ABA:応用行動分析24は『引っ越しで刺激的な体験ができるのはなぜか?「随伴性」、先行状況が与えるパワー』というタイトルで書いていきます
私のTwitterを見てくださっている人は知っているかもしれませんが、私は最近引っ越しをしました。
みなさまは引っ越しをしたことがありますか?
大学で地元を離れて一人暮らしをするため引っ越しをした、職場が変わって引っ越しをした、さまざまな理由があると思いますが家族を持つと親元を離れる人が多いと思います。
そのようなときに例えば住んでいる地域が変わって、別の地域に移住する。
今回、私の場合は「都内 → 都内」の引っ越しだったのですが、以前住んでいたところに電車で行こうとすると乗り換えも含めて大体1時間くらいかかります。
そのため今は前とほとんど別の地域に現在住んでいると言っても過言ではないでしょう。
またもともと私は東京都出身ではない(関東県出身でもない)ため、東京都に特に詳しいわけではなく、引っ越し先に具体的にどのような施設(スーパーや飲食店)があるのか、全くリサーチをしていなかったわけではないですが、
引っ越してみるまで「大体その地域のことは知っている」というレベルの知識もありませんでした。
私自身は引っ越しはするまでは非常に面倒だけれども、してみたら面白いことも多くあるので、そんなに嫌いではありません。
今までの人生で何度か引っ越しをしてきましたが今回、7回目の引っ越しとなりました。
多分ですが7回はそんなに少ない方ではないでしょう。
そんな私は7回目の引っ越しの今も、引っ越しに対して刺激を感じています。
ちなみに今回、意味なく気分で引っ越ししたわけではありません
現在の生活状況との折り合いを見て、引っ越しをする方が生活の質が向上するだろうという意図で引っ越しをしました
さて、タイトルにある「引っ越しで刺激的な体験ができる」ということが本当だとすれば、一体それはなぜなのでしょうか?
ABA的に解釈していきたいと思います。
引っ越しは生活の何を変える?随伴性とは何か?
歳をとって行くと「刺激が少なくなる」、「時間が早くすぎる」と言いますがそのようなマンネリを打開する1つの方法が引っ越しかもしれません
色々な方法があると思いますが引っ越しはその1つですね
本項目は「引っ越しは生活の何を変える?随伴性の変更」という項ですが、ABAには「随伴性(ずいはんせい)」という考え方があります。
本ブログページではこの「随伴性」から「なんで引っ越しは刺激的なの?」ということを考えていきましょう。
まず「随伴性とは?」ですが、
日本行動分析学会 (2019) によれば行動分析学(ABA)において随伴性は先行事象、反応、後続事象という3項の時間的な順序関係を意味しています。
ブログ内で検索窓に例えば三項随伴性と打てばこれまで書いてきたオペラント条件付けについての三項随伴性の基本理論にあたることができますが、本ブログページ内でも日本行動分析学会 (2019) の述べている「先行事象」「反応」「後続事象」について簡単に紹介していきましょう。
※ レスポンデント条件付けにも随伴性は存在します(参考 今田 寛・中島 定彦, 2003)が、一旦本ブログページではオペラント条件付けについて述べていきます
「先行事象」・・・行動が起こる前にある状況や出来事
「反 応」・・・自ら自発的に行う行動のこと
「後続事象」・・・行動が起こったあとに生じた状況や出来事
と考えてください。
基本的には「先行事象」の中で「反応」を行えば、少し変化があってその変化を「後続事象」と捉えることが多いです。
例えばあなたが今日ステーキハウスに行ってステーキを食べたとしましょう。
目の前にステーキが運ばれていました。あなたはそのステーキにナイフを入れて今から口の中にそのステーキを頬張ろうとしています。
上のピンク色の部分、ここまでのストーリーを「先行事象」として捉えた場合、 その後に続くステーキを口に含むことは「反応」になるでしょう。
「反応」ののちは、口の中にステーキの味・香り・感触が広がります。
このように、口に入れる前(先行事象)にはなかった状況や出来事が「反応」ののち手に入るステーキの感覚(後続事象)として現れるため基本的には「反応」によって反応の前後の状況に変化が生じることが多いです。
上のピンク色でマーカーを引いた部分、「ここまでのストーリーを「先行事象」として捉えた場合」ですが、
上の例ではステーキにナイフを入れて今から口にステーキを頬張ろうとするときを「先行事象」と捉えています。
しかし例えば、
まだ切れていないステーキが目の前にある(先行事象)、ステーキにナイフを入れる(反応)、口に頬張れるサイズのステーキの大きさになり口に頬張ろうとする(後続事象)として随伴性を捉えることも可能でしょう。
この場合このときの「後続事象:口に頬張れるサイズのステーキの大きさになる」は実は、ある反応の後続事象であるとともに、上で例に書いてきた「そのステーキにナイフを入れて今から口の中にそのステーキを頬張ろうとしています」という「先行事象」であることもポイントです。
下にイラストを書きましたがある【結果事象】は同時にある【先行事象】にもなります。
イラストでは右下の緑色【結果事象】は実は左上の青色【先行事象】と同じものです。
このように行動は連鎖し連続して続いていることは覚えておきましょう。
※ 行動の連鎖化について書いたページは「(ABA自閉症療育の基礎59)オペラント条件付けー行動の連鎖化(刺激ー反応連鎖)(https://en-tomo.com/2020/11/19/operant-conditioning-behavior-chain/)」を参照
引っ越しは生活の何を変える?「先行事象」とは?
さて上記の中で得に今回キーワードとしたいのは『「先行事象」・・・行動が起こる前にある状況や出来事』です。
随伴性全体も大切なのですが、私自身は引っ越しにおいてはこの先行事象の恩恵を大きく受けて刺激的な毎日を過ごすことが可能になっている要因かと考えています。
例えばあなたが旦那様にお願いするときは、「ちょっと待ってて」とう言い方をするかもしれませんが、
相手が学校長となるとどうでしょうか?
あら!?校長先生!!
「ちょっと待ってて」とは言わず、「少し待っていていただけますか?」などの言い方に変わりませんか?
これはなぜでしょう?
一般的には「人によって態度が変わるのは普通でしょ?」という答えになるかもしれませんが、ABAの理論で説明をすればこれまで書いてきた「先行事象(旦那様と学校長)」が違うからです。
上の例は「人」という先行事象が違いました。
では「場所」はどうでしょうか?
例えばあなたが近所のコンビニにお買い物に行くときは、スウェットやジャージで行くかもしれませんが、
行く場所がホテルのレストランとなるとどうでしょうか?
スウェットやジャージで行かず、少しフォーマルな服装に変わりませんか?
上の例は「場所」という先行事象が違いました。
では「時間」はどうでしょうか?
例えばあなたが帰宅して夜過ごすときは、ノーメイクかもしれませんが、
朝起きて1日が始まる場合となるとどうでしょうか?
もちろん外出する予定があるかどうかにもよるかもしれませんがメイクをしないでしょうか?
このように「先行事象」と一言で言っても行動を変える次元(例えば例で出してきたように人や場所や時間)はさまざまである、ということは面白いですね
他の次元もたくさんあります。
普段通っている帰り道、嗅いだことのない良い匂いが漂ってきたらそれが「先行事象」となっていつもと違うルートで帰ることになるかもしれません。
このように「臭い」というものも「先行事象」の次元です。
さてでは以上の内容をまとめて本ブログページテーマの「引っ越しで刺激的な体験ができるのはなぜか?」を解説していきましょう。
引っ越しで刺激的な体験ができるのはなぜか?「先行事象」が大きな要因
例えば私は以前の家に今回は7年間住んでいたのですが、私のその土地での行動パターンはある程度固まってしまっていました。
7年も住んでいればお気に入りの店も決まっていて、また日々買い物するスーパーのルーティンもある程度予測が立ちます。
大体1月のうちのランチは1回はあそこで食べるとか、この場所でコーヒーを飲むとか。
Twitterを見てくださっている人は知っているかもしれませんが私は結構自炊をするのですが、
例えば「大葉はこのスーパーで買う」、「豚肉はここ」、「ステーキ肉はあそこ」、「アジはここで、サーモンはこっち、タコはあこで、マグロはあっち」など
ルーティンが決まっていました
食材で言えば実際に食べてみて好みのものを揃えていますので満足できます。
でも「満足」と「刺激的」とは、ちょっと違いますよね?
私が思う違いとは「刺激的」とは新しい発見であり、気づきです。
少し満足とは違います。
仮に「刺激的」に毒があるとすれば、その刺激的を求めたときに前の状況には簡単に戻れない可能性があることでしょう
例えば私の場合は今すぐに前の場所に引っ越しをし直すということは難しいです
「満足すれば幸せ」という公式があるとすれば成り立ちそうな気がします。
「刺激的な毎日は幸せ」も公式としてありそうな気もしますが、「満足」よりも不安定な気もします。
多分、その不安定さは以前の状態に戻れないかもしれないという部分から来ているのでしょう。
さて、凝り固まった行動パターン、ルーティンはどのように変えれば良いのでしょうか?
上で書いたステーキハウスの例のように私たちの行動は連鎖して(連続して)続いているのですが、引っ越しのように新しい先行事象に置かれると、そこから新しい連鎖が生まれます。
行動の前にある先行事象が変化すれば、簡単にそれだけで行動は変わり、凝り固まった行動パターン、ルーティンが崩れるのです。
もしあなたが刺激的な毎日を求めるとすれば「先行事象」を変えてみてはいかがでしょうか?
例えば引っ越しをするという先行事象の変更があると具体的にどういったことが起こるでしょう?
わざわざ以前住んでいた土地まで(私の場合は1時間と電車運賃をかけて)日々の食材をスーパーに買いに行くことはしません。
新しい土地のスーパーに買い物に行きます。
今まで買い物をしたことがない店で買い物をすることが生活の中に新しく組み込まれる。
すると、今までなかった商品があったりするのです。
もしそれが以前私が好きだったものに近かったり、目新しいものだったりすると、その新しい商品(刺激)を購入します。
するとそのまま行動は連鎖して新しい味に出会うことができるのです。
これは飲食店でも同じで新しい発見と出会います。
食べ物以外にも他にもこれは景色、住んでいる人の感じ、街の香り、睡眠時間の変化(必要、例えば仕事に行くまでの所要時間の変化)、家のグレード(例えば以前は1口コンロだったけど今回の引っ越し先では2口コンロとなりました)、街の明るさなど、
さまざまな以前との違い(先行状況の違い)を私に与えてくれるのです。
「状況が変わって、ガラッと景色が変わった」などの言葉がありますが、文字通り状況が変わると見える景色が変わります
するとそれに伴って行動が変わり、行動が変わることで得られる結果が変わり、そこで感じる・考えることに変化が訪れるでしょう
私たちはそのような普段触れていない結果に触れたとき「刺激的だな」と思い、その刺激が以前よりも魅力的であった場合に「満足」を感じるのだと思います。
「満足」とは私が思うにとても幅広い概念で、得るためのルートが他にもたくさんあると思いますが、今回ブログで書いてきたような「新規の刺激に触れて、新しい魅力に出会う」ということも満足を得る1つの方法でしょう。
新しい魅力に出会うためには行動を変えなければいけません。
もちろん行動を変えることを嫌う人もいますが、私は行動を変えることは結構好きだったりします。
行動を変えるときの簡単なやり方は?
ここまで書いてきた通り、今回の私の引っ越しのように「状況が変わって、ガラッと景色が変える」、つまり「先行状況」を取っ替えてしまうのは1つの方法でしょう。
面倒くさいし、金銭的にもコストはかかりますが実行力があれば現実可能な方法だと思います。
と、ここまで「引っ越し」「刺激的」「ABA」というキーワードで考察をしてきましたが、このように日々の生活の中にある引っ越しなどの何気ない生活の変化をABAで解釈をしてみるということは私にとってとても楽しい時間でした。
さいごに
みんなが行う生活パターンをABAで分析するということをやってみましたが楽しかったー
今回は「刺激的な体験ができる」という内容で引っ越しをテーマとしましたが、他にも先行事象を変えるいろいろな方法があるでしょう。
一番簡単なのは「普段好みでないことを敢えてやってみる」というチャレンジだと思います。
特に「普段好みでないこと」はあなたのよく使う行動レパートリーに組み込まれていない先行事象であることが多いため、自分でも意外な反応(行動)を起こすことになり、結果的に今まで出会うことのなかった結果(体験)をもたらしてくれるでしょう。
びっくり箱を開けるような感覚で面白いと思います。
例えそれがやってみた結果「やっぱり好みじゃなかった」という結果であったときでさえ、少しの満足感を覚えるかもしれません。
ここら辺は性格かなと思いますが、
私はそういった「やっぱり好みじゃなかった」という結果であったときでも「やってみたからわかった」、「やってみて良かった」と考えることが多いです
例えば私は大人になってから大嫌いなジェットコースターに乗ることがありました。
乗った理由は付き合っていた彼女が絶叫マシーンが好きだったので、同席しなければいけなかったというものなのですが、そのとき得た発見は非常に面白かったです。
私は子どものときに「バイキング」という船が前後に揺れるタイプの絶叫マシーンに乗って、飛んでいって死んでしまうのではないかという恐怖を感じ、そこから絶叫マシーンに対しては恐怖が賦活されるようになり、回避反応が出るようになりました。
私は子どもながらに遊園地が嫌いになり、中学校のときの遠足でUSJに行ったときも頑張ってジュラシックパークに乗りましたが正直乗りたくなかったという思い出があります。
ジュラシックパークは乗ってみても怖かっただけであまり楽しくありませんでした。
周りの友達はめっちゃ楽しそうにしていたのを覚えています。
そのようなジュラシックパークから時代は過ぎ、大きくなって付き合っていた彼女が絶叫マシーンが好きだったため、場をしらけさせるのも申し訳ないので絶叫マシーンに一緒に乗るというイベントがやってきました。
当時心理学を知っていた私は全力で自分の不安を抑え込むことに尽力しました。
例えば私にとってジェットコースターは「恐怖」を賦活させます。
「恐怖」は私にとってはネガティブな反応です。
実はネガティブな反応は同時にポジティブな反応を生起させれば拮抗し減少することを知っていました。
そのため私は甘いガム(甘さというポジティブな感情を生起させる物質)を噛みながらジェットコースターに乗りました。
加えてアトラクションの順番も意識して1つ目のアトラクション、2つ目のアトラクション、3つ目のアトラクション(全部絶叫)は自身の嫌いな浮遊感が少ないであろうものに段階的にスモールステップで経験できるよう乗るアトラクションを順位付けもしました。
最後に心の持ち用としては「目を開けて乗る、恐怖が出てきても俯瞰的に観察し、気持ちの中で逃げない」と、新しい刺激(強化になりそうなもの)を発見できる状態で乗りました。
これは短期的には恐怖を大きく感じるものの順化を促進し、結果的に最速で恐怖を鎮めてくれることを知っていたからです。
ここまで対策をしてデートが終わったとき、その日の終わりには「絶叫マシーン」に少し楽しさを覚えていました。
少し克服でき、絶叫マシーンに正の強化(楽しさ)を感じることができたのですね。
※ 順化は時間が経つと元に戻るためまた次回例えば半年空けてから行くと恐怖は賦活されるんですけどね。でもそれでもこの日の経験をしていないとしたでは恐怖の度合いは違います
私はこの日、普段から自分が避けていたり、興味がなかったりするだけで、知らないだけで実は世界には魅力的なものが溢れているんだろうなと思いました。
私が思うのは特に自分が普段避けていたり、興味がなかったりするけど多くの人間を魅了している活動はそうだと思います。
ジェットコースターでの発見は彼女の行動パターン(彼女は絶叫マシーンに乗るという行動パターンを持っていたが、私は持っていなかった)に私自身の随伴性を乗せ先行事象が変化し、新しい行動パターンが生まれたからです。
それまで私は遊園地が嫌いだった私が今は少し好きになりました。
今は遊園地については少しポジティブな感情を持っています。
普段自分ではやらないことをやったからこそ気づけた発見ですね。
そういう自分だけではコントロールすることがなかなか難しい随伴性(行動パターン)を外部(環境側)の力でこじ開けてくれる「先行事象」のパワー。
「環境を変えると自分が変わる」と言いますが、
ABA的に解釈すると本ブログページで書いてきた内容のような説明が可能かもしれません
少し意識することで今よりも人生が有意義になるかも?
さぁ、私もまだ引っ越してそんなに時間も経っていません!
まだまだ引っ越しによって生じる新しい刺激の恩恵を受けながら過ごせる期間です!!
せっかくなので楽しみながらこの新しい土地でいろいろ発見をしながら生活していきたいと思います!!!
【参考文献】
・ 今田 寛・中島 定彦 (2003) 学習心理学における古典的条件づけの理論 パヴロフから連合学習研究の最先端 培風館
・ 日本行動分析学会 (2019) 行動分析学辞典 丸善出版