(ABA自閉症療育の基礎102)自閉症児に対する偏食指導ーいろいろなシチュエーションで食べることが難しい場合の偏食指導の手続き

2つ前のABA自閉症療育の基礎100、そして1つ前のABA自閉症療育の基礎101では偏食指導について書いてきました。

今回ABA自閉症療育の基礎102でも引き続き偏食指導について書いて行きます。

今回ABA自閉症療育の基礎102では「いろいろなシチュエーションで食べることが難しい場合の偏食指導」についてです。


「いろいろなシチュエーションで食べることが難しい場合の偏食指導」以外の「食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続き」については1つ前の本章ブログページ、

「(ABA自閉症療育の基礎101)自閉症児に対する偏食指導ー食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続き(https://en-tomo.com/2022/10/07/expanding-the-eating-environment-for-children-with-autism/)」

にてご紹介していますので、併せて是非ご覧ください。


(ABA自閉症療育の基礎101)自閉症児に対する偏食指導ー食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続きのサムネイル

千葉県栄養士会(2022.11.25サイト観覧)によれば「偏食(へんしょく)」とは、
一般的にある特定の食品に対する好き嫌いがはっきりしていて、しかもその程度がひどい場合
を言います。


そして本章2つ前のブログページ「(ABA自閉症療育の基礎100)自閉症児に対しての偏食指導ーABA自閉症療育手続き(https://en-tomo.com/2022/09/09/guidance-on-resistance-to-food/)」では、

Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) 

「Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders(自閉症スペクトラムの子どもにおける食の柔軟性を高めるための個別の強化子と階層的エクスポージャーの使用)」という論文、そして、

Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017) の

「Using Shaping to Increase Foods Consumed by Children with Autism(シェイピング手続を用いて自閉症の子どもが食べることができる食目を拡大する)」という論文を用いて、

偏食指導の手続きをご紹介しました。


Robert L. Koegel他 (2012)Tonya Davis他 (2017)

本ブログページはそのブログページでご紹介したRobert L. Koegel他(2012) とTonya Davis他 (2017) の研究手続きとほとんど同じですが、

今回は私が偏食指導を行うときの基本的な手続きとしてブログページを作成しご紹介します。


本ブログページでは最初に偏食指導について知っておいて欲しいことをご紹介し、そののち、私が偏食指導を行うときの基本的な手続きをご紹介しましょう。


本ブログページは「いろいろなシチュエーションで食べられない場合の偏食指導」として、まだほとんど食べることができる食べ物が少なく、また言葉でのコミュニケーションもまだ難しいというお子様を想定しました。

そのためご紹介する手続きがかなり細かめとなってしまっていることご了承ください。



ABA自閉症療育で偏食指導を行う前に知っておいて欲しいこと

最初に知っておいて欲しいエピソードを1つご紹介しましょう。

これは個人的には知っておいて欲しいエピソードになります。


Enせんせい

もしあなたのお子様に偏食があり、困っていたとしましょう

昔、自閉症界隈に詳しいお母様から聞いたもエピソードです

その後、私自身も自分が見てきたお子様でも経験しました

偏食にまつわるエピソードを1つご紹介します


そのエピソードとは、

子どもは身体が大きくなってくる小学校2年生くらいになると食べられるものが自然と増える

とうものです。


文献でデータを見たわけではありませんが、確かに私自身が経過を見てきたお子様の中で偏食の強かったお子様も、これくらいの時期から給食で明らかに今まで食べられなかった食べ物を出されても食べる、

という状況変化が起こってきたことを覚えています。


これは単純に身体が大きくなって必要なカロリーが増え、嫌だけど空腹に負けて食べているのかもしれませんし、少し周りが見えるようになってきて、周りのお子様が食べている食べ物に興味が出てきたからなのかもしれません。

また全員がこれに当てはまるかと言えばそうではないかもしれませんし、給食では食べるけれども相変わらず家では偏食が残っているというお子様もいました。


私はABA自閉症療育が主に「幼児期」を対象に研究が行われてきたからなのか、キャリアの初期は幼児期のお子様に関わることが100パーセントでした。

そのとき「米が食べられない」、「特定の野菜を食べない」などのシチュエーションでも偏食指導を行ってきたのですが、2年生くらいになると自然と食べるようになるかもしれないという期待が真実であるならば、今の考え方として、もしかすると少し時期を待つのも1つの選択肢のように思います。


偏食指導はご家庭でやるとなった場合は親側もとても体力を奪われます。

ですので既に年長である、と言った場合などは少し様子をみても良いかもしれません。


それも1つの選択肢なので、必要であればそのルートも見据えてください

但し他で代替が効かず、栄養素の取得が不十分である場合などは偏食指導を考えても良いと思います。

例えば特定のクッキーとジュースしか食べない、飲まないなどの場合は、ジュースにサプリメントなどを溶かして栄養素を摂取することになると思うのですが、これは偏食指導を行なった方が良い例でしょう。


偏食指導を導入する前、最初に考えてほしいことはここまで書いてきたように「偏食指導を導入する必要があるか?」という点です。

偏食指導はコストがかなり高いと思うことと、小学校2年生くらいになれば自然に食べられる食べ物が増えるかもしれないということを考慮して、判断するようにしましょう。


Enせんせい

なぜ偏食指導がコストが高いのでしょうか?

例えば理由の1つとして以下をみてください


これからブログページを通して詳しく方法を書いて行きますが、偏食指導では徐々に食べることができる食べ物の範囲を増やして行くことを目指します。


例えば野菜が全く食べられないお子様に偏食指導を行うとき、


1日目・・・キャベツ

2日目・・・じゃがいも

3日目・・・にんじん

4日目・・・トマト


と、野菜というカテゴリーを毎日食べ続ける中で練習をして行くわけではありません


もし野菜が全く食べられないお子様に「野菜を食べる」ことをターゲットに偏食指導を行う場合、最初「キャベツ」を食べて欲しいと思ったら、


1日目・・・キャベツ

2日目・・・キャベツ

3日目・・・キャベツ

4日目・・・キャベツ


と「食べられるようになった」と考えられるレベルに達成するまで毎日(毎回)キャベツを用意しなければいけません。


またそれだけではなく、


1日目・・・焼きキャベツ

2日目・・・蒸しキャベツ

3日目・・・生キャベツ

4日目・・・マリネキャベツ


と「キャベツ」であれば調理方法や味を変えても良いというものでもないのです。


つまり、


1日目・・・焼きキャベツ

2日目・・・焼きキャベツ

3日目・・・焼きキャベツ

4日目・・・焼きキャベツ


と「キャベツ」であり、且つ味も調理方法も毎回同じでなければいけません。


それに加えて子どもが食べる量というのは非常に少量です。

特に偏食指導初期の場合はせっかく毎日調理しても例えば1平方センチメートルの量も食べてくれない(しかもものすごく抵抗する)ということも稀ではありません。


せっかく作ったのに全く食べなかったと言う日も出てくる可能性もあるでしょう。

そのため最初から覚悟を持って行う必要があります。

また今日やって明日から食べられるようにならないことがほとんどですので、時間をかけて徐々に食べられるようになることをイメージしてください。


時間をかけて徐々に食べられるようになることをイメージ

Robert L. Koegel他(2012)は偏食指導の論文で考察中、自閉症の顕著な特徴である、ある種の硬直性と柔軟性の欠如に関して、この分野(偏食)でのさらなる研究は非常に生産的である可能性があると述べましたが、

これは変化に対しての柔軟性が自閉症のお子様は他のお子様と比較して弱いということです。

※ 普段と同じルーティンを好むとも言い換えられるでしょう


つまり、毎日同じものを食べることを好む(硬直性が強い、ルーティンを好む)自閉症児は、同じでないものを食べる柔軟性が弱いとすれば、抵抗も強くなります。

「自閉症の重症度」という言葉があるのですが、このような変化への抵抗は自閉症の症状が強く出ているお子様の場合は顕著かもしれません。


また別で、言葉によるコミュニケーションが上手いか、あまり上手くないかということでも少し介入プランに変更がかかるのですが、本ブログページではその点についても書いて行きたいと思います。

以下偏食指導を行うのであればどのようにやっていけば良いか方法をご紹介しましょう。



自閉症児に対する偏食指導ー介入ターゲットの選定

自閉症児に対する偏食指導の介入をする前に準備しておきたいことを書いておきます。

最初は介入するターゲットの選定です。

最初に今、お子様が食べることができているものをリストアップしましょう。

そして特にその中で好んで食べる、強化子になりそうな食べ物がないかも探します。


例えば偏食でほとんどの食べ物を食べることができないものの、唐揚げだけは好んで嬉しそうに食べる、と言った場合は唐揚げは強化子として考えることができるでしょう。

ここは言葉によるコミュニケーションが上手いお子様、あまり上手くないお子様のどちらであっても同じです。


そして次に、

あなたがターゲットをいつ、だれのまえで、どのようにして、どのくらい食べて欲しいのか

考えるようにします。

この場合のターゲットは食べて欲しい食べ物のことです。


これは最終的に野菜炒めを小皿で一人前食べて欲しいといったかなり先の目標でも良いのですが、

もう少し中期的に考え、仮に野菜炒めを小皿で一人前食べて欲しい場合であれば、

野菜炒めに入っているキャベツを、私のまえで、自分でフォークで刺して、4枚(4センチ角)食べて欲しい

※ このご家庭では野菜炒めを小皿で一人前に入っているキャベツの量は4枚(4センチ角)であるとする

というような目標設定が良いでしょう。

野菜炒めにキャベツ以外にニンジンも入っているのであれば、キャベツを克服してから次にニンジンをターゲットにすれば良いです。


何からチャレンジして行くか?


介入ターゲット選定のコツー味や食感が類似しているものから始める

個人的に気をつけているターゲット選定のコツもご紹介しましょう。

私は偏食指導で新しい食べ物にチャレンジするとき、お子様が今、食べられるものと味や食感が類似しているものから始めた方が偏食指導の難易度が低く、やりやすいのではないかと考えています。

例えば偏食は多いものの、既にレタスを食べることができているお子様の場合は、ナスやトマトよりもレタスに食感の似ているキャベツ(※但し葉の部分)を食べる方が難易度が低いということです。

また鶏肉を焼いたものを食べられるお子様へ、同じ味付けで豚肉を食べてもらう方が、同じ鶏肉であったとしても甘酢和えしたミートボールを食べてもらうよりも簡単かもしれません。


このように、

食感や味が似ているものから食べられる食べ物を拡張して行くのは1つのコツだと思います。

上手くいかないときは是非試してみてください。


このような観点から、最初からあまり特定の方向に味の強い、食感が特殊な食べ物は選択しないようにしましょう。


Enせんせい

例えば味で言えば「レモン」や「パセリ」などで、

食感で言えば「トマト」や「しいたけ」などがそのような食材であると個人的に感じています



介入ターゲット選定のコツー実施のしやすさ

他にも手続きの実施のしやすさも考慮点です。

上で書いたように、偏食指導では「食べられるようになった」と考えられるレベルに達成するまで毎日(毎回)同じ食べ物(上の例ではキャベツ)を用意しなければいけません。


そのため例えば「ごはん」や「常備しているお惣菜」などで行うことは「普段からどうせ作る必要がある」ため、手続き上、必要なコストを下げることとなるでしょう。

例えば「ごはん」を選択するケースとは、「ふりかけごはん」は食べるものの「何もかかっていない真っ白なごはん」は絶対に食べない、と言った場合です。

このようなときは「何もかかっていない真っ白なごはん」を最初のターゲットにすることも良いと思います。

※ 私は気にならないのですが「ごはん」には独特の香りがあると言い、自分の子はそれが嫌なんですとおっしゃる親御様もいましたのでお子様によるところですが


何をターゲットにすれば良いかを考えて行きます


自閉症児に対する偏食指導ー介入手順の作成

自閉症児に対する偏食指導の介入をする前に準備しておきたいこととして、次に決めたいことは、どういったステップでレベルを上げて食べられるところまでトレーニングして行くかというレベル表を作ることです。

ここも言葉によるコミュニケーションが上手いお子様、あまり上手くないお子様のどちらであっても同じです。

レベル表は介入中、変更をかけても構いません。


例えば、

Robert L. Koegel他(2012)の研究では、お子様が新しい食べ物にチャレンジするときの受け入れレベルを以下のように設計しています。


レベル0 食べ物を試すことを拒否する(破壊的な行動の有無にかかわらず)

レベル1 食べ物に触れ、それを口に向かって動かす(食べ物を投げるなどの破壊的な行動として食べ物に触れることは含まれません)

レベル2 食べ物を唇につける

レベル3 食べ物を噛む

レベル4 噛んで口に入れ、飲み込むことを拒む

レベル5 食べ物を噛むが飲み込むことを拒む

レベル6 しぶしぶ食べ物を飲み込む

レベル7 不快感や破壊的な行動の兆候なしに食べ物を受け入れる


上の最終レベルは読み替えると「自分で食べ物を手に取って口に入れ、抵抗感を示さず咀嚼して飲み込む」ということです。

このように設計し、各レベルを作りました。


Robert L. Koegel他(2012)の研究では最終レベルのレベル7では「不快感や破壊的な行動の兆候なしに食べ物を受け入れる」と嫌悪的な様子がない状態で食べ物を咀嚼して飲み込むことを求めていますが、

理想的にはそこまで持って行きたいとは思うものの、少し嫌悪的な様子が残っていたとしても「自分で食べ物を手に取って口に入れ、咀嚼して飲み込む」というところまで達成できれば良いのではないかな、と個人的には思ってます。


私もレベルを設計するとき、最終レベルは「自分で食べ物を手に取って口に入れ、咀嚼して飲み込む」というように設計し、各レベルを作って行くことは同じです。

そして最初のレベルは既にお子様のできている、もしくはできるだろうことを設定しましょう。

このように考えてレベル表を作ると、例えば一番最初は以下のようなところからレベル表を作ることができます。


例えば、


最初のレベル・・・食べることができない食べ物を3秒間見る

(ここはまだ考えていない)

最終のレベル・・・自分で食べ物を手に取って口に入れ、咀嚼して飲み込む


このように「最初のレベル」と「最終のレベル」を最初に考えます。

ここからあとは間を埋めていけば完成です。


間を埋めて行きましょう。

例えば、以下はかなり細かくしましたが、


最初のレベル・・・食べることができない食べ物を3秒間見る

レベル1・・・・・食べることができない食べ物を3秒間指で触る

レベル2・・・・・食べることができない食べ物を3秒間指、手のひらの上に乗せる

レベル3・・・・・食べることができない食べ物を鼻の前まで持って行きにおいを嗅ぐ

レベル4・・・・・食べることができない食べ物を唇に1秒間くっつける

レベル5・・・・・食べることができない食べ物を唇に3秒間くっつける

レベル6・・・・・食べることができない食べ物を舌先で舐める

レベル7・・・・・食べることができない食べ物を舌先に乗せ、1秒後に吐き出す

レベル8・・・・・食べることができない食べ物を舌先に乗せ、3秒後に吐き出す

レベル9・・・・・食べることができない食べ物を舌先より奥の舌の真ん中くらいに乗せ、1秒後に吐き出す

レベル10・・・・食べることができない食べ物を舌先より奥の舌の真ん中くらいに乗せ、3秒後に吐き出す

レベル11・・・・食べることができない食べ物を1回噛む、その後、すぐに吐き出す

レベル12・・・・食べることができない食べ物を2回噛む、その後、すぐに吐き出す

レベル13・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、すぐに吐き出す

レベル14・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、水と一緒に飲み込む

最終のレベル・・・自分で食べ物を手に取って口に入れ、咀嚼して飲み込む


今回は例として上のようなレベル表を作成しました。

このように上のようなレベル設計を一旦作成します。

このレベル表は上でも書きましたが途中で変更しても良いので、あまり気張らず作ってください。

またオレンジ色のレベル表で「すぐに吐き出す」を太文字にしました。

「吐き出しても良い」というフェイズを入れることも偏食指導の1つのコツのように思います。


作ったあとに変更をかけても良いのでとりあえず作ってみましょう

別の視点:食べ物の量・サイズも意識する

上は「何を行えば良いか」という行動上のレベルですが、レベル表とは別の難易度が上がる要素は、食べる物の量もあるでしょう。

例えば1センチ角の食べ物で上のレベルに挑戦するよりも、1ミリ角のサイズの食べ物で上のレベルに挑戦する方が何度は低いです。


Enせんせい

冗談のように聞こえるかもしれませんが私はかなり抵抗感の強いお子様の場合、

米粒よりも小さいサイズから始めることもあります


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話をレベル表に戻して、実際、上のようにレベル表を作成し実践した場合、スムースにレベルアップしていけるところもあるものの、

特定のレベル間の移行時、スムースにレベルアップできない壁となるタイミングがやってくるでしょう。


スムースにレベルアップできない壁となるタイミングで良くあるのは例えば、


レベル6・・・・・食べることができない食べ物を舌先で舐める

レベル7・・・・・食べることができない食べ物を舌先に乗せ、1秒後に吐き出す


ここの「レベル6」から「レベル7」への移行や、


レベル10・・・・食べることができない食べ物を舌先より奥の舌の真ん中くらいに乗せ、3秒後に吐き出す

レベル11・・・・食べることができない食べ物を1回噛む、その後、すぐに吐き出す


ここの「レベル10」から「レベル11」への移行、


レベル13・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、すぐに吐き出す

レベル14・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、水と一緒に飲み込む


ここの「レベル13」から「レベル14」への移行は今までの経験から壁となりやすいタイミングです。


このように壁となるタイミングはあるものの、

「最終のレベル」まで達成したあとに、例えば上で紹介した最終ターゲット設定、

野菜炒めに入っているキャベツを、私のまえで、自分でフォークで刺して、4枚(4センチ角)食べて欲しい

に達するように量を増やしていけば良いでしょう。


Enせんせい

一度食べられるようになれば、適量であれば食べる量を増やすことはそんなに難しくないと感じています


さて、ここまでで、


・ 何をターゲットとして食べさせるか

・ どういったステップでレベルを上げて食べられるところまでトレーニングして行くかというレベル表の作成


が完了しました。


これらを持って次に、どうやって偏食指導の介入をしていけば良いのかについて見て行きましょう。

少し上でご紹介した特定のレベル間の移行時、スムースにレベルアップできない壁となるタイミングをどのように対応するのかについても以下、書いています。


壁となるタイミングが来てもお子様と一緒に頑張って行く


自閉症児に対する偏食指導ー介入方法

自閉症児に対する偏食指導の介入方法は、食べさせたいターゲットをレベル表に沿って段階的に行うように求めて行き、達成できたときに大きく強化してその行動を促進して行くことです。


例えば介入の最初「食べることができない食べ物を3秒間見る」レベルのときを見てみましょう。

言葉によるコミュニケーションが上手いお子様には言葉で指示すれば良いでしょう。

例えば「ねぇ、それ(食べることができない食べ物)見て!」と伝えて見てもらうと良いです。


言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合も「見て」と言って食べることができない食べ物を指差すなどで見るように促します。

もし指差しの促しだけで見ることが難しい場合は、頭を持って目線を食べ物に向けても良いでしょう。


ここの段階ではほとんど抵抗は出ないと思います。

そして達成したとき、お子様からすると「え?そんなええことあんの?」と思えるくらいの少し特別な強化子を提供しましょう。


このとき、リストアップのときに見つけた特別好きな食べ物(上の文中例では唐揚げ)があれば、「じゃあこれ食べて良いよ」と言ってその食べ物を渡しても良いです。

ポケモンが好きなお子様だったら、ポケモンのシールをあげても良いでしょう。

とにかくお子様にとって特別な何かがもらえるようなシチュエーションを作ります。

但しプレステ5を買ってあげるとか、そういった極端にオーバーすぎるものは控えてください。


良い塩梅を探る必要がありますね

ここで扱う強化子は特別ではあるものの、レベル表の課題を達成する度に使用をするので何度も与えられるものの方が賢明です。

このとき、しっかりと褒めたり、頭を撫でてあげたりと言ったお母様自身が与えることができる強化子も一緒に与えることを絶対に忘れないでください。


介入ではお子様がだいたい3回から5回、連続で抵抗感なく達成できたとき、次のレベルに上げれば良いでしょう。

※ 難易度の低いだろうところは3回でレベルを上げて、難易度が高いだろうところはもう少し何度かチャレンジさせて抵抗を下げることを狙って5回行う、などレベルによって調整するでも大丈夫です


最初のうちはポンポンとレベルが簡単に上がって行くかもしれません。

上で実際に上のようにレベル表を作成し実践を行った場合、特定のレベル間の移行時、スムースにレベルアップできない壁となるタイミングがやってくるでしょうと書きましたが、

スムースにレベルを上げられる場合は1日(もしくは1回の偏食練習機会)の中でレベルを上げて行っても構いません。

但し無理しすぎないように日を分けて行うイメージは持っていてください。


Enせんせい

実際に上のようにレベル表を作成し実践を行った場合、

特定のレベル間の移行時、スムースにレベルアップできない壁となるタイミングがやってくるでしょうと書きましたが、

その場合、どのように対応すれば良いでしょうか?


そのようなタイミングの例として上で出したタイミング、


レベル6・・・・・食べることができない食べ物を舌先で舐める

レベル7・・・・・食べることができない食べ物を舌先に乗せ、1秒後に吐き出す


そして、


レベル10・・・・食べることができない食べ物を舌先より奥の舌の真ん中くらいに乗せ、3秒後に吐き出す

レベル11・・・・食べることができない食べ物を1回噛む、その後、すぐに吐き出す


ここの「レベル6」から「レベル7」への移行と「レベル10」から「レベル11」への移行のときについて考えてみましょう。


「レベル6」から「レベル7」への移行ではそれまで口内に入ってくることのなかった食べ物が初めて口内に入ってくるタイミングです。

そして「レベル10」から「レベル11」への移行ではそれまでなかった「噛む」という行動を求められるため、一気に口の中で味が広がるため抵抗感を持つのかもしれません。


言葉によるコミュニケーションが上手いお子様の場合

言葉によるコミュニケーションが上手いお子様には言葉で「できたら、ポケモンのシールを2枚あげるよ」など、特別な強化子がさらに特別になるように働きかけるのも良いでしょう。

他に「終わってからゲームをいつもよりたくさんやって良いよ」とか、「〜〜だったらやってみようかな」という条件を探して行きます。


それでもどうしても難しい場合は、

「レベル6」から「レベル7」への移行では食べ物を舌先に乗せるもののそれは親側が持っていて、ちょんと一瞬(1秒以下)だけ乗せるようするとか、

「レベル10」から「レベル11」への移行では歯の横側に親側が手で持って行ってちょんとつけるだけにするとか、達成条件を簡単にしてやってみてもよいかなというラインで交渉してみましょう。


言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合

言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合は少し可哀想に思うかもしれませんが、言葉による交渉が難しい可能性があるので、

「レベル6」から「レベル7」への移行では食べ物を舌先に乗せるもののそれは親側が持っていて、ちょんと一瞬(1秒以下)だけ乗せる

「レベル10」から「レベル11」への移行では歯の横側に親側が手で持って行ってちょんとつける

ということをお子様の許可を取ることなく(許可を取る意思コミュニケーションが取れないため)行うことも一つの手です。


但し言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合でも、

「今から、これやるの頑張ってみようね」と言ってお母様側がやることを見せてあげたり、どこに載せたり触れさせるのかお子様を触って伝えようとしてあげたり、できるだけ見通しを持たせるような努力は必要でしょう。


言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合は言葉によるコミュニケーションがあまり上手いお子様と比べて、やったあとに「こんな良いことがるのか」と体験させてあげることがもっと重要です。

「あとでたくさんゲームやって良いよ」などの言葉によって未来の強化的なシチュエーションに反応させて行動させることが難しいため、できた直後、すぐに大きめの強化子を与える必要があります。

例えばiPadでYoutubeを起動させておき、できた瞬間にスタートのアイコンを押してすぐに好みの動画が流れて観れる、などの工夫が必要です。

上のYoutubeの使い方だと口に入れて1秒以内(0.5秒とか)で動画が流れるため、かなり即時に強化子を手に入れることができるでしょう。


やったあとに「こんな良いことがるのか」とすぐに体験できるテンポも大切です

他の壁になるポイントとしてご紹介した例、


レベル13・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、すぐに吐き出す

レベル14・・・・食べることができない食べ物を3回噛む、その後、水と一緒に飲み込む


ここの「レベル13」から「レベル14」への移行のときはどうでしょうか?


「レベル13」から「レベル14」への移行では食べ物を初めて飲み込むタイミングです。

ここは量を調整することも大切でしょう。


例えば1センチ角の食べ物で行ってきた場合は米粒ほどのサイズにして「こんだけで良いよ」と示してあげることでお子様の抵抗感がガクッと下がるかもしれません。

またこのとき、お母様が目の前で食べてあげるのも良いと思います。


お子様にお母様が食べる様子を見せるときは、わかりやすいように最初下の上に食べ物を乗せて見せましょう。

そして笑顔でもぐもぐと噛む様子も見せます。

少し汚く思うかもしれませんが口を開けて咀嚼後の食べ物もお子様に見せてください。

そして「飲み込んでも大丈夫だよ」と言って水と一緒に飲み込んで、その後、口を開けてお子様になくなった(飲み込んだ)様子を見せましょう。


ここでも言葉によるコミュニケーションが上手いお子様の場合には言葉で「できたら、ポケモンのシールを2枚あげるよ」など、特別な強化子がさらに特別になるように働きかけるのが良いと思います。

「これだったらやっても良いかな?」という条件を探して行くイメージです。


言葉によるコミュニケーションがあまり上手くないお子様の場合は工夫が必要かもしれません。

交渉が効かない場合は、少し可哀想に思うかもしれませんが、米粒ほどのサイズにした食べ物を口の中に入れ、次にコップを口元に持って行って水を飲ませ、飲み込ませるということも1つの手段です。


いずれにせよ、お子様にしっかりと強化子を提示して手続きが行えていた場合、何度か飲み込んでいくうちに抵抗感は減って行きます。

その抵抗感が減って行く過程で量を徐々に増やしていけば良いでしょう。



自閉症児に対する偏食指導ー介入のときのポイント

1つポイントもご紹介します。

偏食指導ではこれまで何度か書いてきましたが1日で1つの食べ物を最終レベルまで持っていてないことが、特に偏食指導初期(まだいろいろな食べ物にトライしていないタイミングのとき)はほとんどです。

ということは、日(もしくは偏食指導機会)を分けて練習することになります。


日(もしくは偏食指導機会)を分けて練習する場合、前回の最終レベルよりもレベルを1つか2つ下げたところから再開する方がスムースに行くことが多いでしょう。

例えば前回の偏食指導機会では「レベル6」が3回達成できたところで終了した。

だから今回再開するときは「レベル7」から始める、というわけではなく「レベル5」、少なくとも「レベル6」から始める、という方が良いです。

再開時は前回終了したところよりも簡単なレベルから始めるようにしましょう。

※ 最終レベルに達したときの何回目かは再開時、同じ最終レベルから始めれば良いと思います


Enせんせい

何日かに分けて最終レベルを目指して行ってください

あと、可能であれば毎日やる方が進みは早いです


生活の中で教える、可能であれば毎日、少なくとも週に半分以上はトライして欲しいです


自閉症児に対する偏食指導ー介入で1つの食べ物を最終レベルまで持っていったあとどうするか?

もし特定の食べ物を最終レベルまで達成できたとき、このさきどうするか2つの分岐が訪れます。


<分岐1>

「最終のレベル」まで達成したあとに、例えば上で紹介した最終ターゲット設定の、

野菜炒めに入っているキャベツを、私のまえで、自分でフォークで刺して、4枚(4センチ角)食べて欲しい

に達するように量を増やして行くというように食べられる量を増やして行く方向性


<分岐2>

ターゲット以外の別の食べ物に挑戦するといったように別の食べ物も食べられるようレパートリーを拡張して行く方向性


分岐は<分岐1>と<分岐2>の2つが考えられますが、並行で行っていっても良いですし、どちらか1つだけ行って行っても大丈夫です。


Enせんせい

偏食指導でお子様が得る経験は特定の恐怖を克服することに似ていると個人的には思っています


例えば私は絶叫マシンが嫌いです。

そんな私が例えば絶叫マシンが好きな女の子とデートに行ったりすると、嫌いな絶叫マシンに乗るというイベントにぶち当たることがあります。

ある遊園地に絶叫マシンが4台(仮にA、B、C、Dとします)あったとしましょう。


最初Aに乗るときに感じる恐怖は100点でした。

しかしずっと100点かと言えばそうではなく、Bに乗るときは恐怖は90点くらいになっていて、Cに乗るときは80点、Dに乗るときは60点と、不思議と恐怖が下がっていることに気がつくことがあります。


偏食指導を行っているときのお子様の様子もこれに似ているでしょう。

様子を見ていると、最初Aという食べ物にチャレンジして克服できたとすると、次に挑戦するBは基本的にはAの最初よりも抵抗感の低いところから始まることになるようです。

そして時間を開けて翌年、絶叫マシンに乗る機会があると恐怖60点から再スタートかと言えばそんなことはなくしっかりと95点くらいから再開されることも、偏食指導と似ています(次の日になると偏食指導でも前回の終了時よりも抵抗感が回復しています)。


このイメージについては「(ABA自閉症療育の基礎11)エクスポージャーのポイント1:エクスポージャーでの馴化プロセス(https://en-tomo.com/2020/07/25/exposure-therapy-point1/)」をご参照ください。


(ABA自閉症療育の基礎11)エクスポージャーのポイント1:エクスポージャーでの馴化プロセスのサムネイル

以上が大筋の私が行っている偏食指導の手続きです。


以上の手続きを主軸として行うのですが、他の専門家に偏食指導を指導したこともあります。


Enせんせい

お子様を楽しませることが抜群に上手いその人は以上の手続きを主軸として行うときにも一工夫入れてお子様のモチベーションを上げて偏食指導を行っていました


例えばお子様が好きなぬいぐるみを使って「がんばれー!◯◯くんが食べてるところ見たいぞぉ」とぬいぐるみにしゃべらせてモチベーションを上げたり、ゲームの設定の中に偏食指導を取り入れてアイテム獲得のような設定を作ったり。

その人のことを私は本当にすごいと思いました。

このようないろいろな工夫を取り入れることで幅広い手続きが考えられるのだな、と勉強になったことを覚えています。


例えば本ブログページでは「シール」や「Youtube」という外的な動機づけに頼る方法の偏食指導をご紹介してきましたが、上のように「応援」や「励まし」、「賞賛」だけでレベルをクリアして行けるのであればそちらの方が良いでしょう。

一度そちらの方向性でチャレンジしてみるのも良いと思います。


「シール」や「Youtube」という外的な動機づけに頼る方法でも、「応援」や「励まし」、「賞賛」を上手く使って行う方法でも、どちらでも、偏食ではお子様の強い抵抗感が出現することも多々あるため、お子様が楽しんで取り組める工夫が必要です。

コストが高かったり、お子様の抵抗感も強く出るため勇気も必要で明日が、もしお子様の偏食を克服したいと思っている方は偏食指導、是非とも挑戦してみてください。



さいごに

本ブログページではどのようなシチュエーションでも食べられない場合の偏食指導について書いてきました。

『できるところを見つける(文中例で言えば「最初のレベル・・・食べることができない食べ物を3秒間見る」)』ことから始め、徐々にステップアップして行くことで達成する偏食指導ですが、

これはABA自閉症療育のスモールステップとシェイピングという考え方に基づいています。


スモールステップやシェイピングは偏食指導以外でも使用するABA自閉症療育の基礎テクニックです。

ブログ内検索窓でキーワード検索すると専門ページが出てきます。


特に言葉の発達がゆっくりで言葉でのコミュニケーションが上手くないお子様の場合は、本ブログページでも書きましたが少し強制的に食べさせるようなことも時には必要になってくる場合があるでしょう。

もし私の技量がもっと高ければ、お子様が「やっても良いか」というような設定を作って楽しませながら強制感なく取り組ませることも可能だったかもしれません。


次のページで偏食についてのブログページは終了です。

次のページでは偏食指導の際に考えたいコツや気持ちの持ちようについて書いて行きます。



【参考文献】

・ 千葉県栄養士会 https://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/generational/hensyoku/

・ Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 42(8): 1574–1581

・ Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017)Using Shaping to Increase Foods Consumed by Children with Autism. Journal of Autism and Developmental Disorders. 47 : 2471–2479

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