このページではレスポンデント行動とオペラント行動について知っていく前にそれらはほとんど一緒(時間的にすごく接近をして)に、そして相互に影響を与え合って起こりあっているということを知っていきましょう。
ここのところを知っているかどうかで今後の理解度が変わると思います。
このページを読んだ上でレスポンデント行動とオペラント行動について知っていきましょう。
影響し合うレスポンデント行動とオペラント行動
私たちが生活をしていく中で、レスポンデント行動とオペラント行動についてJon・Baily & Mary・Burch (2006) は前者と後者の割合は、おそらく1対20くらいの割合であると述べています。
生活の中で私たちはレスポンデント行動とオペラント行動を行なっているのです。
ABAは「科学」の中で「自然科学」の立場を取っています。
「自然科学」とは自然にあるものを観察しその観察した結果から現象を説明するための一般法則を求める科学分野です。
ABAは私たち人類が昔から普段行っていた行動を説明するため、行動を「レスポンデント行動」や「オペラント行動」に分けて行動の一般法則を明らかにしようとする研究と言えるでしょう。
レスポンデント行動とオペラント行動
『(ABA自閉症療育の基礎1)ABAから見る行動の種類「レスポンデント行動とオペラント行動」(https://en-tomo.com/2020/07/11/learning-theory-respondent-operant1/)』
のページでは小野 浩一 (2005) を参考にレスポンデント行動とオペラント行動について書きました。
レスポンデント行動
「行動の先立つ環境変化によって誘発される行動」
オペラント行動
「行動ののちの環境変化によってその生起頻度が変化する行動」
ページの中で、レスポンデント行動とオペラント行動について私のイメージとして簡単に言えば、
「環境から誘発される(環境に誘発されて、自分でコントロールができない行動)」行動はレスポンデント行動
「環境に働きかける(自分で自発できて、自分でコントロールできる行動)」ことができる行動はオペラント行動
と書きました。
例えば「目に息を吹きかけられて目を瞑ってしまう」ことや「不意に熱いものを触り手をひっこめる」などの反射。勝手に湧き上がってくる「何かされることで起こる怒り」や「嫌なことがあって生じる悲しみ」「ハッピーな気分」などを感じると言ったものはレスポンデント行動になります。
例えば「手を上げる」「右を向く」「話す」「~のように考えた」「~のように思うようにした」などと言ったものはオペラント行動になります。
※ 「感じる」、「考える」、「思う」などを行動と言われて違和感を持つ場合は「(ABA療育での行動の見方3)顕在的行動と潜在的行動(https://en-tomo.com/2020/07/01/overt-behavior-covert-behavior/)」を参照
レスポンデント行動とオペラント行動の日常での絡み
以上のような「レスポンデント行動」と「オペラント行動」は私たちが普段生活をしていく中でどのような場面で絡み合うのか、以下に例を見ていきましょう。
※ Niklas Törneke (2009)を引用し作成しました。非常にわかりやすい解説でした。以下の文章の( )内は注釈となります。
「たとえば、私の息子が別の都市に住んでいて、私が彼と電話をするのが好きだったとしよう。
そのような場合、私はときどき彼に電話をかけるだろう(オペラント行動:自分でコントロールできる行動)。
もし、彼に電話で捕まえるのが火曜の夜なら比較的簡単だとわかったら、火曜の夜だと気づいたときには、私は彼に電話をかけるだろう(オペラント行動:自分でコントロールできる行動)。
ーーー中略ーーー
私が電話で息子を呼び出したとき、彼が出るのを待っている間、いつも同じメロディーが流れているとしよう。
待つ間、このメロディーを聞く状況に私が何回か遭遇した後で、ある日、同じメロディーがラジオから流れてきたとしよう。
そのとき、私は何かの情動反応(息子と会話するときにわき上がってくる)が、意識に上がってくるかもしれない(これは、コントロール不可なのでレスポンデント行動)。
これは、どのようにして起こってくるのだろうか。
答えはレスポンデント学習によって生じたのである(レスポンデント行動)」
この後、親御さんはレスポンデント行動(誘発された自分ではコントロールできない行動)によって自動的にわき上がってきた情動反応によって、ラジオを聞いたことによって息子に電話をするというオペラント行動(自発する自分でコントロールできる行動)を行う可能性が高いと思いませんか?
レスポンデント行動によって誘発された情動がオペラント行動の生起確立を高めるのですが、このことは非常に大切なことです。
レスポンデントとオペラントはそれぞれ絡み合って影響し合うことを覚えておきましょう。
卒業アルバムを見ていた時に懐かしい気持ちを思い出して(思い出した記憶や感情は自動的に生じるのでレスポンデント)、旧友に「メールでもしてみるか」(メールをするかどうか、考えるかどうかは自分でコントロールできるのでオペラント)と思い立って、連絡を送ることも一つの例と言えるでしょう。
ここまではポジティブな例を出してきましたがネガティブな時も同じです。
嫌だなと思っていることを誰かがした場合、イライラします(レスポンデント行動によってイライラが誘発される)。
イライラしたあとにどう行動するかは自分で選択できます(オペラント行動)。
オペラント行動として嫌な態度を返すことや、普段通りの笑顔を作ってスルーするなどを選択して行動することができます。
イライラどの高さはコントロール不可(レスポンデントはコントロール不可)です。がその後どうするか?はコントロール可能(オペラントはコントロール可)です。
オペラント行動は自発的に行う行動ですがレスポンデント行動によって喚起された情動などによってその後、何を行うかの頻度などが変化します。
これからオペラント行動とレスポンデント行動について学んでいきますが、このページではレスポンデント行動とオペラント行動は互いに相互作用(影響し合って)いるということを覚えておきましょう。
レスポンデントとオペラントはほとんど関係がなく、別の場面で生じ、支援する際も別々に扱う理論と考えた経験がありました。
しかし、レスポンデントとオペラントはほとんど同じ時間に絡み合って影響し合います。
このページではそのことを知ってください。
【参考文献】
・ Jon・Baily & Mary・Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー,岩崎学術出版社
・ 小野 浩一(2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店】