(ABA自閉症療育の基礎66)オペラント条件付けー問題行動を減らす罰を使用した支援、タイムアウト、レスポンスコスト、過剰修正

「罰(Punishment)」を使用して行動を変える手続きは、「結果操作」の療育技法です。


「C:Consequence」の「罰」という結果を与える手続きをご紹介します

「結果操作」の手続きですので、イラストの赤で「ココ」と囲まれた行動のあとの結果の部分を操作することで行動を変えていくことを狙います。

ただし「ABA自閉症療育」では基本的には「罰」を使用した手続きは推奨されません。


Enせんせい

基本的にこのブログページで紹介する「罰」を使用せずに問題行動に対処できればそれがベストです

ABA自閉症療育では「罰」によって行動を変化させていこうという手続きは、採択する場合に優先順位が低い方法となります


このブログページではABA自閉症療育で「罰」を使用するのであればそのタイミングと、また「罰」を使用した支援にはどのような方法があるのかを解説して行きましょう。



オペラント条件付け、罰とは何だった?

このブログページでは「結果操作」の「罰」を使用した支援をご紹介して行きますが、

そもそもオペラント条件付けにおける「罰」とはどんなものだったでしょうか?


「(ABA自閉症療育の基礎25)オペラント条件付け−罰(https://en-tomo.com/2020/08/20/operant-conditioning-basic-punishment/)」

で紹介をしましたが、

「罰(Punishment)」について私は、

特定の状況の下(A)で、特定の行動(B)が生起したとき、特定の結果(C)が伴う。

その後、特定の状況の下(A)で特定の行動(B)が消失・減少した場合、それは罰と呼ぶ

と私は人に伝える際に、伝えています。

「ABA自閉症療育」で基本的に推奨されない「罰」を使用した手続き。


行動の結果に罰を伴わせるとどうなるか?のイメージとしては、

「(ABA自閉症療育の基礎34)オペラント条件付けー「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」を判断する(https://en-tomo.com/2020/09/03/operant-conditioning-assessment/)」

で紹介をしたイラスト


青色のラインが「罰」を受けた行動の頻度の減少を表しています

のように、「罰」を使用すると、それまで維持していた(強化されていた)行動が一気に減少・消失します。



問題行動を減らせるのならば、どうして罰の使用は推奨されないの?

「罰」を行動のあとに伴わせると、そのことによって直前の行動を減らすことができるとすれば、どうして「罰」を使用することが良くないとされているのでしょうか?


理由は主に2点考えられるでしょう。

1点目は「倫理的な理由」、そして2点目は長期的には利益が少なくなる可能性が高いという「実益を考慮した理由」の2点です。



ABA自閉症療育で罰の使用を避ける倫理的な理由

1点目は「倫理的な理由」は例えば近年「PBS:Positive Behavior Support(積極的な行動サポート)」という考え方で支援を行おうという流れがあります。

PBSでは障がいを持つ個人のQOL(生活の質)を向上させること考慮した支援を行うことの重要性が説かれます。問題行動の対応にも指針があり、例えば

問題行動が生じそうな環境を改善(例えば、選択機会を与えたり、視覚的なスケジュールを用意するなど)したり、問題行動の目的をアセスメントし適切な行動で目的が達成できる(代替行動)ように支援する方法が推奨されます(参考 Meme Hieneman, 2015)

そしてPBSでは「個人の価値」が大切にされ「個人の尊厳と選択」が尊重されるため、人間性を低下させたり品格を低下させると判断される介入(例えば「罰」の使用)は避けられることが特徴です(参考 Edward G. Carr・Glen Dunlap・Robert H. Horner・Robert L. Koegel・Ann P. Turnbull・Wayne Sailor・Jacki L. Anderson・Richard W. Albin・Lynn Kern Koegel・Lise Fox, 2002)

このような流れもあり「倫理的な観点」から罰の使用を控えようという考え方があります。



ABA自閉症療育で罰の使用を避ける療育効果の実益を考慮した理由

ABA自閉症療育で罰の使用が推奨されない理由として、倫理的な問題以外に罰には大きな副次的効果が伴います。

これは長期的にはABA自閉症療育の効果に影響する内容です。

「罰の副作用」などとも呼ばれたりしますが、

「(ABA自閉症療育の基礎29)オペラント条件付け−罰の副次的効果(https://en-tomo.com/2020/08/23/punishment-secondary-effect/)」

でさらに詳しく解説をしていますが罰を使用して行動改善を狙った場合の副次的な効果として、


1 :攻撃行動や情動反応を引き起こすことがある

2 :罰の使用者の負の強化を強める

3 :罰を使用された側の回避行動を強化する

4 :慣れることやもっと悪くなることがある

5 :罰の来ない状況でさらに悪くなる可能性がある

6 :全ての行動の全般的な抑制を導くことがある

7 :罰を受けた本人が罰を使用する可能性がある

8 :罰の使用者や場所以外では効果が期待できない可能性がある

9 :親以外が使いにくい

10:適切な何かを学ぶわけではない


などの副次的効果が考えられます。


(ABA自閉症療育の基礎29)オペラント条件付け−罰の副次的効果のサムネイル

このように倫理的な問題だけでなく、療育効果の実益としても害が出る可能性があることは知っておくべきでしょう。



オペラント条件付け、罰を使用した療育支援



O. Ivar Lovaas・James Q. Simmonsが1969年、電気ショックの使用

ブログページで罰を使って問題行動の改善を目指した研究としてブログ内では、

O. Ivar Lovaas・James Q. Simmonsが1969年に行った

「MANIPULATION OF SELF-DESTRUCTION IN THREE RETARDED CHILDREN(自傷行為を行う3人の精神遅滞児に対する介入)」

という論文を紹介しました。


「(ABA自閉症療育の基礎28)オペラント条件付け−罰を使ったABA療育支援研究(https://en-tomo.com/2020/08/22/operant-conditioning-punishment-study/)」

に内容のさらに詳しい記載があるのですがO. Ivar Lovaas他 (1969) お子さんが自傷行為を行なった際に電気ショックを使用することで、お子さんの自傷行為を無くそうと試みます。


結果的に自傷行為はかなり早い段階で消失するのですが、ここまでの強度の罰を使用するということは現代では難しいでしょう。

「電気ショック」という文章を見て「倫理的にアウトだろ」と一発で思うかもしれません。


少し横道に逸れてしまう内容かもしれませんがO. Ivar Lovaas他 (1969) の論文では子どもの自傷行為が激しく例えば「自分の歯で指を噛み、そのため右手小指の第一関節を切断する必要があった」というエピソードが紹介されます。


Enせんせい

これはなかなかショッキングな内容です


もし本当に電気ショックを使用するしか方法がなかったとしたら?

電気ショックを受けることと小指を失うことを天秤にかけなければならなかったとすると?

当時の時代背景があることは当然ですが「なんて酷いことをするんだ」と一言で片付けられない気持ちにもなるかもしれません。



ABA自閉症療育で使用する罰の手続きとは?

上で紹介をしたO. Ivar Lovaas他 (1969) のように電気ショックを使うということは現代では基本的には療育の選択肢には入らないでしょう。

ではABA自閉症療育で推奨もされていない罰を使用するときとはどういった場合でしょうか?

私の恩師が言っていたのは、

「自分(子ども)もしくは、周りの人が怪我をしたり、命を落とすリスクがある場合」

ということでした。

これについては「あー、確かに」と当時納得したことを覚えています。


ここまで「罰」という名前が持つパワーと、電気ショックという事例から「罰の使用」とは非常におどろおどろしいものだと感じたかもしれません。

そう思っている人は、以下の内容を見て少し驚くかも?


せんせい

教育者でも普通に使っている人がいる、と思える内容ですよ

ただ、デメリットを理解して使っているかどうか?が大切です


・ 車道に飛び出しそうになったときに、「コラ!」と大きな声で叱咤した(正の罰)

・ 椅子を投げようとしたときに、「やめなさい」と言って服を強く掴んだ(正の罰)

・ プールで危ないと言っているにもかかわらず飛び込みをやめない生徒を、プールから出して見学させた(負の罰:タイムアウト)

・ 止めてはいけない場所に車を止めて、罰金を取られた(負の罰:レスポンスコスト)


上の例はABAで言う「罰」を使用して行動を減少・消失させようと試みている例です。

上の例を見て、「え?うちの担任の先生も今日は、太郎くんを叱ってしまいまして・・・って言ってたんだけど」とか思い当たらないですか?

ABA自閉症療育で使用する「罰」というのはこの程度のレベルのものです。

※ ただ重ねて言いますが、ABA自閉症療育ではこの程度の罰でも使用を推奨致しません


以上のようなレベルの「罰」であったとしても、一瞬で車道へ向かう行動や椅子を投げる行動、プールの飛び込みや駐禁違反を消失させる可能性があります。

「罰」とはおどろおどろしい言葉に聞こえますが、上のような内容が、仮にABA自閉症療育で使用するのならば、扱われる罰のレベルです。


ABA自閉症療育の介入推奨手順についてのちのページで詳しくご紹介しますが、

Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) を参考にすればABA自閉症療育では、

ABA自閉症療育では、できれば「罰」を使用せずに、まずは「強化のみ」を使用して行動改善を目指すのですが、

そして「強化のみ」で行動改善が見られない場合に、

「強化+消去」の手続きによって行動改善を目指し、それでもどうしても難しい場合、「強化+負の罰」を導入し、それでも難しい場合に初めて「強化+正の罰」の導入を検討します。


Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) の本も良い本です

ABA自閉症療育ではこのブログページまでで紹介してきた「先行子操作」や「強化のみの分化強化」、「強化と消去の分化強化」を使用し、問題解決を行うことが本筋です。

体感的には9割5分以上の確率で「先行子操作」や「強化のみの分化強化」、「強化と消去の分化強化」を使用することで問題解決が達成できます。

信じられないかもしれませんが、今解決したいと思っている行動問題は基本的には「罰」を使用せずに解決できるのです。


でも、どうしても難しい場合、初めて罰の使用を検討します。

一体、私はABA療育で罰を使用する際、どのような罰の手続きを使用するのでしょうか?

以下、紹介して行きます。



ABA自閉症療育、負の罰ータイムアウトとレスポンスコスト、正の罰ー過剰修正

ABA自閉症療育で問題行動を減らしたいと思い、「罰」の導入を考えるのであれば最初に導入する罰は「負の罰」になります。

基本的には「正の罰」から導入することはありません。

これは、一般的に「負の罰」よりも「正の罰」の方が、生体が受ける嫌悪感などの強度が弱いと言えるからでしょう。


また「罰の単独使用」を行うことは基本的にはなくて、問題行動が起きたときは「罰」を行うけれども、プロンプトなりを使用し適切行動が生じたときには「強化」を伴わせるという、

「強化とセット」の手続きで使用しなければいけないということも覚えておきましょう。

このことはとても大切です!


まずは負の罰の代表的な手続きに「タイムアウト(Time Out)」と「レスポンスコスト(Response Cost)」というものがありますので以下それをご紹介して行きます。

※ ちなみに、個人的にはタイムアウトはほとんど使ったことがありません



ABA自閉症療育、負の罰ータイムアウト

タイムアウトは問題行動を起こしたあとその人を短時間、強化事態から引き離すという手続きです(Raymond .G .Miltenberger, 2001)


・ プールで危ないと言っているにもかかわらず飛び込みをやめない生徒を、プールから出して見学させた(負の罰:タイムアウト)


と上で記載しましたが、

飛び込み(問題行動)を行なった場合、プールという楽しい時間(強化事態)から引き離される。

ということで、今後、プールに入っているときに飛び込みという行動の頻度が著しく減少もしくは、消失した場合、この手続きは「負の罰」として機能したことになります。

これがタイムアウトの手続きです。


罰を使用すると、直前の問題行動が一瞬で消失した(O. Ivar Lovaas他,1969)

イラストはO. Ivar Lovaas他 (1969) の研究で電気ショックを用いた研究で使用したイラストですが、

予測としては以上のような行動のデータがグラフに現れることを期待します。

うまくいった場合は「罰」は正も負も、上のような行動のデータが生じることでしょう。


失敗パターンとしては、

例えばスポーツ観戦や音楽ライブで、演者へのかなり強いバッシングを浴びせるという、不適切と思われる行動を行い、会場から退場させられたとしましょう。

この人がもし今後、スポーツ観戦や音楽ライブに行ったときに、演者へのかなり強いバッシングを浴びせる行動が著しく減少もしくは、消失した場合、この手続きは「負の罰」として機能したことになりますが、

SNSなどを通じて有名になり注目を得ることに味を占め、スポーツ観戦や音楽ライブに行ったときに、演者へのかなり強いバッシングを浴びせる行動が維持・増加した場合には「罰として機能していない」ということが生じます。


これは問題行動が「注意獲得」、「注意引き」という周囲からの社会的強化によってむしろ強化されるケースですが、

このようなことが起こる可能性もあるため、

「行動が減少・消失したかどうか?」を確認し、実際に行動の変化が伴ったときに「罰」として機能したか確認することは手続きは重要です。


例えば学校場面でも、

授業中にうるさくて教室を出された生徒がいたとして、もしその生徒が授業時間に退屈しており、教室の外に出したあと、実はポケットから携帯電話を出して、授業時間よりも強い強化事態が教室の外に出されたときに出現していたら?

先生に注意されることで周りの生徒からの注目を浴びていて、授業が終了した後友達から「おまえ、また先生に怒られてるじゃん(笑)あの先生怖いのに、お前すごいよな」と受容的なコメントを受けていたとすれば?


罰が、罰として機能しない可能性が高いですので「行動が減少・消失したかどうか?」を確認するところまで手続きに含め行うようにしましょう。

※ これは「強化」「消去」など「罰」以外のABAの手続き全般に言えることです



ABA自閉症療育、負の罰ーレスポンスコスト

タイムアウトが現在、本人が受けることができていた強化的な時間(事態)の剥奪だとすれば、レスポンスコストは本人が持っている強化的な物資の剥奪です。


Raymond .G .Miltenberger (2001) レスポンスコストについて、ある行動の生起に随伴して強化子を一定量没収すると述べています。


・ 止めてはいけない場所に車を止めて、罰金を取られた(負の罰:レスポンスコスト)


本人が持っているお金という強化子が、駐車違反という行動ののちに、罰金という結果が伴うことで剥奪される例です。

この場合、今後、駐車違反という行動が著しく低減、消失すればレスポンスコストの手続きが成立したと言えます。


ABA自閉症療育で私が「負の罰」を使用する場合、基本的にはタイムアウトよりもレスポンスコストを使用するのですがこれは私自身と私の好む手続きとの相性の問題でしょう。

例えば、以下のようなホームワーク設定はレスポンスコストの例だと思います。


赤い四角、矢印で示されているところがレスポンスコスト手続き

このホームワークでは、

本来、お母さんとお買い物に行くときに手に入っていた強化子(お菓子)が剥奪される事態を組み込んでホームワークの設定を組むことで、レスポンスコストの手続きを導入しました。


Enせんせい

私は今幸いにも多くのご家族様と関わらせてもらっています

そのため新しく関わりを持ちたいですとおっしゃっていただいたとしても、スケジュール的にキツくて、月に1回ないしは数ヶ月に1回お会いすることができるというご家庭も多いです


そのような都合上ホームワークを設定することで問題行動の改善を狙うことも多いのですが、

やはり上のイラストのように「強化子設定」だけでなく「上手くできなかった(問題行動をしてしまった)ときのペナルティ」がある方が、行動修正はかかりやすいでしょう。

また上手くできたときにはプールという強化子がセットされ、強化と併用して罰が使用されていることはポイントです。


一応追記にはなりますが、私は「絶対に信号無視をしてはいけない」という意見の持ち主ではありません。

また例として出したペナルティ(レスポンスコスト手続き)を行う場合は、親御様だけでなくお子さんにも「マジで大丈夫?できる?」と確認し、基本的には子どもの了承も得た上で導入をします。


レスポンスコストで失敗しやすい例は、撤去した強化子が実はその人にとって失っても痛くないものである場合、これは失敗するでしょう。

例えばあなたが駐車違反をして罰金を2万円程払ったとしても、そのとき仕事に遅刻しそうで、なんとか違反をして間に合った。

その仕事で10万円稼いだとなれば、もし同じシチュエーションがあったとしてもその人は駐車違反をすることでしょう。

例で出したホームワーク設定でもお子さんにとって「お菓子」が実は全く魅力のないものだった場合、レスポンスコストとして成立せずに失敗します。


とは言っても、個人的にレスポンスコストの採用例が多いのは、

タイムアウトの方が手続き的に専門的な知識が必要なように感じますので、親御様に実行してもらうという点を考慮し、個人的には負の罰を使用するのであればレスポンスコスト手続きを使用している感じです。


例えばタイムアウトでは「安全が確保された部屋に子どもを入れる」なども重要なキーワードになります。

子どもを強化事態から引き離したとき、もし安全上の配慮が足りない場所に子どもを移動させたとすると、そこで暴れたりした場合、怪我をおってしまうリスクもあるでしょう。



ABA自閉症療育、正の罰ー過剰修正

個人的にレスポンスコストと同じように罰を使用する場合に検討して、実際に行うことがある手続きに「過剰修正法(Over Correction)」というものがあります。


過剰修正とは、何度も行動をやり直させる、という結果を提示する手続きです。

実際、自分がされたらめっちゃうざいと思うこの手続き、具体的には、


・ 椅子に「座って」と指示をしても5秒以内に座らなかった場合、椅子に「座って」といってから座るまでの動作を5回繰り返させる

・ マス目の中にひらがなを書く練習をしているとき、マス目からひらがながはみ出たとき、そのはみ出たひらがなを10回書かせるよう繰り返させる

・ 適切な生活動作(例えば着替えや手洗い)を教えるために、不適切な行動がでた場合、その箇所を3回連続で練習させる


などの内容で、親御様のニーズも高いときに個人的には使うことが多いかな?


個人的な体感としては、

言葉でのコミュニケーションが十分可能なお子さんに対しては「レスポンスコスト」

まだ言葉を扱うことがそこまで上手くないお子さんの場合に検討するのが「過剰修正」です。


なかなか言葉でのコミュニケーションが難しいお子さんに対して使うことが多いので、この場合は使用して良いかどうか?の許可は親御様に聞くことになります。

本当は「強化のみ」でできた方が良いですし、まずはそれを目指すべきだとは思いますが、加えて消去を導入しても、どうしても難しい場合には「罰+強化」という手続きの使用を検討する場合もあるでしょう。


また過剰修正ではお子さんからの強い抵抗を受けます。

お子さんに何度も繰り返してそれをやらせるということは、かなりの確率で身体プロンプトによって繰り返してもらうこともあり、無理矢理やらせているというような形になることが多いでしょう。

「罰」は副次的効果も受けますから、本当にどうしてもニーズが高く、何とかしたいという「場合のみ」使用を検討してください。



さいごに

ここまで理由を述べてきましたが、

ABA自閉症療育では「罰」を使用した問題行動のコントロールは基本的には推奨されません。

そこから得る恩恵は「強化のみ」、「強化+消去」の場合と比べ例えば、般化しにくい(あなたの前でしか変化しない)などの副次的な効果もあり、どうしても難しいケースを除いては使用するメリット自体がそんなに無い方法です。

でも、

このページで書いた例えば「自分(子ども)もしくは、周りの人が怪我をしたり、命を落とすリスクがある場合」などは、その手段を持っていることで事故を防げる方法でもあります。


もし早々に「罰」の使用を検討するのならば、例えば100円ショップでも良いので、おもちゃを10個前後買ってからでも良いでしょう。

いろいろと新しい強化子を用意してもコントロールが難しかったり、同じ機能が見つからない上で放っておけない自己刺激行動がある場合に検討をすることが吉です。

安易に手を出しても、悪循環に陥ってしまう可能性があります。


罰の使用は、罰は使う側が強化されてしまうという問題も考えられるでしょう。

問題行動が簡単に減って、無くなるので、罰による副次的効果があるにも関わらず使用を辞められなくなります。


※ 参考「(ABA自閉症療育の基礎30)オペラント条件付け-「負の強化」と「正の罰」の相互作用(https://en-tomo.com/2020/08/24/negative-reinforcement-punishment-interaction/)」

↑では罰を使用する側が陥りやすい悪循環を解説しました。

やはり、「罰」は慎重に使用が検討されるべきです。


「罰」を使用したABA自閉症療育介入手段は、
使用する前に一度振り返るくらいの慎重さを持ちましょう

このブログページでは問題行動を修正する方法として結果操作、「罰」を使用した手続きについて解説をしてきました。


このブログページでも簡単にご紹介はしましたが、

次からのブログページでは問題行動があったときにどのような介入法略を、どういった考え方で入れていくのが良いのか、

「ケースフォーミュレーション(事例定式化)」から、介入はどういったスタンスで行っていけば良いのかをご紹介します。

そのためにまず「臨床的診断(ABA自閉症療育で言えば、「自閉症スペクトラム」や「発達障がい」昔は「広汎性発達障がい」と言われた)」についてのブログページです。



【参考文献】

・ Edward G. Carr・Glen Dunlap・Robert H. Horner・Robert L. Koegel・Ann P. Turnbull・Wayne Sailor・Jacki L. Anderson・Richard W. Albin・Lynn Kern Koegel・Lise Foxが「Positive Behavior Support: Evolution of an Applied Science (2002) Positive Behavior Support: Evolution of an Applied Science. Journal of Positive Behavior Interventions Volume 4, Number 1,Winter p4–16, 20

・ Meme Hieneman (2015) Positive Behavior Support for Individuals with Behavior Challenges. Behavior Analysis in Practice. 8:101–108

・ O. Ivar Lovaas・James Q. Simmons (1969) MANIPULATION OF SELF-DESTRUCTION IN THREE RETARDED CHILDREN. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS No3, 143-157

・ Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) Applied Behavior Analysis for Teachers:Fifth Edition【邦訳 佐久間 徹・谷 晋二・大野 裕史 (2004) はじめての応用行動分析 二瓶社

・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】