本ブログページは心理学の教科書に定番で登場してくるバンデューラ「模倣研究」について書いていきたいと思います。
「オペラント条件付け」、「レスポンデント条件付け」、「強化」「罰」「消去」などはABA(応用行動分析学)で主に使用される用語ですが、
「模倣」はABA以外の心理学の領域でも扱われるABAの垣根を越えたもっともっと広い分野で扱われるものです。
本ブログページでは「模倣」の基礎として心理学の教科書でもよく扱われるアルバート・バンデューラの研究を見ていきます。
さいごにABA自閉症で「模倣」をどう捉えれば良いか私の考えについて簡単に少し書いていきましょう。
「さいごに」で見て行きますが、本ブログページではアルバート・バンデューラ「模倣研究」がメインとなります。
本ブログページはバンデューラの論文3本をまとめたブログページなのでかなり長編
本ブログページでは心理学の教科書で多く紹介されるアルバート・バンデューラが行なった「模倣研究」はどのようなものだったのかを見て行きます
現代でも参考になることが多くあるでしょう
そのため「模倣」をどのように「ABA自閉症療育」で捉えるかについては「さいごに」で簡単に触れてはいますが、主には次からのブログページで解説をさせてください。
本ブログページではアルバート・バンデューラの研究を3本ご紹介いたします。
親御様の「お子様に示す態度」について考え直す機会となるかもしれません。
- 1 アルバート・バンデューラが行なった「模倣研究」
- 1.1 バンデューラ他(1961)ー子どもは模倣をするのか?・手続き
- 1.2 バンデューラ他(1961)ー子どもは模倣をするのか?・結果
- 1.3 バンデューラ他(1961)ーモデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?・手続き
- 1.4 バンデューラ他(1961)ーモデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?・結果
- 1.5 バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?
- 1.6 バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?・手続き
- 1.7 バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?・結果
- 1.8 共有:
アルバート・バンデューラが行なった「模倣研究」
アルバート・バンデューラは1961年に2本の論文を刊行しています。
また1965年にも有名な論文を刊行しており、
よく心理学の教科書で書かれる「模倣」、「観察学習」、「モデリング」の内容はこの3本の研究(特にこのうちの2本)が引用されて書かれていることが多いです。
本ブログページではまず最初にAlbert Bandura・Aletha C. Huston (1961) 「Identification as a process of incidental learning1(私訳:偶発的学習プロセスとしての識別1)」という研究について見ていきましょう。
この次の研究からの2本が心理学において有名な研究なのですが、まずはそのベースとなったであろう研究を抑えて行きます。
バンデューラ他(1961)ー子どもは模倣をするのか?・手続き
Albert Bandura他 (1961)の研究では「子どもは実験者の行動を模倣するだろうか?」という仮説と「モデルと子どもとの関係性がその後の報酬の価値を高めるので模倣学習が促進されるだろうか?」という仮説を検証するため行われました。
研究に参加したのは48人(24人の男児と24人の女児)、46ヶ月から61ヶ月(平均53ヶ月)のお子様でした。
48人のうち40人をそれぞれ20人ずつの2群に分け、8人をコントロールグループとしました。
40人を20人へ2群に分けした分け方は「性別」、「依存行動」、「養育者」、「非養育者」の条件で無作為に細分化されています。
「依存行動」は助けや援助を求める、賞賛や承認を求める、身体的接触を求める、身体的接触を求める、他人への接近や一緒にいることを求める行動がスコア化されました。
研究では最初「養育条件」と「非養育条件」の関わをグループによって子どもに関わり分けます。
※以下、モデル役の実験者を「モデル」と記載
両条件どちらのグループでもモデル役の実験者が子どもを実験室に連れていき、「養育条件」と「非養育条件」に分けました。
以下「養育条件」と「非養育条件」を見て行きましょう。
・ 養育条件ではモデルは子どもの近くの床に座っており、子どもが助けを求めたり、注意を向けたりするとすぐに反応し常に温かく、やりがいのある交流を育みました
・ 一方、非養育条件ではモデルは子どもに床に置かれたおもちゃで遊ぶように指示したあと、部屋の奥にある机で事務作業をしました。この間モデルは子どもとの交流を一切受けません
以上のように「養育条件」と「非養育条件」にお子様を分け研究が始まります。
これが最初の実験手続きです。
次の実験手続きでは実験者が蝶番付きの蓋のついた同じ箱を2つ持って部屋に入ってきます。
実験者はモデルと被験者に実験者が箱の一つに絵のシールを隠すので、どの箱にそのシールが入っているかを当てるゲームをすると指示しました。
指示を聞いてモデルとお子様が部屋を出たあと実験者はシールを箱に隠します。
シールを箱に隠したのち実験者によって部屋に呼び戻されたモデルとお子様はシールを探す課題を行うのですが、モデルが先にシールを探すという手続きが行われました。
またそれぞれの箱の蓋には小さなゴム人形が付いていました。
上のイラストのように子どもは少し離れた箱を探しに行くことを指示されるのですが最初にモデルが箱を探しに行くので、子どもはモデルの行動を観察することができました。
モデルは例えばスタート地点で「さあ、行くぞ」と言い、シールの入った箱に向かって「マーチ、マーチ、マーチ」と言いながらゆっくりと行進したました。
そして箱の蓋についた小さなゴム人形を叩き落とし、「箱を開けて」と言いながらシールを1枚とって箱の後ろにある壁に貼り付ける、などのモデルを見せます。
上のイラストはモデルが先にシールを探したあと、お子様がシールを探すところを描いたものです。
実験手続きではモデルが箱を開けたあと一度モデルと子どもを部屋から出しその後呼び戻すことで、お子様から見て箱が再設置されたように見える状況が設定されました。
モデルの箱を開ける行動を見たのちにお子様が箱を開けることを行うというシンプルな実験条件ですが上記の手続きを行ったことでどのような結果となったのでしょうか?
それではこのような手続きを行なった結果について見ていきましょう。
バンデューラ他(1961)ー子どもは模倣をするのか?・結果
まずこの研究ではどのような行動が「模倣」と定義されたのかを説明します。
「模倣」は以下のような行動にカテゴリー分けされました。
Albert Bandura他 (1961) の研究で模倣行動は、
非攻撃行動として
・ マーチング(行進):例えば迂回したルートで箱の下に行く
・ 言語行動 :例えば「行進、行進」など口頭で言う
・ その他の模倣反応 :例えば箱の人形を別の箱に入れ替える
・ 特殊な言語行動 :適切な文脈だがモデルの言葉が正確に模倣されなかった場合
が定義されそして、
・ 攻撃行動 :例えば人形に向かっての攻撃
以上の行動にカテゴライズされました。
研究結果のデータを見れば「養育条件」と「非養育条件」で「マーチング」、「言語行動」、「その他の模倣反応」、「特殊な言語行動」において養育条件の方が模倣を促したことが分かるのですが、
特に注目したい結果として攻撃行動については「養育条件」と「非養育条件」において模倣する/しないにそこまで差がない(少し養育条件の方が模倣を促しましたが)ことがわかりました。
これはつまり恐ろしいことにデータが示す結果から、非養育的な態度で子育てを行った場合でも攻撃行動についてはお子様は模倣する可能性が高いという結果です。
Albert Bandura他 (1961)は考察でモデルと子どもの関係の質にかかわらず攻撃的なモデルを観察するだけで、子どもに模倣的な攻撃性を生じさせる十分な条件であることを示唆していると述べています。
この研究で示されたように攻撃行動は親御様とお子様の関係性の良し悪し関係なしに、お子様は模倣する確率が高い行動カテゴリーであることは知っておいても良いと思いました。
Albert Bandura他 (1961)の研究、研究前の仮説から考察をすれば、
・ 子どもは模倣をする
・ 「養育条件」の方が「非養育条件」の方が幅広い模倣が促されたので子どもとの良好な関係性が幅広い模倣を促す
以上の仮説が研究で証明されたため、項前半でご紹介したこの研究前に立てた仮説については本研究から実証されたと言って良いでしょう。
お子様はモデルの行動を模倣した(模倣することが確認された)、けれどもなぜか攻撃行動についてはなぜか関係の良好性なく模倣が確認されたという結果と言えます。
アルバート・バンデューラも「なんで攻撃行動だけ養育者との関係が良好でなくとも模倣が促進するの?」と思ったのかもしれません。
ここからご紹介する研究はそれがどんな条件で促進されるのかを確かめたように思いました。
次の項以降で同年1961年に発表されたAlbert Bandura・Dorothea Ross・Sheila A. Ross (1961) による「Transmission of Aggression Through Imitation of Aggressive Models(私訳:攻撃的モデルが模倣に与える攻撃性伝達)」をご紹介します。
以下、同じ年に発表されや論文で参考にした文献がわかりにくいため、本ブログページではこの研究について参考するときは「Albert Bandura他 (1961b)」と「b」をつけて表記しました。
今からこの「b」のついたものをご紹介していくのですが、Albert Bandura他 (1961b)の前にちょっとだけ「今までご紹介して来た”b”のついていないものとの比較解説」を挟ませてもらい、その後Albert Bandura他 (1961b)について見て行きましょう。
バンデューラ研究(1961b)その前にーモデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?
Albert Bandura他 (1961b)をご紹介していく前に少し前置きをさせてください。
Albert Bandura他 (1961b)の研究とAlbert Bandura他 (1961)の研究が違う点をまずご紹介します(同年、同じ名前が並ぶとややこしいですね・・・「b」が付いていないものはこれまで上で紹介して来た内容です)。
ここまでご紹介してきたAlbert Bandura他 (1961) の研究はお子様が模倣をするとき、お子様と同じ部屋にモデルが存在していました。
今からご紹介していくAlbert Bandura他 (1961b)の研究は「モデルの存在が子どもの前に無くとも、子どもは模倣をするのか?」を研究した内容となります。
また特に先程ご紹介したバンデューラの先行研究から「養育条件」「非養育条件」関係なく攻撃性の模倣が多く模倣された結果に注目し、
Albert Bandura他 (1961b)の研究では研究対象行動を「攻撃行動」と「非攻撃行動」に大きく2つに分け模倣行動の研究が行われました。
一旦ここまでのAlbert Bandura他 (1961 ”b”がついていない今までご紹介して来た内容だけ)を見て感じられたかもしれない疑問を書いておきます。
ここでの研究で分かったことから日常生活に生かすとすれば?
ここまでで分かったこととして、確かにお子様が攻撃行動を真似する確率が高いとここまで述べてきまた。
でもあなたは「別に私の前だけで攻撃が出るのであれば注意すれば良いじゃんね」と思ったかもしれません。
「私の前だけ」で模倣された攻撃行動が出現するとすれば全く怖くありません。
例えばあなたの攻撃行動モデルを観察したお子様が攻撃行動を行なったとしても、
それはやっちゃだめ
と不適切に行われた模倣行動に対し注意(ABAでいうところの「罰」を使用)し、行動修正をかけていくことでなんとかなる(攻撃行動を行わなくなる)だろうと思ったかもしれません。
不適切な行動が出たときにそれを注意して、不適切な行動を減らしていけば良いし大きな問題ではない。
私が読み手だった場合そのように考えると思います。
ただ自分の居ないところでも攻撃行動の模倣が出現するのであれば・・・?
直接あなたが「注意」する機会が無く、行動修正の機会が無くなってしまいます
でも、「あなたが居ないときにも模倣された攻撃行動が出現する」、こうなってきたら話は変わってくるでしょう。
自分の居ないところでもあなたが示したモデルからお子様の攻撃行動が促されるのか?
これが真か偽かは興味深いですね。
これが「真」であった場合には状況が全く変わってしまいます。
「自分の前」だけで注意(ABAの罰)を使用して「攻撃行動」を無くすことは実質不可能ということです。
以下このことを調べたAlbert Bandura他 (1961b)の研究を以下見ていきます。
ちなみに上で書いた本ブログページでご紹介する3本の論文のうち良く心理学の教科書で書かれる論文というのは、主にこれからご紹介する2本の論文です。
バンデューラ他(1961)ーモデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?・手続き
研究に参加したのは72人(36人の男児と36人の女児)、37ヶ月から69ヶ月(平均52ヶ月)のお子様でした。
お子様は6人ずつの8つの実験グループ(48人)と、24人のコントロールグループに分けられました。
実験グループの半数に攻撃的なモデル(以下攻撃モデル)、残りの半数には控えめで攻撃的でないモデル(以下、非攻撃モデル)を見せました。
男女2人の大人がモデルとなり、モデルとは別に1人実験者がいました。
以下実験グループをイラストにしましたのでご覧ください。
グループ分けされた子どもはその後、実験者によって部屋の隅に案内されました。
そこを「遊び場」として用意したプリントやシールを使って実験者はお子様に絵を描くモデルを見せます。
これは保育園で子どもたちに人気の活動(本研究はスタンフォード大学の保育園の園児を対象に行われています)でした。
その後、実験者はモデルを反対側の部屋の隅に案内しました。
モデルが案内された場所には小さなテーブルと椅子、ティンカートイセット、木槌、ボボ人形(以下ボボ人形はイラストで描いています)が置かれていました。
ここまでは全グループ同じ実験条件でしたが、ここから実験条件が分岐します。
攻撃モデル条件・・・・・は最初ティンカートイセットで遊んでいるのですが約1分後、ボボ人形に目を向け攻撃を加えました
パンチから始め馬乗りで上に座り鼻を何度も殴りました
そして木槌を使ってボボ人形の頭を殴り、最後にボボ人形を勢いよく空中に放り投げました
このモデルが3回繰り返され、またその間、言葉による2つの非攻撃的なコメント「He keeps coming back for more(何度も戻ってくる)」「He sure is a tough fella(タフだ)」が交互に繰り返されました
非攻撃モデル条件・・・・ではボボ人形を無視し、ティンカートイセットで遊び続けました
ポイントは上記2つの条件ではどちらとも子どもはモデルの行動を観察したり反応を学習したりする指示が出されていません。
また子どもが注意をそらすような課題(プリント・シールの活動)を与えられ、同時にモデルの行動の観察を保証されている条件であることもポイントでしょう。
そして子どもはモデルが行う攻撃的な行動をモデルと一緒には行うことができない(プリント・シール活動を行なっているので)ため、この空間内で発生した学習は純粋に観察的なものです。
上記の条件はどちらも10分間行われ、10分後実験者が部屋に入って子どもに別の部屋に行くことを伝えてモデルに別れを告げました。
そのあと実験者は子どもを別の実験室に連れていきます。
そこには戦闘機、ケーブルカー、カラフルな回転木馬、ワードローブや人形用の馬車、ベビーベッドがセットになった人形セットがありました。
実験者は子どもに「これは君が遊ぶものだよ」と説明します。
お子様が十分遊びに夢中になったタイミングで実験者は「このおもちゃは俺のものだ」「誰にも遊ばせない」「このおもちゃは他のお友達のためにとっておくことにした」と伝え、代わりにとなりの部屋にあるおもちゃで遊んで良いと伝えました。
※ 実験者が部屋にいる(勝手に帰っていない)ことを保証するために上記のような手続きが入れられたようです。お子様が不安になって実験からドロップアウトしないよう、「私はここにいるから、となりに部屋に行っておいで」ということがやりたかったみたいですね
さぁ、ここからがこの研究ではどのような結果になったか?
モデル(あなたがお子様に「攻撃行動」を見せるのであれば、あなた自身がモデル)が居ない場所でも攻撃行動は模倣されるのか?
そうなってしまっては既に見せてしまった「模倣の観察」をリカバリーする機会がなくなってしまい非常に怖いです。
子どもが移動した先の部屋にはさまざまなおもちゃが置かれていました。
おもちゃは以下のように定義されカテゴリー分けされています。
攻撃的なおもちゃ・・・・3フィートのボボ人形、木槌とペグボード、2つのダーツガン、天井から吊るされた顔が描かれたテザーボールなど
非攻撃的なおもちゃ・・・ティーセット、クレヨンと塗り絵、ボール、人形2体、熊3匹、車とトラック、プラスチック製の農場の動物など
攻撃的なおもちゃと非攻撃的なおもちゃ、さまざまなおもちゃが置かれお子様はこの部屋で20分間滞在します。
「どのような研究結果になったか?」は以下。
バンデューラ他(1961)ーモデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?・結果
以上のような手続きで実験が進んできましたがさぁ、どのような結果となったのでしょうか?
8条件に分けられているので「モデルの男女差」など細かく書いていけばかなり長くなってしまいますので個人的に重要なところをピックアップしています
以上のような手続きで研究を行った結果、
子どもを攻撃的なモデルに曝すと攻撃的な行動をとる確率が高くなることが予測通りはっきり確認されました。
「あぁーあ」って感じ。
またAlbert Bandura他 (1961b)の研究では男の子の方が女の子より攻撃的な模倣が促されやすいという仮説も持って行われましたが結果、身体的な攻撃行動を男の子がより模倣しやすいこともわかりました。
しかし言葉による攻撃行動は男女で差がないという結果ともなっていますので「社会的に受け入れられる」という点では男女差は無いと言っても良いように思いました。
ここはちょっと違和感。
ここで読んでた人は「あれ?」と思ったかもしれません
実はここまでの手続きと結果には違和感があります
「あれ?研究ではモデルは言葉での攻撃モデルは示していないんじゃ?」そう思った人はその違和感に気づいた人です。
違和感の正体はそれ。
実は物理的な攻撃モデルと非攻撃的な言葉を繰り返して子どもに見せていましたが、「言葉」でのモデルは見せていませんので「言葉による攻撃行動は男女で差がないという結果」が出ていることについて違和感があります。
なぜモデルで出していない行動をお子様が行うようになった?
手続きには「言葉による攻撃行動」は含まれていなかったのに。
シンプルに解釈すれば攻撃的なモデルを見たお子様たちはモデルが行っていない新規の攻撃行動も自発的に行うようになったと考えられるのです(但し実験結果では2名のお子様を除く)。
研究ではこのような言葉による攻撃行動は新規の模倣行動と捉えられ、例えば「Hit him down(ダウンだ)」、「Throw him in the air(投げちゃうぞ)」、「Pow(ポカンポカン)」などが言葉での攻撃行動と定義されました。
これは怖い結果です。
攻撃行動のモデルを見ることで、お子様は教えられていない攻撃行動まで自発的に行ったという結果ということになります。
Albert Bandura他 (1961b)の考えていた「モデルの存在がなくとも子どもは模倣をするか?」について答えは「Yes」ですがそれ以上の結果も伴ってしまいました。
Albert Bandura他 (1961b)の研究を参考にすれば日頃、攻撃モデルをお子様に見せているとあなたがいないシチュエーションでもお子様の攻撃行動が促される可能性があるでしょう。
そしてその攻撃行動はあなたが見せた攻撃モデルにオリジナルの型が加えられた進化したものになる可能性があります。
ちなみに非攻撃モデルを見せられたお子様はボボ人形に対して攻撃的な行動はほとんど行いませんでした。
そのためモデルの影響によって攻撃行動が行われたことの裏付けと考えることができ、この結果は尚更怖いことです。
バンデューラ他(1961)ーアルバート・バンデューラとABAのこの時点でのスタンス
ここでちょっと話題をAlbert Bandura他 (1961b)が考察した「模倣研究」と「ABA」の関連にも注目させてください。
Albert Bandura他 (1961b)は考察で「社会的模倣はスキナー(※ ABAを創始したと言われている人)が示唆したように連続した近似値を強化する必要がなく、新しい行動の獲得を早めるあるいは短縮することができる」と述べていました。
※ バンデューラの研究は「社会的学習理論」という理論に続いていきます。このときは「社会的模倣(原文では”social imitation”)」と書かれていました
これは実際に行動をしてから「強化子」を受けなくとも学習が促進されるという内容です。
※ 行動のあとに「強化子が伴うことで行動が増加していく」というABAの理論
研究結果から鑑みて、また私自身の印象経験からみてもこのアルバート・バンデューラが述べていることは概ね正しいでしょう。
※ 「さいごに」に書いていますがABAでは「般化模倣」という模倣を扱ったトピックがあります
「模倣」による学習では直接的に「行動」に「強化」が伴わなくとも行動が促される可能性があるということです。
そのような「強化子の伴わない行動増加」は実際に「模倣・観察」によって起こり得るでしょう。
バンデューラは論文発表した当時、強化によるシェイピングを使用した学習に加えて、模倣という強化を必要としない学習のショートカットされる理論を既存の学習理論に加えようとしたのだと思います。
例えばJames E. Mazur (2006) を参考にすればバンデューラはレスポンデント条件付けとオペラント条件付けの伝統的な原理に「観察学習(observational learning)」や「模倣(imitaion)」の原理を組み合わせることを意図していたようです。
※ 個人的にはこのときにアルバート・バンデューラをABAに取り込んでおいたらなぁ、と思いますが・・・
Albert Bandura他 (1961)・Albert Bandura他 (1961b)の研究結果から知っておくべき大切なこととして「直接的な強化子がなくともモデルの観察によって(模倣)行動が促される」ことも知っておきましょう。
ABAの理論からは少しずれてしまうかもしれませんが、バンデューラの研究から分かることは、行動したことを直接的に褒めたり(強化子の提供)しなくとも行動が増加(強化)することがあります。
そして特にそれは攻撃行動において顕著。
アルバート・バンデューラ(1961b)はなかなか恐ろしい結果でしたね
おどろおどろしいのと「どうしたらええねん」と思わせてくれます
さて次の研究が本ブログページでご紹介する最後のバンデューラ研究。
ここまで長かったですので一旦ここまでを振り返ると、
・ モデルを観察することで模倣行動が促進されることがあるが、特に攻撃行動は促されやすい
・ その際、直接的な強化子は必要ない
・ モデルがいる場所でも、いない場所でも模倣行動が生じる
ということが分かりました。
次に紹介する本ブログページ最後の研究もよく心理学の教科書で扱われる研究です。
次に紹介する研究が1番有名な研究じゃないかな?
私自身は心理学を学んでからというより、子どもの頃にこの研究をTV番組で見たような記憶もあります。
次にご紹介する研究はとても有名であり、その後の研究に影響を多く与えた研究といえるでしょう。
その研究タイトルは「INFLUENCE OF MODELS’ REINFORCEMENT CONTINGENCIES ON THE ACQUISITION OF IMITATIVE RESPONSES’ (私訳:模倣反応の獲得におけるモデルの強化条件の影響1)」(Albert Bandura ,1965)。
この研究ではお子様に対して与えられるモデルがフィルム動画になります。
時代背景的にTVが子どもに与える影響などについて考えるとき使われたであろうこの研究。
「暴力的な映像は子どもに良くない」と現在30代の私は昔TV番組などでそのような企画が流されていたように記憶していますが、
同じように30代の方はどうでしょう?
「子どもに暴力的な映像を見せては悪影響だー」という趣旨の番組叩かれてたような・・・
またこの研究はフィルム動画で行われたのですが、
メインの趣旨はタイトルに「強化条件」という記載があるようにモデル提示者がモデルを提示したのち、さまざまな結果を受けるのですが、その結果が子どもの模倣行動に影響を与えるかという研究です。
以下ご紹介して行きましょう。
バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?
これまで紹介をしてきた研究との違いとしてAlbert Bandura (1965) ではお子様に対し与えられるモデルがフィルム動画になります。
「フィルム動画」、「1960年代」そうこれは、TVがこれから発展していこうと言うそのとき、TVが盛り上がりを見せていこうとするタイミングでこの研究は産まれました。
これまでご紹介してきた2つの研究では目の前で人物がモデルを見せることを行ってきましたが、
今回はフィルム動画を見せるという手続きになっています。
また研究のメインの趣旨として、これまでご紹介してきた2本の研究と違って、論文タイトルにもなっている「強化子」の概念が研究に導入されていることは個人的にはポイントです。
Albert Bandura (1965)は研究で攻撃的な行動(モデル)を行なったフィルム動画の中の人物が攻撃行動の結果として、
・ 報酬(強化子)が与えられる
・ 罰が与えられる
・ 報酬も罰も与えられない
という3つの結果を受ける条件を設け研究を行いました。
モデルが行動を行った結果、その行動を行ったことによって陥る結果までをお子様が観察することで、
お子様の模倣行動はどのように変化するか?
ということを実験したAlbert Bandura (1965) の研究。
ここまででも少し簡単に手続きに触れてきましたが以下、詳しく手続きを見ていきましょう。
バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?・手続き
研究に参加したのはスタンフォード大の保育園に通う男の子33人と女の子33人、合計66人のお子様です。
年齢は42カ月から71カ月、平均年齢は51カ月でした。
子どもたちは男の子11人、女の子11人ずつ3つ条件のいずれかにランダムに割り当てられました。
2人の成人男性がモデルとなり1人の女性実験者が66人全員に対して実験を行いました。
上で書いたように2人の成人男性モデルはフィルム動画の中で登場します。
研究では最初、実験者は子どもに対して「私はサプライズルームに行く前に用事があって、その間にちょっとTV番組を見るかもしれないよ」と伝えました。
このとき実験者と子どもは半暗室にいます。
半暗室で実験者は子どもの体重を測りました(←これは子どもに研究内容を悟られないためだと思われます)、その後実験者はテレビの前に行きあたかも番組を見ているように振る舞い、そして去っていきました。
残された子どもの前で流される動画ではモデルが大人サイズのプラスチック製のボボ人形に近づき、「道を空けろ」と命令するシーンから始まります。
そしてモデルは従わないボボ人形をしばらく見つめた後4つの攻撃的反応を示すのですが、そのとき特徴的な言葉も加えて表現されました。
以下、表現された4つの攻撃的反応と特徴的な言葉を記載します。
(1)まずモデルはボボ人形を横にしてその上に座り、”Pow, right in the nose, boom, boom(「ポカン、鼻の右にボーンボーン」)”と言いながら鼻を殴りました
(2)その後人形を持ち上げ、頭を木槌で叩き、”Sockeroo … stay down(「大当たり・・・落ち着いてー」(←?多分こういう意味?:私訳))”という言葉が添えられました
(3)木槌攻撃に続いてモデルは人形を部屋中に蹴り飛ばし、その反応には “Fly away(「飛んでけー」) “という言葉が添えられました
(4)最後にモデルはボボ人形にゴムボールを投げつけそのたびに “Bang(「バン!」)”と声をかけました
このような身体的・言語的攻撃行動の一連の流れを2回繰り返し観察する機会がありました。
(1)ー(4)の中に少し変な声かけのようにも思うものもありますね?
実はこのような特徴的な言葉掛けをはわざとそのように仕組まれており「今回、実験までの生活の中で経験したことがないだろう刺激」をモデルとして提示することが意図されました。
これは研究内の反応を「模倣した」という根拠を作るための手続きです。
上で書いたようにこの研究では男の子・女の子がそれぞれ11人づつ3グループに分けられているのですが3グループともここまでは同じで、以下から実験条件によって分岐があります。
上までの動画は同じですがここまでの動画の続きが以下の分岐条件です。
モデル単独条件・・・・上までの動画の内容でVTRは終了しました
モデル報酬条件・・・・もう一人のモデル役の男性がキャンディとジュースを大量に持って出てきて「強いチャンピョンだ!」と伝え、たっぷりのご褒美をモデルに渡しました
そしてモデルがおいしいお菓子をどんどん食べている間、もう一人のモデルはモデル役の攻撃的反応を象徴的に復活させ賞賛することも行いました
モデル罰条件・・・・・もう一人のモデル役の男性がモデル役を「おいおい大きないじめっ子だな。ピエロをいじめるのはやめろ。許さないぞ」と非難しました
※ ページ内でイラストにしたようにボボ人形はピエロに似ていましたね
もう一人の大人モデルはモデルの上に座り、モデルの攻撃的な行動を思い出させながら丸めた雑誌でモデルを叩きました
モデルがうずくまって走り去ると最後にもう一人のモデルは「今度同じことをしたら厳しいお仕置きをするよ」と警告し「そういうことはやめなさい」と伝えました
その後3つの条件の子どもたちは別の実験室に案内されます。
その実験室にはボボ人形、3つのボール、木槌とペグボード、ダーツガン、車、プラスチック製の農場動物、家具と人形家族のドールハウスなどがありました。
そして実験者は「すぐに戻ってくるよ」と子どもを安心させ子どもに「部屋のおもちゃで自由に遊んでいいよ」と言ったあと、別の遊び道具を取りに行くと行って部屋を出ていきました。
子どもは10分間1人で実験室で過ごします。
さぁ実験の結果この研究では子どもたちはどのようなパフォーマンスを見せたのか?
今この段階で書いておきますが子どもたちがパフォーマンスを行ったあとまた別の手続きが入ります
ここまでの手続きの結果を次の項から書いて行きますが、その後さらに別の手続きが研究で導入されます
その手続きについてはここまでの手続きの結果を見た、次の項の中で書いていきます
バンデューラ(1965)ーモデルが動画でも子どもは模倣をするか?モデルが受ける結果は影響するか?・結果
ここまでの手続きを行なった結果、モデルが強化を受けるモデルを子どもが見ることは、子どもたちが自発的に模倣する反応数に有意な影響を与えることが明らかになりました。
これは単純に「モデル報酬条件」のお子様は明らかに模倣した数が多かったということです。
攻撃的なモデルであってもそのモデルが報酬をもらっていることを観察すれば子どもは攻撃的なモデル行動を簡単に模倣したと言う結果になりますね。
これは普通に考えても「まぁ、そりゃそうだろうな」と納得できる結果でしょう。
またデータを見れば「モデル罰条件」のお子様は「モデル報酬条件」のお子様と比較して統計的に優位に模倣反応が出現しなかったこともわかります。
この結果は重要で、モデルが行った行動が他の人から罰が与えられていることを観察した子どもは、観察したモデル行動を行いにくいという結果になったということです。
まぁしかし重要ではありますが「あーあいつ怒られてるやん。そーやな、うん。じゃ俺はあーいうことするのやめとこ」とか自分の人生でもそのような学習を体験するタイミングはありましたし、特に意外ではないでしょう。
そりゃそうやろ、というところ。
ここまでも1つの立派な研究結果なのですが、以下、この研究ではここから研究内で新しい手続きが導入されました。
ここからが面白いところですが結構エグいなと思います。
さっきの上のイラスト「マジか!?」はここから
以下の手続きが加えて3つの条件全てのお子様に対して行われました。
子どもが10分間1人で残されてパフォーマンスを行なったその後、実験者はカラフルないろいろな種類フルーツジュースとシールが入った冊子を持って部屋に入ってきました
子どもたちはジュースを飲んだ後、身体的または言語的な模倣反応を再現するごとにかわいいシールと追加のジュースをもらえることを知らされます
続けて実験者は子どもがシールを貼りたい気持ちになるよう、部屋の壁にシールを貼ることができる動機付くようなイラストの書いたものを貼り付けます
最後に「テレビの中でロッキーが何をしていたか見せて」「何を言っていたか教えて」と子どもに問いかけ、一致した反応の直後にご褒美を与えました
このとき、単に模倣反応を説明しただけの子にはパフォーマンスの実演も求めました
なかなかエグい手続きですね(笑)
しかしこの手続き追加によって得られる次の結果が個人的にはすごく興味深い
まぁそんな誘惑があったらそりゃ善悪判断とか関係なしに求められた行動をするだろうとも思いますが・・・(笑)
このような手続きが新たに追加されると「モデル単独条件」「モデル報酬条件」「モデル罰条件」全てのお子様で攻撃行動のモデルを同じようなレベルで行うようになりました。
ここが「マジか!?」です。いやいや「モデル罰条件」で大人しくしていたお子様も攻撃的になるんかーい!って感じ
研究から「モデル罰条件」で模倣反応が抑制されていたお子様もこのような新しい手続きが加えられたときには他の条件とパフォーマンスの差がなくなったことは注目すべきことです。
パフォーマンスの差がなくなったことは注目すべきことの理由、「それはなぜか」って?
これまでのブログ内容の中で「攻撃行動のモデルを仮にお子様が行なったとしても、それを注意してやめさせればいいじゃんね」というような内容を書いた部分があります。
私の行動を模倣して例えば攻撃行動とは不適切な行動を子どもがしたとき、
叱ってそれはあかんと教えたらええねん
これはAlbert Bandura (1965) 研究の「モデル罰条件」に近いものでしょう。
確かに(ABA的にも)罰が下るところでは模倣された攻撃行動は抑制され出現しない可能性があるのですが、
でも「その場に実験者(親御様)」がいない、環境が変わって抑制されず加えて強化される(例えば承認されたり、賞賛される)環境では観察された攻撃行動が簡単に高いレベルで出現したのです。
※ ちなみのこのような「罰が出ないところで行動が頻出すること」は「モデルを観察する」などではないですが、ABAの基礎の動物研究でも確認されています「行動対比」で調べて見てください
例えば周りの友達などの影響による環境変化でこのようなことは日常的にありそうだと思いませんか?
例えば極端に喧嘩自慢の不良たちが集う集団の中で拳1つで「お前は強い!チャンピョンだ!!」、「すごい!最強だ!!」など不良漫画の世界のセリフが飛びかう集団に属していなくとも、
もっと自然な環境の中で攻撃行動が社会的な賞賛を受けることはあり得ます。
それは例えば「男らしいね」とか「勇気あるね」、場合によっては「助けてくれてありがとう」、「すごくかっこよかった」とかそんな些細な賞賛が他者への攻撃を促すかもしれません。
一体こんなこと、どうすればいいねん
攻撃行動は絶対悪か?
さて、ここまで「攻撃行動」を悪者のように書いてきましたが、きっと攻撃行動が全部悪いと言うわけでは無いと思います。
「攻撃行動は絶対悪では無い」、このような認識も重要でしょう。
私はそのように思うのですが、だからこそいっそう難しい問題ですね。
「攻撃行動に強化(褒めるなど)」を与えてはならない、と強くルールが入ってしまいすぎると、重要な危機の際に自分や大切な人を守ることもできないかもしれません。
他にも例えば攻撃行動を誘発したく無いと思って「攻撃的なモデルを出さない」などをあまり気にしすぎると、例えば世の中にある戦隊モノの娯楽動画などは全部NGになってしまいます。
バンデューラの研究結果を気にして極端に「攻撃行動のモデル」が出現する刺激を全部避けるように生活させる(物理的にそんなことは無理だと思いますが)とすれば、
それは例えば戦隊モノ・絵本(桃太郎とか)など攻撃行動モデルが存在する娯楽や教訓から得ることができる「ポジティブな影響」を捨てていると言い換えることもできるかもしれません。
いや、極端な話自分はめっちゃ好きな彼女が居てね、その彼女が拉致されそうになっている場面でも「相手を殴ってでも取り戻す?でも、殴るのは・・・良く無いよな・・・と、私は教えられて来たので・・・」というのが、本当に健全かどうか。
そういった塩梅を教えていく必要があると私自身は思っていて、そのような塩梅を教えていくのは結構、難しいのだけれどね・・・。
私自身はそのような状況では相手を殴ってでも(攻撃行動発動)その場面を回避するべきだと考えます。
※ ここは人によっては意見が分かれるかも
でもこれは発達に遅れのあるお子様に教えるのは非常に難しいかもしれない、そんなイレギュラーどうお子様に教えるのか?
私自身はなんとかそのようなことも教える道を探して行きたいと思います。
ケースバイケースの分岐で教えていけば、なんとかなる可能性はあると思うけどね・・・。
このように考えると「どのようなときの攻撃がいけないのか?」ということは問題にも感じ、「攻撃行動」をどう捉え教えるか、なかなか難しいトピックです。
話を研究結果に戻すとAlbert Bandura (1965) 研究別のトピックとして「言葉の模倣反応」よりも「運動の模倣反応」の方が模倣率が高くなりました。
このことについてAlbert Bandura (1965) は、
例えば行動のレパートリーが非常に少ない人はモデルの行動を断片的にしか模倣できない可能性が高いが、モデルの示した行動レパートリーのほとんどの要素を獲得している人は、数回の実演で正確に一致する反応を行う可能性が高い
就学前幼児の場合は言葉による反応のレパートリーよりも運動によるレパートリーの方がより高度に発達している
模倣的な運動反応の再現率が、言語反応の再現率を大幅に上回ったのはこのためであろう
研究では運動の模倣再現率が言葉の模倣再現率を大きく上回ったのですがAlbert Bandura (1965) はそのことについて以上のように考察しています。
と、ここまで長かったですがこれでバンデューラの研究紹介は終わりです。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
さいごに
アルバート・バンデューラの研究では「模倣」は「Model」や「Modeling」ではなく「Imitation」という英単語が使用されています。
本ブログページでご紹介したバンデューラ研究は模倣研究の古典的なものでしょう。
1960年代の研究でもう50年以上前の研究です。
私自身は模倣に特化した研究領域に特に詳しいわけではないので最新研究についてはあまり知らないのですが、
もしバンデューラの理論を継承した「模倣」を使用した介入方法や理論を検索したいと思ったときには「imitate intervention」や「teaching imitate」などで探してみると見つかるかもしれません。
最後に少しだけ!
このブログは「ABA自閉症療育ブログ」ですので、ABA自閉症療育で模倣をどのように生かせるかという点について少し書いていきたいと思います。
例えば「あいさつをする」、「友達にものを貸す」、「折り紙を折る」、「宿題をする」、「自分の意見を言う」などのスキルと「模倣する」というスキルは等位でしょうか?
私は少し違うと思っています
上で紹介した各スキルが「学んで使用するスキル」だとすれば、「模倣」は「学び方のスキル」と捉えることができるのではないでしょうか?
つまり学習を効率的に進めるためのベーススキルです。
例えば言葉の理解があるお子様に50m走を教えるとしましょう。
言葉の理解があるお子様には、「最初にここ(スタートの白線)に立ってね。先生がヨーイドンと言ったら速くあそこの白い線まで行くんだよ」と言葉を使って教える(ルール学習)ことが可能です。
しかし、言葉の理解が未熟なお子様の場合、
身体プロンプトでスタートの白線に実際に立たせ強化 →
「ヨーイドン」と同時に手を引っ張ってゴールの白線まで実際に速く到達させ強化
ということを繰り返し「実際に経験させたのちに強化子を提供し、行動を増やして行く(試行錯誤学習、結果による体験学習)必要」があるでしょう。
私は言葉と同じように「模倣できること」も教える・学んでいくとき「効率的に教わる・学ぶ」ために大切なベーススキルのように感じています。
と、このように簡単にではありますが、「模倣ができることはABA自閉症療育でも大切だと思っているよ」と「さいごに」の項で少し書いたのですが、
「で、どうやって模倣を子どもに教えればいいの?」と思われたかもしれません。
どうやってお子様に模倣を教えるのかについては、次のブログページからのトピックとしましょう。
次のページはABA自閉症療育の模倣トピック「般化模倣(はんかもほう:Generalized imitation)」をご紹介します。
まず「般化模倣」について知って、その後模倣をどのように教えていけば良いか方法を見て行きましょう。
【参考文献】
・ Albert Bandura (1965)INFLUENCE OF MODELS’ REINFORCEMENT CONTINGENCIES ON THE ACQUISITION OF IMITATIVE RESPONSES’ . Journal of Personality and Social Psychology. Vol. 1, No. 6 p589-595
・ Albert Bandura・Aletha C. Huston (1961) Identification as a process of incidental learning. Journal of Abnormal Psychology. Sep 63 p311-8
・ Albert Bandura・Dorothea Ross・Sheila A. Ross (1961b) Transmission of Aggression Through Imitation of Aggressive Models. The Journal of Abnormal and Social Psychology 63(3) p575–582.
・ James E. Mazur (2006) LEARNING AND BEHAVIOR:6Th ed. 【邦訳 磯 博行・坂上貴之・川合伸幸,訳 (2008) メイザーの学習と行動 日本語版 第3版 二瓶社】