ABA自閉症療育で刺激内プロンプトを活用するー教材作りのポイント(ABA自閉症療育テクニック8)

本ブログページでは「刺激内プロンプト(しげきないプロンプト)」というものをご紹介します。

刺激内プロンプトは特に教材を作ることが好きな人は得意とするテクニックでしょう。


本章では最初、プロンプトについて簡単に振り返り、その後「刺激内プロンプトとは何か?」をご紹介します。

準備に少し時間がかかるものの、刺激内プロンプトを用いた療育支援は有用です。

本ブログページで刺激内プロンプトを用いるテクニックについて見て行きましょう。


お子様が自分一人で頑張ることができるよう教材を工夫してプロンプトする刺激内プロンプト!


おさらいープロンプトって何?

まずは簡単にプロンプトについておさらいをして行きます。

James E. Mazur (2006) はプロンプトとは好ましい行動をより起こしやすくさせる刺激であると述べました。

プロンプトとはお子様に行って欲しい行動はあるにも関わらず、その行動が生起しないときに使用するヒントのようなものだと思ってください。


以下、小野 浩一(2005) の書籍に乗っている記述をヒントとして例を見て行きましょう。

例えばお子様の目の前にコップがあったとしましょう。

親御様はお子様に自発的に「コップ」と、コップの名称を言ってくれることを期待しています。

もしお子様がコップではない「おさら」という単語を言えるのであれば、コップを見て「おさら」というかもしれません。

このとき支援者が「違うよ、これはコップ」と伝えます。


お子様がそれを聞いて「コップ」ということができた場合、「これはコップ」と伝えた親御様の行動はお子様にとってのプロンプトです。


Enせんせい

親御様はお子様に自発的に「コップ」と、コップの名称を言ってくれることを期待していたとすれば、

「これは何?」、「名前言って」などの間接的な促しもプロンプトとして機能するでしょう


O.Ivar Lovaas (2003) は自閉症のお子様への指導について、

プロンプトを使わなければ指導者が適切な行動を強化して強めるチャンスは決してめぐってこない。定義によれば、プロンプトとは、子どもが正しく反応してその行動が強化され強められるように、指導者が補助として行うあらゆる行動のことであると述べました。

上で赤字にしましたが、指導者(親御様)が行う行動自体がプロンプトになる、ということは覚えておきましょう。


さてここまででプロンプトとはお子様に行って欲しい行動を促すヒントのようなものだとわかっていただけたかと思います。

次の項目では「刺激内プロンプト」とは何か?

ということを見て行きましょう。

刺激内プロンプトは明日から使えるテクニックです。


イラストのような身体的なプロンプトも良いけれど、本ブログページでご紹介する刺激内プロンプトも使って行きましょう


刺激内プロンプトって何?ーABA自閉症療育で使える

刺激内プロンプトとは教材の中にプロンプトがフェイディングされて行くプロセスが埋め込まれているプロンプトです。

フェイディングという言葉が出てきましたが、プロンプトとは本来行なって欲しい行動をお子様が行えなかったときに使用するヒントでしたね?

そのためヒント(プロンプト)を徐々に少なくして行って、自立した課題達成を目指して行く必要があります。

このヒント(プロンプト)を徐々に少なくして行くプロセスをプロンプトフェイディングと呼ぶのです。

プロンプトによってお子様に行って欲しい行動を行うように促し、行動後強化しお子様の行動を強め、その後、プロンプトがなくてもできるようにフェイディングして行く、プロンプトがフェイディングできたとき、お子様は行って欲しかった行動を自立して(プロンプト、つまりヒントなしで)行えるようになっている、

ということです。


さて具体例を見て行きましょう。


例えば「お名前を書いてください」と言われたときに名前を書くことをターゲット行動としてお子様に教えたいとします。

お子様の名前は「たろう」としましょう。


たろうくんは今、「お名前を書いてください」と言われたとき名前を書くことがターゲット行動として教えられています。

たろうくんは今、自立して自分一人で自分の名前を書く課題は達成ができていません。


Enせんせい

教えるために使用できるプロンプトはいろいろなプロンプトがありますね?


例えば親御様が「お名前を書いてください」と言ったあと、たろうくんの手をそっと持って一緒に「たろう」と書くことも考えられます(これは、身体プロンプトと呼ばれます)

他にも親御様が「たろう」という文字を書いて見せ同じように書くようヒントを出すこともできるでしょう(これは、モデルプロンプトと呼ばれるものです)


以上の支援について、介入計画を「刺激内プロンプト」を用いて行なった場合どのような支援が可能でしょうか?


以下のイラストを見てください。


「たろう」という文字がグレーで書かれた運筆のなぞり教材プリント

上のイラストはWindowsのワードで作成しました。

黒色ではなく、少し薄くしたグレーの色で「たろう」と書かれています。

なぞり書きのプリントです。


以上のプリントをたろうくんの前に提示をして親御様が「お名前を書いてください」と言ったとき、たろうくんは(なぞり書きで)上手に自分の名前を書けるようになったとしましょう。

少し薄くしたグレーの色で「たろう」と書かれている部分が「お名前を書いてください」と言われたとき名前を書く行動の「刺激内プロンプト」です。


次にステップを進めて行きます。

ステップの進め方はいろいろあると思いますのでいくつかパターンも見て行きましょう。


単純に少し薄くしたグレーの色を更に薄くして、下段は空欄にする、という方向性もありますね。

以下のイラストのような感じです。


「たろう」という文字のグレーを薄くした運筆のなぞり教材プリント(薄いけど見えるかな?)下段は空欄になっています

ヒント(プロンプト)が1枚目のプリントよりも少なくなった(プロンプトがフェイディングされた)ことが分かると思います。

手続きとしては、親御様が「お名前を書いてください」と言ったあとに提示するプリントを変えるだけです。


他のパターンも見てみましょう。

以下はなぞり書きで示されている範囲が少なくなっています。


「たろう」という文字が一部切り抜かれた運筆のなぞり教材プリント

上のような形式でヒント(プロンプト)を1枚目のプリントよりも少なくする方向性も考えられるでしょう。

プリントの中にある要素を減らして行くというイメージですね。


もともと「名前を書いてください」と言ったとき、空欄に名前をかけることがターゲット(目的)だったことを思い出してください。

そのためプロンプトをフェイディングするためには「空欄」に近づけて行くイメージでヒントを減らしていけば良いです。

以上のように本来の目的としていたターゲット行動に近づく方向性で教材を工夫すること、ABA自閉症療育で使用する「刺激内プロンプト」の活用例として覚えておいてください。


熊 仁美・竹内 弓乃 (2015) は療育における刺激内プロンプト活用のポイントは、最終的に学習させたい刺激の形はそのまま残しながら、その他のプロンプトとなる手がかりを教材に内在させること、プロンプトフェイディングステップごとに教材を用意することであると述べました。

今回、例で出した教材で言えば以下のイラストのように空欄として残る枠線が「最終的に学習させたい刺激の形」です。


「最終的に学習させたい刺激の形」、空欄の運筆プリント教材

熊 仁美他 (2015) 教材にプロンプト・フェイディングのステップが内在されていると、保護者の細かい力加減やタイミングの違いに左右されることなく効率的に子どもの学習に繋げられる。そのため特に保護者指導の療育では、刺激内プロンプトを可能な限り活用すべきであるとも述べています。


Enせんせい

個人的には刺激内プロンプトだけで突破できないときは刺激内プロンプトと一緒に身体プロンプトやモデルプロンプトを活用する場面もしばしばあると思いますが、

本ブログページから刺激内プロンプトも活用してみようと言う視点を持っていただけると嬉しいです


教材というものは本当にいろいろな工夫ができます。

例えば今回ご紹介したプリントは簡素なものでしたが、お子様によってはプリント内の名前を書く枠線外に好きなキャラクターのイラストを挿入してあげたり、「がんばってね!ママより」など嬉しくなるようなコメントを書いてあげる等、

「このプリントやってみたい!」、「面白そう!」と動機付け、興味を持たせる工夫がプロンプト以外にも可能です。


私自身は私よりも教材を上手に作る人をたくさん見てきました。

私自身は教材作りがそんなに得意ではないと思っています。

そのため例えば保育士さんや学校の先生などはめちゃくちゃに魅力的に見える教材を作られたりするので「すごいなぁ」と思うこともしばしばです。

身体プロンプトやモデルプロンプト以外に今回ご紹介した刺激内プロンプトもABA自閉症療育で使用できるテクニックですので、是非、ご活用ください。



さいごに

本ブログページでは最初、プロンプトについて簡単におさらいをし、その後、刺激内プロンプトについて述べてきました。

刺激内プロンプトの例として「たろう」と名前を書くためのアイディアをご紹介しました。


お子様によってどのようにプリント内(刺激内)のプロンプトを変化させて行くのかについては、調整する必要はあるものの、

最終的に学習させたい刺激の形はそのまま残しながらその他のプロンプトとなる手がかりを教材に内在させながらヒントを減らして行くということを意識しながら行なってみてください。


また本ブログページでは「プロンプト依存」という現象については触れていません。

例えばRaymond .G .Miltenberger (2001)はできるだけ速やかにプロンプトを取り除き、プロンプトから自然な弁別刺激に刺激性制御を移転させる必要性を述べていますが、

あまり同じプロンプトのレベルに留まってしまうとそのプロンプトに依存してしまい、療育効率が下がってしまいます。


ブログ内の検索窓で検索していただければ出てくるキーワードですが、プロンプトを使用した支援を行う場合には意識した方が良いキーワードです。

是非「プロンプト依存」についても検索してみてください。

例えば「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング(https://en-tomo.com/2020/10/04/reduction-fading/)」のページなどで解説しています。


「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング」のサムネイル

本ブログページでご紹介した「刺激内プロンプト」は教材を作るとき、ターゲット行動を達成するため意識すべきポイントでしょう。

是非明日から使えるABA自閉症療育テクニックとしてご活用ください。



【参考文献】

・ James E. Mazur (2006) LEARNING AND BEHAVIOR:6Th ed. 【邦訳 磯 博行・坂上貴之・川合伸幸 訳 (2008) メイザーの学習と行動 日本語版 第3版 二瓶社】

・ 熊 仁美・竹内 弓乃 (2015) 「編:日本行動分析学会 責任編者:山本 淳一・武藤 崇・鎌倉 やよい ケースで学ぶ行動分析学による問題解決 金剛出版 p52-53」

・ 小野 浩一(2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館

・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】

・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】