本ブログ記事も本章1つ前のブログページ同様、自閉症のお子様に対しての「偏食指導(へんしょくしどう)」について書いて行くブログページです。
千葉県栄養士会(2022.10.7サイト観覧)によれば「偏食(へんしょく)」とは、
一般的にある特定の食品に対する好き嫌いがはっきりしていて、しかもその程度がひどい場合
を言います。
1つ前のブログ記事では、
Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) の
「Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders(自閉症スペクトラムの子どもにおける食の柔軟性を高めるための個別の強化子と階層的エクスポージャーの使用)」という論文と、
Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017) の
「Using Shaping to Increase Foods Consumed by Children with Autism(シェイピング手続を用いて自閉症の子どもが食べることができる食目を拡大する)」という論文を用いて、
偏食指導の基本的な手続きをご紹介しました。
それは、
「(ABA自閉症療育の基礎100)自閉症児に対しての偏食指導ーABA自閉症療育手続き(https://en-tomo.com/2022/09/09/guidance-on-resistance-to-food/)」のブログページです。
興味のある方はご参照ください。
上のURLリンクブログページでは主にRobert L. Koegel他(2012) とTonya Davis他 (2017) の研究の手続きをご紹介したのですが、彼らの手続きは私自身が行っている偏食指導の手続きとほとんど同じものとなりますが、
少し違うところもあったり、もっと詳しく解説できる内容もあると思いました。
また偏食指導と言っても偏食に陥っている状況によって手続きも少し変わってくると思っています。
食べることができるタイミングやシチュエーションがない場合の手続きは次のブログページでご紹介しようと考えているのですが、
本ブログページではその前に食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続きをご紹介して行きます。
偏食指導ー食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続き
あなたがお子様に何か新しい食べ物(以下、ターゲット)を食べられるようになって欲しいと思った場合、
最初にターゲットを食べられる別のシチュエーションがないかどうか考えて欲しいです。
もし以下のようなシチュエーションに該当した場合、本ブログページで行うような手続きの偏食指導を行ってみるのも1つの手でしょう
これは本章1つ前のブログページでご紹介したRobert L. Koegel他(2012) とTonya Davis他 (2017) の手続きとは異なります。
例えば以下のようなことはありませんか?
・ お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる
・ 幼稚園や保育園では食べる
・ 特定のお皿に乗っているときは食べることがある
・ 特定の形で出した場合は食べないが、例えばカレーの中に入れると食べる
などです。
以上のようなことが観察された場合の介入法について本ブログページではご紹介して行きます。
最初に、
あなたがターゲットをいつ、だれのまえで、どのようにして、どのくらい食べて欲しいのか
考えるようにしましょう。
例として以上に対して、
キャベツの炒め物を夕食時、私一人の前で、スプーンを使って、3口分くらい食べて欲しい
と定義したとしましょう。
そして「お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる」ということも観察できていたとします。
この場合の偏食指導は「一切、どういったシチュエーションであっても食べない」という場合と比べて偏食指導は簡単になるでしょう
この場合「お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる」ということがキーポイントです。
私は、偏食指導だけでなくともABA自閉症療育では「できるタイミングやシチュエーション」があるのであれば、そのタイミングやシチュエーションをやって欲しい場面にまで広げることが簡単だと考えています。
例えば30分夕食を遅くすれば、お父様も夕食の途中には帰宅できて、食事を摂っている後半に食卓に顔を出せるのであればそうすれば良いでしょうし、朝食時は一緒に食卓に座れるのであれば朝食でチャレンジしても良いでしょう。
手続きは以下のようなものです。
お父様が30分夕食を遅くすれば、お父様も夕食の途中には帰宅できて、食事を摂っている後半に食卓に顔を出せたとします
「お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる」ため、お父様が顔を出したときにキャベツの炒め物をお子様に食べるように促すと、お子様は食べる可能性が高いでしょう
例になっているターゲットはキャベツの炒め物を夕食時、私一人の前で、スプーンを使って、3口分食べることです
例えば1口分目、2口分目だけお父様が食卓に座っているタイミングで食べ、3口分目を食べるときだけ席を外してもらう、
という介入方法が考えられますね?
もしそのシチュエーションで3口分目を食べられることができれば、お子様は(もしかすると)人生で初めてお父様の居ない、お母様と二人きりのシチュエーションでキャベツの炒め物をスプーンを使って食べることができた瞬間です。
これは、(もしかすると)お子様から見て未経験であったことも覚えておいてください。
仮にそのあと、すぐに食卓の下から大好きなニンテンドースイッチが出てきて「すごい頑張った!キャベツ食べられた!ゲームで遊ぼう!」とか、
大好きなプリンが出てきて「すごい頑張った!キャベツ食べられた!プリン食べよう!」などのイベントが生じたとしましょう。
ニンテンドースイッチやプリンという大きな強化子でなくとも例えばあなたが抱っこをしてあげるなど、お子様から見て特別楽しい結果がそのあとに伴えばお子様は「食べるのも悪くないか」と思ってくれるかもしれません。
※ ニンテンドースイッチやプリンは強力ですが「それくれないなら、食べない」となってもあとあと大変なので、こういった特別なものは最終手段として取っておく方が賢明な気もします
偏食指導でお子様に炒めキャベツを好きになってもらえれば最高かもしれませんが、
わたしたちでも特に美味しいと感じないものの「栄養面等を考えると摂取しておくか」くらいの食べ物はあるでしょう?
だから特別好きになってくれなくとも「食べるのも悪くないか」と思えるくらいでも良いと思います
お母様から見て自分だけの前で1人でスプーンを使って炒めキャベツを食べたことが初めてであったとすれば、同じようにお子様から見ても初体験です。
偏食指導では、お子様も実は食べてみると「良かった」「悪くなかった(思ったほど嫌ではなかった)」と思ってもらえるような設計をすることが大切になってくるでしょう。
例えば1口分目、2口分目だけお父様が食卓に座っているタイミングで食べ、3口分目を食べるときだけ席を外してもらう、という介入を徐々に進めて行き、
例えば1口分目だけお父様が食卓に座っているタイミングで食べ、2口分目、3口分目を食べるときは席を外してもらうようにします
その後は・・・?
例えば1口分目食べる前にお父様が食卓に一旦は座るもののすぐ席を外し、1口分目、2口分目、3口分目を食べるときは既に席にはいない
例えば1口分目食べる前にお父様はリビングに顔を出して「お、美味しそうだな。頑張って食べなよ」と言って着替えに行き、1口分目、2口分目、3口分目を食べるときは席にはいない。
介入中に持っておいて欲しい、目指したいイメージをお伝えします
最初、お父様というエッセンスが色濃いシチュエーションの中で食べてもらいました。
これは今まで食べることのできなかったお母様と2人きりというシチュエーションの色は薄かったわけですが、
徐々にお父様はそのシチュエーションからフェイディング(抜けて行く)されていますので、
結果的にお父様というエッセンスが色薄いシチュエーションの中で食べてることを経験することになるでしょう。
相対的にお母様と2人きりというシチュエーションの色が濃い中で食べる経験を積むことを繰り返して行くことになります。
そして特にお母様と2人きりというシチュエーションの色が濃くなって行く中でお子様がターゲットを食べた行動の直後、お母様から直接強化を受けるという未経験の経験を体験し、
「お母さんの前で食べるのも良いな(悪くないな)」となれば、課題達成したと言えるところまでなっているでしょう。
つまり、介入前にはできなかったお母様の前で自分で炒めたキャベツを3口分食べるということが達成されています。
この介入で特に大切なポイントは、お母様の前でお子様が食べられたときにいかに強化子を適切に提供できるかどうかです。
このポイントが介入の成功、不成功を分けると言っても過言ではありません。
ここまで紹介してきた偏食指導の介入はあくまで食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続きなので、全くどこでも食べることができない、
となると別の介入方法が必要になってきますが、それは次のブログページでご紹介します。
ここまで食べることができるタイミングやシチュエーションがある場合の手続きをご紹介してきましたが、
以上の介入例を本筋として、本ブログページで示した他の例にも適応して行きましょう。
・ お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる
・ 幼稚園や保育園では食べる
・ 特定のお皿に乗っているときは食べることがある
・ 特定の形で出した場合は食べないが、例えばカレーの中に入れると食べる
本ブログページでは以上の例を示し、ここまで「お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる」場合の介入例をご紹介してきました。
その他3つについてもどういった介入方法があるのかについて示して行きます。
偏食指導ー幼稚園や保育園では食べるが家では食べない場合の手続き
示した4つの例の中でこれが一番やっかいかもしれません。
私は上で、
『私は、偏食指導だけでなくともABA自閉症療育では「できるタイミングやシチュエーション」があるのであれば、そのタイミングやシチュエーションをやって欲しい場面にまで広げることが簡単』と書きましたが、
「幼稚園や保育園では食べるが家では食べない場合」は場面を広げることが狙いにくい印象を持っています。
このような場合で偏食指導を達成したい場合、幼稚園や保育園という家庭以外の外部の機関のエッセンスを家庭にまで広げなければいけません。
また、例えば幼稚園や保育園がどこまで協力してくれるかということもあります。
「幼稚園や保育園では食べるが家では食べない場合」で今からご紹介する方法が難しい場合は、次のブログページで書く「どのようなシチュエーションでも食べられない場合の偏食指導」の手続きを適用することも良い、と思う例ですが、
幼稚園や保育園では食べるが家では食べない場合「特定の食べ物を家では食べず園では食べる」のか「ほとんどの食べ物を家では食べることはできないものの、園ではいろいろな食べ物を食べられる」のか、さまざまなパターンはあるものの、以下の方法は基本線となりそうです。
考え方は、まず幼稚園や保育園と家庭の何が違うのかを考えるようにします。
例えば、
【幼稚園や保育園】
・ 園舎(教室内)という環境
・ 周りに友達がいて、友達もお弁当を食べている
・ 先生がいて食べるように指示している
・ 食べ終わったあと、昼休憩で遊びに行けるという時間規則がある
幼稚園や保育園が上のようなエッセンスを持っていたとして、対して家庭はどうか考えてみます。
以下は対比例ですので、ご家庭によって違いがあることはご了承ください。
【家庭】
・ リビングという環境
・ 周りにお友達がいない
・ 先生がいない、いるのは私(お母様)だけ。食べるようには指示している
・ 食べ終わったあと何をするという時間規則は特になく、自由時間である。また特に全て食べなくとも遊びに行ける経験もしているし、食べている途中であっても離席を許している
幼稚園や保育園で食べられているとすれば、既に食べることができている幼稚園や保育園の環境に家庭をいかに寄せられるかということがポイントになってくるのですが、
なかなか幼稚園や保育園というほとんど家庭とは違う環境(エッセンス)を家庭に寄せることは容易ではありません。
加えてお子様が幼稚園や保育園のどの環境(エッセンス)に家庭と差を感じて食べることができていないのかも不明で、何を寄せれば良いか(最悪、全体の雰囲気ということもあります)もわかりません。
そのため、とりあえず寄せやすいところから始めて行くことになるでしょう。
寄せやすいところを以下いくつか書いて行きますが、人によって寄せやすいところは違ってくると思います
例えば簡単な方法の1つは幼稚園や保育園の昼食時間にお母様が園に行き、お子様が食べられるシチュエーション中にお母様も居る、ということを作り出すことです。
これは園側の協力が必要であることと、周りの幼児から「何してるの?」と言われてもあまり気にならない性格が必要でしょう。
ただそれらが可能、大丈夫な人にとっては簡単な方法です。
「お母様の前では食べられない」という現状ですので、既に園で食べられていることを鑑み、お母様の前でも食べられる経験を積んで行く、ということを狙います。
もし園が協力してくれるのであれば、園でお母様の前で食べられたとき、お母様は(できれば先生も一緒に)食べられたことを褒め(強化)しましょう
食べた後に自由時間があるのであれば、可能であれば例えば園庭に出たとき「これも1口食べてみて」と先生がいないシチュエーションで園庭で一口、ターゲットを食べる
迎えに行ったとき門の前で一口、ターゲットを食べる。食べられたことを褒め(強化)る
帰路の途中、一口、ターゲットを食べる。食べられたことを褒め(強化)る
玄関で一口、ターゲットを食べる。食べられたことを褒め(強化)る
そして食べられなかったリビングで帰ってから一口、ターゲットを食べる。食べられたことを褒め(強化)る
最終的に夕食時にリビングでターゲットを食べさせることを達成したのであれば、夕食までの間にリビングで一口、ターゲットを食べる。食べられたことを褒め(強化)る
と徐々に最終的に達成したいところまで馴染ませて行けば、もともと食べることができなかった家でターゲットを食べることが可能になる可能性がありそうでしょう?
以上のように上手くいけば良いのですが、
悪い方へ転んだ場合は、もしかするとお母様が教室に来たことで、園でも食べられなくなる、ということが生じるかもしれません。
この場合は、園でお母様がいるシチュエーションでも食べられることを狙って介入しても良いでしょう。
例えば昼食時間、食べる直前までお母様が教室にいて、食べる前にお母様が教室から退室します
1口食べたあとなどにお母様が入室していて先生とお子様を褒め、また退室する
そして1口食べたあとなどにお母様が入室していて先生とお子様を褒める
だんだんと馴染んできた段階で、お母様が退室せずにドアの前にまだ居るタイミングで先生がお子様に一口食べるように促し食べることができたら、お母様と先生が褒める
だんだんとお母様がとなりにいても食べることができるようになって行く
などの介入です。
他にも「もしかしたら周りにお友達がいれば食べるかもしれない」とすれば、家にお友達を招いて食事をして様子を見てみても良いでしょう。
その場合の手続きはここまでのものを参考にしてもらえると良いと思います。
「食べ終わったあと何をするという時間規則は特になく、自由時間である。また特に全て食べなくとも遊びに行ける経験もしているし、食べている途中であっても離席を許している」とすれば、
シンプルに「食べてから遊ぼう」と伝えると良いかもしれません。
但しこの場合は、お子様からみれば今まで普通に手に入っていた活動(強化子)が、抵抗感のある課題(家庭での食事)を達成しないと手に入らない、
というように見え強く抵抗する可能性があるので、少し気持ちを整えてからおっこなうことが賢明です。
「(ABA自閉症療育の基礎77)問題行動が発展し悪化するプロセスー消去バーストとシェイピング(https://en-tomo.com/2021/02/11/aba-problem-behavior/)」は、
消去バーストをシェイピングしてしまうことで問題行動が悪化する経過について書いたページですが、同じようなことが生じてしまう可能性があります。
次は「特定のお皿に乗っているときは食べることがある」場合について書いて行きましょう。
偏食指導ー特定のお皿に乗っているときは食べることがある場合の手続き
特定のお皿に乗っているときは食べることがある場合ですが、このケースのお子様の場合は例えば1口分目だけ普段とは違うお皿に移して食べるように促し、
食べられたときに強化し、食べられたあとは普段と同じ食器で食べることを保証してあげる
スムースに行けそうであれば、食事の途中にも1口分目だけ普段とは違うお皿に移して食べるように促し食べられたときに強化する
などの介入方法が考えられるでしょう。
次の日(もしくは次の食事機会)は2口分目だけ普段とは違うお皿に移して食べるように促し、食べられたときに強化し、
食べられたあとは普段と同じ食器で食べることを保証してあげる
スムースに行けそうであれば、食事の途中にも2口分目だけ普段とは違うお皿に移して食べるように促し食べられたときに強化する
と徐々に食事中に他の食器でも食べて強化されたという経験を積ませて行くことで介入が上手く行くかもしれません。
このケースの特記点としては、ここまでご紹介してきたお子様でもそうですが、特に「特定のお皿に乗っているときは食べることがある」お子様の場合に試してみて欲しいことがあります。
ブログ記事を読みながら思い出して欲しいのですが、例えば普段リビングでお子様が食事をするとき、席が固定化されていないでしょうか?
いつもお母様も座る位置が同じで、お子様も座る位置が同じ、ということはありませんか?
ここは私の経験談なのですが、食器にこだわりがあるお子様の場合、
食事中の座席の位置や食器の並べ方などにもこだわりを持っているお子様が多いように思います
一度、食事のとき、お子様に「今日はこっちに座って」と言って席を変えるよう促してみてください。
もしかすると強い抵抗を示すかもしれません。
私もいつも食べてる席があって、誰かに「今日はこっちで食え」と指示されたとすれば「え?なんで?」と聞くと思いますし抵抗感を持つことは普通かもしれません。
しかし、泣いたり、身体を固めて移動しない程の強い抵抗は示さないでしょう。
このようなことが見られるお子様の場合は特に「ON /OFF」がはっきりしているというか、少量であっても「別皿は別皿」という強い意志を示すことがあります。
もし少量から始めることで食べることを狙うことが難しい場合は、次のブログページで書く「どのようなシチュエーションでも食べられない場合の偏食指導」の手続きを適用することも良いと思いますので、
特定のお皿に乗っているときは食べることがある場合の手続きで上でご紹介した手続きが難しい場合はご検討ください。
次は「特定の形で出した場合は食べないが、例えばカレーの中に入れると食べる」場合について書いて行きましょう。
偏食指導ー特定の形で出した場合は食べないが、例えばカレーの中に入れると食べる場合の手続き
これまでの経験から、このような状況は多くのご家庭が持っているお悩みのように感じます。
特に偏食に問題ありと感じていないご家庭でも、このような工夫を行っているご家庭は多く、
特に「それで食べてくれているのだから別に大丈夫」と感じているご家庭もあります。
そのため特に困っていないのであれば特に介入をしなくても良いかもしれません。
特に介入しなくても良いかもしれないという理由ですが、
本章、次のブログページでも書いていますがお子様の身体が大きくなって行って小学校2年生くらいになると不思議と食べられる食べ物が増えて行くように思います。
そのため例えばあなたのお子様が既に年長さんくらいであった場合は時期を待っても良い、と個人的に思うケースです。
とは言え、介入をしたいという人もいるでしょうし、この場合はどのように介入をして行けば良いのかについて書いて行きましょう
例えば、カレーの中に入れると食べられる場合は食べられるものの、特定の形では食べられない食材例として「じゃがいも」を考えてみてください。
これは「にんじん」でも「なす」でも手続きは同じです。
現状、食べることができているカレーに溶かしたじゃがいもとは、大人が目で見てもどこにあるかわからないドロドロのものだったとしましょう。
しかし特定の形をしたじゃがいもは食べられない、という現状であり、その特定の形をしたじゃがいもは「2センチ角」くらいのサイズだったとします。
最終的にお母様がフォークに刺して2口くらいで食べ切る、4センチ角の蒸しじゃがいもも食べて欲しいと思っていました。
このような目標があるとき、1人でフォークを使って4センチ角の蒸しじゃがいもを食べられることを目指した介入プランをご紹介しましょう。
また「カレーに入ったじゃがいも」と「蒸しじゃがいも」は味が違いますので、もし「蒸しじゃがいもをどうしても食べて欲しいんだ!」ということでしたら、
本章、次のブログページで書く「どのようなシチュエーションでも食べられない場合の偏食指導」の手続きを最初から「蒸しじゃがいも」に対して適用することも良いと思います
今回、本ブログページ内でご紹介する介入は「カレーに入ったじゃがいも」と「蒸しじゃがいも」両方を食べられるような介入計画です。
ターゲットを以下のようにレベル分けし、低いレベルのところから高い数字のレベルを目指して行くこととしましょう。
レベルを上げるタイミングはRobert L. Koegel他(2012) とTonya Davis他 (2017) の研究手続きを参考に、
ほとんど抵抗が無く、3回連続できたときに次のレベルに進むとします。
レベル1・・・既にできること、大人が見ても目視できないカレーに入ったドロドロのじゃがいも
レベル2・・・大人が見て目視できるカレーに入った5ミリ角の溶けたじゃがいも
レベル3・・・大人が見て目視できるカレーに入った1センチ角の溶けたじゃがいも
レベル4・・・大人が見て目視できるカレーに入った2センチ角の溶けたじゃがいも
レベル5・・・大人が見て目視できるカレーに入った5ミリ角の溶けていないじゃがいも
レベル6・・・大人が見て目視できるカレーに入った1センチ角の溶けていないじゃがいも
レベル7・・・大人が見て目視できるカレーに入った2センチ角の溶けていないじゃがいも
レベル8・・・別皿に置かれたカレーのかかった5ミリ角の溶けていない蒸しじゃがいも
レベル9・・・別皿に置かれたカレーのかかった1センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも
レベル9・・・別皿に置かれたカレーのかかった2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも
レベル10・・別皿に置かれたカレーが少ししかかかっていない2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも
レベル11・・別皿に置かれた2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも、横にはディップするカレーが添えられている。カレーをつけて食べることを許可する
レベル12・・別皿に置かれた2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも、横にはディップするカレーが添えられているが、カレーをつけて食べることはカレーをつける前に1口そのまま蒸しじゃがいもを舐めたのちに許可する
レベル13・・別皿に置かれた2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも、横にはディップするカレーが添えられているが、カレーをつけて食べることはカレーをつける前に1口そのまま蒸しじゃがいも噛んだのちに許可する。噛んだ蒸しじゃがいもは吐き出し、カレーにディップして食べて良いものとする
レベル14・・別皿に置かれた2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも、横にはディップするカレーが添えられているが、カレーにディップせず食べることを求める
レベル15・・別皿に置かれた2センチ角の溶けていない蒸しじゃがいも
以上のようにレベルアップして行くことが考えられます。
※一応、結構細かめの設定を例として書きましたが、レベルをどれくらい細かく分けて実施するかはお子様によって調整が必要です
そして、どの段階のターゲットレベルでも達成ができたとき、強化子を適切に提供することを意識してください。
以上、偏食指導の導入を考えるとき、ターゲットを食べられる別のシチュエーションがなある場合の指導法について書いてきました。
本ブログページでは、以下、
・ お父さんが一緒に食卓に座っているときは食べる
・ 幼稚園や保育園では食べる
・ 特定のお皿に乗っているときは食べることがある
・ 特定の形で出した場合は食べないが、例えばカレーの中に入れると食べる
の4つのシチュエーションについて考えてきましたが、本ブログの内容が皆様の参考になれば幸いです。
さいごに
本ブログページでは偏食指導の導入を考えるとき、ターゲットを食べられる別のシチュエーションがなある場合の指導法について書いてきました。
本章の次に書くブログページは「どのようなシチュエーションでも食べられない場合の偏食指導」の手続きです。
次のブログページで書いて行く手続きはほとんど1つ前のブログページでご紹介したRobert L. Koegel他(2012) とTonya Davis他 (2017) の研究手続きとほとんど同じですが、
私も偏食指導を行うときに良く使う手続きなのでもう少し詳しく解説を行って行きます。
今回のブログページも前回本章と同じテーマで自閉症児に対しての偏食指導について書いてきました。
次回の本章ブログページも偏食指導に対してのページとなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
・ 千葉県栄養士会 https://www.eiyou-chiba.or.jp/commons/shokuji-kou/generational/hensyoku/
・ Robert L. Koegel・Amber A. Bharoocha・Courtney B. Ribnick・Ryan C. Ribnick・Mario O. Bucio・Rosy M. Fredeen・Lynn Kern Koegel (2012) Using Individualized Reinforcers and Hierarchical Exposure to Increase Food Flexibility in Children with Autism Spectrum Disorders. Journal of Autism and Developmental Disorders. 42(8): 1574–1581
・ Tonya Davis・Madison Crandall・Laura Phipps・Regan Weston (2017)Using Shaping to Increase Foods Consumed by Children with Autism. Journal of Autism and Developmental Disorders. 47 : 2471–2479