ブログタイトルにあるように自閉症児に対して療育で「どのように指示を出すのが良いのか?」
ということに対して一般的な回答があるように思います
その回答とは何でしょうか?
・ 簡単で簡潔な言葉
・ はっきりした大きな声
・ しっかり目を見て、目を合わせて伝える
が一般的に正解と言われる回答だと思います。
これは正しいでしょうか?
今日はこのことについて考えていきたいと思います。
自閉症児への指示で正解とは何かを考える
例えば指示を出すとき、目的を持って自閉症児に指示を出します。
指示を自閉症児に出すとき、その指示の出し方の「正解」とは何でしょうか?
自閉症児が出した指示の目的を遂行できることでしょうか?
また例えば「指示の目的」が全て同じ、ということはあり得るでしょうか?
そして出す指示によって目的は異なってくるでしょうか?
本ブログページでは指示を出す目的の種類について考え、種類に対応した、上手くいかないときの対応を見て行きます。
さて、自閉症児に対して指示を出すときをイメージしてみてください。
例えば以下のパターン(1)(2)を考えてみましょう。
(1) 赤信号の前で止まりそうになく「止まりなさい」ということや、お友達の持っているおもちゃを取ろうとしたときに「やめなさい」と言って静止する、と言ったようにその場で対応して欲しいとき(その場で遂行して欲しい指示)
(2) お風呂から上がったときに「着替えて」ということや、園や学校などで先生の出す一斉指示が聞けるなど、今後聞けるようになっていくことを期待し、今は指示が聞けるように練習をしていると捉えて指示を出しているとき(その場でも遂行はして欲しいけれど、今後もっと上手く指示が聞けるようになることを期待した練習場面の指示)
(1)と(2)が完全に別物か?と言えばそんなことはないと思いますし、重複する場面も多々あると思いますが、
一旦本ブログページでは、
(1)そのとき、とりあえず聞いてくれることを期待して指示を出す場合
と、
(2)そのときも聞いて欲しいけれど今後、お子様が上手く指示に対応できるよう練習の意味で指示を出している場合
の、ざっくり指示を上の2つの種類に分けて考えてみましょう。
次の項では上で分けた、
「(1)そのとき、とりあえず聞いてくれることを期待して指示を出す場合」のシチュエーションにおいて、
どのような指示の出し方が正解と言えそうか考察して行きます。
(1)そのとき、とりあえず聞いてくれることを期待して指示を出す
もしあなたがお子様に指示を出す目的が(1)のとき、
指示を聞き、指示通り遂行する確率を上げる指示の出し方が良いでしょう
このような場合では冒頭で書いた、
・ 簡単で簡潔な言葉
・ はっきりした大きな声
・ しっかり目を見て、目を合わせて伝える
という指示の出し方が効果的だと思います。
上の3つ全ての要素を含めた方が効果的かと思いますが、難しいシチュエーションでは上のうちのどれかを含めると言うことでも構いません。
※ 例えば、道路に走っていってしまって危ないときは「はっきりと目を見て目を合わせて伝える」は難しいです
上の要素が1つ1つがどのようなものか解説していきます。
簡単で簡潔な言葉
「簡単で簡潔な言葉」というのは、
「はーい、じゃあ、椅子に座ってね」
「椅子に座って欲しいな」
「椅子に座ってくださーい」
と言うのではなく、
「椅子、座って」
というように無駄な要素を除いて「必要な言葉だけ」を示すことで指示を出すことです。
一般的にこのような音声は自閉症児にとってわかりやすいと言われています。
はっきりした大きな声
「はっきりした声」は?
はっきりした声とは、明瞭性の高い指示です。
明瞭性が高いとは?
例えば「ありがとうございます、と言えばいいね」と「ありがとうございます」と言うことを促す指示を出すとき、「あざぁーすっていやぁえぇね」と大人はわかるかもしれないけれども、明瞭生の低い言葉で指示を出すことは微妙です。
1音1音を意識し、明瞭性の高い指示を出すことが大切になります。
「大きな声」は?
前提として相手に指示が聴こえる必要があります。
また相手が萎縮するほど大きな声で伝えるのはダメですが、音量が大きくなれば指示の刺激量が大きくなるので、指示を聞いてもらえる確率が上がるでしょう。
しっかり目を見て、目を合わせて伝える
「しっかり目を見て、目を合わせて伝える」もメジャーな自閉症児に対しての指示で伝えられる代表例です。
例えば「はっきりと目を見て伝える」について関連するであろう事象としては、ABA自閉症児で言えば「刺激過剰選択傾向」というもが唱えられています(O.Ivar Lovaas, 2003)。
O.Ivar Lovaas (2003)によれば「刺激過剰選択傾向」とは複合する刺激の要素の中の1要素、あるいは限られた範囲の要素だけにしか反応しないことを示した言葉です。
簡単に例を出して言えば例えば1対1で話していたとき、多くの人は相手の話している言葉や仕草という複数の刺激に分散的に注目し、処理をして、理解をしているにもかかわらず、
自閉症児は相手が話しているときに注目すべき複数の刺激に注目できず、特定の1つの刺激に過剰に反応してしまう場合などを言います。
このような傾向があるからなのか、または別の理由からかはわかりませんが、一般的に自閉症児に対して「しっかり目を見て、目を合わせて伝える」は効果的であると言われることが多いです。
「刺激過剰選択傾向」があることを前提とすれば、自閉症児からの注目を集めた形(指示を出すものが目を合わせて見る)ことで他の刺激に自閉症児が注目してしまう可能性を弱めることができるため確かに効果的でしょう。
(2)今後聞くことが上手くなり遂行可能性が上がって欲しい指示
では(2)の場合はどうでしょう?
(2)は、
(2)お風呂から上がったときに「着替えて」ということや、園や学校などで先生の出す一斉指示が聞けるなど、今後聞けるようになっていくことを期待し、練習をしていると捉えているとき(その場でも遂行して欲しいけれど、今後もっと上手く指示が聞けるようになることを期待した練習場面)
そして、
(2)そのときも聞いて欲しいけれど、今後、お子様が上手く指示に対応できるよう練習の意味で指示を出している場面
このような場合でした。
今後、指示を上手く聞いて理解し遂行できる可能性が上がって欲しい場合は?
(1)の「その場で遂行して欲しい指示」と比較して(2)の場合はいろいろと考えなければいけないことが多いでしょう
指示が聞けていない理由が複数存在します
指示が聞ける練習のためには「指示が聞けていない理由」のアセスメントが必要です
このとき考えなければいけないことは、
「なぜ今、この子は指示を聞けてない(遂行できてない)のだろう?」
ということです。
(2)は今後上手くなることを期待した練習の意味も含んでいるため、基本的に今は上手く聞けない指示であることが多いでしょう。
既に上手く聞ける指示は、特に練習の必要はないですもんね。
指示が聞けない理由について、以下の3択のどの選択肢に入りそうか考えてみてください。
私は良く以下の3択に分けて考えてから、その後の対応方針を考えていきます。
【1】 お子様本人はやろうと思ったらできるけれど、モチベーションが乗らず指示を遂行しない
【2】 お子様はモチベーションも行うスキルも持っているものの不安や抑制によって行動化できない
【3】 お子様本人もやろうと思ってもできなくて、指示が遂行できない
上の【1】か【2】か【3】のどれに該当しそうか?ということを考えます。
【1】 お子様本人はやろうと思ったらできるけれど、モチベーションが乗らず指示を遂行しない
【1】の場合は「モチベーション」が大きい問題です。
「モチベーション」が問題となる場合は例えば「お風呂に入りなさい」と言われてもそのときYoutubeを見ているので指示を聞くモチベーションが乗らないとか、「椅子に座りなさい」と言われても椅子に座ったらプリントをやらされることが分かっているから指示を聞くモチベーションが上がらない、といった場合となります。
この場合はどのようにお子様のモチベーションを上げていくか?ということがポイントです。
【2】 お子様はモチベーションも行うスキルも持っているものの不安や抑制によって行動化できない
【2】の場合は「不安や抑制」が大きい問題です。
「不安や抑制」が生じていることによって指示が行動化できない場合は、お子様本人も指示を遂行する必要があるとモチベーションはあるものの「不安や抑制」が生じているために指示の遂行ができない場合となります。
「不安や抑制」が生じている場合は例えばお母様から「お友達を誘いかけにいってらっしゃい」と指示を出されたとき、過去にそのことで失敗をしていたり(不安)、失敗することに対して今まで叱咤が伴うなどの悪いイメージがあり(抑制)、
本人も「やらなきゃ」とは思っているものの緊張で身体が動かなかったり、その場から逃避することで指示を遂行できないときなどが考えられるでしょう。
また【2】はモチベーションの問題も絡んでくることがあるのですが、それはこの後の解説のところでお話しいたします。
【3】 お子様本人もやろうと思ってもできなくて、指示が遂行できない
【3】の場合は「指示の意味が理解できない」か「理解できるものの、遂行能力がまだ未発達である」ことが大きい問題です。
指示の意味が理解できないというのは例えば、「リビング」という言葉を知らないのに「リビングに来なさい」と言われても遂行できません。この場合はまず「リビング」の意味を教えることが必要があります。
また、指先の微細能力がまだ未発達なのに「お箸で食べなさい」と言われても、お箸で食べるために必要な微細能力がまだ未発達なため、このような場合も指示を上手く聞いて遂行することはできません。
このような場合は一般的な言葉で言えば「指示を聞けるよう教える」ことが必要になってきます。
では【1】、【2】、【3】の場合、どのように対応していくことが良いでしょうか?
以下、解説を行っていきます。
【1】 お子様本人はやろうと思ったらできるけれど、モチベーションが乗らず指示を遂行しない・対応
これは例えば「お風呂に入りなさい」と言われてもそのときYoutubeを見ているので指示を聞くモチベーションが乗らないとか、「椅子に座りなさい」と言われても椅子に座ったらプリントをやらされることが分かっているから指示を聞くモチベーションが上がらない、といった場合でした。
このような「【1】 お子様本人はやろうと思ったらできるけれど、指示を遂行しない」モチベーションが課題とされる場合は2つの方向性から介入法略を考えることが可能です。
それは、
・ 先行子操作
・ 結果操作
の2点です。
例えば上のイラストブログページ内などでも上記2つのキーワードについては解説をしてきましたが、
「先行子操作」は行動を生起させる確率を上げる操作となります。
例えば「お風呂に入りなさい」と言われてもそのときYoutubeを見ているので指示を聞くモチベーションが乗らない場合だと、そもそもお風呂に入る直前にYoutubeを見せないようにしておくことや、防水のデバイスを用意し「お風呂でもYoutubeを見て良い」という環境を作ってあげるなどが考えられるでしょう。
「椅子に座りなさい」と言われても椅子に座ったらプリントをやらされることが分かっているから指示を聞くモチベーションが上がらない、といった場合は「1枚やったら終わりだから」や「終わったらアイス食べよう」などネガティブな状況を緩和したり、行うことでポジティブな要素を付け加えるなどが考えられます。
そして「結果操作」が大切です。
今までは遂行しなかった、または遂行までに時間や手助け(風呂場や椅子まで引っ張っていくなど)がかかってしまっていたところに「先行子操作」を加え、スムースに指示が遂行できたときしっかりと褒めること。
最初は過剰に褒めて良いでしょう。
例えば思いっきり抱っこをしながらお子様を爆笑させ「ママ(パパ)がお風呂入ってって言ったとき、すぐに動けてえらい!」
と上手く指示が聞けた結果が強化されるよう関わります。
このとき強化が上手くいき、結果操作を上手にできていればいずれ、「先行子操作」の要素がなくともお子様は指示を聞いて上手に遂行することができるようになっていくでしょう。
また覚えておいて欲しいこととして、
指示を聞いて上手く遂行できるようになっていった場合、ずっと長い期間同じ強度で強化し続けるのではなく、強化を徐々に弱めていく必要があります
どこまで徐々に弱めるのか?は、周りの人が普通に褒める程度の強度です
このようなプロセスを「強化子のリダクション」と呼ぶのですが、
これをしないと「強化子依存」に陥ってしまうリスクが生じます
【2】 お子様はモチベーションも行うスキルも持っているものの不安や抑制によって行動化できない・対応
これは例えば「不安や抑制」が生じているパターンでは例えばお母様から「お友達を誘いかけにいってらっしゃい」と指示を出されたとき、過去にそのことで失敗をしていたり(不安)、失敗することに対して今まで叱咤が伴うなどの悪いイメージがあり(抑制)、
本人も「やらなきゃ」とは思っているものの緊張で身体が動かなかったり、その場から逃避することで指示を遂行できないときなどでした。
このような場合は「エクスポージャー」という対応が効果的です。
エクスポージャーについてはブログ内で数ページにわたって書いてきましたので、興味のある方はご参照ください。
基本的にはスモールステップでエクスポージャー手続きを設計しできることを拡大していくイメージです。
可能であればお子様がモチベーションを持ってエクスポージャーできるよう面接で動機付けを上げることを行なってから、エクスポージャーが生じる介入手続きを組んでいきます。
必要であればトークンで強化子設定を行ったり、SSTを行って見通しをつけたりもしましょう。
不安や抑制が問題と考えられる場合は本人も「やらなきゃ」や「やった方が良い」とモチベーションを持っている場合があります。
しかし「やらなきゃ」や「やった方が良い」とお子様も理解しているものの、あまりモチベーションは乗っていないというパターンもあるでしょう。
それはどういった場合か?
例えば「部屋は綺麗な方が良い」や「夜は夜更かしせずに早く寝た方が良い」、「早起きした方が良い」、「10分前行動をしなければいけない」など、
一般的に「良い」とされていることでも、頭では分かっていてもなかなかモチベーションが乗らないことがあなたもあると思います
お子様も例えば「虫歯にならないためにお菓子を食べない方が良い」などと言われてもなかなかモチベーションは上がりません
あまり利益を感じていなかったり、現状でなんとかなっていたり、めんどうくさかったり、不安だったり、抑うつ的な気分に支配される状況があると「まぁ、このままでも良いか」という思い、改善した方が良いとなんとなく分かっているもののモチベーションが乗らない状態です。
このようなときは、
(1)話し合い(面接)を進める中で「確かに」とモチベーションを高めることを狙う、
これができればベストですが難しい場合、最初は
(2)上手くできたら好きなお菓子を買ってあげるよなど少し不自然な強化子を設定し、行動化することを狙っていくことも多いです。
個人的な体感ですが(1)のベストが取れるのはだいたい5割くらいで、(2)の状況に落とし込むことで介入をスタートすることも多いように思います
【3】 お子様本人もやろうと思ってもできなくて、指示が遂行できない・対応
【3】 お子様本人もやろうと思ってもできなくて、指示が遂行できない
このような場合は以下のようなときでした。
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【3】の場合は「指示の意味が理解できない」か「理解できるものの、遂行能力がまだ未発達である」が多いでしょう。
指示の意味が理解できないというのは例えば、「リビング」という言葉を知らないのに「リビングに来なさい」と言われても遂行できません。この場合はまず「リビング」の意味を教えることが必要です。
また、お箸が使えないのに「お箸で食べなさい」と言われても、お箸で食べる遂行能力がまだ未発達なため、このような場合も指示を上手く聞いて遂行することはできません。
このような(3)の場合は一般的な言葉で言えば指示を聞けるために「教える」ことが必要になってきます。
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このような場合はスモールステップの設計でプロンプト+プロンプトフェイディング+強化法+強化子のリダクションを使用したシェイピングが効果的です。
例えば「(ABA自閉症療育の基礎43)オペラント条件付けー強化子のリダクションとプロンプトフェイディング(https://en-tomo.com/2020/10/04/reduction-fading/)」で上記の手続き内容についてはご紹介しましたので、
必要であればご参照いただければと思いますが、まだスキルが未発達なため練習をして教えていく、ということが必要になります。
プロンプトや強化子のリダクションなど専門用語を書かれると難しく聞こえるかもしれませんが、ものすごく簡単に言えば「最初はヒントやお手伝いをして目的行動を達成させていくが、上手くなっていくに伴って徐々にヒントやお手伝いを少なくしていく方法」です。
(↑↑↑プロンプトとプロンプトフェイディング)
理論的にこのとき、行動を上手くしていく要因が強化子となりますので、強化子、一般的には褒めることを存分に行ない、上達を狙って行きましょう。
(↑↑↑強化法)
ただ褒めることも徐々に、オーバーなものから普通の褒めの声かけに弱めていく必要があります。このことは強化子依存を防ぐ手続きです。
(↑↑↑強化子のリダクション)
指示の難易度ー時間的な遅れが生じる指示や文字などで示される場合
「指示」について、課題難易度が高くなる条件も覚えておきましょう。
指示には時間的に指示が出てすぐ遂行のタイミングがある指示と、「今日の夜にね、Aちゃん、おばあちゃんが来たらーー」など、時間的に遂行のタイミングが遅れてやってくる指示が存在します。
「すぐ行う指示」と比べて「指示を出して、時間的にあとで遂行する必要がある指示」は難易度が高くなるでしょう。
これは単純に条件が同じであれば時間的に遅れれば遅れるほど難易度が高くなります。
例えば、朝の9時に「5分後にXしてね」と指示を出すよりも「夕方の6時になったらXしてね」という指示の方が難易度が高いです。
月曜日に「明日、Xしなさい」よりも「水曜日はXしなさい」の方が難しいでしょう。
これは私たちもそうですね。
そのように長い間指示を覚えておくことが困難なため「Todoリスト」や「スケジューリング手帳」を活用してミスを少なくするのです。
他には「言葉で伝えられる」よりも「文字で示される」方が難しいお子様もいるでしょう。
これは文章読解能力がまだあまり育っていないケースではそのように思います。
逆に文字で視覚的に指示を示された方が難易度が低くなるお子様もいるでしょう。
このところはお子様によると思いますが、「音声の指示」や「文字での指示」といったように同じ指示でも出し方によって難易度が変化するということも覚えておくと良いと思います。
私たちの世界はシンプルな指示に溢れてはいない
最後にこのブログページでは指示が聞けるように練習をする方法についてもご紹介してきましたが、一体、どのように指示が聞けることを目的に練習をしていけば良いのでしょうか?
私たちの世界はシンプルな指示に溢れてはいない
このことは知っておきましょう。
私たちの世界は例えば冒頭示した、
・ 簡単な言葉で
・ 簡潔に短く大きな声で
・ はっきりと目を見て目を合わせて伝える
という形で出される指示で溢れてはいません。
もっと曖昧で、もっと間接的な形で指示は出されています。
指示という言葉をもっと高度な言葉に置き換えたなら?
例えば「相手の意図を読む」という行為と言えるでしょう。
「空気を読む」とか「状況を把握する」などと言っても良いと思います。
例えば「遊ぼう!」と言ったとき、お友達が「今日は塾に行かないといけないんだ」と言ったとしましょう。
これは「遊べないよ」と直接言われてはいませんが、暗に遊べないことを示しています。
ペア組をしなさいと先生がクラスに指示を出したとき目を合わせた相手が目を逸らせたとすれば、それは暗にこの人は別の人とペアを組みたいんだと、その意図が示す可能性を汲み取る必要があるでしょう。
大人になった、社会に出た。そういったときは既に、世界はこのようなコミュニケーションに溢れています。
私はこのように思うため、自閉症療育においても指示をだんだんと曖昧にしていっても、指示の遂行が可能なようにプログラムを組んでいく必要があると思うのですが、みなさまはどう思いますか?
さいごに
このブログページでは療育場面で自閉症児にどのように指示を出すのが正解か?文脈を考え、指示の種類を理解しようというテーマでブログ記事を書いてきました。
「指示」という基本的な療育の関わりでも、深く考えていけばいろいろと考察できます。
例えば療育といえば「児童発達支援」という発達障がい児に対しての療育公共事業があることをご存知でしょうか?
※ 診断がなくとも医師から意見書があるなどで、利用することが可能です
未就学のお子様に対して幼保無償化対象児は0円、非対象児(未就園児)であってもかなり低額の利用料金でサービスを受けることが可能です。
厚生労働省が管轄のサービスなのですが、厚生労働省によれば児童発達支援の目標は以下になります。
「 障がいのある子どもの発達の側面から「健康・生活」、「運動・感覚」、「認知・行動」、「言語・コミュニケーション」、「人間関係・社会性」の5領域において将来、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることを大きな目標として支援(厚生労働省) 」
公共サービスの療育では上の赤太文字のところが大きな目標です。
本ブログページで書いてきたように指示の出し方1つにしても、将来のお子様が生活をしていく世界を見据え工夫することが良い療育に必要な要素だと私は思います。
みなさまはどう思われたでしょう。
療育のプログラムで「指示が聞けるようになる」と書かれることは多いと思います。
「指示」1つとってもいろいろと考察ができる療育は奥深いですね。
非常に面白い。
さて、次のテーマでは「強化履歴」という考え方をご紹介しましょう。
強化履歴とはあなたが生きてきた証です。
【参考文献】
・ 厚生労働省 児童発達支援ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf
・ O.Ivar Lovaas (2003) TEACHING INDIVIDUALS WITH DEVELOPMENTAL DELAYS 【邦訳: 中野 良顯(2011) 自閉症児の教育マニュアルー決定版・ロヴァス法による行動分析治療 ダイヤモンド社】