょうか?


私は「多語文を使用する練習をお勉強場面を設定して集中的に行う」ことを目的として、例えば「りんごってどんなものか説明して」などの問題を出すことがあるのですが、以下のように進めていくことが多いです。

以下、わかりやすいようにイラストを書きました。


①②③の3つの方法をご紹介します

①と書いてあるイラストには「りんご」のイラストが上にあり「いろ」「かたち」「なかま」とひらがなで書いてありるのですが、

「りんごってどんなものか説明して」などの問題に対して、お子様に「いろ」の横には「あか」、「かたち」の横には「まる」、「なかま」の横には「くだもの」と書いてもらう、もしくは口頭で私が「りんごのいろは?」と聞いて答えてくれたのち「あか」と私が書きます。


もしお子様が「あか」と書けなかったり、答えることができなければ、答えを教えてあげれば良いでしょう。

ただお子様に答えを教えてあげることを何度か続けても上手く行うことがなかなかできない場合、この課題は少し早かったかもしれないな、ということも少し思います。

「りんご」以外のものでも何度か行ってみてもやはり答えるのが難しいと言った場合は、もう少しあとの時期にやれば良いというように捉え、一旦この課題を保留にしても良いでしょう。


「いろ」「かたち」「なかま」の右側を埋めたのち指を刺しながら「りんごは あかくて まるい くだもの」とモデルを出し言ってもらうことなどを行い練習をします。

「りんご」以外の例えば「もも」や「メロン」などに対してヒント無しで「ぴんくの まるい くだもの」と答えられるようになっていけば、練習は成功です。

最終的には「りんご」のイラストや「いろ」「かたち」「なかま」のひらがなもなくして口頭だけのやり取りでできるようになることを目指します。


②と③は、①と比べてヒントは少ないです。

②は指を使って、③は描いた丸を消していくことで「あと何語で説明しなければいけないか」を視覚的にわかりやすくしている、ということになります。

そういう意味では②と③はやっていることは同じことです。


例えば②の場合、指を3本出し(4本でも5本でも構いません。お子様の課題レベルに合わせて調整します)、「りんごってどんなもの?」と聞きます。

お子様が「あかい くだもの」と言ったとしましょう。

そのとき指を1本折って「あかい」、もう1本折って「くだもの」とお子様に伝え、1本指が残っていることを見せます。

そして「あと1個、なんかない?」などと言い、もしお子様が「丸」と言えたら、

最後の1本を折って「できた!」と言い、また3本指を立てて1語1語に対応して指を折りながらフィードバック、「あかくて まるい くだもの だったね!」などとフィードバックしましょう。

そしてお子様にもフィードバックの「あかくて まるい くだもの」をマネしてもらうことで練習をします。


このときお子様が言ってくれた順番は「あか」→「くだもの」→「まる」という次元の順番でした。

私は「あかい くだもので まるい」という語順でも良いのですが、「あかくて まるい くだもの」の方が自然な言い回しだと思うため、フィードバックは「あかくて まるい くだもの」という語順で覚えてもらえるようフィードバックし、練習をしています。


③は指の代わりに丸使用しているだけで、③も②と同じようなことを行う課題です。

3こ丸を書き(4個でも5個でも構いません。お子様の課題レベルに合わせて調整します)、お子様が1つ次元を言えたときに丸に斜線を引いて消して行きます。


Enせんせい

指を利用した②、丸を利用した③、

個人的にはお子様によってやりやすさや好き嫌いがあるような気がしていますので、お子様の好きそうな方を利用する、ということで大丈夫でしょう


特に②と③は例えば「今日、学校で何をしていたの?」と聞かれてお子様が答える場合にも、この形式が入っていれば練習がスムースになると感じています。

お子様は立てられた指の数や丸の数に対応する形で情報を出すよう考えてくれるかもしれません。

例えば指が5本だった場合「きょうは クラスで たろうくんと トランプで あそんだ」などです。


ここまで「りんごってどんなもの?」と「今日、学校で何をしていたの?」という質問を例に出しましたが、ここでご紹介した練習は、


(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合


に使用しています。


もしその語彙の名称以外のまだ知らない次元のものはまず、それを本練習の前に事前課題として練習をしておき、知っているものを本練習を用いて使えるように練習するというイメージでいてください。

※ 上で書いた『(1) 「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言ったように語彙がまだ蓄積されていない場合』もこのイメージに該当


次の方法も見て行きましょう!


方法2:親御様が気がついていない形でコミュニケーションを行う

2つ目の方法は「親御様が気がついていない形でコミュニケーションを行う」になります。


この方法は特に、

(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合


の他に、


(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合


でも有用な方法となるでしょう。


また(2)でも(3)でも「親御様が気がついていない形でコミュニケーションを行う」は、お子様からコミュニケーションが「始発」される場合、有効な方法だと感じています。


まずご紹介するのは、

「(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合」の練習方法です。

例えばお子様が「きょう たろうくんと きょうしつで あそんだ」とお母様に言ってきたとします。

そのときお母様が「教えてくれてありがとう!一緒に本読んだんか?」などと返したとしましょう。

でもお母様はお子様がたろうくんとはよく教室でトランプをして遊んでいることを知っていました。

お母様はあえて「本を読んだ」と多分答えは違うだろうなと思いつつ、言いました。


このとき「きっといつもやってるしトランプしたんやろうなぁ」と思っていても、あえて別のことを言ってお子様につっこんでもらいます。

「本を読んだんか?」と聞いたとき、お子様が「トランプよ!」と言ってきたとしましょう。

そのとき「そっか!きょう たろうくんと きょうしつで トランプして あそんだ んやね」と返します。

これはお子様が言ってくれた情報量よりもより詳しく(1語彙付け足した形)説明した言葉のモデルです。


このときお子様に「きょう たろうくんと きょうしつで トランプして あそんだ って言ってみ」と言ってお子様に正しいモデルをマネさせることで練習をしても良いでしょう。

ただし、絶対にお子様にマネをさせなければいけない、とは思っていません。

一番怖いのはお子様に何度も何度も言い直し(マネ)をさせることで「お母さんに話するのめんどうくさいわ」と思われてしまうことです。

お子様からせっかくコミュニケーションを始発してくれているのに、そのように思われることで今後、お子様から始発されるコミュニケーションが減ってしまうことが一番怖いことだと思います。


お子様が「もっとお母さんに伝えたいな」と思える雰囲気が作れて、その上で成立する練習かなと思いますので、

お子様のツッコミ待ちをするためにあえて違うことをいうときからさえも、温かい雰囲気の中でお子様がコミュニケーションをポジティブに受け取れるような関わりを意識しましょう。

狙いとしては、このようにしてお子様の始発してきたコミュニケーションに1語付け足してさらに詳しくしたコミュニケーションのモデルを提示する、という狙いです。


次に「(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合」も見て行きます。

この(3)の場合の練習をするとき、まだ頑張ったとしても2ー3の語彙でお話をするくらいのお子様を想定してください。


本ブログページの上で、


例えば「いやいや、うちの子、多語文を使わんけども、何が欲しいのかわからんとき多いで?」というとき

「これが欲しいの?これが欲しいの?これが欲しいの?」とお子様の欲しそうなものにアテをつけてお子様の前に提示して行き

お子様が納得(納得したような様子を見せる)するアイテムがGETできていた場合

時間はかかっているものの短い文でコミュニケーションが取れていると言えるかもしれません


と、このような内容を書きました。


もしこのような状況に陥っているとすれば、以下のようなことを試してみてください。


例えばお子様が「食べたい」と言ってきたとしましょう。

これもコミュニケーションの形はお子様からの「始発」です。


お母様はいくつかあるお菓子の中から何が食べたいのか見当がついていません。

これまでは「これが欲しいの?これが欲しいの?これが欲しいの?」とお子様の欲しそうなものにアテをつけてお子様の前に提示して行き、お子様の顔が満足そうな表情をしたものを「はい」と言って渡していたとします。


Enせんせい

これはよく言えば気が利くお母様です


それは良いことだと思うのですが、このことを繰り返してしまうことで、お子様から見ればコミュニケーションは単語で充分と感じてしまうかもしれません。


例えばこのようなとき「これが欲しいの?これが欲しいの?これが欲しいの?」とお子様の欲しそうなものにアテをつけて3つのお菓子を順番にお子様の前へ順番に提示するのではなく、一気に3つのお菓子をお子様の前に置いてみてください。

下のイラストのように子様は自分が欲しいお菓子の方を注目する確率が高いと思います。

目で注目するだけで無く、その欲しいお菓子に手を伸ばしてくることもあるでしょう。


このイラストでは「ポテチ」に注目していますね

順番に提示するのではなくお子様の様子を見て欲しいお菓子にアテがつけられたら、

必要に応じて手添えのプロンプトも行い欲しいお菓子に指さしをさせ「これ 食べたい」とモデルを見せ、可能であれば「これ 食べたい」とマネをさせます。


上で書いたようにこの練習はまだ頑張ったとしても2ー3の語彙でお話をするくらいのお子様を想定したものです。

言葉が充分でない、「食べたい」とは言えるものの食べたいものの商品名などの名称を言い分けるのが難しい場合などはここで書いたような「これ」などの汎用性の高いキーワードと指差しで自分の意思を伝えることを練習すれば良いでしょう。

だんだんと「選ぶことができるようになってきた」、『言葉で「これ 食べたい」と言えるようになってきた』と上手くなって行く中で「クッキー 食べたい」などと表現する言葉のレベルを上げていけば良いです。


もしかするとこのとき、お子様からすればお母様に対して「気が利かないな(僕の食べたいものをわかってくれていないな)」と思うかもしれません。

でも、それで良いと思います。

このときもお母様に「伝えても無理」と思われないような雰囲気作り、もっと言えば自身で選択できたことがしっかりと称賛され楽しくなるような雰囲気の中で行うことは大切です。


また上で書いたようにこの練習はまだ頑張ったとしても2ー3の語彙でお話をするくらいのお子様を想定したものではあるため、

お子様は時間的にすぐに強化子(お菓子)が手に入らないことで癇癪を起こしてしまうかもしれません(消去バーストと言います)。

そのようなときは癇癪が起きる前に早めにプロンプト(正解を促すヒント)を出し、お子様のフラストレーションが溜まりすぎないようにも注意しましょう。

お子様の癇癪が生じないようでしたら、この設定を行ったときに少し間を持ってみても良いと思います。


Enせんせい

もし待てるのであれば少し待ってみることはおすすめです


ここまで書いて来た2つ目の方法、「親御様が気がついていない形でコミュニケーションを行う」では、


(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合


の他に、


(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合


のいずれに適用する場合であったとしてもお母様は少し「気が利かないお母様」を演じている、と言えるでしょう。


さて、ここまで書いて来た内容は上で書いた、

多語文を使用しなくとも短い文でコミュニケーションが成立するから

という理由でコミュニケーションを取るとき単語や短い語彙数でお子様のコミュニケーションが成立しているのであれば、

その単語や短い語彙数でコミュニケーションが充分に成立しない形で親御様が少し気が利かない様子を見せるという態度が私は言葉の発達を促進する方法の1つかなと感じています。



さいごに

本ブログページでは最初に「お子様はなぜ多語文を使用しないのか?」ということを考察して来ました。

お子様が多語文を使用しない理由として本ブログページでは3つの理由を考察しています。

その3つの理由は、


(1) 「名詞をあまり知らない」とか「動詞をあまり知らない」と言ったように語彙がまだ蓄積されていない場合

(2) お子様は知っている語彙ではあるものの、それを言葉で使用したことが無い、もしくは少ない場合

(3) 多語文を使用しなくとも短い文で充分コミュニケーションが取れる場合


でした。


その後「お子様の言葉を二語分、三語分と増やして行く方法」として、


方法1:多語文を使用する練習をお勉強場面を設定して集中的に行う

方法2:親御様が気がついていない形でコミュニケーションを行う


をご紹介しました。


このとき『「言葉の使用」について「始発」と「応答」を区別して考える』ことが有用であると書いています。

「始発」とはお子様側から話しかけてくる場合で、「応答」は相手から話しかけられて答える場合でした。


また本ブログページでご紹介した方法はあくまで基本線で練習をして行くにあたり「強化法」「プロンプト」「プロンプトフェイディング」についての知識があった方が良いと思います。

これらの知識については本ブログでも何度かご紹介していますが例えば、

「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング(https://en-tomo.com/2020/10/04/reduction-fading/)」などは参考になるでしょう。


「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング」のサムネイル

冒頭に書きましたが、自閉症や発達に遅れのあるお子様の親御様と関わって来て本ブログテーマとなっている「単語で話をしてばかりでなかなか多語文を使用しない」や「使用する言葉が短い」ということで悩んでいる親御様はいらっしゃいます。

そのようなとき、本ブログページでご紹介した方法がご参考になれば幸いです。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします。



【参考文献】

・ Dee C. Tay (2016) A Therapist’ s Guide to Child Development 【邦訳: (監訳)小川 裕美子・野沢 貴子 (2021) セラピストのための子どもの発達ガイドブックー0歳から12歳まで:年齢別の理解と心理的アプローチ 誠信書房】