私はABA自閉症療育を現在専門に、お子様に対して言葉や心理面で支援を行っています
自閉症と一言で言っても、その容態はさまざまで本当にいろいろなお子様がいらっしゃるなと感じるところです
今日はいろいろなお子様がいる自閉症療育の中でタイトルにあるように、
特に負けることを嫌悪的に感じるお子様に対してどのように関わって行き、そのところを緩和していけば良いのかについて書いて行きましょう。
「勝負事をして負けることが許されない、勝てないと泣く・怒るなどの強い癇癪を示す」お子様がいるのですが、このようなお子様を私は「負けの耐性が弱い」と呼んでいます。
「負けの耐性が弱い」お子様は「1番じゃないと嫌だ」とか「失敗することを怖がる」などの特徴を併せ持っていることも珍しくありません。
もしあなたのお子様が「負けの耐性が弱い」、「1番じゃないと嫌だ」、「失敗することを怖がる」などの特徴を持っていた場合、本ブログページの内容が参考となれば幸いです。
本ブログページの構成ですが、
最初に「負けの耐性が弱い」とはどういったことなのかもう少し詳しく書かせてください。
そして次に「負けの耐性が弱い」のはどういった可能性があるからなのか、私が考えていることを書いて行きます。
最後に「負けの耐性が弱い」とき、どういった介入方法(支援方法)があるのか、という構成でブログページを書いて行きましょう。
「負けの耐性」が弱いとは?もう少し詳しく
「負けず嫌い」と言えば、性格の範囲かもしれません。
あなたの周りにも「負けず嫌い」な人もいるでしょう?
ただその人は多分ですが「負けず嫌い」なことで少し周りからの顰蹙を買ったことはあるかもしれませんが、集団の中から逸脱する、というレベルで周囲から評価されている、ということはないと思います。
例えばJonas Ramnerö & Niklas Törneke (2008) は問題行動を捉えるときに「行動の過剰」と「行動の不足」に注目することを書きました。
もしかするとあまりに「負けず嫌い」でなさすぎることも問題となるかもしれません。
「勝ちに全く固執しない、興味がない」ということで困る可能性もあるからです。
そして本ブログの本題ですが過剰に負けず嫌いであったとすれば、それは周囲から問題行動として捉えられます。
過剰に負けず嫌い、そしてそのことが社会的に不適切に映るパターンとしては例えば負けたとき、
・ 大きな声で10分以上泣き続ける
・ 勝った相手に対して手を出したり、言葉で「お前なんか嫌いだ!」などと、攻撃的な反応を示す
・ 負けそうになったとき明らかに不正を始めることや、ゲームを投げ出す
などが考えられるでしょう。
本ブログページで書いていくお子様は上のように「過剰に負けず嫌い」であり、そのことによって示される反応のパターンが社会的に不適切である、というようなお子様です
そして、以下のようなお子様でもあります。
「勝負事をして負けることが許されない、勝てないと泣く・怒るなどの強い癇癪を示す」お子様の場合、個人的に多いなと思っているパターンをご紹介しましょう。
そのようなお子様は、
負けたときは例外なく泣く・怒るなどの強い癇癪を示す
ことが見られます。
これは、
負けたときに「泣く・怒るなどの強い癇癪を示すことがある」というわけではなくて、
負けたときは「 ” いつも ” 泣く・怒るなどの強い癇癪を示す(「いつも」ではなかったとしても、ほとんどの場合は)」です。
ちなみにお子様が現在4歳だとして2歳半ごろまではそんなことはなかったということもあるでしょう。
生まれてからずっとではない、と言われればそうだと思いますが、ある特定の時期からそういう傾向が出だして、今もずっとそうである
という状態であれば上記の内容にあてはまると考えて良いでしょう。
また別の視点で言えば、
幼稚園・保育園で負けたときは癇癪は示さないものの、家でゲームなどをして負けたときは強い癇癪を示す
といったような場合も上記の内容にあてはまると考えてください。
不思議なことに「幼稚園・保育園で負けたときは癇癪は示さないものの、家でゲームなどで負けたときは強い癇癪を示す」お子様はいるものの、逆に「家でゲームなどで負けたときは強い癇癪を示さないものの、幼稚園・保育園で負けたときは癇癪は示す」というパターンのお子様は、
いるとは思いますが私は出会ったことがないように思います。
このように「ある時期から」加えて「特定の場所」、他には上で例として出していませんが「特定の人」、そして「特定の活動」において、
負けたときはいつも「泣く・怒るなどの強い癇癪を示す」(「いつも」ではなかったとしても、ほとんどの場合は)とお子様に対してのテーマが本日の内容です。
「負けの耐性」が弱い理由として考えられること
「その行動が起こる理由は?」と考えたとき、ABAを生業にしている人は「環境」の要因を探り、なんとか解決しようと模索するでしょう
そのとき「環境」だけではなく、その人が今まで生きてきて得てきた経験(ABAでは強化履歴)も行動を決定するときに影響します
「その人が今まで生きてきて得てきた経験」は「その人が今までどのように環境からフィードバックを受けてきたか」とも言い換えられるでしょう
その人が今までどういった環境と関わってきたか、そして現在、どういった環境と関わっているのか、その観点から分析をし、解決を目指すーーーーーーー
ーーーーーーー、と、上記の文章は嘘ではないし、ABAを背景として答えるときには正解だとも思うのですが、
「その行動が起こる理由は?」の答えにいて私は「個人の気質と環境との相互作用で決まる」と思っています。
※ ABAも「個人の気質」の部分について無視するわけではなく、考慮する分析対象として捉えています。ただ、上で出したオレンジ部分にある説明の中に「個人の気質」の記載はありません
※ 「個人の気質」とは生まれ持ったその人の「性格」や「特徴」と読み替えてもらっても構いません
どういった環境に身を置いているかももちろん大切なのですが、もともとのその人の生まれ持った気質も関係しているでしょう。
だから私は親御様にお子様が「負けの耐性が弱い理由として考えられること」として、以下のように答えています。
「お子様のそもそもの気質もあると思う」
このことを私は前提としてあると考えているのです。
そして、以下の内容も付け加えます。
以下の内容は前半部分は「何が悪いか」問題を切り分けて考えることを伝える部分、
そして後半部分はその気質を持った上で「お子様が今までどのように環境からフィードバックを受けてきたか」という部分の説明を含むものです。
「
(↓↓↓「何が悪いか」問題を切り分けて考えることを伝える部分↓↓↓)
お子様はこれまで負けたときに情緒的に嫌悪的な状態になってきたと思う
負けて嫌悪的な気持ちになること自体は悪いことではないと思うし、人生において負けたくないという気持ちは大切なことかもしれない
そう考えると、負けて嫌悪的な気持ちになること自体が問題ではない
「負けて嫌悪的な気持ちになること自体が問題ではない」ということは分けて考える必要がある
負けたとき癇癪を起こすことが問題とみられていて、
負けて嫌悪的な気持ちになることが悪いわけではない
負けたあとに癇癪を起こすことが、周りから困ったとみられる原因となっている
(↓↓↓「お子様が今までどのように環境からフィードバックを受けてきたか」という部分の説明を含む部分↓↓↓)
またもしかするとお子様は、負けて嫌悪的になったとき、お子様は癇癪を起こさなかったことがないのかもしれない
負けて嫌悪的になったとき、癇癪を起こす以外の選択肢があることに気がついておらず、経験したこともないのかもしれない
だから、お子様は負けたとき、癇癪を起こすという方法以外どうすれば良いかを知らない可能性がある
もしくは負けて癇癪を起こさなかったとしても情緒的に落ち着くことを感じたことがないため、癇癪を起こすことで情緒的にスッキリすることをずっと選択しているのかもしれない
」
というような話をし、「以上の話はあくまで予測ではありますので、間違っているかもしれませんが、今の話を聞いて、どう思いますか?」などと親御様に確認をします。
もし上の論が当たっているとすれば、
今お子様は負けて情緒的に嫌悪的な状態となったとき、癇癪を起こすが、癇癪を起こす以外どうすれば良いのかわからないのかもしれない
そして負けるのが嫌なこと自体は悪いことではなくて、そのあとの態度(癇癪)が問題となっている
と言えるでしょう。
お子様は情緒的に嫌悪的な状態となったとき、癇癪以外の方法でその高まった情緒を収める方法を知らない、という可能性はあると思います。
もちろん、すべての「負けの耐性が弱い」お子様がこれにあてはまるとまでは思ってはいませんが、基本的には私はこのように状態を捉え介入を計画していくことが多いです
また上では「今お子様は負けて情緒的に嫌悪的な状態となったとき、癇癪を起こすが、癇癪を起こす以外どうすれば良いのかわからないのかもしれない」と書きましたが、
「わかっていても(知っていても)やったことがない」ということもあるかもしれません。
例えば何か問題があったときに「うそ」をついて問題を解決(回避)しようとする傾向がある人がいたとします。
いつもそうしていた場合は、頭では良くないと思っていてもその人はまたうそをついて問題の解決を行う可能性が高いでしょう。
特に情緒が不安定(怒りや不安などが発生し気持ちが揺れている)な状況では、衝動的に安心を求めいつもの行動パターンで問題を解決しようとする傾向が人にはあると思います。
「いつもの行動パターン」これは最善ではないと思っていたとしても、少なくとも短期的な見通しがつくので、安心を産むでしょう。
情緒が不安定な場合、最善ではないと思っていたとしても安心から普段の行動パターンをとってしまうということであれば、
お子様が情緒的に嫌悪的な状態となったときは、癇癪以外の方法でその高まった情緒を収める方法を知っていたとしても、衝動性が高まった状態であるためそれを選択しないという可能性もあります。
そのため「癇癪以外の方法でその高まった情緒を収める方法を知らない/知っている」いずれだとしても、
ときどきではなく負けたときは「 ” いつも ” 泣く・怒るなどの強い癇癪を示す(「いつも」ではなかったとしても、ほとんどの場合は)」というパターンにおちいってしまうのでしょう。
ではこのように問題を捉えた場合、どのような介入方法が考えられるでしょうか?
「負けの耐性」にどう介入するか?
今お子様は負けて情緒的に嫌悪的な状態となったとき、癇癪を起こすが、癇癪を起こす以外どうすれば良いのかわからないのかもしれない
という仮説のもとに立てば、逆説的ではありますが、
負けて情緒的に嫌悪的な状態となったとき、癇癪を起こさずに過ごしている行動を強化する
※ 癇癪を起こすが、癇癪を起こす以外の何かしらの行動が強化されれば、癇癪を起こしていない時間を持つことができます。情緒(例えば負けたときの怒り)は少し時間が経過すれば低下しますのでお子様がそれを体感できることを狙います
ことができれば、問題が解決する1つの方法になり得るでしょう。
実際に私自身はこの介入を行って「負けの耐性」の解決を狙います
だいたい負けの体制に対してアプローチするとき、以下に書いていくような方向性で進め、負けの耐性に対応いたします
「負けの耐性」にどう介入するかのコツは?
負けてもほとんど情緒的に嫌悪的な状態とならないような状況で最初練習する
ことでしょう。
具体的な例を出します。
例えばですが、
じゃんけんを行うシチュエーションにおいてお子様へ「グー出してな」などと伝えます
お子様は最初「?」という表情を見せるものの、付き合ってくれてグーを出してくれたとしましょう
そしてお子様が先に「グー」を出した状況で「んじゃ、先生、パーを出すからそのままにしててね」などと伝えてパーを後出してみてください
その後、例えば「やったー!先生の勝ち、たろうくんの負け」と少し大きめに喜ぶ様子を見せます
ほとんどのお子様はこのときもまだ「?」と言う感じです
このようにしてじゃんけんにこちら側が勝ったとしましょう。
そして「やったー!先生の勝ち、たろうくんの負け」などと言ったとき、
私の経験上「何言ってんの?」という感じで、お子様は特に泣く、怒るなどの強い癇癪を示すことはなくキョトンとしていることが多いです。
※ たまに示すお子様もいますがそのような場合は「負け」などのキーワードに反応している可能性があるので、勝負をしていないタイミングで「負け」など反応してそうなキーワードを出してリアクションを見てみてください
しかしこれはれっきとした「お子様が負けたシチュエーション」と言えると思います。
今までお子様は負けたとき、癇癪を起こすことが普通だったのですが、それは真剣勝負であったり、「負けて当然」というシチュエーションではなかったからでしょう。
このように最初はそのシチュエーション以外を作って「確かに負けた」のだけれども、「癇癪は起こさなかった」という「初めて(もしくは久しぶり)」の経験の場を作って行くのです。
このようにお子様が受け入れることができる「負け」を探ることがまず大切だと私は思っています
そして癇癪を起こさなかったこのとき、「負けたとき太郎くん、怒っていたけど、今、全然怒らへんやん!すごい!かっこいい!!」などと褒めながら抱っこしたりとかして、
その「怒っていない状態」を強化するのです。
「じゃあ次は先生がグー出すからな、太郎くんは好きなん出しよ」などと言い、勝負を続けて行きましょう。
この介入のキモは最初からこちらが勝ち続けないことも大切な点です。
徐々に勝ち負けの割合をコントロールしてお子様が負けることに慣らして行きましょう。
じゃんけんは「こちらが勝つ/こちらが負ける」がコントロールしにくいゲームです。
そのため他のゲームも参考にもして書かせてください。
例えば神経衰弱、このブログはABA自閉症療育で特に幼児期のお子様を対象に書いてきたこともあるので、
例えば相手が幼児の年代のお子様だとして「VSお子様」と神経衰弱をすれば「こちらが勝つ/こちらが負ける」はコントロールできるかと思います。
ちなみに「負けの耐性」ではその日に何度か勝負をして介入を進めて行くため、お子様と神経衰弱をする場合は使うトランプは10枚にする等、1回のゲーム時間がそんなに長くならないようにしましょう。
神経衰弱では負けるときはこちらがわざと間違って負けてあげれば良いですから
例えば介入の方向性なのですが、最初は、
1回目・・・お子様の勝ち
2回目・・・お子様の勝ち
3回目・・・お子様の勝ち
4回目・・・先生の勝ち
5回目・・・お子様の勝ち
というように1勝4敗でお子様の勝ちが多かった、ということに収める。
回数の5回は例で出しただけですが「1回目に勝つ」「最後に勝つ」というところは負荷がかかる部分ではありますので、最初はお子様に譲る方が無難です。
このとき、事前に「負けた経験」を上で書いたような方法で何回・何日かじゃんけんで行ったあとであればお子様は4回目に負けたときそもそも怒らなくなっている可能性もあります。
お子様が勝ったときは「すごいな。強い、、、もう1回やろうか」と言うなど、お子様が負けたとき行って欲しい行動のモデルを提示しておきましょう。
お子様にこちら側が勝ったときは「やったー!」と喜びます。
上で書いたようにお子様はそもそも怒らなくなっている可能性があるものの、お子様が癇癪を起こしてしまう可能性もあるでしょう
結果的に「やったー!」と喜ぶ様子を見せてお子様が2秒後に癇癪を起こしてしまったとすれば、「負けてから2秒経ったら癇癪が起きる可能性が高い」と次に織り込めば良いです。
そうであった場合は次は「やったー!」と喜ぶ様子を1秒ほどで見せ表現し、スピーディにお子様が癇癪を起こす前に例えば抱き上げて高い高いをして「すごいすごい!負けたけれども、怒らなかったやん!」などと強めに強化をします。
もしそれでも難しい場合は「やったー!」と喜ぶ様子を1秒ほどで見せる部分を省略し、勝ったあとすぐに「すごいすごい!負けたけれども、怒らなかったやん!」などと強めに強化をしましょう。
まぁ、パワープレイではありますが、このようにして「お子様の癇癪を起こしていない時間」を強化し伸ばして行くことを介入の目的とします。
7から10秒ほどしてもお子様が癇癪を起こさなかったとすれば、その後、そのタイミングでお子様が癇癪を起こす可能性は著しく低くなっていることでしょう。
徐々に勝ち負けの割合を調整し、
1回目・・・お子様の勝ち
2回目・・・先生の勝ち
3回目・・・お子様の勝ち
4回目・・・先生の勝ち
5回目・・・お子様の勝ち
というように3勝2敗でお子様の勝ちが多かった、ということに収める。
1回目・・・先生の勝ち
2回目・・・先生の勝ち
3回目・・・お子様の勝ち
4回目・・・お子様の勝ち
5回目・・・お子様の勝ち
や、
1回目・・・お子様の勝ち
2回目・・・先生の勝ち
3回目・・・お子様の勝ち
4回目・・・先生の勝ち
5回目・・・先生の勝ち
というように、「1回目に勝つ」「最後に勝つ」「総回数で勝ち越す」などの状況であっても癇癪を起こさなくなったことが確認できて行けば、この介入は上手く行っています。
また昨日までは上手くできていたのに、その日は上手くできないというイレギュラーな日も出てくるかもしれません。
そのような日は「外れ値」として考え、一旦は気にしないようにしましょう。
外れ値については「お子様の成長データの見方「外れ値」について(ABA自閉症療育での行動の見方12)(https://en-tomo.com/2021/11/19/behavior-view-data-outliers/)」をご参照ください。
このようにしてもしお子様が勝負に負けても癇癪を起こさなくなったことが確認できれば、
あとは必要に応じて「般化」を狙って行けば良いでしょう。
最終的に、
1回目・・・先生の勝ち
2回目・・・先生の勝ち
3回目・・・先生の勝ち
4回目・・・先生の勝ち
5回目・・・先生の勝ち
というところまでして癇癪が起こらないかどうか確認する必要は個人的に無いようにも思います。
もし気になるようでしたらしても良いかなと思いますが、
ここまでのある時点で生活状況の中で「負けの耐性」について般化が見られており、癇癪の起こらない状況が出てきているのであればもうきっかけはできていると思うので、
生活の中で自然に生じるシチュエーションを強化する中で「負けの耐性」を鍛えて行けば良いでしょう。
もし生活状況の中で「負けの耐性」について般化が見られない場合、つまり、今ここまでの介入で確認できたことはもし介入実施者がお母様であったとすれば、
・ じゃんけんに関してはお母様と行ったとき、癇癪を起こすことは大丈夫そうだ
・ 神経衰弱においてお母様と行ったとき負け越しても癇癪を起こすことは大丈夫そうだ
が達成できていたとしても、生活状況の中で「負けの耐性」について般化が見られない場合は、
「神経衰弱以外のゲームで同じ手続きで練習し般化することを狙って行く」とか「同じ手続きでお父様にやってもらい般化することを狙って行く」ということを行っていけば良いでしょう。
ここは少し気長に、です。
お子様の中では「負けるのがいやだ」という気持ちは弱いものでは決してなかったでしょうから「少し時間をかけて行っていく」という心持ちも大切になると思います
本ブログでご紹介した「負けの耐性」に対する介入のポイントとしては、
「お子様の癇癪を起こしていない時間」を強化し伸ばして行く
このような方向性で考え支援して行くことがポイントです。
そのためには「お子様の癇癪を起こしていない時間」を作る必要があるので、最初は意味不明なじゃんけんについて書きました。
意味不明であるし、「負けて当たり前」なじゃんけんの設計なので普段の生活の中でそのようなことが生じることはまずありません。
でも意味不明で成立していないからこそお子様も負けても癇癪を起こさない(起こしにくい)のでしょう。
ここまで書いてきた内容ですが、お子様の「負けても癇癪を起こさない」シチュエーションをまずは作ることが大切です。
私はそう思っています。
さいごに
以下、本ブログの内容を日常の中に落とし込んで考えてみましょう。
以下の話はフィクションです
私のTwitterを見てくれている人は知っているかもしれませんが、私は料理をすることが好きです。
例えば私の好きな人に対して私は「今日は○○を作るから」と毎日、相手の意見を聞かずに私自身が食べたいメニューを作り、晩ごはんにしていました。
しかし実は、彼女はそれが不満でした。
不満な理由は「私の意見は聞いてくれないの?」という気持ちがあるからです。
あるとき彼女が『あなたが「今日は○○を作るから」と伝えるとき「今日は○○を作ろうと思ってるけど、それでも良い?」と聞いて欲しいなー』と言ったとしましょう。
私は最初「ん?」と違和感を感じ思うものの、「わかった」と返答しました。
「ん?」と思っているので、そのときの私の気持ちとしては相手が言っているからそうするけれども、そうすることに疑問を持っている可能性があるかもしれません。
「何でや?」と疑問を持っている可能性もあるでしょう。
しかし私はそう言われたのでとりあえずは「今日は○○を作ろうと思ってるけど、それでも良い?」と彼女に聞くことにしました。
そう聞かれた彼女は「ありがとう!嬉しい!」と言っています。
ある日、私が「今日は焼き魚を作ろうと思ってるけど、それでも良い?」と聞いた日「今日はハンバーグが食べたい」と彼女が言ってきました。
私はハンバーグを作ります。
彼女は嬉しそうにハンバーグを食べ、「とても美味しい。私の意見も聞いてくれて、すっごい嬉しい。今日、ハンバーグすごい食べたかったの」と言いました。
私はきっと、嫌な気持ちはしないでしょう。
私が相手の意見を聞くと、毎日毎日「ありがとう!嬉しい!」と言ってくれる彼女。
私が彼女に好意を持っているとすれば?
デートのプランに対しても「今日は○○しようと思うんけど、それでも良い?」、
その他のことにも「俺は○○て思うんけど、どう思うか教えてくれん?」と相手の気持ちを聞くようになるでしょう。
これは「般化した」ということです。
そしてその般化は私が能動的に自発的に行っていて、なんなら幸せな感情も伴っています。
私は嫌悪的に感じてはいないでしょう。
あなたのお子様も「お子様の癇癪を起こしていない時間」を違和感のあるじゃんけんであったとしても、しっかりと褒めてくれるなどが伴えば上のような状況になる可能性があると思います。
本ブログページでは、
・ 「負けの耐性が弱い」とはどういったことなのか?
・ 「負けの耐性が弱い」のはどういった可能性があるからなのか?
・ 「負けの耐性が弱い」とき、どういった介入方法(支援方法)があるのか?
ということを書いてきました。
本ブログページの内容が日々のABA自閉症療育の参考となれば幸いです。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
・ Jonas Ramnerö & Niklas Törneke (2008)The ABCs of HUMAN BEHAVIOR:BEHAVIORAL PRINCIPLES FOR THE PRACTICING CLINICIAN 【邦訳: 松見純子 (2009)臨床行動分析のABC 日本評論社】