「(ABA自閉症療育の基礎78)自閉症児の問題行動を減らす、適切な行動を増やす為にターゲット行動を強化できるよう適切に記述する(https://en-tomo.com/2021/02/15/aba-target-setting/)」
では問題行動を減らしたり、適切な行動を増やすためにどのように「ターゲット行動」を記述するべきか?について書いてきました。
上のURLで学んだ内容は、ターゲット行動をいかに定義するか?ということでした。
このブログページではその定義したターゲット行動をデータ化するのは何故か?ということについて書いていきます。
何故データをとって療育を行う必要があるのでしょうか?
このブログページから考えてみてください。
ABA自閉症療育でデータを取る意味は?
Donald M. Baer・Montrose M. Wolf・Todd R. Risley (1968) はエビデンスに基づくすべての応用行動分析の実践方法を導く7つの原則について1968年、論文を刊行しました。
この論文は「JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS」というABAの専門誌に掲載された論文です。
7つの原則の1つに「Behavioral(行動的である)」という原則があるのですが、
Donald M. Baer他 (1968) は「Behavioral(行動的である)」という原則の中で個人の行動は身体的な活動で構成されているので、その科学的研究は個人に対しての正確な測定を必要とすると述べました。
島宗 理 (2019) によればこのDonald M. Baer他 (1968) の研究は応用行動分析学(ABA)を学問として位置づけた記念碑的な論文でありその後の研究の方向性に大きな影響を与えたようです。
このような記念碑的な論文であるからか、私がABAを学び始めたときから「当たり前にデータを取る」ことを行って療育やカウンセリングを行ってきました。
取るデータの種類については何をターゲットにするかで変わってくるのですが、ABAを専門にしている方はみなさん、何かしらデータをつけ療育やカウンセリングを行なっていると思います。
一度、GoogleなどでABAの事例研究を検索してみてください
「応用行動分析(ABAのこと)」や「行動療法」、このキーワードが入っている事例研究は基本的には行動上の変化がグラフにしてデータで表現されているものがほとんどです。
ABAでは歴史的に見ても初期の頃からデータを取って支援を行うということが推奨されてきた歴史があります。
Lisa McNiven (2016) はABAに対しての記述で、自閉症療育のニーズがある人は行う介入が上手く行くことを望むが、介入が成功と呼ばれるためには行動が社会的に見て重要な変化があったという観察可能な根拠が必要であると述べました。
この「観察可能」な変化があることがABAの強みです。
ABAでは特に「目で見てわかる変化」を求めます。
目で見てわかる変化が社会的に見て重要な変化です。
Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2012) はデータ収集に怯えないでください、データには圧倒的な説得力があると述べています。
Robert L.Koegel他 (2012) は人は大体、療育中の良かったところだけ、または悪かったところだけを記憶しているものです。寝不足だったり、気分が悪いと、疑問に思うところばかりが目につくかもしれません。逆に、気分が良いと、結果良好と書いてしまうかもしれません。
ーー(中略)ーー
定期的で組織的なデータを収集することは有効な介入を維持させる力を持ち、効率の悪い介入の変更を助けてくれると述べました。
私もRobert L.Koegel他 (2012) に同意します。
私はデータをつけて支援する1番の理由は以下の理由からです。
確かにデータをつけるのは面倒かもしれない、上手く行っているときは別に気にしなくても良いかもしれないし、最悪つけなくても良いかもしれない。でも上手く行っていないときは?上手く行っていないことに気がつけないリスクが怖すぎて、「データを取らない」という選択を取れない
また逆に上手く行っているにもかかわらずそのときの調子などで判断し、上手く行っている介入を変更してしまうというリスクも大きい。
データをつけることでこのようなリスクを少なくすることができるでしょう。
データを付けることも慣れてくると習慣になるものです。
だんだんとデータをつけないと気持ち悪くなってきます・・・。
何もまとめてエクセルに打ち込め!
というわけではなくて、本当に手書きでメモしていくことや日記だけでも良いので、
一定期間しっかりと継続的につけることは大切です
ABA自閉症療育で簡易的にデータを取ってみよう
以上の理由からABA自閉症療育ではデータを取って療育を行うことを推奨します。
でもどういったことから始めていけば良いでしょうか?
以下、簡単であろうものをいくつか紹介し最後にデータをグラフ化することについても触れていきましょう。
ABA自閉症療育で簡易的にデータを取ってみよう・日記
いきなりデータを取ってみよう!と言われても何をすれば良いかわからないと思います。
かなり簡単な方法として寝る前に日記を書くことはお勧めです。
やってみるとわかりますが、1日5分ー10分ほどの時間しかかかりません。
何を日記に書くか?
いろいろな意見があるかと思いますが、例えば、
「お子さんの良いところ」、「今後変化して欲しいところ(今困っていることや今後成長して欲しいところ)」、「今の自分の気持ち」の3つで良いと思います。
「お子さんの良いところ」について
お子さんの良いところがないよと思う人もいるでしょう。
周りの人から見て良いところでも良いですし、お子さんの良いところは「笑顔が可愛い」とか「癇癪だけど自分の要求をしっかり表せる」とか「お父さんのことが好き」とか、あなたからみての良いところでも大丈夫です
できれば少なくとも毎日3つは書いてもらえると良いなと思います。
お子さんの良いところについては毎日書いていく中で毎日同じでも良いですが、できればお子さんの新しい良いところを探すように取り組みましょう。
これはどういった意味があるかと言えば例えば以下のイラスト、
このブログでは何度も出ていますが、お子さんの適切な行動を増やすことで不適切な行動を減らすという狙いがあります。
お子さんの良いところに対しての感受性を上げることは大切な療育態度の一つと言えるでしょう。
お子さんの良いところを意識することで褒めポイントを積極的に見つけて行けることが1つの狙いです。
「今後変化して欲しいところ(今困っていることや今後成長して欲しいところ)」について
この内容は1日目、いくつ書いてもらって大丈夫です。
自分が思う内容をノート(スマホでも大丈夫)に書いた後、自分が書いたものに対して優先順位をつけて、できれば3つー5つくらいに絞ります。
2日目以降に新しい変化して欲しいところが出てくればそれも追記して大丈夫ですが、
今後変化して欲しいところについての記録を追ってその変化を書いていくようにしましょう。
しかし例えば「発語がなく、話せるようになって欲しい」と思っていたとき、毎日同じことが続いているように感じ、日記も書くモチベーションが下がってしまうかもしれません。
もうこんな辛いことに直面化したくない!
という気持ちになってしまうかもしれませんね
このようなことを避けるためのポイントはあなた自身が「発語につながる何か」に注目しながらそのヒントを探し、それを日記に落とし込むことです。
例えば「今日は好きなクッキーの場所を見つけた。棚の扉を開けてクッキーを取ったけれど、蓋を開けることができず、泣いていたのでわたしが蓋を開けた」
などのエピソードでも実は「あけて」などを教える機会が新しくできたことを意味します。
言葉で「あけて」と言えなくとも最初は泣かずにお母さんに近づいていって腕を引っ張るでも、それは今後発語に繋がる新しい一歩です。
「泣いていた」という一見ネガティブに見える事象も、未来志向的に考えれば、ポジティブな側面を見せます。
このように未来のビジョンに向けて成長への変化への感受性を高くし、解決へのヒントを探していきましょう。
「今の自分の気持ち」について
今の自分の気持ちについても書き留めておくことは大切だと思います。
書き込む内容は、
「今日は良い1日だった。太郎がたくさん笑顔で過ごしていた」
や、
「今日の気分は最悪。太郎がすごい荒れていたし、幼稚園の先生からも家で◯◯を教えてくださと言われた。私も一生懸命やっているのに・・・」
など簡易的なものでも良いですし、
「今日は基本的には幸せだった。朝の目覚めも良かったし、ランチも美味しかった。お母さんと電話をしたことで、また前向きになれた。唯一ちょっと気になるのは、太郎が昨日ほどは言葉が少ないと思ったこと。でも太郎は笑っているし、太郎を見ると私も幸せになる。今幸せだと思っているけれど、この先どうなるんだろう?正直不安はある」
など詳細に書いても良いでしょう。
「簡易的に書くのか詳細に書くのかどちらが良いのか?」と言えば、どちらが効果的ということも人によると思いますが継続できることが最も大切です。
やりながら自分にフィットする文量を探っていくと良いでしょう。
人は、私もそうですが日によってコンディションが違います。
このようなコンディションは「睡眠不足」や「疲れ」、「生理周期」などで変わってくるなかなかコントロールの難しい部分でしょう。
イライラする日もあるしネガティブ感じる日もあるし、しんどい日はしんどいです。
見返したときに自身が大きな流れの中で実は喜怒哀楽を繰り返し、そういった大きな流れの中でコンディションを感じ生活していたことに気がつけるでしょう。
「ほんとうに最悪だ、今日は特に気分が悪い」という「最も悪いとそのとき感じている1日」は見直すと、実は過去にも近しい日で同じような日があったりします。
例えば「最近はずっと良いことがない」と思ったときに見返すと実は1週間前に調子が良かったことに気がつくこともあるでしょう。
こういったことは自分が瞬間瞬間の感情的な流れに振り回されることなく、大きな流れの中で毎日を過ごしていることを思い出させてくれる意味で大切です。
個人的に思う日記の注意点も書いておきます。
ここまで3点日記のポイントをご紹介してきましたが、
これはお子さんの良いところを書くことでブロックできる可能性が上がると思うのですが、日記は「お子さんの改善点に直面化もするため、その改善点をなんとかすることに思考が占有され過ぎて余裕がなくなる」と言った場合は注意が必要です。
日記を書くことで「瞬間瞬間の感情的な流れに振り回されることなく、大きな流れの中で毎日を過ごしていること」の感覚が逆に無くなり、心の余裕がなくなってしまう場合は注意してください。
既にかなり余裕がなくてしんどいと言った場合は個人的にTwitterからご連絡をいただければカウンセリングも受け付けますが、そういった場合はまずは自分のコンディションを整えることを優先することも大切です。
しっかり寝るとか、お風呂に浸かる。美味しいものを食べるとか、実家にお子さんを預けてちょっと映画を見に行ったりね
ABA自閉症療育で簡易的にデータを取ってみよう・できることリスト
日記の他にも例えばできて欲しい行動をリスト化しどの程度成功するのかを確認する。
このようなリストを用意しお子さんの現状を把握することも良いでしょう。
このような現状把握は「お子さんのできることをアセスメントする」と言われることもあります。
アセスメントは武藤 崇・坂本 真紀 (2011) を参考に平たく言えば、「子どものことを知る」ことです。
アセスメントで大切なことはアセスメントで得られた情報からお子さんの状態を理解し、いかに適切な介入に繋げられるかどうかだと思います。
今お子さんが上手くできる行動と上手くすることが難しい行動をアセスメントしていきましょう。
漠然と何を教えれば良いのか?ということがなくなり、教えて行くべき行動が明確になります。
個人的に大切だと思うことは1回で「できる/できない」を決めないということです。
例えば『「お勉強するよ」と言って自分から机に座れるか?』を1回チェックしてみてできなかったとき、「あぁできないな」と決めつけず、何回か試してください。
成功するときと失敗するときが混在するのならば、10回ほど行って80パーセントを1つの基準とし、80パーセント成功するようなら「多分できるだろう」と考えます。
しかし3回連続で失敗する場合には「多分できないだろう」と考え、チェックを打ち止めて良いでしょう。
上のイラストのリスト「成功した確率」のところも試行回数と成功回数が記載されているでしょう?
このように何度か行い、1回で判断しないことです。
以上のチェックをできれば日をあけて試してみるとさらに信頼度が上がります。
あなたにコンディションの影響があるように、お子さんにもコンディションの影響があるのですから、チェックをする日を開けることも視野に入れてください。
リストを作る上でどういったことができれば良いのか?
リストに入れる項目は何か?
についてはまた書いていければと思いますがケースバイケースになってきます。
1つ参考になることは周りのお子さんはどういったことができているかです。
もし発達年齢的に遅れがある場合は少し年齢の低いお子さんを観察することもヒントとなるでしょう
兄弟児がいる場合もヒントになります
どこで観察するか?
園で、公園で、道を歩いているとき
ヒントはたくさんあります
それをスマホを開いてメモして覚えておきましょう
1点気をつけた方が良いと思うことはママ友が言う情報の「我が子はこれができた」だけを信用してリストを作ることは気をつけましょう。
人は良いことは報告したいですが、悪いことはあまり報告したくないという心情があると思います。
もしママ友が言う情報の「我が子はこれができた」だけを参考にリストを作ると「情報からできた優等生」がリストになってしまうかもしれません。
うちの子は今、◯◯ができるようになったのよ!(◯◯はできないけれど、別にそれは言わなくてもいいか)
ママ友は言わないだけで、そのママ友のお子さんも何かしらの問題を抱え、お母様もご苦労されていることも多いと思います。
でもそれをわざわざ人に言うか?と、自分の立場になって考えてみてください。
こういう視点は持っておいて、聞くことも大切ですが実際に自分が観察したこともしっかりとリスト化するという気持ちでいてください。
お子様のできることを増やしていくために「何を教えていこうか」が明確になるということは新しい1歩を踏み出す上で大切なことです。
ABA自閉症療育で簡易的にデータを取ってみよう・ABC分析
山上 敏子 (1998) は行動の記録の仕方に決まった形式はありません。訓練をしていく上で必要な情報をわかりやすく記録していけばよいのです。しかし何が必要な情報かがわかりにくい場合があります。その時ははじめから記録の様式を作らずに「行動観察」から始めますと述べました。
この行動観察で使用するABAのメジャーな観察記録にABC観察記録というものがあるのですが、これは主に問題行動の機能のアセスメントに使用されます。
ABC観察記録は下のイラストの、
「A(Antecedent):行動に先立つ環境、先行状況などと呼ばれる」
「B(Behavior):行動」
「C:(Consequence):結果」
の3つのフレームに分けられた内容に分けて分析するため、3つの頭文字を取って「ABC観察記録」と呼ばれるものです。
田中 善大 (2015) を参考にすれば「B」の欄にお子さんの行動を書き、AとCの欄に行動の前後の状況を記載します。「B」の欄にお子さんの行動を書くので親御様や他のお友達の行動は「AとC」に書くことになります。
お子さんの行動(B)を主軸とし、その前(A)に何があったか?そして行動の結果(C)としてお子さんは何を得ているか?
を例えば簡易的に下記のようなシートを使って書いていきましょう。
ABC観察記録は特に「問題行動」の分析に力を発揮するでしょう。
気になっている問題行動があったときその前後をABC観察記録としてつけていきます。
例えば、
このようなデータが集まってきたとき少し突破口が開けます。
例えばこの場合は「ねぇねぇ」などを教えればもしかすると解決するかもしれないと考えることができるのです。
他には、
この場合は「いやだ」などを教えればもしかすると解決するかもしれないと考えることができるでしょう?
上の例のように特定の機能の行動を集められるとデータは綺麗にまとまるのですが、最初は難しいと思うので目についた問題行動全体の記録をつけていっても良いでしょう。
この分析は「これとこれは同じ問題行動の仲間かも?」と分類すると効果が発揮されます。
行動が生じた前後はどうだったかを捉え、問題行動の意味(機能)を分析するこのような方法は「機能分析」と呼ばれるものです。
「機能分析」についてはまた別の章で詳しく書いていきますが、問題行動を仲間分けし分析し、その仲間に対しての有効な介入を考えるという視点を持っていてくださいね。
ABA自閉症療育、データをグラフ化してみよう
以上紹介してきたものは文字データでした。
文字で書いてきましたが数値化はしていません。
日記、リスト化、ABC観察記録を用いて療育を行い、もう少しこだわりたい時はその行動データをグラフ化してみましょう。
・ 日記の場合・・・例えば1日の気分の調子等を10段階評価にしておき点数化し、グラフにする
・ リスト化の場合・・・教えたい行動のできた頻度やパーセンテージをグラフ化する
この項では一番メジャーなABC観察記録で観察する内容のグラフ化について書いていきます。
基本的には頻度を記録することが多くなると思いますので、以下は「問題行動の頻度」をデータ化する例だと思って読んでいってください。
この一手間を加えるとデータの使用は一層、輝き出します
グラフ化することは「目に見てわかる」というかなり優秀な方法で、読み解くことで今の介入が上手く行っているかどうかの予測を立てることが可能です。
以下、行動データをグラフ化するときに知っておきたいことを書いていきます。
↑↑別にエクセルとかじゃなくてもこのようにノートに手書き書き込んでも大丈夫です。
横線に頻度、縦線に日付、グラフ内にプロット、行動を測定する期間、これらを記載して作成し後は記録して行くだけ。
ABA自閉症療育、ベースラインデータ
ABAを用いて支援を行う姿勢についてJon・Baily & Mary・Burch (2006) は多くの点でその介入はその基礎となる行動分析とよく似ていると述べました。
Jon・Baily他 (2006) は臨床家と研究者のどちらもがベースラインデータを取り介入を実施し、介入を継続的に評価するとも述べています。
太文字で書いたベースラインとはDavid H. Barlow・Michel Hersen (1984)を参考にすれば特定の操作・介入を行わなずに標的行動の生起頻度をしばらく測定する期間です。
つまり「手を加えず」現在の状況の中でターゲット行動がどれくらい出現するか?のデータを測定する期間になります。
介入ではこのベースラインの期間と比較し、増・減を視覚的に分析(目で見て違いがあるかどうか)し、その介入が効果的かどうかを測るため、ベースラインデータは非常に重要です。
ABA自閉症療育で行動介入を始める前はベースラインデータを取ることをお勧めします。
このようなベースラインを取ることは「上手く行っていないことに気がつけないリスク」と「上手く行っているにもかかわらず介入を変更してしまうリスク」に対応するための手段です。
上のように頻度でもパーセンテージでも構いませんので現状、行動はどの程度出ているのかについて把握できるよう努めます。
頻度の場合は「同じ時間の中で何回出現したか?」を意識しましょう。
時間や場面を統制しないと頻度をとっても取れるデータの質がバラバラで信頼性が下がってしまいます。
良く疑問になるのはどれくらいの期間のベースラインデータを取る必要があるかという疑問です。
また「シングルケーススタディ」の章で詳しく書いていきますが例えば、
Ghaleb H. Alnahdi (2013) は最低3つは必要であると述べており、Michele A. Lobo・Mariola Moeyaert・Andrea Baraldi Cunha・Iryna Babik (2017) は少なくとも5つあることが望ましいと述べています。
1日の中で3−5回取れることもあると思いますが特に特別な理由がない場合、問題行動に関してはイラストのように日を分けた方が良いでしょう。
また、
ベースラインデータが安定しないまま介入に進んでも介入がうまく行かないことが多いです。
そのため例えば以下のようなベースラインデータとなった枚は注意してください。
もしベースラインデータが安定しない場合は注意が必要でなぜ安定しないのか、「行動の定義が良くない?」、「睡眠不足など大きく他の要因が混ざっている?」など安定しない理由を考えましょう。
安定しないベースラインデータの例は他にもありますが、それは別で書いて行くシングケーススタディの章で紹介していきます。
安定したベースラインデータを少なくとも3−5回取れたのちに、その際にABC観察記録で介入法の目処が立っていれば介入スタートです。
このとき介入法を決めるときに参考にするのがABC観察シートとなります
介入法についてはこのブログ内で多分すでに10以上は方法を書いてきましたので、
フィットする方法を探す参考にしてください
問題行動のデータは以下のようになれば良い感じです。
上のイラストのように「逃避・回避」で両親に対して暴言が増えていたとしましょう。
上のイラストのような問題行動を減らすために代替行動として何の行動を強化していくか?を考えて介入してください。
問題行動の介入ではイラストのように上手く行ったときは問題行動は減っていき、代わりに適切な行動が増えて行くはずです。
問題行動解決のヒントとして介入の選択基準を書いたページURL、
「(ABA自閉症療育の基礎69)ABA自閉症療育、問題行動の解決方法導入推奨手順、問題行動を解決しよう(https://en-tomo.com/2020/12/30/problem-behavior-intervention-procedure/)」を記載しておきますのでぜひ参考にしてください。
行動のデータはどういった推移を見せるか?
最後にデータがどのような推移を描く可能性があるか?についても知っておきましょう。
例えば問題行動が、
上のグラフを描けば介入効果としてはわかりやすいですね。
データを簡単に読み解けます。
またもっと極端に、
このようなグラフはあり得ないかと言えば「先行子操作」がカッチリハマった場合にこのようなデータになる可能性もあり得ますが、
基本的にはこのブログページで書いてきたようにギザギザとしたグラフを書いて減って行くことも多いでしょう。
そのため昨日よりも悪くなったデータが今日出たとしても焦ってはいけません。
このように「昨日より悪くなる」ということは良い介入を行なっていても生じるのですが、このことに焦らなくなる(長い目で見れば減っていることが確認できる)だけでもデータをグラフ化する意味があります。
例えば、1週間等の長いスパンのデータと比較して見るようにしましょうね
さいごに
Shira Richman (2001) は自閉症の子どもたちにABAを用いることに関しては多くの研究がなされてきており、これらの研究は群間比較のような統計研究ではなく、セラピーの対象となっている何人かの子どもたちについて、彼らの行動を様々な時点で観測し、セラピーが行動にどのように影響しているかを示す客観的なデータを収集し、グラフで示していくと述べています。
Shira Richman (2001) が述べているようにグラフを書きながらABA自閉症療育が行えればそれが良いでしょう。
でも面倒臭いと思ったときはまずこのブログページでグラフにする以前にご紹介した日記やできることのリスト、ABC観察記録から始めてみてください。
このブログページで書いてきたデータの採集方法はほんの一部分でしかありませんが、それでも実践していけばABA自閉症療育において大きな一歩となり、積み上げて行くことで大きな価値を受けることができる内容です。
ABA自閉症療育は地道に、道を間違えないようにしながら進んでいく方法となります。
道を間違えないように、慎重にデータを取って行っていくのです。
このブログページで書いたどれか1つでも良いので実践してみてください
それだけで少しあなたのABA自閉症療育に変化が生じるはずです!
次のページでは複数の問題行動が出現しているとき、何から扱って行くかということをテーマに書いていきます。
【参考文献】
・ David H. Barlow・Michel Hersen (1984) SINGLE CASE EXPERIMENTAL DESIGNS; Strategies for Studying Behavior Change 2/ed 【邦訳: 高木 俊一郎・佐久間 徹 (1988) 一事例の実験デザインーケーススタディの基本と応用ー 二瓶社 (改訂 2008)】
・ Donald M. Baer・Montrose M. Wolf・Todd R. Risley (1968) SOME CURRENT DIMENSIONS OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS1. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS. 1 p91-97 No. 1
・ Ghaleb H. Alnahdi (2013) Single-subject designs in special education: advantages and limitations. Journal of Research in Special Educational Needs
・ Jon・Baily & Mary・Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー 岩崎学術出版社】
・ Lisa McNiven(2016)Effects of Applied Behavior Analysis on individuals with Autism. http://gcd.state.nm.us/wp-content/uploads/2018/05/Effects_of_Applied_Behavior_Analysis_on_individuals_with_Autism.pdf
・ Michele A. Lobo・Mariola Moeyaert・Andrea Baraldi Cunha・Iryna Babik (2017) Single-Case Design, Analysis, and Quality Assessment for Intervention Research. Journal of Neurologic Physical Therapy. 41(3) p187–197
・ 武藤 崇・坂本 真紀 (2011) 学校を「より楽しく」するための応用行動分析ー「見本合わせ」から考える特別支援教育ー ミネルヴァ図書
・ Robert L.Koegel・Lynn kern Koegel (2012) Pivotal Response Treatment for Autism Spectrum Disorders 【邦訳 小野 真・佐久間 徹・酒井 亮吉 (2016) 発達障がい児のための新しいABA療育 PRT Pivotal Response Treatmentの理論と実践 二瓶社】
・ Shira Richman (2001)Raising aChild with Autism A Guide to Applied Behavior Analysis for Parents 【邦訳: 井上 雅彦・奥田 健次(2009/改訂版2015) 自閉症スペクトラムへのABA入門 親と教師のためのガイド 株式会社シナノ パブリッシング プレス】
・ 島宗 理 (2019) 応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学 新曜社
・ 田中 善大 (2015) 「編:日本行動分析学会 責任編者:山本 淳一・武藤 崇・鎌倉 やよい ケースで学ぶ行動分析学による問題解決 金剛出版 p54-55」
・ 山上 敏子 (1998) 発達障害児を育てる人のための親訓練プログラム お母さんの学習室 二瓶社