(ABA自閉症療育の基礎85)ABA自閉症療育を種類分けする:EIBI(DTT) VS NBI(PRT等)、ディスクリート型とフリーオペラント型療育との違い、簡単な歴史

これまでブログの中では、


(1) 「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」

(2) 「DTT:discrete trial teaching(離散型試行訓練)」


(3) 「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:(自然主義的行動療法)」

(4) 「PRT:Pivotal Response Treatment(機軸行動発達支援法)」

(5) 「ESDM:Early Start DENVER Model(アーリースタートデンバーモデル)」

(6) 「JASPER:joint attention symbolic play engagement and regulation(共同注意の象徴的な遊びの関与と調節)」

(7) 「機会利用型指導法」


などの療育方法をご紹介してきました。


上にあげたもの以外にも「エクスポージャー」や「NCR」、「罰」や「トークン」などの介入方法もご紹介していますが、これらはABA自閉症療育の技法と言うよりは、療育に限らないもっと幅広い技法です。

このブログページでは箇条書きした(1)ー(7)の部分、ABA自閉症療育に分類される技法たちについて整理しまとめていきましょう。


んー、マニアック!こういう記事が私自身は好きです(笑)


ABA自閉症療育の箇条書きにした赤色青色の部分を整理して理解することでABA自閉症療育の理解が増すだけでなく、自分が今なにを使ってどう支援をしているのかが明確になります。


Enせんせい

自分が今何をしているのかを明確にすることは、ABA自閉症療育を行う上で出来ると有効です


知っていると使える知識です

このブログページでは、

まず最初にABA自閉症療育ではABA(応用行動分析学)の理論からオペラント条件付けの理論を主に使用して支援していると言うことから見ていきましょう。

そして次にディスクリート型とフリーオペラント型のオペラント条件付けの実験条件を解説して行きます。

実はこのディスクリート型とフリーオペラント型のオペラント条件付けの実験条件の違いが(1)ー(7)の違いです。

最後に(1)ー(7)の部分について療育の歴史的な背景についても少し整理します。



ABA(応用行動分析)におけるオペラント条件付けによる支援

Niklas Törneke (2009)行動分析学(ABAのこと)のための2つの基本原理は、オペラント条件付けとレスポンデント条件付けであると述べています。

このオペラント条件付けとレスポンデント条件付けについてはこれまでこの「ABA自閉症療育で使う基礎理論(https://en-tomo.com/aba-basic/)」の章、前半で解説をしてきました。


オペラント条件付けで条件付け可能な行動をオペラント行動と呼び、レスポンデント条件付けで条件付け可能な行動をレスポンデント行動と呼ぶのですが、

Baily・Mary Burch (2006) の推測によれば日常生活において私たちはオペラント行動とレスポンデント行動を20対1くらいの割合で使用しています。

大人の臨床の場合レスポンデント行動についてもかなり扱うのですが、お子様の療育の場合にはオペラント行動、オペラント条件付けの理論を使用することがほとんどとなるでしょう。

例えばO.Ivar Lovaas (2003) は自閉症や発達に遅れのある子どもたちに言葉を教える効果的な方法が、弁別学習、離散型試行訓練(※離散型試行訓練とはDTT:Discrete Trial Teachingのこと)、プロンプティングとプロンプト・フェーディング、シェーピング、チェーニングなどオペラント条件付けの実験室研究から導き出したものであることを私たちは研究から示したと述べています。

O.Ivar Lovaas、日本語で「ロバース」、「ロヴァース」と訳される彼についてはABA自閉症療育に興味を持っている人は名前くらいは知っていても良いでしょう。


実際にオペラント条件付けを使用したO.Ivar Lovaasの行った研究はその後も自閉症療育でたくさんのエビデンスを上げており、そのことについては「(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/)」でご紹介しました。

※ 2020年3月30日までに調べたメタ分析のデータです。現在は海外文献で他のメタ分析も刊行されている可能性があることはご了承ください。これだけメタ分析があるというのは自閉症研究界隈では凄いことだと思います


(ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析のサムネイル

簡単に言えば、

オペラント条件付けによる支援とは、オペラント条件付けの研究から導き出される理論を用いて支援を行う。そしてABA自閉症療育では主にオペラント条件付けの理論を用いて行うということです。


Enせんせい

主に、で、決してレスポンデント付けの知識が使えないと言っているわけではないことは注意してください


オペラント条件付けによる支援では、


・ 強化

・ 弁別

・ 消去

・ 確立操作


などオペラント条件付けが研究から導き出した理論は多岐に渡ります。


オペラント条件付けの最も基本的なこととは?

佐藤 方哉 (2001) はオペラント行動とは、その行動が生じた直後の環境変化(刺激の出現もしくは消失という結果)に応じ、その後にその行動が生じる頻度が変化する行動であると述べています。

行動の後に続く結果によって直前の行動が将来増えたり減ったり、影響を受ける、これがオペラント条件付けの最も基本的な原理です。


Sidney W. Bijou & Donald M. Baer (1961) 環境における行動の結果と関数的な関係があるものとして最も良く理解される行動がオペラントと呼ばれると述べました。

太文字ピンク色のところを見てもらうとオペラント条件付けで扱うオペラント行動は、その行動が環境との関わりの中で変化して行くと捉えることが特徴です。

大河内 浩人 (2007) は行動分析という学問をあえて一言で表すことを試みるのならばそれは「個体と環境との相互作用を明らかにする学問」だと述べていますが、まさにオペラント条件付けでは環境と個体の行動との関わりがフォーカスされ分析されます。

少し難しい点は、オペラント条件付けでいう「環境」は自分自身の思考や考えも環境と捉えて分析対象とする点です。

そのため「場所」、「周りの人」、「物」など私たちが普段「環境」と呼んでいるものよりも、オペラント条件付けの理論では幅広く捉えて考えることは覚えておきましょう。


またB. F. Skinner (1966) は行動の科学において自然に得ることのできるデータは、ある任意の行動がある時間において生起する確率であると述べていました。

B. F. Skinner (1966) がこのように述べているように、オペラント条件付けで扱うオペラント行動は100パーセント生じる行動ではないということもポイントです。

つまりオペラント条件付けとは行動の結果の操作によって直前の行動の「生起確率」を上げたり下げたりする方法です。


日本ではオペラント条件付けによる自閉症療育はいつから行われてきたのか?

例えば1960年代、杉原 一昭・河合 芳文 (1966) は分裂病者や自閉症児は行動のレパートリーが狭く、他の人とのコミュニケーションが困難なので、強化として食物などを用い、オペラント条件付け法によって治療が行われ、大きな成果を収めていると述べています。

意外にも日本でも1960年代という早い時期からオペラント条件付けによる支援が自閉症児に有効であると考えていた研究者がいました。


ちなみに海外では子どもを対象とした研究は1930年代から行われてきたようです(参考 Skinner, B. F ,1982)

このような歴史を持つABA自閉症療育ですが、ABAはエビデンスに基づく自閉症療育の最先端にあります(Lisa McNiven, 2016)



オペラント条件付けー基礎実験から見るディスクリート型とフリーオペラント型の違い

オペラント条件付けの基礎実験はディスクリート型とフリーオペラント型の2つに分けることが可能です。


オペラント条件付けの実験、ディスクリート型とは、

「(ABA自閉症療育の基礎18)オペラント条件付けの起源「効果の法則」(https://en-tomo.com/2020/08/11/law-of-effect/)」

で紹介したEdward L. Thorndike(ソーンダイク)猫の実験箱の実験セットです。


(ABA自閉症療育の基礎18)オペラント条件付けの起源「効果の法則」のサムネイル

この実験セットは実験者の開始の合図があり、その合図の下で定められた行動が出現すると強化(エサ)を得るという実験セットになります。

このような実験セットはのちにSkinner(スキナー)によりディスクリートオペラントと名付けられたようです(参考 嶋崎まゆみ, 1990)


ソーンダイクの実験は1試行ごとに区切られ行われました。

実験者の開始の合図によって試行が開始し、実験者の定めた行動の出現により行動が強化され試行が終了する、このような実験セットをディスクリート型と呼びます。


対してスキナーの行ったオペラント条件付けの実験、フリーオペラント型とは?

フリーオペラントの実験セットではスキナーが行ったオペラントボックスという実験装置が例としてあげられます。

例えば箱の中にネズミを入れ、特に開始の合図などはなく、箱の中でネズミは自由に動けることがポイントです。

箱の中にはレバーがあり、レバーを押すとエサが出てくるのですが、ネズミはエサ(強化子)を得るために自由場面の中で自発的に行動(レバー押し)を行います。

このようにある程度の自由空間の中でも、ネズミの自発的行動を環境(バーと、バーによって出てくる餌)操作によって強化することが可能というところがスキナーの研究のポイントです。

このような自由に動ける場面で行動が強化される実験セットをフリーオペラント型と呼びます。


Enせんせい

以上のような区分けがあるのですが、これをABA自閉症療育のカテゴリーに分けて行くとどのようになるでしょうか?


以下、見ていきましょう。



ABA自閉症療育支援ーディスクリート型とフリーオペラント型

山本 淳一・松崎 敦子 (2016) を参考にすればABAにおける早期発達支援の代表的な指導法は「DTT」と「NBI」に大別できます。

山本 淳一他(2016) を参考にすれば、DTTは一元的なカリキュラムの下で明確な指示の提示があり、お子さんが行動をした後に強力な強化子(お子さんにとって価値を持つ結果)を伴わます。

対してNBIは、子どもの興味に合わせた遊び場面や日常生活の中で、DTTより比較的自然なセッティングの中で多様な行動を促し、比較的自然な強化子を伴わせることが特徴です。

※「DTT:discrete trial teaching(離散型試行訓練)」「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:自然主義的行動療法)」のこと


Enせんせい

「DTT」も「NBI」、両者はオペラント条件付けを中心とした療育ですが主な違いは?


ここまでの文脈からピンときた人もいるかもしれません。


DTTについて日本行動分析学会 (2019) は、


(1)弁別刺激を与え

(2)正反応をプロンプトし条件的に強化するまでを1試行とし

(3)1拍おいてすぐに次の弁別刺激を出し2試行目を教える

を次々に繰り返す循環的方法と述べました。


山本 淳一他(2016) や日本行動分析学会 (2019) が述べている内容を参考にすればDTTとは、


(1)療育者の指示があります

(2)お子さんが行動(必要であればプロンプト)したら、強化します


を繰り返す方法となります。


これは実はブログページでご紹介したオペラント条件付けのディスクリート型実験セットと同じ手続きです。


Enせんせい

DTTについて「DTTってなんですか?」と聞いたとき「カードを使った学習です」とか「お菓子を使ってお勉強する」とか、そういった内容が語られることも多いですが実は違います


DTTとは(1)実験者による開始の指示(2)定められた行動が生じたとき強化する(3)それを繰り返す、という手続きの療育方法です。

そしてDTTとは主にどこで使用されるのでしょうか?

DTTは主に「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」で用いられる療育手続きです。


ここまでで以下のことが分かりました。


DTTとは主にEIBIというABA自閉症療育のタイプで使用される療育手法

上のイラストを見れば、EIBIは主にDTT(ディスクリート型)の方法を使って療育支援を行う方法です。

一旦ここで冒頭で示した箇条書きのリストをもう一度記載しましょう。


(1) 「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」

(2) 「DTT:discrete trial teaching(離散型試行訓練)」


(3) 「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:(自然主義的行動療法)」

(4) 「PRT:Pivotal Response Treatment(機軸行動発達支援法)」

(5) 「ESDM:Early Start DENVER Model(アーリースタートデンバーモデル)」

(6) 「JASPER:joint attention symbolic play engagement and regulation(共同注意の象徴的な遊びの関与と調節)」

(7) 「機会利用型指導法」


上の2つ赤文字になっている「EIBI」と「DTT」はディスクリート型の療育でした。

赤文字になっている「EIBI」というABA自閉症療育のタイプは「DTT」を主に使って支援を行うことは覚えておきましょう。


では下の青文字の(3)ー(7)はどうでしょうか?

Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008)はNBIについて以下の3点を含んでいると述べています。


(1)子どもによって開始され、子どもの興味に焦点化されている

(2)機能的活動のなかに挿入され、埋め込まれている

(3)子どもがコミュニケートしようとする事柄にしたがって自然な強化報酬を用いる


ディスクリート型の療育とフリーオペラント型の療育に分けて考える場合、上の3点のうち(1)が特に重要です。

「子どもによって開始される」このような手続きはオペラント条件付けのフリーオペラント型実験セットと同じ手続きになります。

以下のイラストを見てください。

少し複雑ですがここまでをまとめると以下のようなイラストの関係性にまとめることができます。


ABA自閉症療育の分類

上のイラストから「基礎実験の型」が「ディスクリート型」の主なABA自閉症療育のタイプは「EIBI」のみです。

「基礎実験の型」が「フリーオペラント型」の支援はEIBIに対して「NBI」と呼ばれます。


EIBIの「代表的な療育技法」はそのまま「EIBI」と呼ばれることや「ロバース型の支援」と呼ばれることが多く、EIBI、ロバース型支援はほぼ同義語と思ってもらって構いません。

「NBI」の「代表的な療育技法」は多く「PRT」、「ESDM」、「JASPER」や「フリーオペラント法」、「機会利用型指導法」が入っていますがこれらは同義語ではなくそれぞれ療育の特徴を持ちます。


主に使う「療育手法」はEIBIでは「DTT」と決まったネーミングがあることに対し、「NBI」では「子どもによって開始される(子供の興味を重視した)」や「自然な強化子を設定した」などと文章で手続きが記述されることがほとんどです。


以上のイラストでの分類や解釈は私が勉強してきて持っているイメージですが、そんなにすごく外れているということはないと思います


これら「主に使う療育手法」は特に知らない・技術的に出来ないことを教えることを目的として使用することが多いでしょう。

「主に使う療育手法」とは「DTT」「大人がリード」「よりエラーレスラーニング」など、そして「子どもによって開始される」「より自然な強化子が設定される」「機会利用型指導法におけるマンドトレーニング」などと記載した部分です。


これら「主に使う療育手法」は特に知らない・技術的に出来ないことを教えることを目的として使用することが多いため、

例えば「やろうと思ったらできるけれど、やらない」といった場合の問題行動に対しては機能分析やSSTなどで対応します。


Enせんせい

問題行動へはこのような形で対応することはEIBIであってもNBIであっても同じでしょう


EIBIとNBIの主な違いは知らない・技術的に出来ないことを教えることを目的としてお子様と関わるときの教え方の違いと考えることができると思います。



ディスクリート型のEIBI、フリーオペラント型のNBIそれぞれの簡単な歴史

私が思うABA自閉症療育の歴史でターニングポイントとなった契機は1987年、O. Ivar Lovaas
が書いた「Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children」という1本の論文だと思います。

例えばTristram Smith・Svein Eikeseth (2011)はこの論文について「現在最もよく知られる研究」と述べ、この研究は情熱的な議論を巻き起こしたと述べました。

このあまりにも有名な論文については「(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/ivar-lovaas1987/)」

に概要をまとめています。


(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年のサムネイル

この論文の最も有名な研究結果は、

ABA自閉症療育を行うことで、47%(19人中9人)のお子さんが知的に正常域まで成長し、加えて付き添いなしで小学校の普通クラスで生活できたという内容でした。


この研究以前、例えばJudith A .Crowel・lJennifer Keluskar・Amanda Gorecki (2019) は1950年代、母親または両親に対して「冷蔵庫(refrigerator)」という用語が登場し、自閉症の原因として親の暖かさの欠如や親子関係の機能不全が関連すると考えられていた時代があったと述べています。

Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2012) も1960年代以前は自閉症の治療の多くは親が原因だと考えられていたと述べました。

現在以前、「自閉症の原因は親の関わりにある」とされていた時代があったのです。


Catherine Maurice (1993)の自叙伝から、親の関わりが原因だと考えられていたにも関わらず特にその時代、自閉症に対して有効な治療法も見つかっていなかった背景を考慮すれば、

1987年に行われたロバースの研究結果がいかに当時、自閉症児の親御様たちに一筋の光を照らしたのかが理解できます。


ロバース研究で知的に正常域まで成長し、加えて付き添いなしで小学校の普通クラスで生活できたグループのお子さんたちは「回復した(リカバリーした)」と呼ばれることが多いです。

ロバースの行ったEIBIの研究は近年でも行われています(例えばChanti F. Waters・Mila Amerine Dickens・Sally W. Thurston・Xiang Lu・Tristram Smith, 2018)


Enせんせい

しかしロバースの方法が全て正しいかということに疑問を持つ研究者たちもいました


ロバースの方法が全て正しいかということに疑問を持った

例えば1987年のロバースの研究についてFrank M. Gresham他(1997)このタフな療育内容に言及し、Lovaas研究はグループ分けの際ランダム化していなかったため、効果が出たグループは親がやる気が高かったことが要因である可能性が高い可能性を述べています。

またロバースの研究では「通常学級」への進学率もフォーカスされ述べられているのですが、

Morton Ann Gernsbacher (2003) Lovaas研究で「普通学級」に進学した割合がフォーカスされているが、クラス配置は子どもの能力というよりは親の教育態度や学校の方針に関係すると述べました。


ロバースの研究結果だけでなくDTTに対しての批判的な意見としては、

例えばFereshteh Mohammadzaheri・Lynn Kern Koegel・Mohammad Rezaee・Seyed Majid Rafiee (2014) のDTTとPRTを比較した研究があります。

Fereshteh Mohammadzaheri他 (2014) はDTTについて


(1)1つできるようになるまでに時間がかかる

(2)結果が生じてもしばしば一般化しない

(3)子どもが課題に参加する意欲がなく破壊的な行動を示すことがある


というデメリットをあげました。

※ この研究のまとめページは「(ABA自閉症療育のエビデンス12)DTT VS PRT(https://en-tomo.com/2020/06/05/dtt-vs-prt/)」


他にもHeather K Jennett・Sandra L Harris・Lara Delmolino (2008)はもDTTと自然な場面を賜与したマンドトレーニングの比較研究を行っていますが、DTTよりも自然な場面で行ったマンドトレーニングの方が、


(1) 自立的に要求を行うようになった

(2) 要求をより早く獲得した

(3) マンドトレーニングを受けた方が、トレーニング中に反抗的な行動が少なかった


という点で優秀であったようです。

※ この研究のまとめページは「(ABA自閉症療育の基礎83)ABA自閉症療育で言葉・発語を教えるのに最適!マンドトレーニング(https://en-tomo.com/2021/03/18/aba-mand-training/)」


Enせんせい

ロバースの方法は「コストが高い」、「般化しにくい」、「獲得が遅い」などのデメリットがあげられることが多いです

※EIBIは「コストが高い」とは言われることがありますが、とは言ってもNBIの代表格PRTでも週に25時間以上の介入が必要と言われています(参考 William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood, 2016)


NBIの手法、例えば「機会利用型指導法」などはロバースが1987年に研究を発表する以前から研究としてありました。「機会利用型指導法」は英語では「Incidental teaching」と言います。

そのためEIBIの弱点を克服するためにNBIがのちに開発されて来たというよりは、

EIBIで考えられたデメリットを克服しようということで、既にあったNBIという手法が少しずつ改良されてきたといったところでしょう。

ロバースの研究結果があまりにも影響力が凄かったためにほんの少し影を潜めることになったというイメージです。


EIBI以前から生活の中でスキルを教えていこうという自然主義的行動療法は存在していました

NBIの代表格は「PRT:Pivotal Response Treatment(機軸行動発達支援法)」だと思います。

私は今EIBIとNBIどちらを推奨すると言えるほどの知識は足りないですが、ブログを見ていただいてNBIに興味を持ち、もしNBIとは手法はどんなものだろうか?と疑問に思って興味を持たれるのでしたらPRTの書籍を探してみてください。


PRTの日本語訳の本

※ PRTについてはブログでも「ABA自閉症療育のエビデンス(https://en-tomo.com/aba-therapy-evidence/)」の章でいくつか紹介しています


Enせんせい

NBIは「PRT」以外にもこのブログページでも書いている「ESDM」や「JASPER」などの療育技法も近年出てきています

ブログで検索していただくとこれらの記事も出てきます


現在で「EIBとNBIのどちらが良いのか?」という答えはまだ出ていません。

しかしエビデンスだけを鑑みれば「EIBI」がかなり有利でしょう。

これは偉大なことで、エビデンスの積み上げがあると言うことはロバースの方法は効果があるということを複数の研究グループが研究結果として証明しているということです。


ではEIBIの方が良いのかといえば、NBIについても私はABAの理論的に考えれば「NBI」の方が理にかなっているようにも思います。


私の印象としては「EIBI」は「IQ」や「適応行動」に特に効果があると言われることが多く、「NBI」では「言葉」や「コミュニケーション」などに特に効果があると言われることが多いです。

エビデンスは大切だとするとEIBIを押すし、エビデンスはその根拠になるほど強力なロジックになり得ますが、ABAの基礎理論を学んでいるものとしてはNBIが正しくないとも言えません。

そのため、現段階ではどちらを選択するか?という考えではなく両方を知って行くことで、両方のエッセンスを取り入れた自閉症療育を行えば良いのではないか?ということが現在の私の答えとなります。



さいごに

このブログページではABA自閉症療育はオペラント条件付けの理論を主に使用して支援していると言うことを最初にご紹介しました。

次にオペラント条件付けの理論では、ディスクリート型とフリーオペラント型のオペラント条件付けという実験条件があることを解説しました。

このディスクリート型とフリーオペラント型のオペラント条件付けの実験条件の違いがABA自閉症療育のDTTとその他のアプローチとの療育方法の違いでした。

最後にEIBIのターニングポイントから始め、その後の自閉症療育療育の簡単な歴史的背景を書いてきました。


このブログページの内容から自分が行っている療育方法がDTTかNBIか意識して療育を使い分けることができれば強みになります。

私の印象ですが「EIBI」は「IQ」や「適応行動」に特に効果があると言われることが多く、「NBI」では「言葉」や「コミュニケーション」などに特に効果があると言われることが多い印象です。

お子さんの強みを伸ばす際、これらを使い分けて療育を行うことでさらに効果的に療育を行っていける可能性があるでしょう。


次のページではABAの考え方「機能主義」について書いて行きます。

「機能主義と機械主義」というテーマです。



【参考文献】

・ B. F. Skinner (1966) What is the experimental analysis of behavior? Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 9. 213-218 【邦訳 スキナー著作刊行会 B. F. スキナー重要論文集Ⅰ 勁草書房】

・ B. F. Skinner (1982) An autobiography. In B. F. Skinner & R. Epstein Skinner for the classroom 【邦訳 スキナー著作刊行会 B. F. スキナー重要論文集Ⅰ 勁草書房】

・ Catherine Maurice (1993) LET ME HEAR YOUR VOICE 【邦訳: 河合 洋=監修 山村 宣子=訳 (1994) わが子よ、声を聞かせて 自閉症と闘った母と子 NHK出版】

・ Chanti F. Waters・Mila Amerine Dickens・Sally W. Thurston・Xiang Lu,・Tristram Smith(2018) Sustainability of Early Intensive Behavioral Intervention for Children With Autism Spectrum Disorder in a Community Setting. Behavior Modification p1– 24

・Fereshteh Mohammadzaheri・Lynn Kern Koegel・Mohammad Rezaee・Seyed Majid Rafiee (2014)A Randomized Clinical Trial Comparison Between Pivotal Response Treatment (PRT) and Structured Applied Behavior Analysis (ABA) Intervention for Children with Autism. Journal of Autism and Developmental Disorders volume 44, p2769–2777

・ Frank M. Gresham・Donald L. MacMillan (1997) Autistic Recovery? An Analysis and Critique of the Empirical Evidence on the Early Intervention Project. Behavioral Disorders Aug 22, 4 ProQuest Central p185

・ Heather K Jennett・Sandra L Harris・Lara Delmolino (2008) Discrete Trial Instruction vs. Mand Training for Teaching Children With Autism to Make Requests. The Analysis of Verbal Behavior. 24, 69–85

・ Jon Baily・Mary Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー】 岩崎学術出版社

・ Judith A .Crowel・lJennifer Keluskar・Amanda Gorecki (2019)Parenting behavior and the development of children with autism spectrum disorder. Comprehensive Psychiatry Volume 90, April, p21-29

・ Katarzyna Chawarska・Ami Klin・Fred R .Volkmar (2008) AUTISM SPECTRUM DISORDER IN INFANT AND TODDLERS:Diagnosis, Assessment, and Treatment 【邦訳: 竹内 謙彰・荒木 穂積 (2010) 乳幼児期の自閉症スペクトラム障害 診断・アセスメント・療育クリ エイツかもがわ】

・  Lisa McNiven(2016)Effects of Applied Behavior Analysis on individuals with Autism. http://gcd.state.nm.us/wp-content/uploads/2018/05/Effects_of_Applied_Behavior_Analysis_on_individuals_with_Autism.pdf

・ Morton Ann Gernsbacher (2003) Is One Style of Early Behavioral Treatment for Autism ‘Scientifically Proven?’ Journal of Developmental and Learning Disorders. 7.19-25.

・ 日本行動分析学会 (2019) 行動分析学辞典 丸善出版

・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】

・ 大河内 浩人 (2007) 「大河内 浩人・武藤 崇 編著 行動分析 ミネルヴァ図書 p1-12」

・ Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2012) Pivotal Response Treatment for Autism Spectrum Disorders 【邦訳 小野 真・佐久間 徹・酒井 亮吉 (2016) 発達障がい児のための新しいABA療育 PRT  Pivotal Response Treatmentの理論と実践 二瓶社】

・ 佐藤 方哉 (2001) 【浅野 俊夫・山本 淳一・日本行動分析学会 (2001) ことばと行動―言語の基礎から臨床まで ブレーン出版】

・ Tristram Smith・Svein Eikeseth (2011) O. Ivar Lovaas: Pioneer of Applied Behavior Analysis and Intervention for Children with Autism. Journal of autism and developmental disorders. 41 p375-378

・ Sidney W. Bijou & Donald M. Baer (1961) CHILD DEVELOPMENT Ⅰ A Systematic and Empirical Theory 【邦訳 山口 薫・東 正 (1972) 子どもの発達におけるオペラント行動 日本文化科学社】

・ 嶋崎まゆみ (1990) 自閉症児のためのオペラント療法 関西学院大学リポジトリ 40 No2 p75-93

・ 杉原 一昭・河合 芳文 (1966) 行動療法と学習理論 心理学研究 第37巻 第3号

・ William R. Jenson・Elaine Clark・John Davis・Julia Hood (2016) Comparisons of Pivotal Response Treatment (PRT) and Discrete Trial Training (DTT). University of Utah Department of Educational Psychology School Psychology Program

・ 山本 淳一・松崎 敦子 (2016) 第2章 発達障害の支援の基本 早期発達支援プログラム 【編集 下山 晴彦・村瀬 嘉代子・森岡 正芳 (2016) 必携 発達障害支援ハンドブック 金剛出版】