ABA:応用行動分析22は『学齢期・幼児期自閉症児に勉強前・中の適切な「拒否」を教える・自論』というタイトルで書いていきましょう
今回「幼児期」「学齢期」と書かせていただいたのは、あまりお子様が大きくなりすぎてからだと本ブログページの内容と合わないケースも多いかなと思ったからです
さて、あなたが「勉強しようね」とお子様に伝えたとき、お子様が「いやだ」「やらない」と言ってきたりまた勉強中に課題を1問だけやって「おしまい」と伝えてくると、困りますね?
あなたが困る理由はお子様に「勉強をしっかりやって欲しいから」だと思います。
「当たり前だろ」と思うかもしれませんが、例えば以下のことを想像してみてください。
勉強・課題をやりたいと思ったとき、例えばあなたはそのために準備をします。
準備とは例えば「ご飯を作ったり、洗濯物を取り込んで17時から勉強しよう」と時間の目処を立て、少し前に教材を用意するなどスケジュール調整することです。
さぁ、日々の生活スケジュールを調節してこれから勉強・課題をやろう!
そして、いざ17時になってあなたは準備万端、満を持して「お勉強しよう」と言ったタイミングでお子様の拒否が出たら?
あなたが「お勉強しよう」と言ったとき、上のイラストのようにお子様は「いやだ」と言うかもしれません。
上の状況はあまり望ましくないと感じるでしょう。
ちゃんと準備もして「あなたのために」時間を用意したのにその計画が泡に溶けてしまったように感じるかもしれません。
このような場合、
もちろん勉強をさせないと、という気持ちも先行しますし、仮に「少しでもやろう」と事前に約束をしていた場合などは、「あれ?さっきお約束したよね」などお子様との交渉がスタートします。
しかし交渉は難航するでしょう
お話できるお子様だったら「あとで」と引き伸ばしの交渉を持ちかけてくるかもしれませんし、「もうやった」など明らかな嘘をついてお勉強の状況を回避しようとするかもしれません。
また、お話が上手くないお子様の場合は、課題の教材が目に入った途端に泣き出してあなたを困らせるかもしれません。
そしてもしかしたら、あなたは「お前のために言っとんねん!」とカチンとくるかもしれません。
上のような状況をどのように解決していくか?ということを今回のコラムでは書いていきますが今回はタイトルにあるよう自論ですのでそういった考え方もあるな、
という感じでお読みいただければ幸いです。
では、以下見ていきましょう。
お子様がお勉強前・中に嫌がる理由を考えよう
ABA(応用行動分析)では行動を1つのクラスとして見ます。
これは「反応クラス」や「行動の機能」と呼ばれる内容なのですが、
「反応クラス」については「(ABA自閉症療育の基礎91)刺激クラスと反応クラスの定義、刺激クラスと反応クラスをABA自閉症療育に活かす(https://en-tomo.com/2021/07/23/aba-stimulus-class-response-class/)」
行動の機能については今後「機能分析」という内容を書いていく際にご紹介させてください。
「反応クラス」や「行動の機能」はほぼ同義語だと思ってもらって大丈夫なのですが、ブログ内で既にご紹介した「反応クラス」について、
日本行動分析学会 (2019) は行動分析学(ABAのこと)でいう行動とは厳密には反応クラスのことであると述べ、個々の反応の事例は厳密にいうと互いに異なっている。そこで、共通の特性をもつ反応の事例を1つの集合体、すなわちクラスとして定義すると述べました。
ちょっと上の定義は難しいと思うので、
簡単に「反応クラス」とは、同じ結果を得ることができる行動をまとめることを反応クラスと思ってもらって大丈夫かと思います。
「お勉強をしよう」とあなたが言ったときにお子様から出てくるさまざまな行動、
・ 「いやだ」、「やらない」という拒否
・ 「あとで」という交渉
・ 「もうやった」という嘘
・ どっかに走って逃げるなどのその場からの逃避
・ 泣く、攻撃してくる、自分を傷つける、物を投げるなどの問題行動
・ 教材を机から叩き落とす
これらどのパターンであっても全てがお勉強から逃れるという目的(同じ結果)を持つ行動であったとすれば?
どのようにこれらの行動を捉えれば良いでしょうか。
またこれらは珍しい(あなたのお子様に限った)行動なのでしょうか?
まず珍しいかどうかですが例えば、
Brian A. Iwata・Gary M. Pace・Michael F. Dorsey・Jennifer R. Zarcone・ Timothy R. Vollmer・Richard G. Smith・Teresa A. Rodgers・Dorothea C. Lerman・Bridget A. Shore・Jodi L. Mazaleski, Han-Leong Goh・Glynnis Edwards Cowdery・Michael J. Kalsher・Kay C. Mccosh・Kimberly D. Willis (1994) が152人の自傷行為を行う人に対して自傷行為の意味を調べた研究があります。
Brian A. Iwata他 (1994)の研究では結果「ネガティブな事象からの回避(escape)が58例(38.1パーセント)」で自傷行為を行う理由としては一番多かったという結果となりました。
上の研究は自傷行為の研究ですが、多くの人がネガティブな事象からの回避によって自傷行為を起こしていた、という結果から考察できることは、
あなたのお子様が「お勉強」というネガティブな事象から回避するために上で示したオレンジ色の行動を取ったとしても変ではないということです。
お子様がお勉強しようの呼びかけに示す行動の目的
あなたはお勉強に取り組んで欲しい、だからお子様に「いやだ」、「あとで」など言わないで欲しい、
でもかといって不適切な「うそ」や「逃走」、「攻撃」などもやめて欲しいと思った場合、
上のような行動をどのように捉えれば良いのでしょうか?
まず前項でご紹介したようにこれらの行動群は基本的には「お勉強から逃れる」為に行っている可能性が非常に高い、と考えることが大切です。
「いやまぁ、それは、そうでしょ。それは私もわかっているんだ」と思うかもしれませんが、
例えばお子様が「お腹が痛いから」や「気分が悪いから」、「眠い」など行ってきたら「うーん、なら仕方ないかぁ・・・」と思うでしょう?
もちろん本当に体調が優れないこともあるでしょうから、全てのケースで「お勉強から逃れる為に行っている」とまでは言いませんが、もし体調が優れないなら、
毎回、勉強するって言ったタイミングでそんな都合良く体調悪なるか?
と考えることがあったり、色々なお子様の行動が起こり得ます。
色々なことが起こってくるので私は適切な拒否は教えた方が良いと思うのです。
さて、ここからはどのようにしてお勉強に対しての適切な拒否を示させるかの介入設計を簡単に解説をし、
その後、適切な拒否を教えるタイミングについて書いて行きましょう。
お勉強に対しての適切な拒否を示させるかの介入設計
ざっくりと前提条件を3つに分けます。
条件1:ほとんど発語がなく、こちらの言っている言葉の理解も拙いケース
条件2:発語はいくつか単語で話すことができて、こちらの言っている言葉も少し理解できるケース
条件3:言葉を話すことができて、こちらが言っている言葉もほとんど理解できるケース
以上の3条件に対して、それぞれ介入設計を簡単にご紹介していきます。
ほとんど発語がなく、こちらの言っている言葉の理解も拙いケース
このケースではお勉強に対して拒否を見せる場合は「泣く」、「その場からの逃走」、「自傷」、「物を投げる」、「攻撃」など行動的な形で表現されることが多くなります。
お子様自らが言葉を話すことが難しいこともあってこのような表現となるのですが、表現が派手なため親御様も焦ってしまうことが多いでしょう。
例えば「物を投げる」という行動によって「TVの画面が前に割れたことがある」などの過去を持っていたら特に焦りが賦活されます。
この場合はまずターゲット行動ですが、
(a) タッチ
(b) 「あ」などの簡単な音声
(c) お子様が模倣できる場合はお子様が模倣できる動き
上の(a)ー(c)の中から選択しましょう。
(a)ー(c)の選択基準ですが、
もし「音声模倣」が可能なのであれば「(b) 「あ」などの簡単な音声」を狙う
もし「動作模倣」が可能なのであれば「お子様が模倣できる場合はお子様が模倣できる動き」を狙う。例えば可能であれば首を横に振るとか、バイバイの動きとか、拒否してそうな動作を選択する
「音声模倣」「動作模倣」が難しい場合は「(a) タッチ」を狙う
上の選択基準を採用します。
※ 但し例えばお子様によって(b)は可能なものの負荷が強すぎる場合は(a)や(c)を選択するのも有り
介入方法は、
(b)の場合は「音声プロンプト(音声模倣)」+「強化(課題の終了)」
(c)の場合は「モデルプロンプト(動作模倣)」+「強化(課題の終了)」
(a)の場合は「身体誘導プロンプト(お子様の手を持って自分の手をタッチさせる)」+「強化(課題の終了)」
を行いお子様が徐々に自立してターゲット行動を行うことができてきたら、各「プロンプト」を「プロンプトフェイディング」していきましょう。
またお子様に対しては「お勉強の拒否」以外に並行で生活の中でマンドトレーニングなどを行っていらっしゃるかもしれません。
並行で行っているトレーニングのパフォーマンスの塩梅を見ながら、ターゲットスキルの設計を上げてシェイピングしていきます。
例えば「(b)「あ」などの簡単な音声」で課題終了としていたところを「あい(おわりの音に近づける)」と言ったら課題終了とする、などです。
以上が介入設計となります。
「プロンプト」や「プロンプトフェイディング」、「シェイピング」の意味がわからないと言った場合はサイト内で「サイト内検索」をしてみてください。
例えば以下のようなこれらを解説したページが出てきます。
※下のイラストはプロンプトとプロンプトフェイディング
発語はいくつか単語で話すことができて、こちらの言っている言葉も少し理解できるケース
このケースでもお勉強に対して拒否を見せる場合は「泣く」、「その場からの逃走」、「自傷」、「物を投げる」、「攻撃」など行動的な形で表現されることが多いでしょう。
また「いや」「あとで」など言葉で伝えてくる場合もあります。
しかしこのケースの場合は「ほとんど発語がなく、またこちらの言っている言葉の理解も拙いケース」と違って、
「1回やったらおしまいだから」や「できたらお菓子あげるよ」などの交渉が効く場合もあることが違いです。
この場合は上のような「お勉強を頑張ってくれる交渉条件」を探ることも1つの介入ルートとなりますが、私は拒否を先に教えることをお勧めします。
理由はまたのちに書いていきますが、この場合のターゲット行動は、
(a) 「いや」、「やらない」、「おしまい」、「だめ」など
お勉強を拒否するときに「こう言って欲しい」とあなたが思うスキルをターゲットスキルとします。
「ほとんど発語がなく、またこちらの言っている言葉の理解も拙いケース」と違って音声模倣ができますので、
介入方法は、
「音声プロンプト(音声模倣)」+「強化(課題の終了)」
が王道、文字が読める場合は、
「視覚プロンプト(ひらがなでキーワードを書いて見せ言わせる)」+「強化(課題の終了)」
も選考の余地あり、といったところです。
お子様が徐々に自立してターゲット行動を行うことができてきたら、各「プロンプト」を「プロンプトフェイディング」していきましょう。
言葉を話すことができて、こちらが言っている言葉もほとんど理解できるケース
このケースでもお勉強に対して拒否を見せる場合は「泣く」、「その場からの逃走」、「自傷」、「物を投げる」、「攻撃」など行動的な形で表現されることもあります。
また「いや」「あとで」など言葉で伝えてくる場合もあります。
他に「嘘」や「交渉」という高度なことを行ってくる場合もあるでしょう。
「発語はいくつか単語で話すことができて、こちらの言っている言葉も少し理解できるケース」と同じで「1回やったらおしまいだから」や「できたらお菓子あげるよ」などの交渉が聞く場合があります。
ターゲット行動は、
(a) 「いや」、「やらない」、「おしまい」、「だめ」など
お勉強を拒否するときに「こう言って欲しい」とあなたが思うスキルをターゲットスキルとします。
「発語はいくつか単語で話すことができて、こちらの言っている言葉も少し理解できるケース」との違いは言葉も流暢に話せますので、ターゲットスキルを、
(b) 「お勉強は嫌だなぁ」や「今はやりたくないなぁ」など複数の単語で構成する
ことも可能です。
「発語はいくつか単語で話すことができて、こちらの言っている言葉も少し理解できるケース」と同じで音声模倣ができますので、
介入方法は、
「音声プロンプト(音声模倣)」+「強化(課題の終了)」
が王道、文字が読める場合は、
「視覚プロンプト(ひらがなでキーワードを書いて見せ言わせる)」+「強化(課題の終了)」
も選考の余地あり、といったところです。
お子様が徐々に自立してターゲット行動を行うことができてきたら、各「プロンプト」を「プロンプトフェイディング」していきましょう。
また交渉の練習機会にすることもできます。
母:お勉強しよう
子:いやだ
母:なんで?
子:だって・・・
というように、すぐに「強化子(課題の終了)」を提供せず会話のラリーを続け、
「拒否の練習」と並行して交渉の練習を行うなどが可能です。
お子様も「強化子(課題の終了)」は欲しいので高いモチベーションを持って会話のラリーの中で学習を行ってくれるでしょう。
では最後に、このような「お勉強に対する拒否」のスキルを療育のどのタイミングで教えていくのが良いのか?
という自論を書いていきましょう。
「お勉強に対する拒否」のスキルを教えるタイミング
論文ではあまり「スキルを教えるタイミング」を焦点に書かれることは少ないと思います
ここから「お勉強に対する拒否スキル」を教えるタイミングを書いていきましょう
私個人としては療育を始めた結構初期のタイミングで教えるのが良いと考えています。
「お勉強に対する拒否のスキル」を教えるときの強化子は基本的には「お勉強をしない」という結果を提示する(例えば「じゃあ、いいよ」と言ってお勉強をしない)ことによって練習をするので、
この「お勉強に対する拒否のスキルを教えるタイミング」に付随する疑問は、
「いやだって言ったら勉強しなくて良いなら、うちの子、ずっといやだって言うよ?それじゃお勉強できないよ?」
もしくは
「お勉強以外でも色々な場面でいやだって言い出すよ?それは困る」
という2つの疑問しかないのではないか?と思います。
実際に私は以上のことを伝えたときに、上のような疑問しか聞いたことがありません。
ではどうやって調整をつけていくか?
気に食わないことをなんでもかんでも「いやだ」と言われて、そのお子様の意見を飲み続けることは非現実的で、また教育的でも有りません。
一旦まず現状を振り返ってみましょう。
現在、(もしかしたら勉強場面限定かもしれないが)拒否の意味を持つ行動が出ている。
但し、その行動は適切な物ではない(周囲に受け入れられる形ではない)。
このような場合困ってしまいませんか?
今、お勉強という状況を提示したときにすでに不適切な行動が出現してしまっているのだとすれば方向性は2つしかないと思います。
1つ目:適切に拒否ができることを練習する
2つ目:拒否が出ないようモチベーションを上げて課題に取り組ませる
この2つです。本ブログページのテーマは「1つ目:まずは適切に拒否ができることを練習する」の趣旨ページですが、
「2つ目:拒否が出ないようモチベーションを上げて課題に取り組ませる」は例えば、
「(ABA自閉症療育の基礎87)療育場面で選択機会を設けることで子どもの学習モチベーションを上げる:PRTエッセンス(https://en-tomo.com/2021/05/14/motivational-variables-such-as-choice/)」
でご紹介した「選択テクニック」を療育に取り入れるとか、「できたらお菓子食べよ」などの動機付け設定(先行子操作)を上手く取り入れる工夫が必要です。
お子様のモチベーションを高めてお勉強に一生懸命取り組ませる環境作りも威力的ですが、
私は「1つ目:まずは適切に拒否ができることを練習する」も最初から取り組むことを推奨(1つ目、2つ目を並行して行ってもOK)します。
理由ですが、上手く「2つ目:拒否が出ないようモチベーションを上げて課題に取り組ませる」ことが可能になったとしても、
お勉強場面の適切な拒否行動を学習できたわけではないからです。
だったら最初から適切な拒否を教えれば良いんじゃない?と思うのですがいかがでしょう?
例えば私は課題でわざと難しい問題を出して抵抗感が出るシチュエーションを作って「おしまい」や「いやだ」と言う練習を積極的に取り入れることがあります。
これは適切な拒否を教えるシチュエーションです。
例えば園の先生や教師はお子様に勉強を教えるとき、集団を管理しているため丁寧に選択機会を作ってモチベーションを上げてくれたり、終わったらお菓子などの特別扱いをしてくれる可能性は低いかもしれません。
だから園の先生や教師から見ても適切に見える「拒否」をいろいろなパターンで、集団に入る前に教えておく必要があると思います。
「適切な拒否」ができず集団の中で、例えば拒否を暴力で訴えたり、泣くことで訴えたりすることは適切と捉えられない場合が多いでしょう。
適切な拒否を教えてお子様が色々なことを拒否するようになったら?
さて以上までの内容では、
「いやだって言われて勉強しないなら、ずっといやだって言うよ?うちの子、それじゃお勉強できないよ?」
もしくは
「お勉強以外でもいやだって言い出すよ?それは困るよ」
という疑問の解決にはなっていません。
今からこの状況をどのように対応すれば良いか、書いていきます。
適切に拒否のスキルをGETしたあと、丁寧に療育を行うとすれば
「1回だけ課題を行ってもらって終了する(適切な拒否のスキルを受け入れる)」を練習していきます。
このとき、ポイントは1回やらせたあとの強化子をかなり強めにすること。
この1回の定義もお子様によって合わせる必要があります。
例えば無発語のお子様で「1回だけ」と言ってもこちらが言っていることの理解が難しくどうしても1回だけやらそうとしても抵抗感が強くて難しい場合は、以下のようにやりましょう。
例えばカード選択課題を行うときを想像してください。
イラストでは「赤、どれだ!?」と言っていますが、
・ 例えば3枚じゃなくて赤色1枚だけにする
・ お子様の手を持って赤色を触らせる
などで課題難易度を下げ、抵抗感が減った設定でとりあえず結果的に1回やらせます。
※このときの1回は『「赤、どれだ!?」と言ったあと赤を指さす』を1回としましょう
そのあと、例えばすぐにお菓子が口にポーンと放り込まれる、めっちゃ抱っこしてもらえる
という結果をお子様が受け取れば?
お子様から見た状況が変わる可能性があります。
このとき狙うのは、お子様から見て、
「あれ?お勉強やるのも悪くないかも?」という状況です。
もしかするとお子様は1回だけじゃなくて、数回お勉強をしてくれるかもしれませんよ。
言葉の理解があるお子様に対しては「お願い!1回だけやってくれたら・・・」、「このドリルの1問だけで良いよ」、「とりあえず鉛筆持つだけでいいよ」など交渉をする、
どうしても交渉が難しければ無発語のお子様に対しての手続きで大体なんとかなります。
丁寧にするとすれば「1回だけやらせて終了する」と上で書きましたがお子様によっては2−3回やることを狙っても良いですね。
このとき回数はあらかじめお子様に伝えず「お勉強するよ。でももういやって思ったら言ってね」と伝えておき、お子様が自発的に拒否のスキルを使用できやすくするようにします。
以上までの内容のように、少し長期的な期間を見てスキルを教えていってあげてくださいね
さいごに
以上、『学齢期・幼児期自閉症児に勉強前・中の適切な「拒否」を教える・自論』というタイトルで書いてきましたが、いかがだったでしょうか?
文中にも書きましたが、論文ではあまり「スキルを教えるタイミング」が焦点となり書かれていることは少ないと思います。
そのため「今は何を教えたら良いの?」と思ってしまうことは多いかもしれません。
本ブログページでは「適切な拒否」という「社会的スキル」を扱いました。
社会的スキルについてBiermanが書いた内容を改変した資料が手元にあります(佐藤 正二・佐藤 容子, 2006)。
佐藤 正二他 (2006) は社会的スキルについて、
「社会的参加」
・ 仲間と一緒に遊びや活動をする
・ 仲間に注目する
・ 仲間とのやりとりを楽しく感じる
・ やりとりを始めたり、遊びに仲間入りしたりする
「情緒的理解」
・ 相手の気持ちを正確に捉える
・ 自分の気持ちを適切に表す
・ 相手の気持ちに適切に反応する
「向社会的行動」
・ 協調して遊ぶ
・ 順番を守る
・ 相手を援助する
・ 人と分け与えをする
・ 相手に親切な気持ちを示す
「自己コントロール」
・ 過敏な反応を抑える
・ 欲求不満、不安、怒りに効果的に対処する
・ 目標を決め、それに向かって頑張る
「コミュニケーションスキル」
・ 適切に自己表現する
・ 相手のことを尊重して聴く
・ 質問する
・ 質問に答える
「フェアプレイスキル」
・ ルールに従う
・ スポーツマンシップを発揮する
「社会的問題解決スキル」
・ 問題を見つける
・ 解決策を考え出し、評価する
・ 実行計画を作り、実行する
・ 相手と交渉して、良いアイデアを持ち続ける
・ 対処法を評価したり、再考したりする
以上のようなスキルと紹介をしました。
佐藤 正二他 (2006) の著書は小学生向けのSSTについて書かれた本なので、
上に挙げたスキル群の中には、私自身は幼児では難しいと思うものも入っていますが、
ただ以上の内容は「何を教えたらいいのか?」と迷ったとき、ヒントにはなるでしょう。
佐藤 正二他 (2006) の著書には学生時代特にお世話になりました。
良い本ですよ。
本ブログページでは「適切な拒否」という「社会的スキル」について考察してきました。
「社会的スキル」とは何か?
「社会的スキル」をどの時期に教えて行くのか?
このようなことも考慮し、日々療育を行なっていきたいです。
以上、長くなりましたが読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
【参考文献】
・ Brian A. Iwata・Gary M. Pace・Michael F. Dorsey・Jennifer R. Zarcone・ Timothy R. Vollmer・Richard G. Smith・Teresa A. Rodgers・Dorothea C. Lerman・Bridget A. Shore・Jodi L. Mazaleski, Han-Leong Goh・Glynnis Edwards Cowdery・Michael J. Kalsher・Kay C. Mccosh・Kimberly D. Willis (1994) THE FUNCTIONS OF SELF-INJURIOUS BEHAVIOR: AN EXPERIMENTAL-EPIDEMIOLOGICAL ANALYSIS. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS. No2, 27, p 215-240s
・ 日本行動分析学会 (2019) 行動分析学辞典 丸善出版
・ 佐藤 正二・佐藤 容子 (2006) 学校におけるSST実践ガイド 子どもの大人スキル指導 金剛出版