最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」(ABA:応用行動分析コラム51)


Enせんせい

ABA自閉症療育だけではないかもしれませんが、療育、またお子様との関わりが上手な人とはどういった人でしょうか?

「上手い」にもいろいろなタイプがあると思いますが、本ブログページでご紹介するタイプの方も最強の一角をになえるタイプの能力を備えていると言って良いでしょう。


こんな怖い感じではないですが

ABA自閉症療育にて専門家からアドバイスを求められるとき、

と言ったことで相談をいただくことがあります。


Enせんせい

本ブログページで書いて行きたい最強の一角を担えるタイプの能力を備えている方は、その人自身が「社会的強化子」として機能し、お子様が「その人と関わりたい」ということをモチベーションとして行動を引き起こす、

というブログタイトルにある『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』ができる人です。


ちなみに私自身はその最強のタイプを備えているとは思っていません。

『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』ができる人は関わりの中でお子様を楽しませることが上手い人なのですが、

私自身はこの仕事を始めた初期、本当にできなくて苦労をしました。

今、鍛錬も積み、フォローできる範囲は広くなって来たと自負していますがナチュラルに上手い人を見ると本当にすごいなと思います。


本ブログページでは『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』ができる人とはどんな人なのか、私自身の考えを書いて行きましょう。


最初に社会的強化子についての簡単な振り返りから見ていきます。



社会的強化子とはなんだ?ヒトは最初から反応できるの?ー簡易的な振り返り

私自身が思う『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』、

ということを実践(その人が意識しているかどうかは別として)できる人の特徴は、

ABA自閉症療育、療育を行うとき「お子様を楽しませられる人」です。


お子様を楽しませることがめちゃくちゃ上手な人

そのような人は今までの経験では保育士や幼稚園教諭の人が多いイメージを持っています。


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私もお子様が好きですがもともと私は「心理学」を生業にすることを夢として生きて来て今、主にはお子様へABA自閉症療育をご提供させていただいていますので、

生まれ持ったモノホンの「子供のことがめっちゃ好き」でお子様と関わることで生活することを夢として来た人の強さを見て実感することがあります。


さて本項、「社会的強化子」とは何でしょうか?

これまでもブログページ内で何度か出て来たキーワードではありますが簡単に本ブログページの内容用にご紹介しましょう。


社会的強化子とは?

まず「強化子」とはお子様が自発的に行動を行った際、その行動のあとに伴わせることで、その行動を増加させることができる結果のことです。

ABA自閉症療育ではこの「強化子」がメインツールとなります。

それを継続的に連続して行って行くことがABA自閉症療育と言っても過言では無いでしょう。


坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) はヒトの場合には条件性強化子の中でも笑顔、頷き、承認や賞賛の言葉などが条件性強化子の機能を有しているといわれ、これらをとくに「社会的強化子(Social Reinforcer)」と呼ぶ場合があると述べました。


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Raymond .G .Miltenberger (2001) は、


たとえば食物、水、性的刺激は自然な正の強化子であるが、それらは個体の保持と種の保存にとって必要なものである

痛みの刺激や非常に強い刺激(寒さ、熱さ、その他の不快刺激や嫌悪刺激)からの逃避は、それらの刺激からの逃避や回避が生存に有利に働くことによって、自然な負の強化子となる

これらの自然な強化子は「無条件正強化子(Unconditioned Reinforcer)」と呼ばれる


と述べました。


このような私たちが生きていくために必要な行動のあとの結果は、私たちの行動を引き起こす自然な強化子です。

実森 正子・中島 定彦 (2000) は、このような生得的に正や負の強化子の機能を持つ刺激を「無条件正強化子」または「一次性強化子(いちじせいきょうかし)」と言うと述べています。


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空腹や喉の渇きなどは生得的な欲求を枯渇させます。

お腹が減ったとき、お腹を満たす結果を得るために食べ物を探求する行動を昔の人も今の人もしますし、それは喉が渇いたときも同じです。


ヒトは社会的な活動を営む動物です。

そのため笑顔、頷き、承認や賞賛の言葉などが得られることは「無条件正強化子(一次性強化子)」と結びつき、行動を増やす効力を持って来ました。


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私たちはこのような「社会的強化子」に反応し、行った行動が「増える」、「減る」について影響を受けます。

と覚えておいてください。



療育で使用する社会的強化子の種類


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さて、あなたが課題をお子様にやっている場面を考えてみましょう。

例えば以下のイラストでは「赤、どーれだ!?」と聞いてお子様に正しく赤のカードを選択してもらう課題を行っています。


「受容課題」の例

ABA自閉症療育では「受容課題」としてメジャーである上記の方法ですが、通常の教育ではあまり上のイラストのような課題方法はお子様へ行うことはないかもしれません。


このとき「正しく赤のカードを選択できた行動」を強めたいので、正しく赤のカードを選択できたときに「強化子」を伴わせるようにします。

例えば「正しく赤のカードを選択できたとき」にお子様がチョコレートが好きであればチョコレートを渡す、と言った具合です。


このときお子様が好きな食べ物(上の例ではチョコレート)を渡さなければいけないのか、と言えばそうでもありません。

お子様の「正しく赤のカードを選択できた行動」が強まれば良いので、お子様の好きなYoutubeでも良いですし、お子様の好きなゲームでも良いです。

そして、本ブログページで話題となっている「社会的強化子」でももちろん構いません。


「最重要ポイントです」と書いたのですが、それはこの課題では最重視されるポイントが「言葉を知識として蓄えること」だからとなります。

まず覚えられる、上のイラストで言えば覚えて行くことを確認するために正しく赤のカードを選択できる確率が上がる、というところが大切です。

理論的には「上のイラストで言えば覚えて行くことを確認するために正しく赤のカードを選択できる確率が上がる」ことが生じた場合、「正しく赤のカードを選択できたときに伴った結果」は強化子と呼ばれます。


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例えば、私の経験からですが、



などは社会的な人との関わりの中で楽しんでもらえる強化子となり得ます。

上の全ての社会的強化子が好きなお子様もいらっしゃいますし、

お子様によっては「はぐ」「くすぐり」は反応が悪いけど、「高く抱き抱える」「マッサージ」は反応が良い、ということもありますので、

その対象のお子様の好みの社会的強化子を探ることも必要です。


最初は褒められることにそこまで興味のない(社会的な強化子として機能しにくい)お子様であっても、自分の好みの社会的強化子(上の「くすぐり」や「はぐ」など)が同時に提示されることで、

「★ 褒め」も社会的強化子としての力を持って行くことが期待できます。



「褒める」は他者から受ける一般的な関わりが強化子として機能するようになるためにもとても大切なのです


社会的強化子をうまく扱えることの強み

さて、上の項で療育で使用する社会的強化子の種類をご紹介しました。

本項目で「社会的強化子をうまく扱えることの強み」をご紹介します。


チョコレートやYoutube、ゲームと比べて示して来た社会的強化子が優位な理由はここまででご紹介をした、

という点で、将来の般化を考えたとき、とても大切な点です。


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本項目ではそれ以外の強みをご紹介します。

そしてそれが本ブログページのタイトルにもなっている『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』です。


本ブログページ冒頭、

ABA自閉症療育にて専門家からアドバイスを求められるとき、

と言ったことで相談をいただくことがあります。

と書きました。


お子様の「強化子」を見つけることは難しいときもある・・・

勉強に対してのモチベーションを持ってくれないについて考えてみます。

お子様の好きな「チョコレート」や「Youtube」や「ゲーム」を主に強化子として使用しているにも関わらず、勉強に対してのモチベーションを持ってくれない場合、どういったことが考えられるでしょうか?


例えば勉強中以外に「チョコレート」や「Youtube」や「ゲーム」を利用する機会が日常にあることは充分考えられることでしょう。

例えば家事をしているときお子様におとなしく1人で過ごしてもらいたい時間があると思います。

そのようなとき「Youtube」や「ゲーム」は多く利用されているイメージです。


しかし、

それは、


もし「Youtube」や「ゲーム」を特別なオンリーワンの強化子として機能させたいのであれば、日常生活の中で使用制限をかけることで強化子としての魅力を上げなければいけません。

しかしそういったこと、このような強化子の価値を変える操作(ABAでは「遮断化(しゃだんか)」と言う)を行うことは家族全体の生活に無理を生じさせる(例えば家事の時間が取れない等)可能性もあるでしょう。


毎日の生活ではやらなければいけないことがたくさんある


Enせんせい

「早くあの先生に会いたい」、「この先生に褒めて欲しい」、そういった気持ちは「先生に良いところを見て欲しい!」という気持ちも芽生えさせるでしょう。

好きな人に認めてもらえることはお子様も嬉しいと感じている様子を見せることが多いです。


さて、「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」がABA自閉症療育で最強の一角をになえるタイプの能力を備えているということをここまでつらつらと書いて来たのですが、

そういった「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」とは結局何ができる人なのでしょうか?


関わりを見ていて「お子様と関わるのこの人めっちゃ上手いな」と思ったとき、「どうしてそう思ったのですか?」と聞かれて、

「いや、お子様がだってめっちゃ楽しそうやん!だから、この人は上手い!」と言ったところであまり生産性はありません。


・・・と、延々に答えの出ない問答になってしまうので生産性がありません。


循環論の罠

このようなことは「循環論(じゅんかんろん)に陥っている」と言うのですが、

最後に「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」とは結局何ができる人なのか、について参考文献を参考に簡単に考察をして本ブログページを締めくくりたいと思います。



「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」は何ができる人?

「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」は何ができる人なのというテーマについて今回、

「A Pilot Randomized Clinical Trial of an Enhanced Pivotal Response Treatment Approach for Young Children with Autism – The PRISM Model」という論文を参考にしました。


この研究はRCTの研究なので研究ヒエラルキーは低いとはいえないものの、「パイロットテスト」と呼ばれるもので、将来予定している大規模研究のため試験的に行われた研究となります。


Ty W. Vernon他 (2019)

研究では、

ABA自閉症療育の中で有名な「PRT:Pivotal Response Treatments(基軸行動訓練)」では特に遊び心、魅力、子どもを感情的に刺激する必要性が述べられていないことについて言及し、

指導が上手い人たちは、それらを刺激することをPRTの中で意識していると述べ研究のテーマとして扱いました。


そしてそのような指導が上手い人たちの要素を文章化しPRTに組み込もうという試み、組み込んだものを「PRISM(Pivotal Response Intervention for Social Motivation)」と研究では呼んでいます。

長いので以下PRISMと書かせてください。


Enせんせい

本項テーマの「お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人」は何ができる人なのということについて、研究の中でご紹介されている、

遊び心、魅力、子どもを感情的に刺激することができる指導が上手い人たちはそうでない人と比べて何が違うのか、についてご紹介し、本項を論じて行きたいと思います。


PRISMで文章化された要因は以下の4点でした。

ちなみに日本語訳されているのを見たことがないため、日本語部分は私訳です。

他の書き方で紹介されている書籍等あるかもしれませんので英語も載せて行きます。



(1)非随伴性曝露(Noncontingent Exposure)

お子様が行動をしたのちにお子様の興味を惹く活動を行う人が多いが、上手い人はお子様の行動とは関係なく突然にお子様の興味を惹く活動を行うことがあり、こういった場面は新しい活動を有む可能性があり重要である

です。


と言えるかもなと思いました。



(2)良質の影響を与える(High Affect Bids)

お子様が活動に関心を示したり関わって来た際、上手い人は肯定的な笑顔や笑い声も一緒に与え、そのとき例えばお子様の反応を真似したり、遊び心を持って例えば母親のような声で真似をしたりする

です。


と言えるかもなと思いました。

例えばピカチューが好きなお子様へは「すごいね」ではなくピカチューのぬいぐるみを手に持って「すごいっチュー!」と言って擬人的にピカチューも一緒に褒めてくれているという遊び後ごろを持っている人の方が上手いと言うことです。



(3)強化子となる社会的活動(Social Reinforcement Activity)

上手い人はお子様が行動をしたのちに与えられる強化子は大人を必要とし、大人とのやりとりが不可欠な要素になるように課題設定を行うが、このような継続的な関わりはお子様のコミュニケーションスキルを高めるだけでなくお子様と支援者との社会的な絆を築く上でも必要である

です。


個人的には本ブログページで伝えたかった内容の部分となります。



(4)強化子となる社会的活動の展開(Development of Social Reinforcement Activities)

療育を開始する前、支援者は両親へのインタビューや子どもの観察から子どもの好みを探るが、

自閉症児が好むことは社会的な関わりがなくても達成されることが多く、例えばおもちゃから出る音を1人で楽しんだり、水遊びを1人で楽しんだりする

上手い人はお子様が音の出るおもちゃが好きとわかればその音を模倣したり、水遊びが好きならば、水の掛け合いを楽しむなどお子様が興味を持っている活動に対して自分が関わることで成立する内容を盛り込む

です。


強化子を療育前事前にアンケートすることはABA自閉症療育では自然なことで、ABA自閉症療育でなくとも療育で「お子様の好きなものはなんですか?」と事前に親御様に聞く質問はド定番のことと言えるでしょう。

その上で、上の文章が示しているのは、

と個人的には言えるかもなと思いました。


Enせんせい


さいごに

「この人が好きだ」、「この人と関わりたい」とお子様に思ってもらえる。

ざっくりと言えば、本部ブログページでご紹介した、平たく言えば、お子様と関わる中でお子様をすごく楽しませられる人はPRISM中の要素でもご紹介されていた要因であったと言えるでしょう。


例えば「褒める」というのは社会的強化子の代表だと思いますがとても深く、

もしかすると褒める内容は同じでも、お子様が大好きな戦隊ヒーローが褒めてくれればお子様が頑張れる幅が拡がるかもしれません。


最近私は面白い経験をしました。

私のブログを読んでくださっている人の中には知っている人もいるかもしれませんが、私は今、ゲームのポケットモンスターにハマっています(笑)


ゲーム面白い!

お子様と関わっているとき、お子様がポケットモンスターのカードを出してきました。

そして「Xのモンスターは強い」と言ったのです。


もし私が先生でなく、お子様が先生で私が教えられる側だったとしてそのときに、

「Eんくん、なんでXが強いか教えたげようか!でもその前に1回だけお勉強しよう」

とか言われたら、結構モチベーション高くお勉強に取り組もうとしただろうな、と感じたことはこれから療育を行なっていく、ABAを用いて誰かを支援していくときの財産になるだろうと思いました。


あなたが人と関わっていて楽しいなと思う活動はなんですか?

どんな話をしているとき楽しいでしょうか?

好きなアイドル?、料理?、アニメ?、ドラマ?、映画?、サウナ?、野球?


その人と「もっとその話を続けたい!」「この人ともっと関わりを続けたい!楽しい!!」と思ったことがあったとき、お子様にその気持ちを持たせることができる。

そう言ったことができるお子様の範囲の広い人を私は『最強にABA自閉症療育が上手い人「私自身が強化子になる事だ!」』ができる人だと思っています。



【参考文献】

・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】

・ 坂上 貴之・井上 雅彦 (2018) 行動分析学 行動の科学的理解をめざして 有斐閣アルマ

・ Ty W. Vernon・Anahita N. Holden・Amy C. Barrett・Jessica Bradshaw・Jordan A. Ko・Elizabeth S. McGarry・Erin J. Horowitz・Daina M. Tagavi・Tamsin C. German
(2019)A Pilot Randomized Clinical Trial of an Enhanced Pivotal Response Treatment Approach for Young Children with Autism- The PRISM Model. Journal of autism and developmental disorders, 49(6)

・ 実森 正子・中島 定彦 (2000) 学習の心理 第2版 サイエンス社