(ABA自閉症療育の基礎47)オペラント条件付けー「無条件性確立操作」と「条件性確立操作」

このページはイラストで言えば、


「ココ」と書かれた「確立操作」の部分です

「ココ」と書かれているところの内容です。


「(ABA自閉症療育の基礎46)オペラント条件付けー確立操作と弁別刺激の違い()」

では「確立操作」について

「確立操作」・・・身体の内にある刺激(反応)で、その瞬間に行動を行うかどうかの大きな要因となる

と紹介をしました。

URL内では同じ

「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」

にある弁別刺激については、

「弁別刺激」・・・身体の外にある刺激で、行動を引き起こすきっかけになる

と紹介しています。


Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) 確立操作について強化子の効力を高めたり、弱めたりするような先行状況の操作と述べました。

Paul A. Albert他 (1999) やここまでのブログページで見てきたように確立操作は強化子の効力を高めたり、弱めたりすることができます。

このページでは「確立操作」には

「無条件性確立操作(Unconditioned Establishing Operation)」

「条件性確立操作(Conditioned Establishing Operation)

の2種類があることを述べ、これらの違いについて書いていきましょう。


このページでは「無条件性確立操作」と「条件性確立操作」についてみていきましょう


「無条件性確立操作」と「条件性確立操作」

「(ABA自閉症療育の基礎24)オペラント条件付けー強化子のタイプ(https://en-tomo.com/2020/08/19/aba-reinforcer-type/)」

で強化子について「無条件性強化子」と「条件性強化子」があることを学びました。

「無条件性強化子」とは種の保存に必要な生まれたときから強化子の機能を持つタイプの強化子です。

食物、水、性的刺激、睡眠や痛みからの回避などは無条件性強化子に含まれます。

対して、

「条件性強化子」とは生まれたあとで強化子としての機能を持つようになったタイプの強化子です。

褒め言葉や笑顔、お金やゲームに勝つことなどは条件性強化子に含まれます。


「無条件正確立操作」と「条件正確立操作」はこれら「無条件性強化子」と「条件性強化子」と対応しており、

「無条件性強化子」に対しての確立操作が「無条件正確立操作」

「条件性強化子」に対しての確立操作が「条件正確立操作」

です。

まずはこのことを知っておき、以下「無条件正確立操作」と「条件正確立操作」について詳しくみていきましょう。



確立操作ー無条件性確立操作

「無条件性確立操作」では例えば一定期間「食べ物」や「水」、「睡眠」を取らせないという操作を行うことでこれらに対しての強化力を強めることができます。

次のページで詳しく解説しますが、これは「遮断化(Deprivation)」という確立操作の手続きです。

逆に「食べ物」や「水」、「睡眠」を多量に与えた場合、これらに対しての強化力を弱めることができます。

次のページで詳しく解説しますが、これは「飽和化(Satiation)」という確立操作の手続きです。


「無条件性確立操作」で強化力の価値を変える「無条件強化子」は、生存していくために必要なものを扱いますので単純に摂取量をコントロールすることで、その強化力もコントロールすることが可能です。

また、摂取量をコントロールする以外にもPatricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008) は確立操作の例として酩酊状態をあげています。

例えばお酒に酔いすぎた酩酊状態は「睡眠」の強化力を高める可能性があるでしょう。

酩酊状態も確立操作であるとすれば「食べ物」や「水」、「睡眠」などの生きていくために必要な摂取量をコントロールする以外にも、

・ お酒を飲ませて酩酊状態を作る(「睡眠」の強化力を上げる)

・ 塩分を多く摂らせることや、運動をして汗をかかせる(「水」の強化力を上げる)

・ 空腹感を抑えるサプリメントを飲む(「食べ物」の強化力を下げる)

などの方法も「無条件性強化子」の効力を変える効果があるため、「無条件性確立操作」の一種です。


Enせんせい

強化子の強化力(影響力)を変える操作が確立操作

ですので、

結果の魅力が変わる何かの活動や刺激については「確立操作である」と思ってもらって構いません



確立操作ー条件性確立操作

「条件性確立操作」も例えば一定期間、「条件性強化子」に触れさせないという操作を行うことでこれらに対しての強化力を強めることができます。

これは「遮断化」です。

逆に条件性強化子と多量に触れた場合、これらに対しての強化力を弱める可能性があります。

これは「飽和化」という確立操作の手続きです。

上記の「遮断化」「飽和化」は「無条件性確立操作」の手続きの内容とほぼ同じと言えます。


「条件性確立操作」は「無条件性確立操作」と違う点は「条件性強化子」の効力を強めたり、弱めたりするという点です。

「条件性強化子」とは生まれたあとで強化子としての機能を持つようになったタイプの強化子です。

例えば、

「褒め言葉」、「笑顔」、「人からの承認」、「人との関わり」などのコミュニケーション「野球をすること」や「ゲームをすること」などの活動「お金」や「ポイント」といったものなど幅広いものが含まれます。


例えば一定時間人との関わりが絶たれる(遮断化)と「孤独感」を感じ、人との関わりを行うことの強化力が増すかもしれません。

また逆にずっと人と一緒にいて関わりを持ち続ける(飽和化)と、少しひとりになってゆっくりしたいという活動の強化力が増すかもしれません。


「無条件性強化子」は生きていくために必要なもの(「食べ物」や「水」)ですので、「無条件性強化子」を扱う「無条件性確立操作」はかなり高い確率で確立操作として機能するでしょう。

対して「条件性強化子」は生きて過程で強化子となっていったものですので、

「条件性強化子」を扱う「条件性確立操作」ではその人固有の歴史が影響し、「無条件性確立操作」ほどの確率で確立操作として機能しない可能性があります。

つまり「無条件性強化子」(「食べ物」や「水」など)は全ての生態にとって必要な物ですが、

「人との関わり」や「ゲームなどの活動」などの条件性強化子は人によって強化子としての価値が変わるということがあるため、「条件性確立操作」は「無条件性確立操作」ほど確実に遮断や飽和が生じるとは限りません


摂取量をコントロールすることで強化力のコントロールの可能性がある「条件性確立操作」ですが、

摂取量をコントロールする以外にもPatricia A. Bach他(2008) は確立操作の例としてあげた酩酊状態から考えてみましょう。

ゆっくりとアルコールを摂取している間は踊ることなく何時間もいられますが、アルコールを摂取して酩酊状態になるとハッスルを始めることがあるでしょう。

酩酊がダンスという行動に対しての強化子を確立したというわけです。

参考 Patricia A. Bach他(2008) 


酒飲んで踊りたくなってきたイラスト


他にも「条件性強化子」を上げるような手続きとして

・ 自分の好きなキャラクター商品に「限定品」というキャッチフレーズがつく(「購入する行動」の強化力を上げる)

・ 友達が陰口を言っていたことを知る(「その友達と関わる行動」の強化力を下げる)

・ お金のインフレ(「お金」の強化力を下げる)

などの方法も「条件性強化子」の効力を変える効果があるため「条件性確立操作」の一種と言えるでしょう。



さいごに

このページでは「確立操作」から、「無条件性確立操作」と「条件性確立操作」を紹介しました。

このページで見てきたように「確立操作」とは強化子の効力を強めたり弱めたりすると覚えておきましょう。

ABAでは「強化子の価値が変わった=何かしらの確立操作が働いている」と思ってもらって大丈夫です。


日本行動分析学会 (2015) は「遮断」は強化力を高め、「飽和」は強化力を弱めるように働くと述べました。

このページで出てきた「遮断化」と「飽和化」は確立操作の代表的な手続きです。

他に代表的なものとして「嫌悪化」という確立操作手続きがあります。

「遮断化」、「飽和化」、「嫌悪化」といった確立操作は強化子や罰子の効力を変化させ、行動を起こさせる要因となります。

次のページでは「遮断化」、「飽和化」、「嫌悪化」についてもう少し詳しく見ていきましょう。



【参考文献】

・ 日本行動分析学会 責任編集:山本 淳一・武藤 崇・鎌倉 やよい (2015) ケースで学ぶ行動分析学による問題解決 金剛出版

・ Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008)ACT in Practice Case Conceptualization in Acceptance & Commitment Therapy.  【邦訳 武藤 崇・吉岡 昌子・石川 健介・熊野 宏昭 (2009) ACTを実践する 星和書店】

・ 日本行動分析学会 責任編集:山本 淳一・武藤 崇・鎌倉 やよい (2015) ケースで学ぶ行動分析学による問題解決 金剛出版

・ Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008)ACT in Practice Case Conceptualization in Acceptance & Commitment Therapy.  【邦訳 武藤 崇・吉岡 昌子・石川 健介・熊野 宏昭 (2009) ACTを実践する 星和書店】

・ Paul A. Albert & Anne C. Troutman (1999) Applied Behavior Analysis for Teachers:Fifth Edition【邦訳 佐久間 徹・谷 晋二・大野 裕史 (2004) はじめての応用行動分析 二瓶社