ABA自閉症療育で一番使用頻度の多いテクニックは何ですか?
と専門家に問うと「分化強化(Differential reinforcement)」と答える人が多いのでは無いだろうか?
それくらいメジャーな方法、分化強化をこのブログページで解説して行きます。
分化強化は行動を変えることができる「結果操作」の療育技法です。
イラストの赤で囲まれた行動のあとの結果の部分を操作することで行動を変えていくことを狙う方法、このブログページは「分化強化」についての解説ページです。
問題行動を減らし適切行動を増やす、分化強化
分化強化について私は後輩に教える際、
特定の適切行動を選択して強化することで行動を変化させる手続き
と教えています。
これが基本形で「じゃあ、適切な行動以外が出てきたらどうするの?」
ということについては、
・ 弱く強化する(適切な行動にはもっと大きな強化子を与える)
・ 消去する
・ 罰を与える
ということが答えになり、上の3つの中で一番多く使うのが「消去する」になるでしょう。
※ 「罰」についてはABAでは推奨されません
分化強化は非常に多くのパターンがあるのですが
例えば小野 浩一 (2005)を参考にすれば、
(1)高頻度行動分化強化
(2)低頻度行動分化強化
(3)定速度反応分化強化
(4)持続時間分化強化
(5)他行動分化強化
(6)非両立行動分化強化
(7)代替行動分化強化
(8)異反応分化強化
の8つもの分化強化が確認できます。
8つは数が多いですよね。
私は基本的には上の中でオレンジ太文字になっている
(1)(2)高/低頻度行動分化強化
(6)(7)非両立行動分化強化/代替行動分化強化
の4つを良く使用します。
この4つは似ているので、4つを2つのカテゴリーに分けて紹介しましょう。
(1)と(2)はほぼ同じ意味で使えるので1つにまとめ、(6)(7)もほぼ同じシチュエーションでどちらを採択するか?という問題なのでこれも1つにまとめました。
この4つの種類、2つのパターンを覚えるだけでもだいぶんとABA自閉症療育に厚みが出るはずです
そんなに難しくない!
適切行動を増やす・問題行動を減らす高/低頻度行動分化強化
Paul A. Albert・Anne C. Troutman (1999) を参考にすれば「低頻度行動分化強化(DRL:Differential Reinforcement of Low rates of behavior)」とは、
例えば先に決めておいた基準と全体の反応数を比較し、総反応数が基準よりも少ないか同じであれば強化が提供される
という設定を組むことです。
高頻度行動分化強化はこの設定の反対と思ってもらえれば良いでしょう。
低頻度行動分化強化では、ある期間に問題行動がX以下であれば強化されるという設定が組まれ、
対して高頻度行動分化強化では、ある期間に問題行動がX以上であれば強化されるという設定を組まれます。
※ 高頻度行動分化強化は(DRH:Differential Reinforcement of High rates of behavior)
高/低頻度行動分化強化を行うためには「ベースライン」の値が必要です。
ベースラインとはこの分化強化手続きを導入する前に、
・ 高頻度行動分化強化の場合どの程度適切な行動が出現していたか?
・ 低頻度行動分化強化の場合どの程度問題行動が出現していたか?
という値になります。
適切な行動を増やしたいときは高頻度行動分化強化、問題行動を減らしたいときは低頻度行動分化強化と覚えておきましょう。
適切な行動を増やす高頻度行動分化強化
私が高頻度行動分化強化を使用するときは例えば、
休み時間にお友達を誘いかけて遊ぶことが少なく、そのことに悩んでいる親御さんがいたとしましょう。
そのご家庭のお子さんの名前を便宜上「太郎くん」としますが、
この場合、直近の例えば1週間(登校日5日)の大休憩時間に太郎くんがどの程度お友達と遊んでいたのかを把握することがスタートライン(ベースラインの把握)です。
太郎くんは5日間のうち1回しかお友達と遊んでいなかった(ベースライン)とします。
お母さんと話し合い、少なくとも5日中3日はお友達と遊んで欲しいとなった場合、太郎くんとも話し合い5日中3日お友達と遊ぶことを提案したとしましょう。
以上のようなホームワークを組み、
次週太郎くんが5日中3日お友達と遊べたときに強化子(どうぶつえん)が提供される設定を組みます。
もちろん太郎くんに対して「お友達と遊びたいか?」、「お友達と何で遊びたいか?」という聞き取り、
加えて、
「どうやったらお友達と遊べるか?」、「どう誘うか?もしくはどう遊びに参加するか?」についてはロールプレイなどを通して教えることが前提です。
どのように社会的に適切な関わりをすれば良いかをSST(Social Skill Training:ソーシャルスキルトレーニング、社会的スキル訓練)します。
上の強化条件だけ伝えて方法もわからない太郎くんに「やれ」ということはナンセンスです。
失敗する確率が高いと思います。
このように
特定の期間に適切行動をX回以上行なった場合、強化子が提供されるという方法が高頻度行動分化強化
となります。
問題行動を減らす低頻度行動分化強化
対して低頻度行動分化強化は上の例の逆で例えば考えられるホームワークとしてはこんな感じ。
この場合もどうやったらうまく問題行動を行わないで済むか?
について太郎くんとお母さんと話し合い「こうやったらできるね」という成功するだろう見通しを持ってからGOします。
「しなかったら、◯◯がもらえるよ!」という設定だけでは不充分です。
例えばあなたが「今週、上司から注意を受けなければ伊豆の旅行券をあげます」
と言われたら?
伊豆旅行券が欲しいあなたがする行動は多分「注意を受けないように何もしなくなる」という行動です。
「何もしない」はあまり生産的ではありません。
お子さんが変化して欲しい方向性はあくまで適切な行動を獲得し、問題行動が減少する、ということは忘れないようにしましょう。
高/低頻度行動分化強化を効果的に行うためには?
ここまで「高頻度行動分化強化」と「低頻度行動分化強化」の例を見てきましたが、
伝わったかもしれませんが「高/低頻度行動分化強化」ではどのように振る舞えば強化子を得ることができるのか?を定めたルールにすぎません。
※ 私はこのように使うのですが、違う使い方をしている専門家もいらっしゃるかもしれません
それでもこれらのルールは効果的で例えば、
・ 友達を誘いかけて遊ぶことを増やす
・ 公共の場で知らない異性に抱きつくことを減らす
・ 宿題を自発的にする頻度を増やす
・ 忘れ物を少なくする
・ 本を読む頻度を増やす
・ おちんちんを人前で触る頻度を減らす
・ 自分でお皿洗いをすることを増やす
・ 大声で叫ぶことを減らす
など、私もこの知識を持ってここで紹介しきれないくらいのさまざまな問題を解決してきました。
もちろん「どうやったら解決するか?」という方法をお母さんやお子さんと検討し合い、「これだったらできそう」とSSTや面談を重ねてきた結果ではあると思いますが、
「高/低頻度行動分化強化」をABA自閉症療育の設定に組み込むことは効果的です。
重要なポイントは(1)最初に決めたルールはお互いに守るということと、(2)うまくできたかどうか正しく評価できるということです。
(1)最初に決めたルールはお互いに守るということについては、お子さんが成功したのに週末は動物園に行けなくなった、となれば、お子さんも頑張ろうという意欲が無くなってしまいます。
(2)うまくできたかどうか正しく評価できるということは、家に帰ってきてお子さんから「今日もうまくできたよ」という報告だけでやってしまうと、お子さんが仮にウソをついていた場合に結局守らなくても良いとなってしまいます。
上のいずれのホームワーク設定も、学校の先生が評価者としてフェアに評価してくれるようにしていますが、このような評価者をいかに立てるか?
ということもポイントです。
この辺のホームワーク設定のポイントはABAでいえば「行動契約(Behavioral Contract)」というキーワードがヒントになります。
行動契約の知識は、例えばカップルセラピーや家族間の不協和などでお互いの不満を解決する際にも役に立ちます。
気になる人はRaymond .G .Miltenberger (2001)が著書の中で「行動契約」の章を作って紹介しているので、参考になるでしょう。
示した例のように強化基準を定め、お子さんがどうすれば強化子が提供されるのかをルールによって定義し、お子さんの行動を促す方法が1つの「高/低頻度行動分化強化」
の使用例と考えられます。
ただしここまでの例で示したように
「高/低頻度行動分化強化」は比較的、面談ができるような言葉の遅れが少ないお子さんへ適応することが私は多い手法です。
これから紹介していく「非両立行動分化強化/代替行動分化強化」は言葉の遅れどうこうではなく誰にでも使用可能な方法となります。
適切行動を増やす・問題行動を減らす非両立行動分化強化/代替行動分化強化
人が自ら行動するとき、それが不適切であろうが、適切な行動であろうが基本的には「目的(意味・機能)」を持って行動する。
ときにはそれは自身で意識できていないこともあるでしょう。
このような行動は「自発的行動」であり、それはABAでは「オペラント行動」と呼ばれ、「オペラント条件付け」で変容可能です。
意識とは無関係に行なってしまう行動としては「レスポンデント行動」がありますが、
Jon・Baily & Mary・Burch (2006) はレスポンデント行動とオペラント行動について前者と後者の割合はおそらく1対20くらいの割合であると述べています。
このように私たちが日常で行っている行動のほとんどは意味を持つ「オペラント行動」なのですが、
その自発されたオペラント行動がどういった意味を持つか?ということを分析する方法が「機能分析(Fanction Analysis)」というABA技法です。
「機能分析」はABA自閉症療育の重要キーワードですので、またのちのブログページで充分に解説をします。
非両立行動分化強化/代替行動分化強化について私が使用する際、簡単に言えば、
同じ機能の行動で代替できるときは代替行動分化強化、
それが難しい場合は非両立行動分化強化でいく
という方針です。
代替行動分化強化>非両立行動分化強化
どちらも選べるならば、
代替行動分化強化を選択します
「非両立行動分化強化」よりも「代替行動分化強化」で行動問題を解決してあげられる方がお子さんにとって優しい介入方法だと思います。
ベストは代替行動分化強化
ベターなのが非両立行動分化強化
同じ意味を持つ行動を探すのが難しいことはあります
例えば授業中に目の前で手をパタパタして遊ぶとか、自己刺激の意味合いで行動していたとき
適切で同じ機能を持った代替行動を見つけることは至難の技です
分化強化にも必要、人の行動する機能(意味・目的)とは?
このブログではよく出てきますが、
人が行動をする意味をざっくり分けるとすれば4つに分類できます(参考 V. Mark Durand and Daniel B. Crimmins, 1988)。
簡単に言えば、
「注意引き」・・・・・「人からの注目や関わりという結果を求めて行動すること」
「要求行動」・・・・・「物や活動という結果を求めて行動すること」
「逃避/回避行動」・・「嫌悪的な状況や刺激が出現した際、それらを除去(もしくは低減)させる結果を求めて行動すること」「嫌悪的な状況や刺激が出現しないよう行動すること」
「感覚刺激行動」・・・「身体へ入ってくる感覚や刺激などの結果を求めて行動すること」
の4つに人の行動は分類して考えることができます。
かなり正確に言えば上の分類で同じ機能であったとしてもフィットしないケースもありますが、
一旦それはおいておいて、
ざっくり言えば問題行動が上のいずれかに分類でき且つお子さんに適切な行動を教えられると言った場合は代替行動分化強化を検討しましょう。
適切行動を増やす・問題行動を減らす代替行動分化強化の例
代替行動分化強化について、
例えば正の強化「要求行動」の問題行動を考えてみます。
お子さんはおもちゃを貸して欲しいときに泣いて要求していたとしましょう。
あなたはお子さんが泣くときはYoutubeが観たいときが多いこと(もしくは観せれば泣き止むこと)を知っていましたので、
家事もあるし、お子さんが泣いたときにはYoutubeを観ることができるタブレットを渡すことを繰り返していました。
これを「問題行動」と見るかどうかは家族の価値観によりますが、
「欲しいものがあったときに泣いて要求をすればいい」とお子さんが学んでしまうことが適切であると評価するご家庭は少ないと思います。
もしなんとかしなければと思うのならば例えばプロンプトと強化法によって状況を変えていかなければいけません!
例えばプロンプトを用いて「貸して、と言って」と言って適切な行動を強化する
・ 「貸して」と言えばタブレットを貸す(強化法)
・ 「貸して」と言わなければタブレットを貸さない(消去手続き)
このように行動によって結果を変える手続きは代替行動分化強化(DRA:Differential Reinforcement of Alternative behavior)の例です。
イラストのように「プロンプト」を用い適切な行動が出るように促します。
・ 適切な行動が出たときに「貸す(強化子を提供する)」
・ 「貸して」という適切な行動が出なければ貸さない(消去手続き)
という手続きが代替行動分化強化の一例であり、
個人的にはABA自閉症療育で一番メジャーな方法だと感じる手続きです。
正直、何をして良いかわからないと言った場合は、プロンプトフェイディングと強化法のテクニックこそ必要なもののこの方法を使用すれば問題行動は減って行き適切な行動が増えて行きます。
お子さんが「できるけれどやらない」ではなく「できなくて、やらない」場合は「シェイピング(Shaping)」と呼ばれる手続きが採択されます。
まだお子さんが「できない」新しい行動を形成する手続きは「プロンプト」を使用する他に、消去バーストを利用した方法もあります。
「(ABA自閉症療育の基礎61)オペラント条件付けースモールステップの指導とシェイピング(https://en-tomo.com/2020/11/25/operant-small-step-shaping/)」
でも紹介をしました。
お子さんが「できるけれどやらない」なのか、「できなくて、やらない」なのかは大切なアセスメントポイントとなるでしょう。
一貫してこのように振る舞いお子さんの適切な行動が増加していくことが重要です。
例では「プロンプト」を使用していますので、
「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング(https://en-tomo.com/2020/10/04/reduction-fading/)」
や
「(ABA自閉症療育の基礎44)オペラント条件付けープロンプトのポイント(https://en-tomo.com/2020/10/07/prompt-point/)」
で書いたようなプロンプト使用で必要なことやプロンプトのポイントについてを実践していかなければ効果の期待は薄まるでしょう。
また「(ABA自閉症療育の基礎42)オペラント条件付けー強化法とプロンプト(https://en-tomo.com/2020/09/27/reinforcement-prompt/)」
で紹介した「強化法」も核になります。
強化はABA自閉症療育の「核」です。
「(ABA自閉症療育の基礎33)オペラント条件付けー「正の強化の消去」と「負の強化の消去」(https://en-tomo.com/2020/08/30/positive-negative-extinction/)」
で書きましたがもし「課題が嫌で問題行動を示している」ケースでは、「課題を続けることが消去手続き」となります。
この場合は
イラストのように課題をやめてしまうとこのまま「ギャーッ」という行動がどんどん強化される可能性がありますので、
「要求行動」の例のように「休憩、休憩」とプロンプトを出し、お子さんが「休憩」と言えたときに課題から解放するなどの問題行動の消去手続きに並行して適切行動(「休憩」と言葉で伝える)を強化する
こういった代替行動分化強化手続きを検討してください。
お子さんの言葉が遅れていて「休憩」というモデルがプロンプトとして機能せず難しい場合、無理に休憩と言わせなくて良いでしょう。
例えば親御さんが机をトントンと叩くモデルを見せ、発語で休憩を求めるのではなく、お子さんができる行動の中から休憩を求めるように教えれば良いです。
適切行動を増やす・問題行動を減らす非両立行動分化強化の例
基本的には分化強化を用いて問題行動をなんとかしようとする場合は上で紹介した代替行動分化強化を用いることを第一に考えます。
ただし、同じ機能を持つ行動を用意できないことも多いです。
例えば朝会のとき、列に並んでいるのだけれども、ずっと手をパンパンと鳴らして遊んでしまう。
このときお子さんは手をパンパンする行動は、周りの子どもや教師から注意されることが目的(注意引き行動)ではなく、単純に朝礼の話がおもしろくなくて手をパンパンすることで暇を潰している(感覚刺激行動)とします。
このパターンは介入法略を立てるのも、介入を成功させるのも比較的難しいパターンです
手をパンパンすることで手に入ってくる身体感覚に代替する、適切な手に入ってくる身体感覚を与える行動、そんなものなかなか思いつきません。
ベストは代替行動分化強化ですので、
トゲトゲボールを持たせるこねさせるなど、手に同じようだと予測できる身体感覚が入ってくる「周りから見てうるさくない、目立たない」行動を教えようとしたとしましょう。
でもそのトゲトゲボールから入ってくる身体感覚が微妙にでもパンパンよりも気持ち良くなかったり、あまり好みではなかったら?
お子さんはトゲトゲボールを捨てて手をパンパンし続けるのです。
まだ諦めるな!
その行動と同じ機能(意味を持つ)の行動を教えることが難しい場合、
この場合「手をパンパン」する行動と非両立な行動を強化し、「手をパンパン」する行動が生起しないように試みます。
先生が協力的であった場合、朝礼の間は先生が片手を繋いでくれていて何か話しかけてくれるなどは最高です。
先生が片手を繋いでくれていると物理的に手をパンパンできませんし、社会性のトレーニングにもなります。
このように
問題行動と非両立の行動を分化強化していく方法が非両立行動分化強化(DRI:Differential Reinforcement of Incompatible behavior)
です。
例えば、朝礼中はハンカチを引っ張って立っている行動を強化することも良いでしょう。
物理的に手をパンパンさせることは叶いません。
非両立行動分化強化とは、問題行動とは物理的に両立し得ない非両立な行動を強化する方法
です。
非両立行動分化強化の使用を検討するときはほとんどがこの例で示したような、「感覚刺激行動」で適応されると思います。
さいごに
ここまで「分化強化」について紹介をしてきましたが小野 浩一 (2005)の紹介していた
(8)異反応分化強化
も少し使用することがあるので簡単に紹介させてください。
異反応分化強化ではお子さんから異なる行動が出現したときにとりあえず強化する
というようにします。
このようにすればお子さんの行動が広がり、新しい行動が出てくる、ということを強化することができるため、反応を広げたいときに効果的です。
日常の用語で言えば「創造性」とか、そういったものをトレーニングしたいとき!
私はあまり「創造性」などは使わないので、簡単に言い換えれば「自発的に新しい行動をして欲しいとき」と言い換えられると思います。
「分化強化」というものはこのブログページ冒頭で紹介したように、
特定の適切行動を選択して強化することで行動を変化させる手続き
と覚えれば良いでしょう。
特定の適切行動をどのように強化し(または非特定の不適切行動をどう扱うか)を定めた手続きです。
このブログページでは、
(1)(2)高/低頻度行動分化強化
(6)(7)非両立行動分化強化/代替行動分化強化
について見てきましたが「分化強化」はABA自閉症療育のメジャーな療育方法となります。
一言で言えば良い行動を強化して伸ばす分化強化ですがとてもシンプルなものとして
O.Ivar Lovaas (2003) はDTTを使用してお子さんに教えていくとき、
部分的で不完全な反応は強化せず、完全な反応だけを強化する
と述べています。
これを意識するだけでも変わってきます。
このように実は単純な分化強化とは完全(適切)な行動のみを強化するというシンプルなものです。
O.Ivar Lovaas (2003) が述べたことを参考にすれば、ABA自閉症療育のプログラムの1つ音声模倣(音を明瞭にしていくプログラム)では、
私は「明瞭な音声」を強化し「不明瞭な音声」は強化しない。
強化基準をだんだんと上げていき、どんどんと音を明瞭にしていくこともできます(これはシェイピングと呼ばれます)。
分化強化は奥が深いと思います。
ABA自閉症療育でお子さんを療育していこうと決めたならば下のイラストを見てみてください。
このことはとても大切無ことだと思います。
わたしたちはお子さんが「悪いこと」をしたときに特に注目しがちです。
しかし、
1日は24時間しかないので「良い行動」が増えていけば相対的に「悪い行動」は減って行きます。
1日には制限があるのでこれは真理です。
お子さんが普段から行っている適切な良い行動に注目し、強化することを忘れずに療育ライフをお過ごしください。
1日は24時間しかないと現段階でみんなが認めているのです
これはとても重要なことです
日常の中にある、普段からお子さんが行っている適切な行動を細かく、細かく、強化するべきで、そのことが土壌になり、絶対にお子さんの成長を促進することに繋がります。
私は普段「絶対」とか使いませんがここは自信を持って言っても良いでしょう。
これが分化強化の真髄!
このブログページ冒頭でご紹介したように分化強化は「結果」に寄った手続き(「結果操作」)でした。
「強化子」を使用した結果操作です。
次のページでは「罰(Punishment)」を使った「結果操作」についてご紹介して行きます。
「罰」はABA自閉症療育で推奨されませんが、知っておくことも大切かもしれません。
【参考文献】
・ Jon・Baily & Mary・Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー】 岩崎学術出版社
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS
【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】
・ 小野 浩一 (2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
・ Paul A. Albert・Anne C. Troutman (1999) Applied Behavior Analysis for Teachers:Fifth Edition 【邦訳 佐久間 徹・谷 晋二・大野 裕史 (2004) はじめての応用行動分析 二瓶社
・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】
・ V. Mark Durand and Daniel B. Crimmins (1988) Identifying the Variables Maintaining Self-Injurious Behavior. Journal of Autism and Developmental Disorders, Vol. 18, No. 1