身体をくすぐるときのコツ、ABA自閉症療育、身体強化のポイント(ABA自閉症療育テクニック3)


Enせんせい

お子様の行動のあとに伴う、あなたの与えているその結果は果たして強化子となっているか?

ABA自閉症療育を行うにあたっては、このことはとても大切なテーマです


なぜなら強化子はお子様の行動のあとに伴わせることで、そのお子様の行動を増加させていってくれるからで、ABA自閉症療育の核となる考え方となります。


物凄く平たく言えば、行動をしたあとにお子様にとって「良いこと」があれば、その前の行動が増えて行くよね、

ということなのですが、私はよくお子様の身体をくすぐることを使用するので今回はそのようなときのポイントをお伝えしていきましょう。


ちなみに実際はお子様にとって「良い(と感じたかどうか)」ことかどうかは、私たちは頭の中をのぞけるわけではないので本当のところはわかりません。


頭の中を直接のぞいて見ることはできない

だから「行動が増えたかどうか」という行動に伴うその後の軌跡を追うことで判断するのですがまずは、『お子様にとって「良いこと」があれば行動は増えて行く』と思ってもらって読んでください。

よろしくお願いします!



くすぐることが強化子になることが多い

くすぐることが強化子になることが多い、「多い」とつけたのは確かに感覚過敏が強く、身体に触られることにかなり抵抗感が強いお子様の場合くすぐり自体が拒絶されることもあるからですが、

私の経験上ほとんどのお子様はくすぐられると喜んでいるように見えました。


またくすぐりが強化子として機能している可能性が高いことを示すエピソードとして、自らくすぐられるために腕を差し出してきたり、「もっとやって」と言葉で伝えてきたりするお子様もたくさんいたため、

私自身は、くすぐりは強化子として機能することが多いだろうと結論づけています。


お子様を喜ばせることができる結果のレパートリーが多いことは、良い支援者になる上でとても大切なことでしょう。

お子様にとって楽しい、魅力的な人物になる、このようなイメージでいてください。

※ 親という立場は厳しさも保つ必要があるから両立がとても難しい、という意見もわかりますが


例えばフリーオペラント法というABA自閉症療育の1つを開発した専門家、佐久間 徹 (2013)は公園やショッピングモールの遊び場で親に断りを入れてから子どもをくすぐる練習を積んだそうです。

くすぐって子どもを喜ばせることは、実は練習が必要な難しい技術ということになります。


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佐久間 徹 (2013)は、

くすぐるタイミング、くすぐりの部位、強度、リズムが実に微妙で言語化できない、コツの要点は説明不能である

と述べていますが今回はコツの記述化を試みましょう


佐久間 徹 (2013)、勉強になる、とても面白い本ですよ!


ちょっと脱線、海外でABA自閉症療育でくすぐりが文献に出てこない理由


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少し話が脱線するかもしれませんが、私も昔、疑問に思っていたことでこの本を通じて解決した疑問があるのでご紹介しましょう


海外のABA自閉症療育では多くはお菓子や物を強化子として使用することが多く、対人関係で強化子として行う活動は同じおもちゃで遊ぶ、一緒にボードゲームをする、などほとんど身体接触を伴う強化子が使用されていないように思っていました。

私自身もくすぐりは魅力的な強化子なのになんで海外の研究では使われてへんのやろー、という気持ちでした。


今は海外でもくすぐりは行われているのかなとTy W. Vernon・Anahita N. Holden・Amy C. Barrett・Jessica Bradshaw・Jordan A. Ko・Elizabeth S. McGarry・Erin J. Horowitz・Daina M. Tagavi・Tamsin C. German (2019) を読んで思いましたが、特に昔の文献では目にすることはなかったと思います。

Ty W. Vernon他 (2019) にはセラピーの上手い人の特徴に身体接触を楽しむ子どもをくすぐる、と記載があったからです


佐久間 徹 (2013)はくすぐり技法が海外に存在しない理由が判明したと書いていて、カナダの同業者にくすぐり技法の話をしたところ「効果は理解したが、自分たちは同じことができない。幼児わいせつの嫌疑を受けかねない」と言われたようで、

これを読んで私も「あー、なるほど・・・」と思いました。


文化の多様性ですね、ただヨーロッパとかアメリカは確かに厳しいイメージ


くすぐりのコツ「部位 ✖️ 強度(強い弱い)」

私自身も佐久間 徹 (2013) が述べていたように、一言でくすぐると言っても、


(1)くすぐるタイミング

(2)くすぐりの部位

(3)強度(くすぐる強さ)

(4)リズム


などいろいろな要因が絡んでくるし、またこれらの組み合わせで万人のお子様に通用するくすぐり方があるとは思いません。


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ですので、あなたのお子様に対応した喜ばれるオーダーメイドのくすぐり方を開発して行く必要があります


特に私が意識しているのは上の区分けでいうと、


(2)くすぐりの部位

(3)強度(くすぐる強さ)


2ポイントです。


まずくすぐる部位ですが、実はくすぐる部位と言ってもいろいろあります。


いくつか例を挙げてみました!他にもいろいろあると思います

例えば、


・ 脇をくすぐられると喜ぶ

・ 手のひらをくすぐられると喜ぶ

・ 背中をくすぐられると喜ぶ

・ ほっぺたをくすぐられると喜ぶ

・ うちももの裏をくすぐられると喜ぶ

・ 耳の後ろをくすぐられると喜ぶ

・ お腹をくすぐられると喜ぶ

・ 首の後ろをくすぐると喜ぶ


などいろいろなお子様がいるのですが、

あるお子様が「うちももの裏をくすぐられると喜ぶけど、脇をくすぐられても喜ばない(もしくは嫌がる)」ということも普通です。

また特に感覚過敏のある部位をくすぐられると嫌がるお子様も多いため、感覚過敏のある部位は最初は避けるようにしましょう。


そしてくすぐる強度も重要です。

例えば手のひらを強めに爪を立てて(引っ掻くのではなく)ごしごしとくすぐると喜ぶものの、

こしょこしょと弱くくすぐった場合はあまり喜ばない。

ということもあります。


なので「部位 ✖️ 強度(強い弱い)」の掛け合わせで全身を刺激してみて、ヒットしそうな方法を探って行ってください


私自身は時間を計測したことがありませんが、これ結構地震があって多分1分もあればお子様にフィットするくすぐり方を見つけることができると思います。

でももしさまざまなお子様に対応する必要はなく、「あなたのお子様」という1人に対応する方法を見つければ良い、ということだったらもっと時間をかけて探していけば良いしきっとそれは見つかるでしょう。


部位は単純にいろいろな部位を触れば良いためそこまでコツと呼べるほどのものも必要ないかもしれませんが「強度」については以下で少しコツをお伝えさせてください。



くすぐるときの強度のコツ


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くすぐるとき「強くくすぐる」とはどの程度の強さでくすぐれば良いのでしょうか?


私が人に伝えるときは「思ったよりも強く、くすぐってください」と伝えています。


その上で、


支援者の方

それはもっと具体的には、どれくらいの強さなのですか?


と聞かれることもあります。

これは当然の疑問でしょう。


ただそのことを伝える支援者の方も大人ですので、私がその人の脇やお腹、首などを強くくすぐることには抵抗があります(特に相手が女性の場合)。

そのためためぬいぐるみを使ってレクチャーすることが多いです。


強さで言うとぬいぐるみがグッと沈むくらい、イラストのようにぬいぐるみを抱えて持ってもらい、私がぬいぐるみ越しに押し込み伝えていきます。


こんな感じで押す強さを伝える

すると相手から「え?これ痛くないですか?」と言われることもありますが、「ちょっと痛いかもしれない」と多くの人が」思うくらいの強度でくすぐることが多いです。


もし子どもが痛がったらすぐにやめた方が良いと思いますが、もし強くくすぐっても弱くくすぐってもヒットしない場合は、

「思ったよりも強く、くすぐってみる」ということ、実践してみてください。


そして弱くくすぐるときは例えば色鉛筆で薄く塗るときくらいの強度で下のイラストの鳥のクチバシのような手の形を作りくすぐったり、

イラストのようにクラゲがふわふわと閉じたり開いたりする動きのように五指を使ってフワフワとくすぐります。

弱くくすぐったこのときはお子様が「こしょばい」と感じているような結果であることが多いでしょう。


弱めにくすぐるときの手の動き

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このようなことをいろいろな部位に対して行ってみて、あなたのお子様に合ったオリジナルなくすぐりの強化子を見つけてください



さいごに

いかがだったでしょうか?

ABA自閉症療育で使えるコツ、くすぐりについて今回はご紹介いたしました。


今回のようなことを試してもらえば、みつかるくすぐりの強化子は1つだけではないでしょう。

もちろん1つだけのときもありますが、

例えば、


(1)首の後ろを弱くくすぐられることが好き

(2)足のもも裏を強くくすぐられることが好き

(3)お腹を強くくすぐられることが好き

(4)手のひらを弱くくすぐられるのが好き


と4つのくすぐられ方が好きなようだ。そして特に「(2)足のもも裏を強くくすぐられること」が好きに見える、

など複数の好きが見つかることも多々ありますから、いろいろ探してみるのが良いと思います。


特に幼児期のお子様に試してみて欲しいです。

※ もちろんお子様やご家族様の考え方にもよると思いますが中学生、高校生だとくすぐって喜ばせることに抵抗感を持つかも


本章は「ABA自閉症療育テクニック」、今日から使えるABA自閉症療育のコツをご紹介していきます。

また何か思いつきましたら書いていきますのでまたどうぞよろしくお願いいたします。



【参考文献】

・ 佐久間 徹 (2013) 広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法) 二瓶社

・ Ty W. Vernon・Anahita N. Holden・Amy C. Barrett・Jessica Bradshaw・Jordan A. Ko・Elizabeth S. McGarry・Erin J. Horowitz・Daina M. Tagavi・Tamsin C. German(2019)A Pilot Randomized Clinical Trial of an Enhanced Pivotal Response Treatment Approach for Young Children with Autism- The PRISM Model. Journal of autism and developmental disorders, 49(6)