本ブログページでは「オペラント内」と「オペラント間」で行動を転移させる方法を書いていきます
このような方法を私は良く使いますし、特にまだ言葉の未熟なお子様の場合は有効な手段でしょう
『「オペラント内」と「オペラント間」で行動を転移させる』と書かれると非常に難解なことのように思うかもしれません。
専門用語、難しいよ・・・いやだ・・・
ただやることはそんなに難しくありません。
本ブログページでは「オペラント内」と「オペラント間」という定義には触れず、実際に何をやるのか?というところに重点を置いて書いていければと思います。
本章は実際にABA自閉症療育を行なっている親御様へABAのテクニックを書いて行く趣旨の章ですので、もちろん今日書いている内容も今日から、明日から使用できるでしょう。
また本ブログページの内容についてわかりやすく解説してあったMary Lynch Barbera・tracy Rasmussen (2007) を参考に本ブログページを書いていきたいと思います。
オペラント内の転移手続きー行動や言葉の拡張
本ブログページではMary Lynch Barbera他 (2007)を参考に転移手続きの例をいくつかご紹介していきましょう。
まずは「オペラント内の転移手続き」についてです。
まず最初は以下の例です。お子様の名前は「太郎くん」とします。
以下の例のたろうくんは「拍手して」と言ってもまだ理解がなく、指示に沿う行動ができません。
そのようなときどうするか?ですが、以下のように指導を行います。
指導者:「拍手して」と言ってすぐに太郎くんの手を取り拍手をさせる(完全身体プロンプト)
太郎くん:指導者の完全身体プロンプトによって拍手をする
↑ここで1回太郎くんは拍手をした
指導者:「そうそう・・・、拍手して」と言って太郎くんの肘や腕に触る
太郎くん:拍手をする
↑2回目はより少ないヒントで太郎くんは拍手をした
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
私は以上のような手続きを「プロンプトフェイディング」と呼んでいますがMary Lynch Barbera他 (2007)では「オペラント内転移手続き」と呼ばれています。
同じ手続きの呼び方が違うのか?というと、そうではなく、
私はプロンプトフェイディングによってオペラント内の転移を促す、という表現が正しいと思います。
個人的に思う上の手続きの肝は指導者の完全身体プロンプトによって太郎くんが拍手をしたときは強化子の提示を少なくし(「そうそう」と言って次のよりヒントの少ないときよりも弱く強化している)、
少し弱めの太郎くんの肘や腕に触るというプロンプトで太郎くんが目的の行動を行えた際に強化子を提示しているという点です。
完全身体プロンプトで行動ができるたびに強化子を提示するよりも、以上の手続きの方がスピーディーに学習を進めることができるでしょう
以前1回の機会で3回ほどマンドを引き出す方法を「(ABA自閉症療育の基礎83)ABA自閉症療育で言葉・発語を教えるのに最適!マンドトレーニング(https://en-tomo.com/2021/03/18/aba-mand-training/)」のページでご紹介しました。
ページ内で以下のイラストを使用したのですが、上の「拍手をして」という音声指示と狙っていることは同じです。
次に別のパターンをご紹介します。
次の太郎くんはバナナの名前を言うことができない(バナナを見てバナナと言えなかったり、「これ何?」と聞かれてバナナと言うことが難しい)お子様です。
指導者:バナナのフィギュアを持って「これ何? バナナ」(質問+プロンプト)
太郎くん:バナナ
↑ここで1回太郎くんは「バナナ」と言った
指導者:「そうそう・・・、これ何?」(質問)
↑2回目はヒント無しで太郎くんは「バナナ」と言った
太郎くん:バナナ
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
以上が手続き例です。
「拍手して」のときと同じでプロンプトが少なくなったタイミングでできたとき、強化子を提示しています。
以上の2例は「オペラント内の転移手続き」としてMary Lynch Barbera他 (2007)で紹介されていました。
「オペラント内の転移手続き」という言葉の意味をしっかりと理解していなくても「そういうことをすれば良いのか」ということが伝わったのではないでしょうか?
このような手続きは細かいテクニックかもしれませんがお子様の学習を進めるときに有効だと感じています。
次の項では「オペラント間の転移手続き」としてMary Lynch Barbera他 (2007)で紹介されているものをいくつかご紹介しましょう。
オペラント間の転移手続きー行動や言葉の拡張
以下は「オペラント間の転移手続き」の例です。
指導者:バナナのフィギュアを置いて「バナナ さわって」
太郎くん:バナナをさわる
↑このとき太郎くんは指示され目の前に置かれた「バナナ」をさわった
指導者:「これ何?」
太郎くん:「バナナ」
↑次に太郎くんは「これ何?」と聞かれて言葉で「バナナ」と答えた
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
上の例では「(1)バナナをさわらせるという行動を求めた」あと、「(2)バナナの名前を言うよう求める」という構成になっています。
これは専門的には「(1)受容課題」を求めた後で「(2)表出課題(タクト)」を求めるという構成です。
このようなことをするとどういうことが生じるか?
最初の指導者の「バナナ さわって」というキューがヒントとして残っており、バナナの名前を求めたときに正解する確率が上がるはずです。
他にも以下のような手続きがあります。
指導者:「ボール って言って」
太郎くん:「ボール」
↑このとき太郎くんは「ボールって言って」という指示の下「ボール」と答えた
指導者:ボールを見せて「これ何?」
太郎くん:「ボール」
↑次に太郎くんは「これ何」という指示の下「ボール」と答えた
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
上の例では「(1)ボールと言うことをマネさせた」あと、「(2)ボールを見せて名前を言うよう求める」という構成になっています。
これは専門的には「(1)エコーイック課題」を求めた後で「(2)表出課題(タクト)」を求めるという構成です。
1つ目の例と同じように最初の指導者の「ボール って言って」というキューがヒントとして残っており、ボールの名前を求めたときに正解する確率が上がると思います。
同じような構成のものをもう2例ご紹介しましょう。
指導者:ネコの絵を渡しながら「ネコ 一緒にして」
太郎くん:目の前に置かれたネコの絵の上に渡されたネコの絵を重ねる
↑このとき太郎くんは「ネコ」の絵を重ね合わせた
指導者:「ネコ 触って」
太郎くん:ネコにさわる
↑次に太郎くんは指示され目の前に置かれた「ネコ」の絵をさわった
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
これは専門的には「(1)マッチング課題」を求めた後で「(2)受容課題」を求めるという構成になっています。
最後の例は、
指導者:数字の5のカードを見せて「いくつ?」
太郎くん:「5」
↑このとき太郎くんは数字の5を見て「5」と答えた
指導者:「何歳?」
太郎くん:「5」
↑次に太郎くんは「何歳?」という質問に対して「5」と答えた
指導者:にっこりと笑って強化子を提示し、「うまくできたね」など称賛する
これは専門的には「(1)表出課題(タクト)」を求めた後で「(2)イントラバーバル」を求めるという構成です。
いつまでもヒントを出した状態で行うわけでは無いですが、このような手続きを行うことで正答する確率が上がり、誉められることがたくさんある療育設計を作ることができます。
やはりABA自閉症療育ではお子様が「楽しい」、「やりたい」と自発的に取り組んでくれる姿勢が大切ですので、たくさん褒める機会を作ってあげることは重要です。
さいごに
いかがだったでしょうか?
本ブログページ冒頭『「オペラント内」と「オペラント間」で行動を転移させる方法について書いて行く』と言われたとき、難しそうだなぁ・・・と感じたかもしれませんが、
ご紹介した内容の中身はそんなには難しい内容ではなかったと思います。
基本的には既にできることをヒントとして用いて今行なっている挑戦課題につなげる、という構成になっていました。
※ 例えば1番最初の例で使用した「拍手して」の例についても「完全身体プロンプト」があればできるので、この言い回しは間違ってはいないでしょう
既にできる課題からまだ上手くできない課題へと転移させて行く。
本ブログページでご紹介させていただいたようなテクニックも盛り込みながら日々のABA自閉症療育に挑戦して行かれるのも良いと思います。
是非、毎日の療育に取り入れてみて下さい!
【参考文献】
・ Mary Lynch Barbera・tracy Rasmussen (2007) The Verbal Behavior Approach How to Teach Children with Autism and Related Disorder 【監訳 杉山 尚子 訳 村上 裕章 (2021) 言語行動 VB指導法 発達障がいのある子のための言語・コミュニケーション指導 学苑社】