本ブログページでは「自閉症の有病率」について書いていきたいと思います。
「有病率の調査」は世界の全人口に対して調査ができるわけではないため、サンプルを集めてそのサンプルから有病率を推定したものとなります。
そのため必ずしも正しい真の値を示しているかといえばそうではなく、だいたいの目安として捉えていただければ幸いです
本ブログページでは自閉症の有病率についてはアメリカのデータを参考とします。
アメリカのデータはアメリカ11州から取られたデータですがその後、日本のデータは横浜市のデータを参考としましょう。
有病率を見て行ったあとは「通常学級で発達障がいの可能性があるお子様の確率」、
そして「通級を利用する自閉症・発達障がいの確率」について見て行きます。
いずれも「その時点で集計したデータ」による結果ではありますが、参考にはなるでしょう。
本ブログページ内で自閉症・発達障がいについては「有病率」ではなく「確率」と書いているものは、本ブログページでご紹介する発達障がいのデータベースが「診断が有る、無い」ではなく、小中学校の担任の先生が行ったデータを元としているものです。
本ブログ内で「有病率」と記載されるものは「診断有りの数値」、
「確率」と記載されているものは「診断有り、無しという基準で集めたデータではない」ということを最初に明記しておきます。
また本ブログページで書かれる「自閉症」というキーワードは「自閉症スペクトラム障がい」と読み替えてもらって構いません(診断上、正式名称は「自閉症スペクトラム障がい」です)。
では以下、まずはアメリカの研究からアメリカの自閉症有病率について見て行くこととしましょう。
自閉症の有病率(診断された数)
自閉症の有病率について本ブログページではアメリカのデータから見て行きます。
「近年、自閉症のお子様が増えてきているらしい」ということも聞いたことがありませんか?
土屋 賢治 (2018) は2000年以降、自閉スペクトラム症研究が活況を呈しているがそのきっかけのひとつとなっ たのは有病率研究であると述べており、
このような有病率の研究は自閉症研究の盛り上がりの要因の1つであると考えられます。
自閉症の有病率についてアメリカの大規模研究のデータから見て行きましょう。
アメリカで行われた自閉症有病率ー大規模調査結果
Jon Baio・Lisa Wiggins・Deborah L. Christensen・Matthew J Maenner・Julie Daniels・Zachary Warren・Margaret Kurzius-Spencer・Walter Zahorodny・Cordelia Robinson Rosenberg・Tiffany White・Maureen S. Durkin・Pamela Imm・Loizos Nikolaou・Marshalyn Yeargin-Allsopp・Li-Ching Lee・Rebecca Harrington・Maya Lopez・Robert T. Fitzgerald・Amy Hewitt・Sydney Pettygrove・John N. Constantino・Alison Vehorn・Josephine Shenouda・Jennifer Hall-Lande・Kim Van Naarden Braun・Nicole F. Dowling (2018)は
自閉症の有病率の推定値を算出しました。
この研究は2014年に8歳となったアメリカ全土のだいたい8パーセントのお子様(325,483人)が参加したようです。
Jon Baio他 (2018)の研究では結果として、
8歳のお子様の自閉症有病率は1000人中16.8人でした。
Jon Baio他 (2018)の研究では11の州でデータを取っているのですがこのデータは11の州の平均です。
この研究で自閉症とされたお子様の85パーセントは3歳(36ヶ月)までに発達障がいについて言及をされたようです。
Jon Baio他 (2018)はこの数は過去と比べると多いと述べています。
Jon Baio他 (2018)を参考にすれば、以前(2000年から2014年)は1000人中6.8人だったものが、今回の研究では1,000人中16.8人と、ここ20年で2倍以上の数になっていました。
「有病率」なので、「自閉症と診断されたお子様」の数が増加したということです。
Jon Baio他 (2018)の研究で扱った11の州の中で知的能力についても十分にデータを取っていた州があり、その州データからの結果では、自閉症児のお子様のうち、
・ 知的障がい(IQ70以下)のお子様は31パーセント
・ 境界閾(IQ71ー85)のお子様は25パーセント
・ そして残りの44パーセントのお子様がIQ85以上
という結果となったようです。
つまりJon Baio他 (2018)の研究データを参照にすれば、自閉症に有病した半数以上のお子様は少なくとも軽度の知的な遅れ(85以下)を併存していたと言えます。
Jon Baio他 (2018)の研究でも言及されていますがIQ70以下が知的障がい(ID: Intellectual Disability)と言われることが多いです。
※ ちなみに現在の診断基準ではIQのみで「知的障がい」を診断することはない、ということとなっています
Jon Baio他 (2018)の研究はアメリカの11の州でデータが集められました。
11の州は、
(1) Arizona(アリゾナ)
(2) Arkansas(アーカンソー)
(3) Colorado(コロラド)
(4) Georgia(ジョージア)
(5) Maryland(メリーランド)
(6) Minnesota(ミネソタ)
(7) Missouri(ミリーズ)
(8) New Jersey(ニュージャージー)
(9) North Carolina(ノースカロライナ)
(10)Tennessee(テネシー)
(11)Wisconsin(ウィスコンシン)
の11州です。
興味深いことは有病率は州によって違っていて、
一番有病率が高かったところは「ニュージャージー州」で1000人中29.3人(2.9パーセント)
一番有病率の低かったところは「アーカンソー州」で1000人中13.1人(1.3パーセント)
で地域によって倍以上違うところは注目する点かと思います。
同じ診断基準で測っていても倍以上違うのは驚くべきことです。
ここまでJon Baio他 (2018)の研究を参考としてきましたが、
例えばもっと前の文献を参考に自閉症の有病率について言及すれば、Simon Baron-Cohen・Alan M. Leslie・Uta Frith (1985) は研究内で自閉症について10000人に4人程度の割合で発症すると述べています。
これは1000人中0.4人と言う計算です。
Jon Baio他 (2018)の研究では1000人中16.8人だったことを考えると桁が違い有病率の違いがすごく大きいと思いました。
他にもLorna Wing (1996) は著書の中で自閉症の有病率についてはこれまでの研究からは10,000人につき2~3人(1000人中0.2~0.3人)というものから16人(1000人中1.6人)までとさまざまであると述べ、
1960年から1970年にイギリスおよびデンマークで行われた研究では10,000人につき4~5人(1000人中0.4~0.5人)、そして自身が1970年代に行った研究では10,000人につき22人(1000人中2.2人)であったと述べています。
以上のような文献から冒頭でも書いたように最近自閉症が増えてきていることについて、
Lorna Wing (1996) の著書からは1960年から1970年よりも1970年代に行われた研究の方が自閉症の有病率が高いこと、
またJon Baio他 (2018)の研究の数値とSimon Baron-Cohen他 (1985) の数字を比較しても、
そしてJon Baio他 (2018)の研究内だけからでも年々自閉症のお子様の数は増加してきているということが言えそうです。
「自閉症の診断」が増えている要因について個人的には「福祉制度の充実」ということが大きいのかなと思うことがあります
他にも女性の社会進出が進み出産年齢の高齢化などが言われることもあり、
現在まだはっきりと「自閉症の増加要因」は分かっていない、が正解です
次に日本で行われた研究についても見て行きます。
日本ので行われた自閉症累積罹患率ー調査結果
Hideo Honda・Yasuo Shimizu・Miho Imai・Yukari Nitto (2005) は1988年から1991年の4年間、横浜市北部にて1歳半児の定期健康診断を最初の集団検診として保育サービスを提供するすべての施設が自閉症の全症例を発見し横浜療育センターに紹介することを目標とした調査を行いました。
少し注意したいことは前項でご紹介したJon Baio他 (2018)の研究やLorna Wing (1996) の著書で紹介された数値は有病率(prevalence)のデータ、Hideo Honda他 (2005) の研究データは累積罹患率(Cumulative Incidence)のデータになります。
Hideo Honda他 (2005) の研究で指摘されていますが有病率と累積罹患率では意味が違ってくるようです。
Hideo Honda他 (2005) の研究で示された1988年から1991年の横浜市のデータでは、自閉症の累積罹患率は10,000人中27.2人(1000人中2.7人)という結果になりました。
日本の他の文献もご紹介しましょう。
鈴木 茂 (2017) は1968年の東京都で行われた調査を紹介しています。
文献は新しいですが鈴木 茂 (2017)が示しているデータは1986年と古いものであることは注意です。
鈴木 茂 (2017) によれば1968年文京区、杉並区、立川市、羽村町の小学校58,506人を対象に調査を実施したところ、
自閉症児が26人(0.0043パーセント、10000人あたり4.3人、1000人中0.4人)在籍していたことが分かりました。
鈴木 茂 (2017) によればこの1968年に行われた実態調査が日本初の自閉症実態調査とのことです。
Hideo Honda他 (2005) は1988年から1991年の調査、
鈴木 茂 (2017) は1968年の調査
母集団の大きさが違うことや診断基準などが違うことはありますが、データと比較すればやはり日本国内でも昔よりも先の時代の方が自閉症の数が増えている可能性があります。
通常学級で発達障がいの可能性があるお子様ー日本の統計データ
上ではアメリカのデータや日本の横浜、東京のデータを見てきましたが、次は日本全国から集められた自閉症・発達障がいのデータを見て行きましょう。
この項では通常学級における発達障がいの可能性のあるお子様がどの程度在籍しているのかを見て行きます。
この項では「確率」と記載していますので、何かしらの診断があるお子様のデータだけを扱ったというものではありません。
「自閉症」や「何かしらの発達障がい」の診断がないお子様もデータに含まれていることは注意しましょう
文部科学省 (2012) 「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」という資料をもとに見て行きます。
文部科学省 (2012)は平成24年(2012年)の2月から3月にかけて岩手、宮城、福島を除く全国の公立小学校・中学校の通常学級に在籍する児童生徒を母集団として調査を行いました。
サンプルは53,882人(小学校:35,892人、中学校:17,990人)です。
サンプルとした児童生徒数のうち52,272人から回答が得られ、回収率は97パーセントでした。
児童生徒についての回答は担任が行い、特別支援コーディネーターもしくは教頭によって確認を経た回答に基づいています。
文部科学省 (2012)の担任の先生を通した調査結果からは、
普通学級の6.5パーセントが学習面や行動面に問題を抱えている
ということがわかりました。
これは「知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒の割合」への質問回答でした。
内訳は、
・ 学習面又は行動面で著しい困難を示す(6.5パーセント)
・ 学習面で著しい困難を示す(4.5パーセント)
・ 行動面で著しい困難を示す(3.6パーセント)
・ 学習面と行動面ともに著しい困難を示す(1.6パーセント)
です。
また調査に参加したお子様たちの中で過去に特別支援学級に在籍していたことのあるお子様は7.8パーセント、在籍したことのないお子様は92パーセントでした(0.2パーセントは不明)。
個人的には私が子どものころから比べて発達障がいに対してのニーズや認識は上がってきており、
例えば私が小学生時代(もう20年くらい前)にクラスにいた「ちょっと変わった子」と思われていたお子様も、
支援のニーズのある発達障がいの可能性のある子、というように捉えられるようになってきているように思っています
以上の結果は「通常の学級に在籍する児童生徒」を対象としていましたが、次は「通級による指導」を受けているお子様を対象とした調査データを見て行きましょう。
通級を利用しているお子様のデータから、通級利用のお子様のうちどの程度のお子様が自閉症などの発達障がいと見られていたのかを見て行きます。
通級を利用する自閉症・発達障がいの確率ー日本の統計データ
文部科学省 (2019) 「通級による指導実施状況調査」という資料が参考資料です。
最初に、「通級」とは何でしょうか?
「障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)」(文部科学省,観覧日2021)によれば、
通級とは大部分の授業を小・中・高等学校の通常の学級で受けながら一部、障がいに応じた特別の指導を特別な場(通級指導教室)で受ける指導形態で、障がいによる学習上又は生活上の困難を改善し又は克服するため特別支援学校学習指導要領の「自立活動」に相当する指導を行うこと
とされています。
文部科学省 (2019) の調査ではこのような教育を受けている国公私立小学校、中学校及び高等学校のお子様を対象としました。
文部科学省 (2019) は国公私立小学校、中学校及び高等学校にて通級による指導を受けている児童生徒数は 134,185 名(前年度 123,095)であり、前年と比較して11,090 名増加していると述べています。
以下文部科学省 (2019) の調査データから自閉症、ADHD、LDについて見て行きましょう。
文部科学省 (2019) の調査では通級を利用している児童生徒の自閉症の確率は、
小学校116,633人中21,237人(18パーセント)
中学校16,765人中4,051人(24パーセント)
高等学校787人中347人(44パーセント)
でした。
※ パーセントの小数点第二以下は四捨五入しました
通級を利用している児童生徒のADHDの確率は、
小学校116,633人中20,626人(18パーセント)
中学校16,765人中3,933人(23パーセント)
高等学校787人中150人(19パーセント)
でした。
※ パーセントの小数点第二以下は四捨五入しました
通級を利用している児童生徒のLDの確率、
小学校116,633人中17,632人(15パーセント)
中学校16,765人中4,631人(28パーセント)
高等学校787人中126人(16パーセント)
※ パーセントの小数点第二以下は四捨五入しました
でした。
このデータでは障がい種を分けずに通級による指導を実施している場合は、学校が主障がいと判断した障がい種に計上されています。
そのため診断がついていない(分からない)場合は学校が主な障がいだろうと判断してデータ化されました。
どの程度のお子様が学校が判断した(医師の診断を基準としていない)かの記載はなかったのですが、本項では「確率」というキーワードを使用しています。
通級全体の利用者数は平成5年から取られているデータを見れば毎年増加していて、
平成5年には小中高で12,259人だった通級利用者が令和1年には134,185人となっておりこれは10倍以上の数字です。
例えば出生数は平成8年(1996年)が1,206,555人、令和1年(2019年)は865,239人と産まれる子どもの数は年々低下している中での10倍以上ですから利用率でみればさらに高くなっている可能性もあるでしょう。
(出生数の参考は厚生労働省,観覧日2021.8.11)
森岡 正芳・山本 智子 (2016) は2005年4月、発達障がい児(者)が支援の対象として法的に位置づけられることによって、発達障がいは社会制度の中にとりこまれ、公共的な意識のもとで支援を行うことが必須となったと述べました。
以上の通級のデータをみたり、森岡 正芳他 (2016) が述べている発達障がいの社会的な位置付けの変化があり近年、自閉症をはじめ発達障がいへの注目は高まり、またそのニーズを満たそうという動きが生まれているのだと思います。
さいごに
本ブログページでは最初アメリカのデータを使用し、自閉症児の有病率について書いてきました。
またその後、日本の横浜、東京のデータも見てきました。
自閉症は過去よりも未来の方が増えている傾向があり、現在もその傾向は続いているようです。
これは診断基準が変わったことや自閉症や発達障がいへの認識が広まってきたこと、出産年齢の高齢化、食品などの生活環境変化などいろいろなことも関連していると思いますが、
私自身は文中にも書きましたが私自身は福祉制度が充実してきたことも関連していると考えています。
私自身はもっと勉強して、どういった要因が自閉症の増加に関連しているのかをもっと深く知りたいと思います
本ブログページで見てきたデータから、現代では自閉症はそんなにすごく珍しいものではないということは知っておくと良いでしょう。
実は日本にも、そして世界にも自閉症のお子様はたくさんいることは知っておいてください。
そしてそのことを受け現在まで、専門家もそして国も自閉症、発達障がいのお子様に対しての支援を蔑ろにすることなくどう取り組むかを考えていると思う(少なくとも日本はそのようにしてきていると私には見える)ので、
実際は親御様が持てる選択肢は過去と比較して多くなっているでしょう。
※ それが充分かどうかということはありますが、その環境の中でできることをやって行く
自閉症や発達障がいへの認識が広がってきたことについて「そのようなお子様がいるんだ」という認識以外に、「こういった支援方法があるんだ」という認識の広がりももっと広がれば良いなと思います。
例えば本ブログページである「ABA自閉症療育」は「エビデンスがある療育方法」として実は海外では有名なのですが、自閉症を専門としている方でもまだそのことを知らない人がいて驚く機会は多いです。
ABAから派生した「注意引き」や「逃避・回避」という行動の意味を示した言葉は知っているものの、それがABAの機能分析などで使う用語とまでは知らない専門家の方も多くいます。
これを悪いことだとまでは言いませんが、現在ABAが自閉症児(その他の発達障がいのお子様も含め)に効果的な療育を提供できるとすれば、もう少し深く知ることで支援できるレパートリーは広がるだろうな、と少し偉そうに聞こえてしまったら申し訳ないですが考えることもあるのです。
例えば海外の人に「俺心理学で仕事してるで」と話したとき、「Behavior?」と帰ってくることがあるのですが、
海外の人はわりかし「行動療法」や「ABA」についてその言葉を知っている人も多かったりするのか?と思うことがありますし
もう少し広がっても良いのになと感じることもあります
過去Bernard Rimland (1964/1980) は自閉症について述べた文献は数多くあるが、その本態は20年前と同様に現在もなお不明で、原因も治療法も全くわからないと述べました。
Bernard Rimland (1964/1980)の文献の時代は自閉症児に対して「どうしたら良いかわからない」という状態だったのでしょう。
そのような時代も確かにあったのですが、まだ個人的には充分とは言えないとは思いますが今は「こうした関わりをすれば良いのじゃないか?」というエビデンスは積み重ねられてきています。
以下書いて行く意見は私の個人的な意見で見当違いかもしれません。
例えば診断を下す医師は診断を親御様に告げたところで「では、私は子どもにどうすれば良いのでしょうか?」という質問が返ってくることを考えたらどういった心情になるでしょう?
仮に私が医師であった場合、
「自閉症かもしれない・・・」とお子様を見て思ったとしても親御様へ「自閉症である」や「自閉症の可能性が高い」とはっきりと診断を告げることは難しいかもしれません。
私自身は医師ではないのでこのような考えは外道かもしれないなとも思います。
心情としてありそうな気持ちと思うのですが、どのような環境が「自身の診断を伝える勇気」をくれるのか?
私は療育方法の確立だけでなく、国の福祉サービスの充実も関連してると考えているのですが、どうでしょうか?
そのような福祉サービスの充実が今ほどはない過去があったのですが、現代では例えば「公費で利用できる福祉サービスがある(例えば児童発達支援や放課後等デイサービス)」ことは日本で保証されています。
このような充実により、医師も親御様に診断を親御様に告げたあと「ではどうすれば良いのですか?」という質問が返ってきたとき例えば今後の方針として児童発達支援や放課後等デイサービスの「療育の利用」を進めることが可能な時代となりました。
児童発達支援や放課後等デイサービスは公費で負担するサービスなので、ご家庭の経済的負担が比較的少ないことが魅力的です。
これは私が生まれた時代にはなかったサービスになります。
私自身は医師ではないため以上の意見は勝手な私自身の推測でしかないですが、過去診断を伝えても対応できなかった、支援の方法を伝えることができなかった自閉症という疾患に対して現在「策」が用意されていて、
「策」があるのであれば、少しでも疑いがあれば診断をつけフォローしサポート体制が整えられるので診断しやすい、ということも人情なのかなと個人的に思うところです。
これが私自身が個人的に「福祉制度の充実」が自閉症の診断を増やしている要因と考えている原因ですがこのことは決してネガティブなことではないでしょう。
※ 児童発達支援や放課後等デイサービスで行われる療育が最大限効果的なものかどうかという問題はあると思いますが・・・
その後ブログページ内では「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」というものと、
「通級による指導実施状況調査」という資料を見てきました。
学校に通うという点についても通級システム利用者数の増加などから、支援は年々手厚くなってきている傾向があるように思います。
※ 手厚くなった支援が最大限効果的なものかどうかという問題はあると思いますが・・・
本ブログページで、
「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」、
そして「通級による指導実施状況調査」という資料で自閉症・発達障がいと判断されたお子様は診断が必ずしもついているお子様ではありませんでした。
これは調査上そうだったのですが、
例えばJ.L. Matson・M. Matheis・C.O. Burns・G. Esposito・P. Venuti・E. Pisula・A. Misiak ・E. Kalyva・V. Tsakiris・Y. Kamio・M. Ishitobi・R.L. Goldin (2017) はギリシャ、イタリア、日本、ポーランド、アメリカの国の間での文化の違いが自閉症症状の認識にどのように影響を与えるか研究しています。
異文間の差はJ.L. Matson他 (2017) の研究結果からは例えばお子様の「知的能力」、「年齢に合ったジョークや言葉の綾を理解すること」などについては日本人は他の国と比較して一番懸念を示すことが分かりました。
意外かもしれませんがJ.L. Matson他 (2017) の研究結果では「知的能力」について参加した国の中でアメリカが一番懸念を示しませんでした。
J.L. Matson他 (2017) の研究から国によって自閉症の症状のどこに懸念を示すか、ということが異文化感で差がある可能性があります。
以上本ブログページでは有病率などのデータから自閉症や発達障がいについて見てきました。
次のページでは自閉症の診断名に入っている「スペクトラム(spectrum)」とは一体何か?ということを見て行きます。
本ブログでテーマとなっている自閉症は現代の正式な診断基準では「自閉症スペクトラム障がい(Autism spectrum disorder)」と呼ばれるものです。
本章の次ページでは診断名にも入っている「スペクトラム」について書いていきましょう。
【参考文献】
・ Bernard Rimland (1964/1980)INFANTILE AUTISM The Syndrome and Its Implications for a Neural Theory of Behavior 【邦訳: 熊代 永・星野 仁彦・安藤ひろ子 (1964/1980) 小児自閉症 海鳴社】
・ J.L. Matson・M. Matheis・C.O. Burns・G. Esposito・P. Venuti・E. Pisula・A. Misiak ・E. Kalyva・V. Tsakiris・Y. Kamio・M. Ishitobi・R.L. Goldin (2017) Examining cross-cultural differences in autism spectrum disorder: A multinational comparison from Greece, Italy, Japan, Poland, and the United States. European Psychiatry 42 p 70–76
・ Lorna Wing (1996) THE AUTISTIC SPECTRUM A guide for parents professionals 【邦訳: 久保 鉱章・佐々木 正美・清水 康夫 (1998) 自閉症スペクトルー親と専門家のためのガイドブック 東京書籍株式会社】
・ Hideo Honda・Yasuo Shimizu・Miho Imai・Yukari Nitto (2005) Cumulative incidence of childhood autism: a total population study of better accuracy and precision . Developmental Medicine & Child Neurology 47: p 10–18
・ Jon Baio・Lisa Wiggins・Deborah L. Christensen・Matthew J Maenner・Julie Daniels・Zachary Warren・Margaret Kurzius-Spencer・Walter Zahorodny・Cordelia Robinson Rosenberg・Tiffany White・Maureen S. Durkin・Pamela Imm・Loizos Nikolaou・Marshalyn Yeargin-Allsopp・Li-Ching Lee・Rebecca Harrington・Maya Lopez・Robert T. Fitzgerald・Amy Hewitt・Sydney Pettygrove・John N. Constantino・Alison Vehorn・Josephine Shenouda・Jennifer Hall-Lande・Kim Van Naarden Braun・Nicole F. Dowling (2018) Prevalence of Autism Spectrum Disorder Among Children Aged 8 Years ― Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network, 11 Sites, United States, 2014. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR). April 27 67(6); p 1–23
・ 厚生労働省 (2021.8.11:観覧日) 人口動態調査 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
・ 文部科学省 (2012) 通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf
・ 文部科学省 (2019) 通級による指導実施状況調査 https://www.mext.go.jp/content/20200317-mxt_tokubetu01-000005538-02.pdf
・ 文部科学省 (2021.8.11:観覧日) 障害に応じた通級による指導の手引 解説とQ&A(改訂第3版)https://www.mext.go.jp/tsukyu-guide/qa/index.html
・ 森岡 正芳・山本 智子 (2016) 第1章 発達障害の概念 発達障害概念の社会性 人は障害をどう生きるか 【編集 下山 晴彦・村瀬 嘉代子・森岡 正芳 必携 発達障害支援ハンドブック 金剛出版】
・ Simon Baron-Cohen・Alan M. Leslie・Uta Frith (1985)Does the autistic child have a “theory of mind”? . Cognition 21 p 37–46
・ 鈴木 茂 (2017) 第2節 情緒障害学級の誕生 【監修 砥抦敬三・中村雅子 自閉症教育のあゆみと今後の展望 50年の歴史を振り返って ジアース教育新社】
・ 土屋 賢治 (2018) 出生~発達の偏り~ 自閉スペクトラム症: 浜松母と子の出生コホート研究から 児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 59, No. 4 p 356-358