「DTT:Discrete Trial Teaching」ができるために親はどのくらいの習得時間が必要か?学ぶのはDTTだけで充分か?(ABA:応用行動分析コラム31)

Enせんせい

ABA:応用行動分析コラム31では『「DTT:Discrete Trial Teaching」ができるために親はどのくらいの習得時間が必要か?学ぶのはDTTだけで充分か?』というタイトルで書いていきます


自閉症児にABA療育を行う際に「DTT(Discrete Trial Teaching)」という手法を使用することがある(多いと言っても過言ではない)のですが、

本ブログページではお子様に教える、支援者側がDTTのスキル習得にどの程度の時間を要するのか調査した研究を引き合いにして書いて行きましょう。


引き合いにする論文はJustin B. Leaf・Wafa A. Aljohani・Christine M. Milne・Julia L. Ferguson・Joseph H. Cihon・Misty L. Oppenheim-Leaf・John McEachin・Ronald Leaf (2018) の、

「Training Behavior Change Agents and Parents to Implement Discrete Trial Teaching:a Literature Review」です。


Justin B. Leaf・Wafa A. Aljohani・Christine M. Milne・Julia L. Ferguson・Joseph H. Cihon・Misty L. Oppenheim-Leaf・John McEachin・Ronald Leaf (2018)

本ブログページで扱う「DTT」という手法は本ブログ内のいろいろなページで散見されるキーワードとなりますが、本ブログページから本ブログを読み始める人もいると思うので最初、簡単なDTTの解説を行います。

その後Justin B. Leaf他(2018) の行った研究結果を引き合いにしながら、支援者側がDTT習得にどの程度の時間を必要とするのか?

私なりの意見を書いて行こうと思います。



DTTとは何か?ー簡易解説

「DTT(Discrete Trial Teaching)」は日本語で「離散型試行訓練(りさんがたしこうくんれん)」や「非連続試行訓練(ひれんぞくしこうくんれん)」などと訳されることが多いABAの療育手法です。


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以上の翻訳された日本語は普段聞きなれない言葉であることから「DTTとは一体何か?どのようなものか?」ということはイメージしづらいと思います


簡単に言えば「DTTは1試行1試行区切られた中で行われるトレーニング」と思ってもらって構いません。

「DTTはドリル学習と呼ばれている」と私は聞いたことがあるのですが、

DTTは「第一問」、「第二問」と言った感じで1試行ごとの区切られた問題が連続で行われその中で学習の促進を狙っていく方法です。


例えば山本 淳一・松崎 敦子 (2016) はDTTについて、

DTTは一元的なカリキュラムの下で明確な指示の提示があり、お子さんが行動をした後に強力な強化子(お子さんにとって価値を持つ結果)を伴わせると述べています。


これは母子間でDTTを行うことを例にすれば、


①母親が指示を出す(例えば「これなに」と言ってカードを見せる)

②子どもが反応する(例えば「りんご」と正解する)

③その後、強化子が提示される(例えば「すごいね」などの賞賛などやくすぐりや好きなお菓子、おもちゃなどが与えられる)


①母親が「これなんだ」と聞いて②お子様が答えています。このあと③「良くできたね」など賞賛が伴います

上のようなカードを使ったDTTの課題が一般的だと思います。

一般的すぎる故に「DTT = カードを使った課題である」という認識もあるように思いますがこれは誤解です。

これまで書いてきたようにDTTとは「①指示②反応③強化子の提示」という区切られた連続しない(離散した)1トライアルを連続し行うという形態を示した言葉であるため、

例えばカードを使用しなくとも部屋の中で「冷蔵庫触って」や「ソファー座って」などの指示に反応する、という課題もDTTの例となります。


DTTが有名になったのは1987年、O. Ivar Lovaasの行った「Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children」という研究でしょう。

それまでどのように支援をすれば効果が出るか分からななかった自閉症ですがO. Ivar Lovaasの研究に参加した自閉症のお子様たちは、

ABA自閉症療育を行うことで47%(19人中9人)が知的に正常域まで成長し、加えて付き添いなしで小学校の普通クラスで生活できたという結果を打ち出しました。


※ 1987年、O. Ivar Lovaasの研究結果について詳しくは「(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/ivar-lovaas1987/)」を参照


(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年のサムネイル

Enせんせい

この1987年にO. Ivar Lovaasの研究で行われたABA療育支援の方法がDTTであったため、今も根強い人気を持ってABA自閉症療育に使用されているのだと思います


DTTではこのような「①指示②反応③強化子の提示」という区切られた連続しない(離散した)1トライアルを連続して行う際、

・ 綿密にデータを取り、計画的に必要であれば計画修正し行う

・ プロンプトと強化を使用してお子様の行動をシェイピングしていく

などの手続きも並行し、かなり丁寧に関わりを行なうことも特徴的です。


またABA自閉症療育の手法は「DTT」だけでなく「NBI」という方法もありますが、気になる方はブログ内でも紹介したページがありますので検索をしてみてください。

例えばFereshteh Mohammadzaheri・Lynn Kern Koegel・Mohammad Rezaee・Seyed Majid Rafiee (2014) は、

「A Randomized Clinical Trial Comparison Between Pivotal Response Treatment (PRT) and Structured Applied Behavior Analysis (ABA) Intervention for Children with Autism」というRCT研究を行なっているのですが、

これは「DTT」と「NBI」の1つ「PRT」を比較した研究で面白いです。


※ この研究の紹介ページは「(ABA自閉症療育のエビデンス12)DTT VS PRT(https://en-tomo.com/2020/06/05/dtt-vs-prt/)」


(ABA自閉症療育のエビデンス12)DTT VS PRTのサムネイル

以上DTTの簡易解説でした。



支援者側のDTTスキル獲得を研究する

本ブログページ冒頭でご紹介したJustin B. Leaf他(2018) の行った研究は「系統的レビュー」という形式の研究です。


「系統的レビュー」と似た研究方法として「メタ分析」というものがあるのですが、

星野 崇宏・吉田 寿夫・山田 剛史 (2014) 「系統的レビューにおいて複数の研究結果を統計的に統合する手法がメタ分析である」と述べました。


「系統的レビュー」や「メタ分析」は既に発表されている論文を複数集め、その論文を統合して論じる、という研究であり、

複数の論文を統合して論じるとき統計分析を使用すれば「メタ分析」、統計分析を使用しない場合は「系統的レビュー」となります。


Justin B. Leaf他(2018) の行った研究は「系統的レビュー」であり、複数の論文を統合して論じているため研究ヒエラルキーが高いです。

例えばJustin B. Leaf他(2018) の行った研究は本ブログページの上で紹介したFereshteh Mohammadzaheri他 (2014) のRCT研究、またO. Ivar Lovaas (1987) の研究に言及してきましたが「系統的レビュー」で示されるエビデンスは更にヒエラルキーの高いものとなります。

※ ちなみにO. Ivar Lovaas (1987) の行った研究は「準実験」と呼ばれるカテゴリー


Justin B. Leaf他(2018)は研究で過去に行われたABAエージェントや親御様に対してDTTを訓練した研究を集めました。

1950年から2017年までの該当論文を検索したところ198の論文がヒットしたようです。

研究で除外基準を設け、研究に使用する論文を定めたところ最終的に51件が残り、この51件がレビューされる研究として残りました。



支援者側のDTTスキル獲得を研究する・研究結果

さまざまな研究をレビューしたJustin B. Leaf他(2018)の研究でしたが、その結果いろいろなことがわかりました。

例えばDTTのトレーニングに費やした時間です。



DTTのトレーニングに費やす時間

レビューした研究中にトレーニングの合計時間が紹介されていたものをまとめると、研究によってまちまちであったが最短のもので30分、最長のもので1500分(25時間)でした。

レビューされた研究の全ての研究でトレーニング時間が紹介されていたわけではありませんでしたが、紹介されていない研究もおおよそのトレーニングの合計時間を計算したところ最短で15分、最長で4200分(70時間)となりました。


Enせんせい

以上の結果について個人的な感想を述べます


かなりバラつきもあり参考にならないようにも思いますが、最長時間を考えてみましょう。

研究中にトレーニングの合計時間が紹介されていたものの最長時間は1500分(25時間)、トレーニングの合計時間が紹介されなかったもののおおよその最長時間が4200分(70時間)です。

どちらの時間を参考にしても、何日かに分けて学ぶ必要が出てくる時間数と言えるでしょう。


私自身後輩にDTTを仕込んだこともあります。

個人的に思うのはDTTを仕込むとき、何を目指すかについて2つの方向性があると考えているのですがその2つとは、


(1) ABAの理論も理解し、その上で(もしくは並行して)DTTを学ぶ

(2) 形式的にDTTができるようになる


です。


「(1) ABAの理論も理解し、その上で(もしくは並行して)DTTを学ぶ」のメリットは、

ABAの理論も学ぶわけですから、例えばイレギュラーな問題行動が生じたとき(例えば急に泣き出すや机の教材をはたき落とすなど)の対応も可能となります。


またDTTは自分一人ではなく、自分以外の人にも行ってもらった方が効率的(般化促進のため)なので、理論的な部分が分かっていれば他の人にやってもらったときに指導できまた他の人では上手くいかないときの理由などのアセスメントも可能となるでしょう。

しかし適応範囲を広げてさまざまなことを学ぶデメリットは時間がかかるということです。



ABA自閉症療育で支援者側が学ぶのはDTTだけで充分か?

DTTがABAの全てではないことも知っておきましょう。

ABAは自閉症療育に対してのエビデンスもありますが、自閉症療育以外に適応することもでき、そのようにABAでの支援適用範囲を拡大して行くためには更なる勉強が必要です。

適用範囲を広げ、ABAについての理論を理解するということは深めていけば勉強時間に限りがありません。


Enせんせい

私は自閉症療育に必要なABAの知識が欲しいんだ!

それ以外は必要ないんだ!!

と思うかもしれません


例えばMatthew J Hollocks・Jian Wei Lerh・Iliana Magiati・Richard Meiser-Stedman・Traolach S Brugha (2018) は研究で自閉症の人はそうでない人と比較してうつ病や不安障がいに罹る生涯有病率が高いことを研究で示しました。

DTTの知識だけではうつや不安に対応することは不可能でしょう。

Matthew J Hollocks他 (2018)の研究は「(ABA自閉症療育のエビデンス27)自閉症者の不安障がいとうつ病、生涯有病率のエビデンスー成人自閉症者のデータから(https://en-tomo.com/2021/05/28/autism-anxiety-depression-lifetime-prevalence/)」参照


(ABA自閉症療育のエビデンス27)自閉症者の不安障がいとうつ病、生涯有病率のエビデンスー成人自閉症者のデータからのサムネイル

ABAは自閉症療育のみに使える知識・技術ではありません。

例えば飯倉 康郎 (2005) は「エクスポージャー」は不適応的な不安反応を引き起こす刺激に持続的に直面することにより、その不安反応を軽減させる支援方法と述べていますが、

エクスポージャーという知識・技術を習得すれば将来、自閉症のお子様が罹るリスクの高い不安障がいにもABAを勉強することで対応することが可能です。

※ うつ病に対してもABAでは行動活性化やACTなどで対応可能となります


私自身も自閉症児・自閉症者にエクスポージャーを使うことは結構あります(不安系が問題になるときは基本的に使用することが多い)が、

エクスポージャーを理解するためには「レスポンデント条件付け」という、基本的にABA自閉症療育で使用する「オペラント条件付け」という理論以外の理論も学ぶ方が良いでしょう。



私の思うDTTのトレーニングに必要な時間

Enせんせい

話を戻してABA自閉症療育で特に重要な知識・テクニックを学ぶために必要な所要時間はどれくらいでしょうか?


一般的に自閉症療育で使用される「オペラント条件付け」の理論を学び加えてDTTの方法を学ぶ、基本的な問題行動の対応いろいろなプログラムを覚えること、データの扱い方なども含めて考えれば「(1) ABAの理論も理解し、その上で(もしくは並行して)DTTを学ぶ」に必要な時間数というところで言えば、

個人的な体感としては少なくとも24時間(1440分)くらいは欲しいです。

(ロールプレイなどの実技時間も含めて)


・ 一般的に自閉症療育で使用される「オペラント条件付け」の理論

・ DTTの方法(強化やプロンプトなど)

・ 基本的な問題行動の対応

・ いろいろなプログラムを覚える

・ データの扱い方


DTTを用いて適切に療育を行なって行く為には上のような内容は必要でしょう。

3日間連続で毎日8時間学ぶか、分けて学ぶかで言えば、あまり詰め込んでやっても集中力は続かないと思うので、長くとも4時間程度とし、何度かに分けてやる方が良いと思います。

且つ、教えられたことを実際にお子様に実践しながら行うのが良いかなと感じています。

そして24時間(1440分)くらいは欲しいと書きましたが、実際には学んだことだけでフォローできない問題も生じてくるでしょうから、学び終わったあともまだ学ぶことは続いて行くでしょう。

まず基礎的な部分を24時間(1440分)くらいで学ぶ、というイメージです。


ここは性格かと思いますが、ある性格の人は何か始めるときに「ある程度、学び終わってから、基礎は最低限で少し応用できるところまで身についた上で実践に入っていく」というタイプの方がいると思っています。

大切な自身のお子様に適用するので、ある程度しっかりとABAを理解してから始めたい、そういった方です。


しかし私はDTTの練習を行うタイミングから、実際にお子様に実践しながらABAを学んで行くことをお勧めします。

実際にお子様に実践しながら行うメリットの1つは、自閉症療育というのは始めるのが早ければ早いほど療育効果が高いと言われており、

例えばHelen E .Flanagan・Adrienne Perry・Nancy L .Freeman (2012) は重回帰分析という統計手法を用い療育開始年齢の早さが良い療育結果の重要な予測因子である可能性があると述べました。

そのためABAを学校や職場で学び終わってから、ある程度形を身につけた上で療育に臨むというより、お子様に実践しながら学んで行くというスタンスの方が良いでしょう。


また耳が痛いかもしれませんが週に25時間以上療育を行うことが療育効果をあげるというエビデンスがあり(例えばKatarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar,2008)

そのような多くの時間療育を行うことがエビデンスを上げる1つの要因である、ということはABA自閉症療育では有名な話です。

※ ちなみに本ブログページで紹介したO. Ivar Lovaas (1987)は週に40時間以上ABA自閉症療育を行いました


ただこのような長時間の勉強時間を確保することは大変だ!ということで近年では生活時間を療育に変える(普段のお子様との関わりを療育的にする)という考え方があります。

そのような療育は本ブログでも書いてきた「NBI」です。

※ 検索窓で「NBI」と検索すると関連記事が出てきます

「NBI」は生活の中でお子様と過ごす時間、療育的な関わりをすることで成長を促そうという色の強いアプローチと言えるでしょう。


例えば「NBI」の1つ「PRT」についてWilliam R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016) は、

PRTもEIBIと同様に週25時間以上の療育が必要であるとはされるもののEIBIで教えていく際に主に使用されるDTTとは対照的にPRTは「ライフスタイル」と呼ばれることが多く、特に専門家によって実施される必要もないと述べています。

ABAの理論を学べばDTTだけでなくライフスタイルと言われるように、日常の中に療育的な関わりを入れ込んで生活の中で療育を行うことも可能でしょう。


そのように生活の中で幅広くお子様にABAを適応して行くことも含めると24時間(1440分)くらいでは足りないと思いますので、継続的に親御様自身も学び(本だけで無く実践を通して考えて学んでも良いと思います)続けて行く姿勢が大切です。

例えば最初集中的にDTTの方法とABAの基礎の部分を学ぶことができれば、その後は実践を通して学び続けて行く(初期はアドバイスを受けることも必要だと思いますので、コンサルも受けながら徐々にコンサルの頻度を減らして行く)などのことができれば、個人的には良いかなと思います。

※ ただ、そのようなサービスを行なっているところがあるのかは少し疑問ですが・・・


継続的に勉強を続けて行く・・・少し嫌になってしまうかもしれませんが、お子様の成長が伴えば楽しくできる・・・はず・・・

ここまでは「(1) ABAの理論も理解し、その上で(もしくは並行して)DTTを学ぶ」のお話でした。

ここまでの内容でタイトルにも係る「ABA自閉症療育はDTTだけで充分か?」というテーマにも触れてきたかと思います。

答えとしては充分ではありません。

しかし充分ではない物の、少なくともDTTはできた方が良いということもお伝えしたいです。



形式的にDTTができるようになる為に必要だと個人的に思う時間

少なくともDTTはできた方が良いとすれば、どれくらいの時間トレーニングを受ければ良いのでしょうか?

「(2) 形式的にDTTができるようになる」というところで考えれば12時間(720分)ほどあればと個人的には思います。


「(2) 形式的にDTTができるようになる」という内容にはDTTを行う技術的なところに加え、

理論的なところで言えば「プロンプト」や「良くあるイレギュラーに対する対応」そして「データの付け方の知識」は必要でしょう。

例えば「データの付け方の知識」が無いと、課題を適切にレベルアップして行く基準が無く、難しいです。


・ DTTの方法(強化やプロンプトなど)

・ いろいろなプログラムを覚える

・ データの扱い方


形式的にDTTができるようになる為にも上のような内容は必要でしょう。


O.Ivar Lovaas (2003)のマニュアルでは、マストライアル(大量試行)からランダムローテーションにレベルアップさせていく方法でお子さんの弁別学習を促進する方法が紹介されていますおり、かなり細かく手続き化されているのですが、

O.Ivar Lovaas (2003)のマニュアルの方法に準拠しなかったとしてもDTTではレベルアップ基準というものが設けられており、どういったタイミングでレベルを上げるのか、また下げるのかという基準がないといけませんのでここのところはDTTを学ぶ上で必須科目となるでしょう。


DTTが形式的にでもできるようになれば何が良いかと言えば、お子様が今知らない知識を教えることが可能となります。

お子様に新しい知識を教えることができる、ということはとても大切なことです。

特にまだ発達が幼いお子様の場合、覚えていかなければいけない知識が多いでしょう。


例えば?


・ ものの名前

・ 動詞

・ ものの用途

・ 簡単な対象概念(大きいー小さいなど)

・ 仲間(例えばイヌやネコ、ぞうやライオンは「どうぶつ」であること)

・ 色

・ 形

・ 5W1H

・ 受動態ー能動態

・ 小さい数

・ (必要であれば)ひらがな


など、教えられる範囲は多岐に渡り幅広いです。



誰を相手にDTTの練習をしたか?

Justin B. Leaf他(2018)の研究内容に戻ります。

Justin B. Leaf他(2018)の研究でレビューされた論文のうちDTTを誰と練習したか?ということも書かれていました。

分類は「自閉症もしくは精神遅滞の人に行った(49パーセント)」、「参加者同士で行った(49パーセント)」、「学生相手に行った(2パーセント)」でした。


Enせんせい

以下、誰を相手に実践するかについての個人的な意見を書いて行きます


DTTを習得する場合実技の練習を行うためには「相手」が必要です。


例えばDTTを教わる側が数人集まり小集団で講義を受け、実技では2人ペアとなりロールプレイできる環境が理想的だと思います。

Justin B. Leaf他(2018)の研究でも「参加者同士で行った(49パーセント)」グループが多かったのですが、お互いが学びたい気持ちを持った参加者同士が行うことが良いでしょう。


実際に「自閉症もしくは精神遅滞の人に行った(49パーセント)」も実践環境として良いと思います。

しかしこの場合、例えば実子に対して実践を行うとすれば、理論の講義を受けている時間中はもしかするとお子様を誰かに預けておく必要が出てくるかもしれません。


DTTみんなで学んでいきましょう♪


さいごに

本ブログページではABA自閉症療育で使用される技法としてはメジャーなDTTという手法を支援者側が学ぶためにはどの程度の時間を要するか?

ということについて個人的な意見を書いてきました。


本ブログページ内では、


・ 「(1) ABAの理論も理解し、その上で(もしくは並行して)DTTを学ぶ」に必要な時間数というところで言えば、個人的な体感としては少なくとも24時間(1440分)くらい

・ 「(2) 形式的にDTTができるようになる」に必要な時間数というところで言えば、個人的な体感としては少なくとも12時間(720分)くらい


と個人的な意見をご紹介しました。


ちなみに本ブログページでメインの論文として扱ったJustin B. Leaf他(2018)研究でレビューされた論文の平均は6時間だったそうです。

どこまで必要かというところは人によって違うと思いますが、個人的には短いと思いました。


その後またどのような環境でトレーニングされるのが良いか?という点についても触れました。

個人的には「参加者同士で行う」ことをベースとして自身のお子様に対して行ってくるホームワークを受け取り、

次回はホームワークの振り返りをしてからまた新しい知識・技術を学んで行くという流れが良いと感じています。


また最後に本ブログページでは支援者側がDTTのテクニックを身につけるということを本筋に話を進めてきましたが、

支援者側が親であった場合どういった態度でお子様に接するのが良いか?

ということも簡単に紹介します。


例えばAshley C. Woodman・Leann E. Smith・Jan S. Greenberg・Marsha R. Mailick (2014)自閉症者を持つ406の家族を約8.5年追った研究を行ったのですが、

母親のお子様への賞賛が多い家庭ではお子様の非言語的コミュニケーションや不適応行動が減少し、社会的関係性の改善などが見られました。


またLisa A. Osborne・Louise McHugh・Jo Saunders・Phil Reed (2007)65人が参加した研究では週15.6時間以上介入をする場合は親御様の「子育てストレス」が高いほど療育効果が低減してしまうことが示されています。


Enせんせい

このようなことも考慮すればDTTなど療育知識・テクニックだけでなく自身の感情や情動をコントロールする術も必要となってくるでしょう


最適にABA自閉症療育を行なって行く為には、さまざまなことが必要ではありますが1つ1つの知識・技術はやって行く中で蓄積していくことが可能です。


今日は2022年3月25日、現在2021年の年度末となります。

本ブログページは2021年度最後のブログページです。

私自身は今後コロナ禍が落ち着いたとき、親御様に対してDTT指導などもやって行ければと考えています。

2021年度末に今後、自分がやってみたいことを書いてみました。

そのようなことを初めた際は、どうぞよろしくお願いいたします。



【参考文献】

・ Ashley C. Woodman・Leann E. Smith・Jan S. Greenberg・Marsha R. Mailick (2014) Change in Autism Symptoms and Maladaptive Behaviors in Adolescence and Adulthood: The Role of Positive Family Processes. Journal of Autism and Developmental Disorders, DOI 10.1007/s10803-014-2199-2

・Fereshteh Mohammadzaheri・Lynn Kern Koegel・Mohammad Rezaee・Seyed Majid Rafiee (2014)A Randomized Clinical Trial Comparison Between Pivotal Response Treatment (PRT) and Structured Applied Behavior Analysis (ABA) Intervention for Children with Autism. Journal of Autism and Developmental Disorders volume 44, p2769–2777

・ Helen E .Flanagan・Adrienne Perry・Nancy L .Freeman (2012) Effectiveness of large-scale community-based Intensive Behavioral Intervention: A waitlist comparison study exploring outcomes and predictors. Research in Autism Spectrum Disorders 6 p673–682

・ 星野 崇宏・吉田 寿夫・山田 剛史 (2014)メタ分析  心理・教育研究の系統的レビューのために(研究委員会企画チュートリアルセミナー1) The Annual Report of Education Psychology in Japan Vol53 p232-236

・ 飯倉 康郎 (2005) 強迫性障害の行動療法 金剛出版

・ Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008) AUTISM SPECTRUM DISORDER IN INFANT AND TODDLERS:Diagnosis, Assessment, and Treatment 【邦訳: 竹内 謙彰・荒木 穂積 (2010) 乳幼児期の自閉症スペクトラム障害 診断・アセスメント・療育 クリエイツかもがわ】

・ Lisa A. Osborne・Louise McHugh・Jo Saunders・Phil Reed (2007)Parenting Stress Reduces the Effectiveness of Early Teaching Interventions for Autistic Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders Jul;38(6):1092-103. Epub Nov 20.

・ Matthew J Hollocks・Jian Wei Lerh・Iliana Magiati・Richard Meiser-Stedman・Traolach S Brugha (2018)Anxiety and depression in adults with autism spectrum disorder: a systematic review and meta-analysis. Published online by Cambridge University Press:  04 September

・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】

・ 山本 淳一・松崎 敦子 (2016) 第2章 発達障害の支援の基本 早期発達支援プログラム 【編集 下山 晴彦・村瀬 嘉代子・森岡 正芳 (2016) 必携 発達障害支援ハンドブック 金剛出版】

・ William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016) Comparisons of Pivotal Response Treatment (PRT) and Discrete Trial Training (DTT). University of Utah Department of Educational Psychology School Psychology Program