行動の前ではなく後に注目する
「死人テスト・行動の過剰と不足(ABA自閉症療育での行動の見方2)(https://en-tomo.com/2020/06/29/behavior-view-base/)」
で行動をどう定義するのかについて見てきました。
「顕在的行動と潜在的行動(ABA自閉症療育での行動の見方3)(https://en-tomo.com/2020/07/01/overt-behavior-covert-behavior/)」では
普段の日常で私たちがあまり「行動」とは捉えない「感想を持つこと」、「考えること」、「思うこと」等もABAでは「行動」と捉えるということも分かりました。
このページでは「環境」という言葉が出てきますが、ABAでは行動の前後の状況のことを「環境」と捉えて考えるためこのような書き方をしています。
行動の前に原因を求めた場合
行動理由が「ラベル」によって説明される医学モデルの見方を「(ABA療育での行動の見方1)医学モデルとABA(https://en-tomo.com/2020/06/28/medicine-model-aba/)」では紹介しました。
上のイラストのような行動の原因を求める時に「ラベル」を貼って説明することが「医学モデル」です。
このことは行動の問題を解決する際にはあまり生産的ではありません。
「医学モデル」の他に、実は行動の原因は「行動の前」の要因が重要視されることが多いということをこのページでは書いて行きます。
「行動の前」の要因が重要視されることが多いのですが、実は行動の原因は後に求めることが生産的です。
そのことをこのページでは書いて行きます。
例えば息子さんが朝お友達を見つけておはようと言う場面を思い描いてみてください。
下にイラストがありますが「先にある環境側の要因(朝友達に会ったこと)」が行動(「おはよう」というあいさつ)を引き起こしている原因のように見えます。
例えば上のイラストを見せられて「男の子がなぜあいさつをしたの?」とあなたが聞かれたら、きっと「目の前に友達がいたから」と答えるでしょう。
このような説明は「行動の原因を行動の前に求めている」ことになります。
上のイラストの場合は明日も明後日も「朝お友達に会った時にあいさつをする」ことでしょう。
イラストでお子さんがあいさつをした後、お友達もあいさつを返してくれています。
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朝友達に会う(環境) → 「おはよう」(行動) → 友達から挨拶が返ってくる(環境)
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オレンジ色で示した関係性の緑色の下線が引かれている部分に注目してください。
あまり意識をしたことはないかもしれませんが「明日も、明後日も朝お友達に会った時にあいさつをする」という行動が維持するためには、実は「おはよう」とあいさつをした後の結果の方が重要です。
以下、解説をしていきます。
ABAでは行動をどう説明するか?
奥田 健次 (2012)は『人や動物の行動の原因について考えるときは「真逆」に見なければならないのである。つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の後に何が起きたのかを考えなければならない』と述べました。
例えばこの場合でもお子さんは今後もお友達を見つけた時にあいさつをすると思いますか?
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朝友達に会う(環境) → 「おはよう」(個体) → 友達から無視される(環境)
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「朝友達に会う」という「環境」は「行動」を引き起こすきっかけになっていますが、その行動に伴う結果が「無視をされる」であった場合にはどうでしょうか?今後もお友達を見つけた時にあいさつをするでしょうか?
行動を起こす前の状況(環境)はきっかけにはなるのですが今後も同じ状況で同じように行動するかどうか?
ということを決定するのは実は「行動をした後の結果」であることが伝われば嬉しいです
このような結果を受け「友達を見つけてもあいさつをしない」ことに読んでいて納得ができるのなら奥田 健次(2012)が述べたように本質的に行動を起こす要因は「行動の後に伴った結果」であると理解できると思います。
「あいさつをしない」だけでなく、もしかすると気まずくてそのお友達を見た時に隠れるようになってしまうかもしれません。
少し違和感があるかもしれませんがABAで行動の原因を考える際に「以前にもあいさつが返ってきた」という結果があるから、同じような状況でまた「あいさつを行う」と考えます。
ABAでの行動の見方のまとめ
ABAで行動の原因を考える時は特に「行動の後に伴った結果」を重視します。
ABAではイラストのように行動の前だけではなく行動の後に伴った結果にも注視し、特に重要と捉えることを覚えておきましょう。
特に行動の原因を求める際はイラストの中で「O:Outcome:結果」と書かれている「行動の結果」に重きを置くことを覚えておいてください。このような考え方を覚えておきましょう。
【参考文献】
・ 奥田 健次 (2012) メリットの法則 行動分析学・実践編 集英社新書