(ABA自閉症療育での行動の見方5)行動の前も考える理由

ABAでは行動の結果(後)を見ることが特に大切だが、行動の前後を見て解釈する

先の「(ABA自閉症療育での行動の見方4)結果がその後の行動を左右する(https://en-tomo.com/2020/07/03/behavior-view-base2/)」

では「(環境) → (個体:行動) → (環境:変化)」の3つの単位で行動を引き起こす原因について紹介しました。

このページから特に行動の後に起こる結果が大切で、本質的には行動の後に起こる結果によってその後の行動が増える・減るなどの変化が生じることをなんとなく感じてもらえれば幸いです。

ABAで行動を解釈する際は行動の後が時に大切なのですが、ABAを用いて行動を分析する際は「行動の前」も見ます。


行動を中心に添えて、行動の前後を見てお子さんの「行動の意味」を知っていきましょう!

行動の増減に影響を与えるのは「行動の後」ということは今後も覚えておいて欲しいのですが、ではなぜ「行動の前」も含めて考える必要があるのでしょうか?

行動の後だけを見ていればその後、行動の増減がわかるのであれば前は必要ないと思うかもしれません。

でもそうではないのです。もちろん行動の後の結果が特に大切なのですが、前を見ることも大切であるということをこのページでは書いていきます。

「行動の前も見る理由」はいろいろあると思うのですが、

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・ 問題行動は既に学習された行動だと捉えて対処するから

・ 望ましい行動は実は特定の場面でのみ生起して欲しいことが多いから

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このページでは上の2点から書いていきましょう。

※ この2点だけでも行動の前を見ることが有意義であると伝われば嬉しいです



理由1:問題行動は既に学習された行動だと捉えて対処するから

問題行動だけでなく今あなたが行っている行動の多くは「既に学習された行動」です。

例えば「ABAについて知りたい、療育について知りたい」と思いブラウザーを開いたのは過去に「分からないことがあった時に検索をして解決した」という個人史があるからだと思います。

「美味しいラーメンが食べたい」、「腕の良い医者が知りたい」など「わからない時は最初にとりあえずGoogleで検索する」などは現代人が「強められてきた(強化されてきた)」行動パターンと言えるでしょう。

「学習された個人史」以外にもちろんお子さんが問題行動を起こす要因はその人の生物学的要因、例えば生得的なものとして(性格傾向やIQなど)、後天的なものとして(事故で四肢や脳を損傷した、認知症や統合失調症の発症など)などが影響してくることも確かです。

しかし影響してくることが確かであったとしても、「性格」や「欠損した身体部位」が問題行動を引き起こす原因であると結論付けても問題解決には至らないでしょう。

ABAではその人の生物学的要因も行動を引き起こす原因に影響を与えることも認めます。無視をして考えることもしませんが、あくまで「学習された行動」に注目し、今できる支援を考えていくことに力を注ぐのです。

例えばABAでは問題行動はシャイピング(Raymond G. Miltenberger ,2001)や、レスポンデント条件付け(Timothy A. Sisemore ,2012)、体験の回避といったルール支配行動(Niklas Törneke,2009)などの学習された経験によって引き起こされると考えます。

問題行動は学習された結果によって引き起こされたと考えるので、学習理論(ABAは学習理論をベースとしています)を用いて解決する方法が導き出せます。

例えば癇癪でも暴力でも、自傷行為でも嘔吐でも、パニックでも不安症状でも、うつ症状でも強迫症状でも、ほとんどの問題行動は日中その子が起きている時間中ずっと続いているわけではありません。

問題行動は日中その子が起きている時間中ずっと続いているわけではないとすると、「問題行動が起きる前に何か共通点はないか?」「どういった時に(場面で)問題行動が出現する(学習されている)のか?」など、「行動の前」を分析すると、お子さんが「この理由で行動している可能性が高い」というお子さんの「行動の意味」を知るためのヒントを得ることができます


「行動の前」に何があったか?を知ることでどういったことが分かるでしょうか?

これは私が分析する際に使用している1つのテクニックなのですが、例えばご両親から「突然」、「いきなり」、「何もしていないのに」・・・、といった状況でお子さんが問題行動を起こす場合お子さんは「親御さんの注意を引くために」問題行動を起こしている確率が高いです。

※ このようなケースは体感ですが7-8割は「親御さんの注意を引くために」問題行動が起こっているのです。ただし言葉の発達が遅れているお子さんや幼児に限定される情報かもしれません

このようなテクニックについても今後別のページで解説していきたいと思います。

「どういった状況で問題行動が起こっているか?」は「どういった支援をするか?」を決める際に強力な情報です。



理由2:望ましい行動は実は特定の場面でのみ生起して欲しいことが多いから

あなたがお子さんに適切な行動を学んで欲しいと思った際、実は暗に「この場面で、こうして欲しい」といった「特定の場面」が想定されています。

まず「暗に」そう考えていたことに気づくことが大切です。

例えば無発語のお子さんに「ママ」と言って欲しいと考えた時『「ママ」に対して「ママ」』と言って欲しいのであって、「道ですれ違う人」や「冷蔵庫などの物」に対してまで「ママ」と言って欲しいわけではないでしょう。

「お友達と喜びを共有して欲しい」と思った時、物を一緒にお友達と作り終わった時『「やったー」とタッチをする』のは良いけれども、落ち込んでいるお友達に対して『「やったー」とタッチをする』のは違います

「お友達に優しくして欲しい」と思った時お子さんが開封したてのおもちゃを自分は使っていないにも関わらず、要求されて貸してしまう。これも、想定した適切な行動ではないかもしれません。先生は褒めてくれたとしても、お子さんは単に断れなかっただけだったとすれば、それはあなたが望んだ最良の結果だったでしょうか?

「適切な行動」というのは「特定の場面」で出てこそ初めて「適切」と言えるのです。


「特定の場面で行動が出現する」ことは専門用語で「刺激性制御の確立」と言います。

ABA療育で何かスキルを学んだり新しい知識を得ていくことは専門的には刺激性制御を確立させていくということです。例えば行動の前の条件を操作することで学習が早く進むと言う研究があります(参考 H. S. TERRACE,1963)。ABAでは行動の後だけではなく行動の前の刺激性制御についてもいろいろな実験が行われてきました。

この研究は人間ではなくハトを用いた実験ですが「(ABA自閉症療育のエビデンス2)O. Ivar Lovaas、1987年(https://en-tomo.com/2020/03/22/ivar-lovaas1987/)」でABA療育に明かりを灯した実験を紹介しましたが、

そのページで紹介したO. Ivar Lovaasもこの実験を引き合いに出し「無誤学習(エラーレスラーニング)」を自閉症児に対して進めてきました(参考 O.Ivar Lovaas,2003)


上記のページがまとめられているページでは「自閉症ABA療育のエビデンス」について書いており、

https://en-tomo.com/aba-therapy-evidence/)←←←このURLから自閉症ABA療育のエビデンスを書いたページがまとまっている章に飛べます。

療育を選択する時に、参考にしていただければ幸いです。


「ABA自閉症療育のエビデンス5)EIBI(早期集中行動介入)のメタ分析(https://en-tomo.com/2020/03/30/eibi-metaanalysis/

は上で紹介した章内で書いたページですが実際O. Ivar Lovaasが進めて行った研究は強いエビデンスを誇っています。

刺激性制御を学んでいくことで「お母さんにはあいさつができるけれども、なぜか先生や友達にはできない」と言った問題の解決ができます。これが刺激性制御の最大の醍醐味ですね。やることは地味かもしれませんが、効果は絶大です。

これは他のページで学んでいきますが「刺激性制御(stimulus control)」は「般化(transfer of training,stimulus generalization)」と「弁別(stimulus-class control)」と関係しています。

このことについてはまた追ってブログ内で学んでいきましょうね。



このページの結論としては「行動」を起こす前にあるこの「特定の場面」が想定されるがこそ、お子さんに行動を教えていく時には「行動の前」も含めて考えて分析をする必要があります。

という内容が伝われば幸いです。


行動の前も考えることも大切


【参考文献】

・ H. S. TERRACE (1963) ERRORLESS TRANSFER OF A DISCRIMINATION ACROSS TWO CONTINUA’. JOURNAL OF THE EXPERIMENTAL ANALYSIS OF BEHAVIOR ,APRIL VOLUME 6, NUMBER 2

・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店】

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】

・ Raymond G. Miltenberger (2001) Behavior Modification:Principles and Procedures/ 2nd edition 【邦訳 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容法入門 二瓶社】

・ Timothy A. Sisemore  (2012) The Clinician’s Guide to Exposure Therapies for Anxiety Spectrum Disorders:Integrating Techniques and Applications CBT, DBT, and ACT 【邦訳 坂井 誠・首藤 祐介・山本 竜也 (2015) セラピストのためのエクスポージャー療法ガイドブック その実践とCBT、DBT、ACTへの統合 創元社】

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