(ABA自閉症療育の基礎89)ABA(応用行動分析)の基礎「強化履歴」、「忘れる」は可能か?過去の学習(経験)は私たちにどう影響を与える?

Enせんせい

本ブログページのタイトルは『ABA(応用行動分析)の基礎「強化履歴」、「忘れる」は可能か?過去の学習(経験)は私たちにどう影響を与える?』ということで書いていきたいと思います


強化履歴(きょうかりれき)とはいったいなんでしょうか?また私たちの行動にどのように影響を及ぼしてくるのでしょうか?そしてABA自閉症療育における強化履歴が影響する場面は?

強化履歴について見る前に、以下の前置きをご覧ください。

以下の前置きが「あたりまえだろ」と感じる方はこのブログページに必要なABAの基礎知識の理解はありますので下にスクロールして「ABA(応用行動分析)における強化履歴とは何か?」の項まで飛ばしてもらってOKです!



強化履歴本題の前置き

これまでブログでご紹介してきたように私たちが自発的に行うオペラント行動は、行動した結果によって影響を受け増減するのですが、

ABAでは結果によってこのような行動が増えた場合を「強化」もしくは「強化随伴性(きょうかずいはんせい)」と呼びます。

行動を増やした結果が「強化子(きょうかし)」と呼ばれるものです。

また行動が減った場合は「罰(書籍によっては弱化)」もしくは「罰の随伴性」と呼びます。

行動を減らした結果は「罰子(ばっし)」と呼ばれるものです。

他に今まで提供されていた強化子の提供が停止することで一時的な行動の増加を経たのちに徐々に行動が減少していく現象を「消去(しょうきょ)」と呼びます。


私が人に説明するときによく使う「強化・罰・消去」の学習曲線の例

上に書いたこれらはオペラント条件付けの原理であり、オペラント条件付けとはオペラント行動を扱う原理です。

オペラント行動を小野 浩一 (2005)は「行動ののちの環境変化によってその生起頻度が変化する行動」と述べました。

また佐藤 方哉 (2001) は「オペラント行動(operant behavior)とは、その行動が生じた直後の環境変化(刺激の出現もしくは消失という結果)に応じて、その後にその行動が生じる頻度が変化する行動である」と述べています。

小野 浩一 (2005)・佐藤 方哉 (2001)が述べているように行動のあとの結果によって制御(コントロール)されるオペラント行動ですが、自分の意思でコントロール可能な自発できる行動はオペラント行動と考えて良いでしょう。


ABAで考える行動はオペラント行動以外にレスポンデント行動という種類のものもあります。

※ ABAについて詳しい人はオペラント、レスポンデント意外に「RFT:Relational Frame Theory(関係フレーム理論)」というものも知っているかもしれませんね、一旦それは置いておいて・・・

オペラント行動は生態がコントロールできる行動だったことに対してレスポンデント行動は生態がコントロールすることが難しい行動です。

レスポンデント行動は例えば反射や胸のドキドキ、また恐怖、悲しみ、楽しみ、怒り、嫌悪といったさまざまな情動に関連しています(参考 Jonas Ramnerö & Niklas Törneke,2008)

このようなレスポンデント行動は「レスポンデント条件付け」で条件付け可能です。



上のイラストのようなユニットを使用してレスポンデント条件付けを行うことが可能で、どのように行うことができるかについては、

「(ABA自閉症療育の基礎5)レスポンデント条件付けの原理1(https://en-tomo.com/2020/07/18/responsive-conditioning-base1/)」

「(ABA自閉症療育の基礎6)レスポンデント条件付けの原理2(https://en-tomo.com/2020/07/19/responsive-conditioning-base2/)」


(ABA自閉症療育の基礎6)レスポンデント条件付けの原理2のサムネイル

をご参照ください。


上のURLをご参照いただくとレスポンデント条件付けにも「強化」や「消去」があることがわかります。


前置きが長くなってしまいましたが、本ブログページでは「強化履歴(きょうかりれき)」とはいったい何か?ということから、強化履歴が個体に与える影響、そして強化履歴がABA自閉症療育でどのように関わってくるのか、という点について書いていきましょう。



ABA(応用行動分析)における強化履歴とは何か?

前置きでオペラント行動・条件付け、レスポンデント行動・条件付けについて簡単に触れましたがABA(応用行動分析)の専門家はこれらの原理を使用して人間を含む生態を理解しようとします。

例えばNiklas Törneke (2009)は行動分析学(ABAのこと)のための2つの基本原理は、オペラント条件付けとレスポンデント条件付けであると述べています。


日本行動分析学会 (2019)行動分析学では行動は遺伝、過去経験、現在環境という3つの条件によって決定されていると考えられるが、行動履歴(※強化履歴のことと思ってもらって大丈夫)は最も広義にはあらゆる過去経験を指すと述べました。

つまり強化履歴とは遺伝や現在の環境ではなく、過去に環境から受けてきた経験値(学習歴)のことです。


James E. Mazur (2006)などの書籍を参考にしても、強化履歴は「強化スケジュール」の文脈で語られることが多いのですが、強化スケジュールはABAを勉強するときに挫折しやすい複雑な項目ですので「強化履歴」については過去の経験値と思ってもらうと簡単だと思います。

※ABA自閉症療育をする上で最低限知っておきたい強化スケジュールの基礎は「(ABA自閉症療育の基礎23)オペラント条件付けー強化スケジュール(https://en-tomo.com/2020/08/18/aba-operant-reinforcement-schedule/)」のURLを参照してください


強化履歴について以上のように今までどのように生活をし、個人がどのような経験を得てきたか?と考えてもらって大丈夫です。


この強化履歴、またABAについて少し余談かもしれませんが少し書いておきたい内容があります。

知っていることで強化履歴についての理解も深まるでしょう。

それはABA(ABA自閉症療育)は言葉の促進や問題行動を解決するテクニックではないということです。


Enせんせい

ABA自閉症療育もたまにTVなどで紹介されるくらい、療育界隈ではメジャーになってきたイメージを持っています

メジャーになるのは嬉しいのですが、ABA自閉症療育がカードを使うとか、無視をするとか、

ABAをそういったテクニックだと思っている人も結構多いのではないかと感じています


ABAは人間を含む生態を理解しようと行動を研究してきた(行動分析学)結果、その研究内容が例えば発達に遅れのあるお子様や成人に使用することで効果があるということがわかってきた、という流れが本筋になります。


ABA(応用行動分析学)は「行動分析学」という学問をベースに利用(応用)した支援

そのため「言葉の促進や問題行動ではない」例えば今あなたがウェブブラウザを通してこのブログを観覧している行動もABAでは理論立てて理解できるのです。

私たちは特別な目的や問題がなくとも普通に生活を送るだけでさまざまな自発的な行動を行なった結果に触れているし、さまざま情動が喚起されて関連づいていて、さまざまな経験値を得ています。

そのような経験値を得る生活を分析する場合に、ABAではオペラントやレスポンデントの理論で理解し分析するということです。

このような視点を持ってABA自閉症療育に取り組むことはABA自閉症療育を行う上で視野を広げます。


つまり何が言いたいかと言えば、このような視点を持っていることで、

「(ABA自閉症療育の基礎76)子どもと親の相互作用ー支援者側もお子さんからの影響を受け、強化され、消去され・・・療育モチベーション(https://en-tomo.com/2021/02/07/child-parent-interaction/)」

で書いたように支援される側のお子様だけでなく支援する側の私、そして親御様たちも支援対象者(お子様)に強化されていることに気がつけるのです。


「療育をしている私たち側も親御様の成長から「療育行動」が強化される」(ABA自閉症療育の基礎76)子どもと親の相互作用ー支援者側もお子さんからの影響を受け、強化され、消去され・・・療育モチベーションのサムネイル

このように考えるとなにもこのブログページでご紹介している強化履歴というものも発達に遅れのあるお子様や精神疾患を抱える人だけに存在する特別なものではなく、

そうでない人たちも含めた、普通に生活をしている中で結果や対提示からどのような学習(経験)がされてきたか?という個々人の歴史を指す言葉と知るとさらに理解が深くなります。


Enせんせい

強化履歴と言われると専門用語に聞こえ難しく感じてしまうかもしれませんが、

日本行動分析学会が言っているように個人的に持っている過去の経験と捉えれば良いでしょう


自閉症児・者もあなたも、わたしも、日々強化履歴を積み上げて生活をしていて、特にそれは特別なことではありません。

次の項では自閉症児・者だけではなく私たちにも該当する、過去の経験が行動に与える影響について見ていきます。



ABA(応用行動分析)、強化履歴が与える影響

強化履歴が個人の経験だとすれば、個人の経験はどのような影響力を持っているのでしょうか?

B. F. Skinner (1950)のエピソードですが、スキナーは条件付けと消去の間にある時間経過は驚くほど意味のない変数であると述べました。

エピソードはB. F. Skinner (1950)で紹介されているのですが半透明のキイを突く条件付け(オペラント条件付け)されたハトたちがいたようです。

ハトはその後、繁殖用である通常の飼育部屋へ移され飼育され続けました。

そのようなハトたちに4年以上前に条件付けけたキイの模様を提示したとき、ハトたちは以前分化強化を受けた正確な位置を突き出したというのです。

これは学習が「行動を行っていなかったから忘れる」というものではないことを示していると思います。


また上はオペラント条件付けの実験エピソードですが、レスポンデント条件付けではどうでしょうか?


今田 寛・中島 定彦 (2003)の著書で古典的条件付け(レスポンデント条件付け)の専門書があります。

私はレスポンデント条件付けよりもオペラント条件付けを専門に学んできたこともあり、難解な1冊でしたが非常に読み応えのある本です。


今田 寛・中島 定彦 (2003)

今田 寛他 (2003)の著書ではレスポンデント条件付けの理論がいくつも紹介されています。

本を読んでいくとレスポンデント条件付けの消去過程で生態が得られる学習は「CSはCRを誘発しなかった」という学習であり、「忘れるではない」ことが伺えます。


また消去手続きについて、例えばオペラント条件付けでも(参考 Raymond .G .Miltenberger, 2001)、レスポンデント条件付けでも(参考 坂上 貴之・井上 雅彦, 2018)一度消去された行動・反応が復起する「自発的回復」という現象が確認されています。

いろいろな現象から鑑みるに、オペラント条件付けでもレスポンデント条件付けでも私たちは一度学習したことを「忘れる」ことは困難なことなのでしょう。


これは悲しいことなのか、嬉しいことなのかは人によって、また個人の中のエピソードによって違いがあると思いますが、私たちは「忘れる」ということを都合よく操作できない身体のようです。


Enせんせい

私たちは嫌なことや辛い経験を忘れようと努力する・した経験がありませんか?

オペラントにせよレスポンデントにせよ1度学習された経験(強化履歴)はここまで書いてきたように簡単に「忘れる」ことができないとすれば、これは悲観的なことでしょうか?


Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson (2012) 「Acceptance and Commitment Therapy(ACT:アクト)」の専門書の中で「健康とは感情的な苦痛がない状態であり、苦痛を支配するための意図的な努力があれば、健康の維持・向上はおのずと達成されるはずだ」という認識は言語的なトラップにハマっていると述べています。


Steven C. Hayes他 (2012) も参考にして、これまで書いてきたように忘れるということは操作が難しいという前提に立てば、心的な苦痛、抑うつ経験、不安経験などに悩んでいるときに忘れることを望むことは建設的でない可能性があるでしょう。

そう考えたとき、私たちはその苦痛を忘れるのではなく、苦痛の意味(機能)を変化させることが建設的であると私自身は信じています。


これはABA自閉症療育でもそうで私は親御様に「問題行動を解決するとき、消去をして問題行動を無くすより、新しい学習を生じさせて学習の上書きをする方が簡単」と伝えるのですが、それは次の項で書いていきます。



ABA(応用行動分析)、強化履歴が自閉症児に与える影響

前項で私は「問題行動を解決するとき、消去をして問題行動を無くすより、新しい学習を生じさせて学習の上書きをする方が簡単」と親御様に伝えると書いたのですが、

これはどういったことでしょうか?


ABAでなくとも、療育を行ったことがあるお子様をお持ちの親御様は以下のようなエピソードに遭遇したことがあるかもしれません。


・ 親御様の「片付けなさい」の指示はほとんど聞かないのに、先生の指示だと聞く

・ 親御様の前では良くお話をするけれど、外ではほとんど話をしない

・ 先生の前だとしっかりお勉強するけど、親御様の前ではお勉強をしてくれない

・ 親御様に対しては「貸して」というけどお友達には言えない

このようなことが生じると親御様は「なんで?」と頭を傾げます。


親御様

なんで?


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専門的な言い方をすれば上記の状況は「弁別が生じている」や「刺激性制御が確立されている」などという言い方をするのですが、

本ブログページの「強化履歴」をテーマに上の状況の理解を試みてみましょう


「親御様とお子様の関わりの歴史」は「先生やお友達の関わりの歴史」と比較するとかなり長くなります。

親御様はその他の人たちとは違って基本的にはお子様と0歳のときからの関わりが続いているのです。


対して先生やお友達は?

かなり早く療育を始められる親御様の場合でも2歳前後、プレ保育等で同年齢のお子様よりもお友達と早く関わるお子様でも3歳くらいではないでしょうか?


例えばお子様がまだ今よりも小さい頃、親御様がおもちゃを「片付けなさい」と指示したとき、お子様が片付けないことがあったとしましょう。

また親御様も「もうすぐご飯だから片付けなさい」や「もうすぐお風呂に入るから片付けようか」などの指示をそのとき出していたとすれば、その指示が暗に示すのは「今すぐに片付けろ」というメッセージではないことがあります。


何年も何年も続く関係性の中で「親御様の指示に対してはすぐに片付けなくてもなぁなぁで済まされることが多い」という強化履歴(学習経験)が積み上がっていったとすれば?


お子様と親御様の関係の中で積み上げてきた関係性

例えばそのような強化履歴の積み上げがあったあとで、お子様が4歳になったころ新しく療育の先生と出会いました。

療育の先生は「片付けなさい」とお子様に伝え、お子様が5秒間に片付け行動を始発させないことがあると適切にプロンプトを入れお子様の片付け行動を促します。

これは片付けなくてもなぁなぁで済ませることなく、指示があったときにはきっちりと片付けさせるということです。

そして先生はお子様の片付け行動が出現するとしっかりと強化子を提示することでお子様の片付け行動を強化していきました。


先生とお子様の間で行われるこのような関係性によってお子様の片付け行動は強化されていき、

療育を開始しして少しすると先生の「片付けよう」の指示を聞くだけで、プロンプトがなくともお子様は出していたおもちゃを片付け出すようになりました。


これを見て驚いたのは親御様です。マジックミラー越しに療育を見ていた親御様は「あれ?うちじゃ全然片付けないのにな」という気持ちが湧き上がってきます。


親御様

マジで!?


Enせんせい

ここで考え方の落とし穴を1つご紹介しましょう


よく陥りがちな落とし穴は「先生は子どもとの関わりが上手だから、子どもは片付けをしたのだ」というように理由づけてしまうことです。

確かに先生の関わりが上手であることはそうなのですが、このように理由づけて納得して終わってしまってはなんの解決にもなりません。


忘れてはいけないのは「片付けなさい」という指示があったとき、これまでのお子様の強化履歴の中で、

・ 親御様の前ではすぐに片付けなくてもよかった

・ 親御様は片付けた後、とくに強化を示さなかった可能性がある

・ 先生の前ではすぐに片付けられることが必要に応じプロンプトされ、強化子が提示された

上記の違いがあるということです。


このような強化履歴からくるギャップを埋めるためにはどのようにすれば良いでしょうか?


この項の冒頭「問題行動を解決するとき、消去をして問題行動を無くすより、新しい学習を生じさせて学習の上書きをする方が簡単」という内容をご紹介しました。

これはどのようなことなのか以下の(1)と(2)の方法を見比べていく中で解説をしていきましょう。


ーー方法(1)ーー

親御様が採択できる1つのアプローチにお子様の片付け行動が出現した際、それに強化子を提示し、片付け行動を強化するというアプローチが考えられます。

仮にこの方法を「方法(1)」と名付けましょう。

これは親御様の片付けの指示に対し、お子様も片付け行動を遅いなりに出現させることもある場合、遅いなりにも出現したお子様の片付け行動を強化していくことで「片付け行動の向上」を狙うアプローチです。

この方法でも良いのですが、この場合、親御様はお子様の「片付け行動の出現」を強化するために待たなければいけません。

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ではもっと簡単であろう方法は?

以下「方法(2)」について見ていきましょう。


ーー方法(2)ーー

先生がやっていたように「片付けなさい」と言って片付け出さない場合、身体的なものやモデルなど、何かしらのプロンプトを入れるようにします。

プロンプトは今まで家の中では存在しなかった刺激です。

お子様から見ればお片づけのシチュエーションでこのようなプロンプトの関わりを親御様からされたことがないとすれば、これは今までになかった新しい学習状況になります。

その新しい状況の中でプロンプトにより「片付ける」行動を出現させ、強化するのです。

このように今までとは違う刺激を提示し、今までとは違った状況を作り、その新しい状況の中で行動させ、新しい学習を成立させる。

これが方法(2)になります。

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ただターゲット行動を待って強化してシェイピングしていく「方法(1)」より、プロンプトという新しい刺激を用いて状況(専門的には随伴性)を変え、強化することで、学習の上書きをする「方法(2)」の方が解決は簡単で早いことの方が多いです。

注意点としては「方法(2)」で使用するプロンプトは適宜フェイディングしていくようにしましょう。

プロンプトは長く同じレベルで使用し続けるとお子様がプロンプトを待ってから行動するという、プロンプトに依存した状態になってしまうことがあります。

O.Ivar Lovaas (2003) はプロンプト依存を避けるために、指導者は全てのプロンプトを段階的に撤去しなければならないと述べました。


プロンプトを段階的に撤去する手続きを「プロンプトフェイディング」というのですが、プロンプト依存を避けるためにも使用しているプロンプトの量を徐々に減らしていく必要があります。

この例の場合だと「片付けなさい」の指示だけ残すところまでプロンプトはフェイディングしていきましょう。

これは「最初に狙ったターゲット」と同じ状況です。


実はプロンプトを使用せずお子様の片付け行動を待って、行動を強化していくことで「片付け行動の向上」を狙う「方法(1)」の場合も、結果的には強化履歴の書き換えになるため「学習の上書き」と呼べると思うのですが、

私は特に例えば「方法(2)」で示したように今までになかったプロンプトを使用する、などお子様から見て別の場面に見える学習状況を作って問題行動を適切行動に上書きするアプローチの方が問題解決が早く簡単であると考えています。


この項目では親御様や先生と言った、特定の人の前と別の人の前で変わるお子様のパフォーマンスについて強化履歴の観点から分析を行いました。


実際は強化履歴の違い以外にも「意図していないプロンプト使用による刺激提示の仕方の違い」なども考慮に入れて行動パフォーマンスのギャップを分析するのですが、

強化履歴の違いによる行動パフォーマンスの違いについてこの項では書かせていただきました。



さいごに

本ブログページでは「強化履歴」ついて書いてきました。

例えばABAの専門家はこの強化履歴を考慮した分析から、最初にお子様と自分が関わったときから「あーこの子、多分家でこのような関わりが多いのだろうな」など分析が可能となります。

お子様への対応が終了しその後、親御様フィードバックの際「家ではXXということはありませんか?」と話すと結構当たるものです。


また本ブログページで見てきたように「強化履歴」から出現する行動パターンは自閉症児特有のものではありません。

強化履歴が示す行動こそ、私たちが生きてきた証、過去の経験の集合体なのです。


本ブログページでも書きましたが強化履歴は専門書では「強化スケジュール」という項目で書かれていることが多いでしょう。

強化スケジュールはABAを学ぶ人にとって結構難解に思われるステップの1つです。

特定の強化スケジュールに見られるスキャロップなどの現象はマニアックで個人的に魅了されますが、

このブログはあくまで「ABA自閉症療育を家庭で実践しようよ」という趣旨のブログページ。


「強化履歴」については個人の経験なんだと覚えておいてもらって、日々の療育生活に生かしていただければ良いと思います。


次は「代表例教示法」という般化を促す介入方法について書いて行きましょう。

般化はABA自閉症療育で重要なトピックですので次のページで代表例教示法を学んで行きます。



【参考文献】

・ B. F. Skinner (1950)Are theories of learning necessary? Psychological Review, 57, 193-216 【邦訳 スキナー著作刊行会 (2019) B. F.スキナー重要論文集Ⅰ 心理主義を超えて 勁草書房】

・ 今田 寛・中島 定彦 (2003) 学習心理学における古典的条件づけの理論 パヴロフから連合学習研究の最先端 培風館

・ James E. Mazur (2006) LEARNING AND BEHAVIOR:6Th ed. 【邦訳 磯 博行・坂上貴之・川合伸幸,訳 (2008) メイザーの学習と行動 日本語版 第3版 二瓶社】

・ Jonas Ramnerö & Niklas Törneke (2008)The ABCs of HUMAN BEHAVIOR:BEHAVIORAL PRINCIPLES FOR THE PRACTICING CLINICIAN 【邦訳: 松見純子 (2009)臨床行動分析のABC 日本評論社】

・ 日本行動分析学会 (2019) 行動分析学辞典 丸善出版

・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】

・ 小野 浩一(2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館

・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】

・ 坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ

・ Steven C. Hayes・Kirk D. Strosahl・Kelly G. Wilson (2012) Acceptance and Commitment Therapy The Process and Practice of Mindful Change 【邦訳: 武藤 崇・三田村 仰・大月 友 (2014) アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版 星和書店】

・ 佐藤 方哉 (2001) 【浅野 俊夫・山本 淳一・日本行動分析学会 (2001) ことばと行動―言語の基礎から臨床まで ブレーン出版】