本ブログページでは本章前回のブログページに引き続き自閉症児に言葉を教えるときに使えるABA自閉症療育のプログラム「音声模倣」についての手続きとポイントを書いて行きます。
本章前回のブログページでは「単音」の音声模倣にフォーカスして音声模倣の方法に触れてきました。
(ABA自閉症療育の基礎95)自閉症児の言葉・発声を促すプログラム「音声模倣」、綺麗な発音はどう教える?構音の仕方(https://en-tomo.com/2021/11/05/vocal-imitation-procedure/)
単音というのは例えば「あ」「き」「す」「て」「の」のような1文字で記載できるものです。
複音というのは単音の組み合わせ例えば「イカ」「バナナ」「チョコ」「トラック」「しょっぱい」など単音を組み合わせたものになります。
本ブログページでは単音の音声模倣の次「複音」の音声模倣についてどのように練習をしていけば良いのか考えていきましょう。
本ブログページでは最初、複音をどのようなルートで綺麗にしていけば良いかを書いていき、その後、
「マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合」と「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」について書いていきます。
まず最初に複音をどのようなルートで綺麗にしていけば良いかを見ていきましょう。
複音をどのように綺麗にしていくか
複音の音声模倣を入れるタイミングはいつでしょうか?
単音の音声模倣で全ての単音が綺麗に言えるようになったときですか?それとも、別のタイミングでしょうか?
私自身は複音を支援計画に入れるとき、特に単音を全て明瞭に言えるようになってから導入するということは無いです。
例えば極端にいえば「あ」「い」「う」「え」「お」の清音5音のみが綺麗に言えるようになった段階で、
「いえ(家)」「あお(青)」「うえ(上)」「いあ(嫌)」などの複音を練習していっても大丈夫でしょう。
また上の例では意味のある単語を羅列しましたが、
「えお」「あえ」「うい」「ああ」など意味を持たない音列を練習しても構いません。
私はだいたい特に事情がなければ単音の音声模倣で清音(あーんまでの46音)のうち、半分ほど明瞭に言えるようになってから複音を導入します。
ここで「特に事情がなければ」と書いたので、どういった事情のときにそうでないのかも触れておきましょう。
例えば「あ行(あいうえお)」と「か行(かきくけこ)」が明瞭に言えるようになったお子様がいたとして、そのお子様の名前が「あきおくん」だったとします。
お子様は園でお名前を言うとき「あっおー」と不明瞭に答えてしまうためお友達から「あっおーじゃないよ!あきおくんでしょ?」と指摘されることが多く本人もそのことを嫌悪的に感じていました。
このようなケースではお子様が周囲から受ける影響を考えれば「あきお」と明瞭に発音できる練習を清音の半分が綺麗に言えていなくとも練習していくことが必要でしょう。
さて複音の音声模倣を行うときも単音のときと同じで言ってもらいたい言葉の文字列をローマ字表記に直して考えます。
例えば「イカ」「バナナ」「チョコ」であれば「ika」「banana」「cyoko」と言った感じです。
例えば「かして」をローマ字表記にしてみます。
「かして」は「kasite」です。
※ このとき「し」は「shi」ではなく「si」で良い
「かして」を練習するとき、基本的には以下のようなレベル順で明瞭に、綺麗に言葉が変化していくイメージを持ちましょう。
このとき「かして」を「あいえ」など不明瞭ではあるものの、3音は言えているお子様をイメージしてください。
その場合、
レベル1:「あいえ」
レベル2:「あいて」
レベル3:「あして」
レベル4:「かして」
といった順です。
以上のレベル順はレベル1で母音のみで言うことを記載していますが、単語の構成されている部分について「あしえ」など既に綺麗に言える音がある場合ついては、特に母音で言わせる必要はありません。
綺麗に言える音がある場合は、そのまま綺麗に言ってもらうようにしましょう。
ポイントは上のイラストのピンクの吹き出しでも書いていますが、
① 少なくとも母音についてはズレることなく言えることを最初に目指す
② 明瞭にして行くときには文字列の後ろの方から明瞭にして行く
です。
①については例えば「かして」を練習しているのに母音のみで「いいお」などと母音がズレたまま言っていては「かして」に辿り着くことは難しいことからきています。
ですので最初からせめて母音を「かして」に合わせる形で「あいえ」と言えるように練習しましょう。
②については私は後ろから明瞭にして行くことが多いですが、前からでも良いかもしれません。
特に「かして」で「か」は既に明瞭に言えている場合などは「かいえ」、次のステップとして「かしえ」などを目指すのも良いでしょう。
「AaSiTe」で「かして」の母音を取れば「あいえ」になりますね。
後ろから明瞭にして行くことにはメリットもありますが、一番の理由は音をどこから綺麗にして行くのか、自分なりのルールがあった方がやりすいように思うからです。
②については特に理由がないときには後ろから明瞭にして行く、という程度に思っておいていただいて大丈夫!
私はそのようにすることが多い、というだけです
たださまざまな音を明瞭に綺麗にして行くことになるので、自分なりのルール(方法)はあっても良いかもしれません
さて以上のことを基本筋として以下「マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合」と「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」についてご紹介していきましょう。
マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合
先ほど上の方で「かして」を例にご紹介してきましたが、マンドトレーニングを利用した音声模倣の方法をご紹介します。
まず最初に「マンドとは?」ですが、マンドとは小野 浩一 (2005)によると、
遮断化、嫌悪刺激の存在などの確立操作によって自発される、他者に対して特定の行動を要求する言語行動であり、
・ 子どもが「おやつちょうだい」と言う
・ 隣の人に「静かにしてください」と言う
・ 「暖房をつけてください」と言う
などがマンドの例です。
簡単に言えばマンドとは「要求行動」で「かして」「やって」「どいて」などになります。
大切なことですが、要求は既に満たされている場合は自発されません。
例えばキャンディーを充分に食べて、キャンディーに対しての欲求が充分満たされている場合(これは確立操作で言えば「飽和化」)、お子様が自発的にキャンディーを要求することは無いでしょう。
逆に長時間キャンディーに触れていない状況があればキャンディーの価値が上がり、お子様は自発的にキャンディーを要求する確率が上がります(確立操作で言えば「遮断化」)。
このような確立操作の「遮断化」や「飽和化」については『(ABA自閉症療育の基礎52)オペラント条件付けー強化子「反応遮断化理論」と「不均衡理論」 (https://en-tomo.com/2020/10/31/response-deprivation-theory-and-disequilibrium-theory/)』をご参照ください。
ABA自閉症療育の核は「強化子」ですから「反応遮断化理論」と「不均衡理論」という強化子研究はとても活かせる知識です。
マンドトレーニングでの音声模倣では、ここまで紹介したようにお子様の強化子への欲求を上げ、自発的に要求行動として言葉を引き出したタイミングで行います。
お子様もモチベーションが上がっている(欲求が上がっている)ため、学習場面に対しての意欲が高く、比較的簡単に療育場面を作れることもマンドトレーニングの魅力です。
マンドトレーニングでは最初はマンド(要求行動)の頻度を上げることを目的とします。
例えば「かして」と言葉で言ってもらう頻度を上げることを目指すため、最初は「あーえ」や「あいえ」など不明瞭であっても要求した物を貸し、言葉で要求する頻度を上げましょう。
「あ」と単音で要求するところから初めても構いません。
マンドトレーニングでは例えば、マンドトレーニングに集中した10分間の療育時間があったとき、お子様がおもちゃで遊んでいる途中でも一旦、遊んでいるおもちゃをスッと取って機会を作り何度も何度も10分間の中で練習をします。
主にマンドトレーニングを目的とした療育時間として取り組んでいた場合10分間で10回でも少ないでしょう。
そのような意識でたくさんたくさん学習機会を作っていきます。
初日は「あーえ」や「あいえ」など不明瞭であっても要求した物を貸し、言葉で要求する頻度を上げることに徹することも普通です。
2日目、3日目も同じ内容で練習することも良いでしょう。
お子様本人から、おもちゃが目の前に出てきたらすぐ(例えば3秒以内とか)に「あーえ」や「あいえ」など出てきたらチャンスです。
お子様自身も「あーえ」や「あいえ」など言えば要求が叶うことを理解してきている可能性が高いでしょう。
そして次のステップに進みます。
次のステップでは消去バーストを狙いましょう。
ここまでお子様は「あーえ」や「あいえ」など言えばすぐにおもちゃが手に入っていたはずです
「あーえ」や「あいえ」などの行動には目当てのおもちゃという強化子が随伴されてきました。
もし「あーえ」や「あいえ」など言ってもおもちゃが手に入らない、ということが起こるとどうなるでしょうか?
答えは「消去バースト」が生じます。
消去バーストとは消去に伴って生じる現象です。
最初に「消去」について説明します。
Raymond G. Miltenberger (2001) は消去について、
「正の強化」を受けてきた行動の消去では「正の強化子」が行動に随伴しないようにする
過去に「負の強化」を受けてきた行動の消去では、嫌悪刺激を行動が起きた後でも撤去しない
と述べました。
「正の強化」や「負の強化」については検索窓から検索していただければ特記ページも出てきますが簡単に言えば、
消去とは行動を起こしても、行動の前後の変化がない
ということで生じる現象です。
消去の特徴としては長期的にその行動は減っていってしまうものの、消去が起こって時間的にすぐ「消去バースト」という現象が起こり、また後半には「自発的回復」という現象が見られます。
消去は(主には問題行動)行動を減らす手続きで紹介されることが多いですが「消去バースト」と「自発的回復」が伴う可能性があることは絶対に覚えておきましょう。
消去に伴う「消去バースト」と「自発的回復」は非常に重要なテーマです。
ABA自閉症療育を行うのであれば『(ABA自閉症療育の基礎32)オペラント条件付けー消去「消去バースト」と「自発的回復」(https://en-tomo.com/2020/08/26/extinction-burst-extinction-induced-variability/)』でどのようなものか覚えておくことが良いでしょう。
消去バーストについて私は、
消去に伴って生じる、一時的な行動頻度・維持時間・強度の著しい増加と目的を達成するために生じる行動変化
と説明することが多いです。
消去バーストでは一時的に目的を達成するためにいろいろな今まで出現していなかった行動が出現することがあります。
さて話題を戻しましょう。
お子様は「あーえ」や「あいえ」など言えばすぐにおもちゃが手に入っていたのですが、
もし「あーえ」や「あいえ」など言ってもおもちゃが手に入らない、ということが起こるとどうなるでしょうか?
ここまで見てきたように消去手続きに入り、消去バーストが生じます。
すると「あいえ」や「あして」、「うーいあ」や「ああい」など今まで生じてなかった音が出現する可能性が高まるのですが、
特にピンクの下線で引いた音のように「より、かしてに近い音」を強化(その音が出たときにおもちゃを渡す)することで、より綺麗な「かして」の音に近づけて行くことが可能です。
より綺麗な「かして」の音に近い音が出現したとき、即座に要求物を渡しましょう。
これはシェイピングという手続きになります。
このときモデルで明瞭な音を聴かせ続けることで、周囲の刺激を取り入れることができるお子様の場合は綺麗な「かして」の音に近い音を出しやすくなるでしょう。
このことはABA自閉症療育のテクニックですね。
最初はこのように多くヒントを出し(プロンプトを出す)、徐々にヒントは少なくしていきましょう(プロンプトフェイディング)。
また1回の機会で3回ほどマンドを引き出すことを過去「(ABA自閉症療育の基礎83)ABA自閉症療育で言葉・発語を教えるのに最適!マンドトレーニング(https://en-tomo.com/2021/03/18/aba-mand-training/)」のページでご紹介しました。
音声模倣を目的としたマンドトレーニングでも同じ要領で1回の機会で3回ほど言わせることが上手くするためのテクニックかなと個人的には感じています。
ABAのテクニックとしてこのことを伝えるのことが多いのですが、実際に実践してもらったとき、
マンドトレーニングがより効率的になったということを言ってもらえることが多く、とても嬉しいです
少しテンポなどテクニックもいる方法ですが、ご家庭でABA自閉症療育を行うときも是非、チャレンジしてください。
いろいろな方法を駆使してお子様の成長にフィットする方法を探し、お子様の成長を促していきましょう。
絶対にあなたのお子様にもフィットする方法が見つかるはずです。
1回の機会で3回ほどマンドを引き出すことを表しはイラストが以下のものとなります。
音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合
ここまでマンドトレーニングを利用した音声模倣について書いてきました。
この項では「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」を記載していきましょう。
基本的にはマンドトレーニングと同じなのですが、
マンドトレーニングは自然で直接的な強化子を使用する、
音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合には自然で直接的な強化子の利用をさほど考慮していない、
というところが大きな違いだと思います。
「自然で直接的な強化子」とは何でしょうか?
例えばRobert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2006) は自然で直接的な強化子について、課題に機能的かつ直接的に関係した強化子を扱うことと述べています。
マンドトレーニングの場合は例えばキャンディーが欲しいときに「ちょうだい」、抱っこして欲しいときに「やって」、道を開けて欲しいときに「どいて」など、
お子様が現在持っている欲求に対応した言葉を言ってもらい、欲求を叶えることを行うのですが、これは行動に伴う自然で直接的な強化子のことです。
対して自然で直接的な強化子でないものとは例えば「どいて」と言った際に、チョコレートが口に入れられるとか、抱っこされるとか、そういった本来の「どいて」の行動に伴う自然ではないものの、お子様の行動を増加させる結果のことを言います。
強化子の優位性で言えば「自然で直接的な強化子でない強化子」と比較して「自然で直接的な強化子」の方が般化の面から考えてもお子様の療育には適しているでしょう。
しかしなんでもかんでもお子様の行動に対して、その行動に対応して自然で直接的な強化子を用意できるわけではありません
例えばABA家庭療育を親御様がお子様と毎日1時間行っていたとします。
毎日の生活の中で夕方17時から18時までの1時間が療育をする時間と決まっていました。
園の先生から家で「あいさつ」を練習して欲しいとお願いがあり、特に「おはよう」を練習するようお願いがありました。
この場合もし自然で直接的な強化子をお子様に提供しようと思えば朝起きてきたタイミングでお子様が「おはよう」と言い、その後親御様から「おはよう」と笑顔で返ってくるという強化子の提供によって行動が増加して行くことを狙う必要があります。
しかし以上の療育設定には難点もあるでしょう。
それは、
(1) 朝起きてきたときも「おはよう」の練習をすれば良いが、朝は時間もなく、主な療育時間が夕方になるのでたくさんの回数練習することが難しい
(2) 「おはよう」の自然で直接的な強化子は笑顔で相手から「おはよう」と返ってくることだが、まだ人との関わり自体が強化子として機能しないお子様の場合は、自然で直接的な強化子が強化子として機能しない場合がある
の2点です。
(1)については「おはよう」の明瞭性を上げるためにはある程度は練習の回数も必要になってくる(例えば1日10回くらいは練習するとか)ため、この場合「自然さ」は欠落してしまいますが
夕方にやることも良いでしょう。
(2)についてはお子様が「おはよう」と言ったあと、強化子を提供できないと行動が増えていかないため、「自然さ」は欠落するものの、「抱っこ」や「お菓子」のようなお子様にとって既に強化子となっている強化子を提供する必要があります。
例えばO.Ivar Lovaas (2003) は強化子について食べ物、ストレスから逃れることなどの強力な一次性の強化子を使うと述べており、
私自身の考えとしては可能であれば自然で直接的な強化子を使うが、難しい場合は既に強化子として確立しているものを使っても良いという考えです。
さて話を戻して、上で書いたように「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」もマンドトレーニングの場合と基本的な考え方は同じなのですが、ここまで書いてきたように自然で直接的な強化子に囚われないという違いがあるでしょう。
基本的にマンドトレーニングと一緒で明瞭性を上げるためにシェイピングしていきます。
例えば親御様が「おはよう」と言ったとき、お子様から「おーよ」と返ってきていたとしましょう。
最初は正しく行動できる頻度を上げるため不明瞭であったとしても強化子を伴わせます。
例えば「上手上手」と言って一片のチョコレートを渡すなどを毎回行うなどです。
正しく行動できる頻度が上がってきたとき、お子様から「おーよ」という不明瞭な言葉が返ってきたときにチョコレートを渡さないようにします。
そうするとマンドトレーニングのときと同じように消去バーストが生じ、いろいろな音が出てくるでしょう。
そのとき「おはよう」に近い(より明瞭な)音が出たとき、チョコレートを渡せばショイピングがかかっていきます。
マンドトレーニングのときと同じように、「おはよう」という綺麗なモデルを見せながら消去バーストを狙うことで、周囲の刺激を取り入れることができるお子様の場合は綺麗なかしての音に近い音を出しやすくなるでしょう。
注意点としては自然で直接的な強化子を使用したときと比較し、自然で直接的でない強化子を使用した際は「般化」が生じにくいと言われています。
Shira Richman (2001) によれば般化とは直接教えていない様々な場面や状況、人に応じて適切な行動を示すこと、また、教えられた型どおりではない応答を示すことです。
本来ABA自閉症療育で練習していることはあなた以外の人の前で出現して欲しい行動が多いと思います
(例えば「おはよう」はお母様ではなく、園の先生やお友達に対して言えることを目的としている)
ので、自然で直接的でない強化子を使用した際は般化をどのように促すか?についても意識しましょう
※ ブログの検索窓で「般化」と入れると般化に関連したタイトル記事が検索にかかります
さいごに
本ブログページでは複音の音声模倣として「マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合」と「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」をご紹介してきました。
手続き自体はあまり違いはないため2つに共通していたことを最後にまとめます。
・ 特に事情がなければ単音の音声模倣で清音(あーんまでの46音)のうち、半分ほど明瞭に言えるようになってから複音を導入すること
・ 複音の音声模倣を行うときも単音のときと同じで言ってもらいたい言葉の文字列をローマ字表記に直して考えること
・ 文字列の後ろから綺麗にしていくこと(但し前からでも良い、自分自身のルールを持って!)
・ 最初は母音のみの言い方でも良いが母音がズレることは避けること
・ 徐々に上手くして行くイメージで、最初は不明瞭でも強化子を提示しまずは行動頻度を上げること
・ 途中からは消去バーストが生じることを期待し、提供していた強化子を停止する。消去バーストによって出現した綺麗目の音を拾って強化すること。その際、明瞭なモデルを提示することで明瞭な音が出現する確率が上がること
以上が複音の音声模倣、「マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合」と「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」に共通した手続きでした
「マンドトレーニングを利用した音声模倣の場合」と「音声模倣プログラムとして複音を綺麗にしていく場合」の大きな違いは自然で直接的な強化子を使用するかどうかで、
可能であれば自然で直接的な強化子を使うが、難しい場合は既に強化子として確立しているものを使っても良いということも覚えておいてください。
以上、複音の音声模倣について書いてきました。
次のページでは複音からさらに発展し、話す文章をどのように明瞭にして行くかについて書いていきましょう。
例えば「ぼく きのう すーぱーで おにく かったんだ」というときに「ぼう きのう うーぱーで おにう あっあんだ」など比較的長文を話すとき不明瞭になってしまうケースです。
お子様の発達段階としては会話のやりとりが少し可能なお子様が対象になると思います。
次の本章ブログページでは以上のようなケースでどのように音声を明瞭にしていけば良いのか見ていきましょう。
【参考文献】
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】
・ 小野 浩一 (2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
・ Raymond G. Miltenberger (2001) Behavior Modification:Principle and Procedures/ 2nd edition 【邦訳 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】
・ Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2006) Pivotal Response Treatment for Autism:Communication,Social, and Academic Development 【邦訳 氏森 英亞・小笠原 恵 (2009)機軸行動発達支援法 二瓶社】
・ Shira Richman (2001)Raising aChild with Autism A Guide to Applied Behavior Analysis for Parents 【邦訳: 井上 雅彦・奥田 健次(2009/改訂版2015) 自閉症スペクトラムへのABA入門 親と教師のためのガイド 株式会社シナノ パブリッシング プレス】