発達障がいや自閉症者が不適切に人からの注目を集めることに理解を示す(ABA:応用行動分析コラム30)

Enせんせい

ABA:応用行動分析30は「発達障がいや自閉症者が不適切に人からの注目を集めることに理解を示す」というタイトルで書いていきます


このタイトルでブログを書こうと思ったのは、写真の本で書かれていたある文章を見つけたからでした。


Mary Lynch Barbera (2007)

上の写真の本の中でご紹介したいなと思う文章があったため、ブログに書きたいと思ってパソコンを開いています。

日本で邦訳され出版されたのは2021年Mary Lynch Barbera (2007) です。

Mary Lynch Barbera (2007)の本に以下のような内容がありました。


「誰もが強化子に反応する」、誰もが今までにものすごく褒められた経験を覚えているでしょう

学校の演劇での拍手喝采、良い成績、大きな魚を釣ったときに新聞に掲載された写真などです


そして、このように褒められたとき、褒められたことをさらに続けたいと思いませんでしたか?

もっと良い演技をしたり、もっと一生懸命に勉強をしたり、もっと大きな魚を釣ろうとしたりいようと思ったのではないでしょうか


専門用語で説明すると、賞賛があなたの行動を強化し、将来におけるあなたの良い行動を増加させたのです

上手く進んだ仕事に対する賞賛と喝采でも、1週間働いたあとの給料でも、誰もが強化子に反応します


私たちが働くのは給料が得られるからです。お客さんから笑顔がもらえるから丁寧に接するのです。他の人を助けることで良い気分になれるのでボランティア活動をするのです

子どもも、発達障がいがある子どもでも、同じです。行動にご褒美があれば、その行動をもっとするでしょう


このご褒美は専門用語では強化子と呼ばれ、自閉症のある子どもを教えるにあたってもっとも強力なツールとなります


Mary Lynch Barbera (2007)の本に以上の内容がありました。


上の文章から、個人的に知っておいて欲しいなと思うことは、

発達障がいであっても、自閉症であっても、私たちと同じように強化子によって行動が増加する。

そして当たり前に人から注目されること(例えば賞賛)も強化子として機能するということです。


発達障がいや自閉症の人が基本的に人とのコミュニケーションが得意でなかったとしましょう。

例えばWHOは最新(2022年3月11日現在)のICD-11で自閉症について、

自閉症スペクトラムは社会的相互作用や社会的コミュニケーションを開始・維持する能力に持続的な障がいがあり、年齢や社会文化的背景から見て明らかに非典型的または過剰な、制限された反復的で柔軟性のない行動パターン、興味、活動を特徴とする

と定義しています。


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このWHOの定義に従えば、現在自閉症と診断される人はコミュニケーションを開始したり、維持したりする能力の障がいを持っているということです


しかし私自身はこれまでの経験から、

自閉症と診断される人はコミュニケーションを開始したり、維持したりする能力に障がいは持ってはいるものの、

自閉症と診断される人がコミュニケーションを開始したり、維持したりすることにモチベーションが無いかと言えば、そのようなことはないと思っています。


そしてこれも知っておいて欲しいのですが、

人からの注目というのは何も「褒められる」「笑顔を返される」「好きだと言われる」といった「適切であると一般的に社会から受け入れられる形での相手からの注目」だけではありません。


この人から注目を集める方法が一般的に受け入れられる内容のものだけでは無い、ということが本ブログページのテーマです。

以下このことについて書いて行きます。



不適切に人からの注目を集めるとはどういうことか?

例えば発達障がいの方の自傷行為を扱った研究を見てみましょう。

Brian A. Iwata・Gary M. Pace・Michael F. Dorsey・Jennifer R. Zarcone・ Timothy R. Vollmer・Richard G. Smith・Teresa A. Rodgers・Dorothea C. Lerman・Bridget A. Shore・Jodi L. Mazaleski, Han-Leong Goh・Glynnis Edwards Cowdery・Michael J. Kalsher・Kay C. Mccosh・Kimberly D. Willis (1994) は研究で、

11年に渡り152例という大規模な自傷行為を示す人々へ研究を行いました。

自傷行為は自身の頭を叩いたり身体を噛んだりなどの行動です。


Brian A. Iwata他 (1994)

自傷行為は一見すると自分が痛いため周囲からすれば「なんでそんな行動をしてるんだろう?」という行動ですが、

Brian A. Iwata他 (1994) 研究の結果から152例のうち26.3%の40例は社会的にポジティブな結果によって自傷行為を行なっていたことがわかりました。


社会的にポジティブな結果とは自傷行為によって得られる人からの注目や得ることができるアイテムです。

発達障がいを持つこの研究では、人からの注目や得ることを目的として自傷行為を行なっていました。

このように自分自身の身体を傷つける行動を行うことで、結果として他者からの注目を得ることを目的としていた、という人がいます。

自傷行為を行って人から注目を得る行動は「適切であると一般的に社会から受け入れられる形での相手からの注目」ではないでしょう。


またこれは発達障がいの人だけに特徴的な行動ではありません。

例えば境界性パーソナリティ障がいという精神疾患があるのですが、

この疾患に対しては介入法の専門書、Marsha M. Linehan (1993) があります。


Marsha M. Linehan (1993) はこの疾患に対してのスキルトレーニングの1つについて、激しく不安定な対人関係、対人関係を維持する問題、対人関係の終結に対するパニック・不安・恐れ、見捨てられることを必死に避けようとする行為に対処するスキルをあげています。

トレーニングの中にはアルコール、ドラッグ、摂食、浪費、セックス、暴走運転、擬似自殺行為、自殺の強迫行為について話し合う内容が入っているのですが、

自閉症や発達に遅れのあるお子様以外にも、パーソナリティ障がいと呼ばれる症状群の方達も他者との関係を理由に自傷行為を行うことがあります。

※ 自殺はわかりやすいですが、過度な飲酒や接触、その他の行為も自分自身に対しての自傷行為と捉えて考えることができます


Marsha M. Linehan (1993)

発達障がい、自閉症、パーソナリティ障がい、これらは精神疾患の診断書に書かれている症状群です。

さて、精神疾患がある場合のみこのような不適切な他者への注意引きが生じるのでしょうか?

以下、そのことについて考えて行きましょう。



人からの注目は欲しい、精神疾患のひとも、私たちも

ここまでは自傷行為という自らを傷つける行動を取ることで他者からの注目を得ることがある、

という例を発達障がい、自閉症、パーソナリティ障がいの方達を例に書いてきました。


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自傷行為は派手ですが、不適切に人から注意を引く方法は自傷行為だけではありません


例えば「話を盛って伝える」はどうでしょうか?

実際は小さい話なのに、尾鰭をつけて話を盛って伝えたことはないでしょうか?

これは相手から「すごい」とか「おもしろい」とか、興味を引くために行うこともあるでしょう。

ほとんどの場合は笑い話で済んでしまうことも、状況によっては話を盛って伝えたことで大変なことになってしまうこともあります。

私も話を盛ったことがあってそのときは良かったのですが、あとで後悔をしたことがあります。

こういうこと、みなさん、ありませんか?


駅で友達と一緒に大きな声を出して「お前ー、うっさいわー」などと笑いを取ろうとしている人はどうでしょう。

グループ内の人たちからは注目は得られる(笑ってもらえる、喜んでもらえる)けれども、グループ外の人からするとうるさいと映り社会的には不適切かもしれません。


弟ばかりが親に相手にされるので、お兄ちゃんは悪いことをする(例えば物を投げる、弟を叩く)ことで親からの注目を得ることがあります。

信じられないかもしれませんが、親から「怒られる」行為でさえ、相手にされないことと比較すると強化的に働き、悪い行動を行い続けるお兄ちゃんもいるのです。


求愛は異性への注意引きですが、女性が困っているにも関わらず、何度も求愛してしまうことがトラブルとなるケースが社会問題になることもあるでしょう。

「この人4回も告白してきた。もういいか、1回付き合ってみようかって思って付き合って、そして私たち今、結婚しました」とかの話も聞いたりするかもしれません。

成功例を見れば何度も求愛することは美しく見えることもありますが、「しつこい」と問題になるケースもあるので、線引きを相手のリアクションを見て行う必要があります。


そして私たちが持つ、「嫉妬」「やきもち」「ねたみ」などの感情は特に不適切な注意引きを行う動機付け高めるかもしれません。

例えば恋愛中、相手の愛情を試すような行為を行う人もいるでしょう?

親の愛情を試す、教師の愛情を試すとかも?


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このように見ていくと特に精神疾患を抱えているひとだけが不適切な注意引きを行うと言えば、

そんなことは無いことがわかります


私たち人間は周囲から注目されることが生まれ持って強化的に働く生き物なのでしょう。

と、私は思っています。


注目を浴びることが職業に繋がることもしばしばでアーティストからお笑い芸人、モデル、インフルエンサーなどいわゆる見られる仕事を含め、

会社の上司、大工の棟梁、お坊さん、親御様など人からの信頼や注目を求められることが必要となる立場は数え出すとキリがありません。


例えば本屋に寄れば目に付く「コミュニケーション」や「人との付き合い方」と書かれた本、そのような書籍が売れているのであれば、上手く周囲の人から受容される(注目を得られる)ことを求めている人も多いのかもしれません。

他にもSNSで私たちは顔も見たことがない人からの「いいね」でも嬉しくなり、投稿行動が強化されている人たちもいるでしょう。


「いいね」に夢中になってお子様を放置しないことには気をつけたい!


不適切に注目を集めることに対処する

本ブログページは「発達障がいや自閉症者が不適切に人からの注目を集めることに理解を示す」というタイトルでしたが、ここまでの内容から、

発達障がいの人や自閉症の人が行動するとき、その行動が人からの注目を集める目的の可能性のこともある、ということがわかりました。

そして人からの注目を集めるために行動することは、私たちみんなもそうで、何も特別なことではないことも書いてきました。


だから「不適切な方法(行動)で注目を集めても仕方ないよ」ということではありませんが、

ここまでの内容で発達障がいの人や自閉症の人も人から注目を得る目的で行動をすることがあることがあり、

そのとき「今、もっと俺を見てよ、私を見て」という気持ちが溢れているタイミングかもしれないと一考することは大切かと思います。

もちろん注目を得る目的以外で社会的に不適切な行動が生じている場合もありますので、ここは分析も重要です。

しかしそのような気持ちを汲むことが大切なときもあります。


さて、注目が強化子となっている不適切な行動に対しての対応策についてもご紹介しましょう。


もし問題行動が注意引きで生じることがわかっていた場合、あらかじめ問題行動が生じる前から多量に注目を与え問題行動を予防することです。

以前『(ABA自閉症療育の基礎63)オペラント条件付けー速攻で問題行動を減らす「NCR:非随伴性強化法」(https://en-tomo.com/2020/12/02/non-contingent-reinforcement/)』というブログページでご紹介しましたが、

あらかじめ問題行動が生じやすい場面や時間にアテがあるのならば「今日も問題行動は(いつも通り)起こるだろう」という意識で予防を試みましょう。


例えば問題行動が生じるのがスーパーでのお買い物中だったりした場合、いつもよりも格段にスムースにお買い物が進み、親子双方のストレスが著しく軽減される可能性があります。

このとき「良い行動」を見つけ褒めてあげることが大切です。


いつもは問題行動を起こしていた場面・時間に多量の注目を与えたことで問題行動を起こしていないとすれば、代わりに適切な良い行動を行なっている可能性が高いでしょう。

あなたは問題行動が起こっていない時間はお子様の良い行動を探さねばなりません。

それは「まっすぐ歩く」や「静かに歩く」、「欲しいものが売っていても手を伸ばさず歩ける」、「『うん』と返事をする」など、もしかするとあなたからするとできて当たり前と思う行動であったとしても褒めなければいけません。

理由は普段、問題行動が生じていた場面・時間での別の行動を強化して行くことで、さらに問題行動が生じる可能性を下げていくことを狙っているからです。


オペラント条件付けー速攻で問題行動を減らす「NCR:非随伴性強化法」のサムネイル

以上のように関わっていた上で問題行動が生じてしまった場合はどうすれば良いでしょうか?


Mary Lynch Barbera (2007)を参考に書いて行きます。


もし問題行動の発生を予防できず、問題行動が起こってしまった場合、

あなたの前に子どもを立たせ「◯◯くん、静かにしなさい」と言い、唇に指を当て「しーっ」というサインを出し、1から5までを声に出すか心の中でカウントしましょう。

そのあと子どもが口で「ママ」などと口で言うか、身振りで注目を要求させてから、存分に注目を与えてください。

子どもが5秒間静かにできていれば上のように注目を与えるのですが、静かにできなかったときは最も静かになってから5秒間カウントし直します。


紹介されているのは以上のような手続きでした。


以上の手続きを徹底して行えた場合、問題行動は減って行くと思いました。

お子様は問題行動を起こしても目当ての注目が手に入らないことを学んで行くため、結果的に問題行動が生じる可能性が低減して行くのです。


但し気をつけないといけない難点が2点あります。

1点目は5秒間静かにしていることを待つことができないシーンがあることです。

手続きでは5秒間静かにできていれば上のように注目を与えるのですが、静かにできなかったときは最も静かになってから5秒間カウントし直すため無理な場面も出てくると思います。

例えば電車内、病院などで問題行動の癇癪が出た場合、子どもが静かにするまで「しーっ」という態度を取って毅然と待つためにはとてつもない精神力が必要でしょう。

この場合「(ABA自閉症療育の基礎77)問題行動が発展し悪化するプロセスー消去バーストとシェイピング(https://en-tomo.com/2021/02/11/aba-problem-behavior/)」で紹介したように消去バーストを強化してしまうことによる問題行動の悪化も意識しなければいけません。


2点目は例えばお母様はそのように接することを徹底できたとしても、もし他の人(例えば父親)が徹底できなかった場合、お母様の前では問題行動が生じないものの、父親の前では生じ続ける可能性もあります。


(ABA自閉症療育の基礎77)問題行動が発展し悪化するプロセスー消去バーストとシェイピングのサムネイル

このように考えるとMary Lynch Barbera (2007)の述べている方法も万能とは言えないかもしれませんが、それは問題行動が生じてしまった場合においてです。

基本的に問題行動は予防する、予防した上で問題行動を行なっていない状況で適切な行動を強化する

これはABA自閉症療育、問題行動対応の基本と言えるでしょう。

特に「適切な行動を強化する」ということは忘れがちですが、ここを怠らないことがポイントです。



さいごに

発達障がいや自閉症者が不適切に人からの注目を集めることに理解を示すというタイトルで書いてきましたが、

発達障がいや自閉症者が不適切に人からの注目を集める行動を行う理由はシンプルで、私たちもそのような行動をするし、同じように彼らも人からの注目を得る目的で行動を起こすからです。


もし持っているスキルのレパートリーが少ない場合、周囲から見て不適切に見える行動によって周囲からの注目を得ようとすることがあります。

これは不適切な行動でないと周囲は注意しない(注目しない)ので、周りから見て見過ごせない行動を行うようシェイピングされていくからです。

周りから見て「怒られている」とか「注意を受けている」と見える状況でさえ、相手にされないことと比較すると本人からすればマシで、注目を得ていることもあるでしょう。


発達障がいや自閉症の方々、私たちも人からの注目は大切です。

人から注目を得る方法はたくさんあると思いますが、発達障がい、自閉症の方々だけでなく私たちも社会的に不適切(受け入れられない)形で人からの注目を得ることがあるでしょう。

特にスキルのレパートリーが少ない発達障がい、自閉症の方々の場合、その点に理解を示し寄り添う気持ちでいることが解決の第一歩かと思います。


発達障がいや自閉症の方が不適切に人からの注目を集める行動を行う理由があることに理解を示し、普段から注目を、多くの関わりを持つこと意識してあげてください。

普段から意識して与える適切な行動への注目の量はお子様の安定を築き、問題行動の低減にも繋がることでしょう。



【参考文献】

・ Brian A. Iwata・Gary M. Pace・Michael F. Dorsey・Jennifer R. Zarcone・ Timothy R. Vollmer・Richard G. Smith・Teresa A. Rodgers・Dorothea C. Lerman・Bridget A. Shore・Jodi L. Mazaleski, Han-Leong Goh・Glynnis Edwards Cowdery・Michael J. Kalsher・Kay C. Mccosh・Kimberly D. Willis (1994) THE FUNCTIONS OF SELF-INJURIOUS BEHAVIOR: AN EXPERIMENTAL-EPIDEMIOLOGICAL ANALYSIS. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS. Nov.2 27,215-240

・ Mary Lynch Barbera (2007) The Verbal Behavior Approach 【邦訳: (監訳)杉山 尚子 (2021) 言語行動 VB指導法 発達障がいのある子のための言語・コミュニケーション指導 学苑社】

・ Marsha M. Linehan (1993) Skills Training Manual for Treating Borderline Personality Disorder 【邦訳: (監訳)小野 和哉 (2007) 弁証法的行動療法実践マニュアル 境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチ 金剛出版】

・ WHO ICD-11 6A02 Autism spectrum disorderhttps://icd.who.int/browse11/l-m/en#/http://id.who.int/icd/entity/437815624