「(ABA自閉症療育の基礎70)言葉の遅れの少ないお子さんへの適正行動増・問題行動減の療育支援ホームワーク(面接・SST・行動契約)(https://en-tomo.com/2021/01/03/hf-homework-setting/)」
では「面接、SST、行動契約」を通してお子さんとホームワークを組む設定を見てきました。
どのようにしてホームワークを組んでいくのか?を見てきたのですが、このブログページでは「SST:Social Skill Training (社会的スキル訓練)」に焦点を当てて書いていきます。
最初に「コーチング」を使用したSSTについて少しご紹介していきましょう。
その後「コーチングを使用したSST」とは少し違う、個人的にお勧めしたいSST設計をご紹介していきます。
コーチングを使用したSST
・ 児童の抑うつ予防(石川 信一・岩永 三智子・山下 文大・佐藤 寛・佐藤 正二, 2010)
→ 上手な聞き方、あたたかい言葉かけ、上手な頼み方、上手な断り方、教師に対するスキルが練習された
・ 孤独感の低減(金山 元春・後藤 吉道・佐藤 正二, 2001)
→ 社会的な働きかけスキル(上手に話しかける)、葛藤解決スキル(上手く褒める)、規律性スキル(ルールや決まりを守る)、葛藤解決スキル(気持ちを分かち合う)のスキルが練習された
・ 攻撃行動の減少(高橋 史・小関 俊祐・嶋田 洋徳, 2010)
→ 問題の解決策をたくさん出すこと、リラクゼーションのスキルが訓練された
など様々な目的でスキルの訓練が行われます。
このようなソーシャルスキル訓練(SST)が行われ行動の変化が報告されてきたことは大切なことでしょう。
余談ですが私が学生の頃に学部時代の卒業論文をSSTで書きました
ちょうどこれらの論文も参考文献にしていたように思います
以上の文献は全て「コーチング法という手法を使用したSST」を行なった研究なのですがコーチング法を使用したSSTとはどういったものでしょうか?
佐藤 正二・佐藤 容子 (2006) によれば以下の流れで行われます。
※ (” ”の括弧内は私の意見)
1 対象児を選ぶ ”だれに行うか決める”
2 指導すべき社会的スキル(ターゲットスキル)を決める ”何を教えるか決める”
3 指導用の教材(問題場面を描いたもの)を準備する ”紙芝居などのストーリーが表されるものが多いです”
4 ルールを決める、教示を与える ”恥ずかしがらずにやろう、とか、今日は◯◯について練習しましょうと言ったようなことを伝える”
5 主人公の用いたスキルについての話し合い ”ストーリー上で語られたエピソードのどこがまずかったとか、どこがよかったとかを話し合う”
6 モデル提示 ”ターゲットスキルの適切なモデルを見せる”
7 練習とフィードバック ”実際にスキルを使用する練習をして、機能するよう微妙なところをフィードバックしていく”
8 役割交代 ”集団にSSTを行う場合は、全ての子どもがスキル使用の練習ができるよう、スキルを使う側、使われる側を役割交代で行なっていく”
9 日常場面での般化を促す ”学校でも家でも使えるよというように、様々なところでスキルを使用するように促す”
以上のような要素を使用したものが「コーチングを使用したSST」と言えると思います。
以上の内容はすごくヒントになりました。
そのため以下説明をしていく私が行なっているSSTも「コーチングを使用したSST」の要素がいくつも取り込まれています。
このようなSSTは対個人ではなくグループに対して行うように設計されているのですが、上の内容を対個人に使用することも可能でしょう。
でもこのブログページでは上の内容ではなく、ちょっと改変した私が行なっているSSTをご紹介していきます。
私が行なっているSST
私がこのブログページを通して教えたいと思っているSSTは上のものとは違うものです。
SSTを行うときには大きく分けて2つの目的があります。
佐藤 正二他 (2006) を参考にすれば、
・ 社会的スキルの発達を促し社会性を高めること
・ 社会的スキルの不足が深く関係していると思われるいじめ、不登校、うつ、ひきこもりなど将来の不適応行動の出現を予防すること
の2つの目的でがあり、
・ 現在ある問題に取り組むSST
・ 将来起こるかもしれない問題を予防するSST
に分けられます。
上でご紹介をした
石川 信一他 (2010) 、金山 元春他 (2001) 、高橋 史他 (2010) は「将来起こるかもしれない問題を予防するSST」に分類されるものでしょう。
私がお伝えしたいSSTは前者「現在ある問題に取り組むSST」です。
そのため「一般的にこうだろう」というスキルを教えるのはそれはそうなのですが、できるだけその子個人に合わせたスキルを採用し教えていくことを目指します。
下で解説しますが「お子さん個人の持っているナチュラルなスキルを採用する」ことを意識して行なっているのですが、
例えばお友達が自分の使いたいおもちゃを使っているシチュエーションを考えてみてください。
このとき適切な社会的スキルとは何でしょうか?
・ 「貸して」と言う
・ 「一緒に遊ぼう」と言う
・ お友達が使っているから別のおもちゃを探す
・ 近くでお友達が使い終わるのを待つ
多分最初に思いついたのは「貸して」と言う、ではなかったですか?
でも、意外にも適切な社会的スキルは1つではないものです。
まず社会的スキル、ソーシャルスキルとは何か?
小林 正幸・宮前 義和 (2007) を参考にすれば、
「良好な人間関係を作り、保つための知識と具体的な技術やコツ」を「ソーシャルスキル(Social Skill)」と呼ぶ。「ソーシャル」は「社会的な」「人付き合い」「人間関係上の」「対人的な」を意味する。
また「スキル」は「知識や経験に裏打ちされた技能」を意味し、生得的ではなく、それまで学んだ「知識」や「技術」の意味が強い。
小林 正幸他 (2007) から学ぶ大切なことは、
・ 対人場面で使用する
・ 学ぶことができる、生得的な能力ではない
という点だと思います。
SSTで教えていく内容は生まれ持った才能ではなく、トレーニングによって培っていける技術です。
「自閉症児や発達に遅れのあるお子さんへは社会的スキルをSSTでいろいろと教えていかなければいけないし、ちょっと大変だな」と親御様は思ったでしょうか?
でもSSTは自閉症児に限って必要な練習と言えないと思います。
例えば本屋さんに行くと、
・ 異性とうまくやる恋愛術
・ 上司に好かれる仕事術
・ 初めて会う人に「凄い人」と思われるための本
・ 部下をやる気にさせる方法
・ 人から好かれる秘訣とは?
などのタイトルを目にしたことがあるでしょう?これは広い意味で言えばSSTと言え、お子さんだけでなく多くの大人も悩んでいることなのです。
対人スキル、人との上手いコミュニケーションの取り方とは「それができれば優秀」と言われるほどにみんな上手くできずに悩む、そういった能力となります。
私自身も悩むことは多いです
生活をしていてもっと、上手くできないものかね?とか「あの人すごいなー上手くやっているな」って、思う毎日です。
人との関わりについては万人が悩みを持っているものと言えると思います。
だからSSTをするのは自閉症児だからとか、そういった特別な支援でないということは覚えておいて欲しいです。
このブログページでも太郎くんに出演してもらいましょう。
太郎くん
小学校2年生の太郎くん。
太郎くんは一人っ子で3歳の頃に自閉症スペクトラムと診断が下り、お友達と関わることが年少、年中さんのころはほとんどありませんでしたが、年長さんくらいから周囲のお友達に興味が出てきたのかお友達への関わりが増えてきました。
しかしお友達との関わりは決して適切と言えるものではなく、お友達の遊んでいるところに行って作っている作品を壊す、突然身体を触る、自分の話を一方的にするなどが目立ちました。
お友達が泣いてしまうこともあり、お母さん・お父さん、先生から怒られることが繰り返されるうちに「僕はお友達は嫌い」というようになり、小学校に入ってからは休憩時間、お友達と遊ぶのことはなく1人で校庭の隅でずっとうろうろとして過ごしていました。
お母さん・お父さん、担任の先生は心配をしていましたが、「学校は楽しい?」と聞くと太郎くんは必ず「楽しい」と言います。
今年受けたIQテストの結果では、太郎くんのIQは100という数値でした。
SSTでソーシャルスキルを教えるコツ
「(ABA自閉症療育の基礎70)言葉の遅れの少ないお子さんへの適正行動増・問題行動減の療育支援ホームワーク(面接・SST・行動契約)(https://en-tomo.com/2021/01/03/hf-homework-setting/)」
では太郎くんに好きなお花を先生・お友達に見せに行くという設定で書いていきましたが、このブログページでは教えたいスキルを変えましょう。
教えたいスキルは「お友達が遊んでいるところに、一緒に遊ぼう」と誘いかけるいわゆる「エントリースキル(Entry Skill)」にします。
「エントリースキル」は対人コミュニケーションでお友達に働きかけることを教えるタイミングで、ほとんどの自閉症児のお子さんに対して教える社会的スキルです。
「エントリースキル」含めソーシャルスキル使用については定番の内容があるのですがソーシャルスキルを教える際は
・ 相手を見て行う
・ 相手に聞こえる声で行う
・ 相手の注目を得てから(例えば、「ねぇ」と言ったり肩を叩いたり)してから行う
・ 笑顔など、相手が受け入れやすい表情で行う
・ 大きすぎず、小さすぎず、適切な音量、リズム、抑揚で行う
・ 思った通りにならなくても焦らない
のような形を意識して教えることが大切です。
ソーシャルスキルで最も重要なことは「機能すること」、つまり「結果が上手く付いてくるやり方」のスキルを教えることだと思います。
上記のオレンジ色の内容は「結果が上手く付いてくる」ためには必要なことです。
エントリースキルを子どもに教えるとき?どういったことに注視すべきでしょうかを以下、見ていきましょう。
太郎くんにSSTでソーシャルスキル(SS)を教える
太郎くんが興味がある活動をお友達が行なっているとき、太郎くんがそのお友達に対して、
「僕も入れてよ!一緒に遊ぼう」
と言え、且つお友達が受け入れてくれたのちに、楽しく一緒に遊びの時間を過ごすことが理想形でしょう。
このように「僕も入れてよ!一緒に遊ぼう」と言って一緒に遊べれば良いですよね。
まず最初はお友達から受け入れられ、一緒に遊べる理想的なストーリーを結果として返し練習していきましょう。
私:じゃあ「一緒に遊ぼうって言ってみたら?」
太:「うん。わかった」
私:(太郎くんの好きなおもちゃで遊んでいる)
太:「一緒に遊ぼう」
私:(笑顔で)「うん、一緒に遊ぼう!」
と言った感じで練習をしていきましょう。
スキルを使って成功する体験が大切です。
一緒に遊ぶことが楽しいと感じられるように数回(早い子であれば2−4回くらい)はこのシチュエーションで、太郎くんが「お友達と一緒に遊ぶのは楽しいな」と思えるSSTを実践していきます。
太郎くんが練習した内容を成功体験と捉えられることが最も大切です。
ある程度太郎くんの中で「上手くできるだろう(上手くできなかったとしてもちょっと頑張ろうと思える)」という様子が見られたとき、
この様子の見極めはなかなか難しいですが、私はSSTのときに太郎くんから私が「できそう?」や「うまくできるかな?」と聞いたときに早い潜時時間で「大丈夫だよ」「できるよ」など返答があることは1つのサインとしています。
このような太郎くんも自信を持ってきただろうなというサインが見られてきたら、次の設定に進んで行きましょう。
このようなやりとりの中で佐藤 正二他 (2006) の内容で示された内容の「モデル提示」や「練習とフィードバック」、そして最後に「日常場面への般化推奨」を行なっていくのですが、
このことについては次のページで書いていきます。
ナチュラル(自然)なスキルを教える
数回このようなシチュエーションで練習を行ないこのようなサインが確認できたとき、
太:「一緒に遊ぼう」
私:(無視)
といった実際に太郎くんがお友達に対してスキルを使用したときに起こり得るシチュエーションを持ち込みます。
お子さんによってはこのシチュエーションに持ち込む前に、
私:「太郎くんが一緒に遊ぼって言ったとき、もしお友達が聞いていない様子だったらどうする?」
など聞いて見通しを与えることもありますが、
私はとりあえずほとんどの場合はそのような見通しを与えることなく、無視のシチュエーションを持ち込んで反応を見ることが多いです。
この辺は見通しを与えたほうが良い?与えないほうが良い?正解は何?ということは支援者の好みの問題かと思い、どちらにもメリット・デメリットがあるでしょう。
お子さんはこのとき、
・ 「ねぇ、一緒に遊ぼう」ともう一度大きな声で言う
・ お友達の目の前に回り込んで、「僕も一緒に遊びたいな」と優しい声で言う
・ 「今度、また一緒に遊ぼうね」と言ってあきらめる
・ 友達が許可していないのに勝手に遊びに入っていく
・ 「聞こえてるのか?馬鹿野郎!」と暴言を吐く
・ 固まってそのまま動かなくなる
などいろいろなパターンを示します。
オレンジ色は適切で、紫色は適切ではありませんね。
適切でも不適切でも、このときに出てきたスキルはお子さん本人が考え出したナチュラルなスキル(自然なスキル)で、誰から教えられたと言うより自分で考えたスキルと言えるでしょう。
私はこのナチュラルなスキルというものをとても大切に考えています。
お子さんの個性というか、人によって使用するスキルは違うのです。
だからお子さんが自身で考えたスキルが社会的スキルとして通用しそうだったときに、
「あぁ、いいねそれ!それで行こう!それで成功するよ」と後押しをしてあげることを、SSTを行なう際にこだわっています
研究論文で「ナチュラルなスキル(自然なスキル)」を選択するほうが良い、という内容を見たわけではないですが、
ナチュラルなスキルを選択してあげた方が日常場面に般化しやすいと思うからです。
ソーシャルスキルは使用して成功することが最も大切なことですので、それを最重要しながら、以上のような私自身のセラピストとしての色を出すようにしていますが、
お子様本人が考えたナチュラルなスキルで機能するのであればそれで行きたいです。
もしお子さんが出してきたナチュラルなスキルが紫色の適切ではないもの(機能しないであろうスキル)であった場合は
「一緒に遊ぼうってもう一回言ってみるとか、お友達の目の前に回り込んで言ってみたら?」と適切なスキルをお子さん自身が選択してできるだけナチュラルな形のスキルを練習するようにします。
太郎くんが上手に「エントリースキル」を使用してお友達に関わることを自信を持ってできるようになってきたとき、
太郎くんが「エントリースキル」を使用しても「無視」をされるなどの「エントリースキルが受け入れられる」とは違うパターンを練習し、分岐パターンでどのようにするか教えていきましょう。
さまざまな分岐を作ってSSTを練習する
上でも書いた内容ですが
まず最初はお友達から受け入れられ、一緒に遊べる理想的なストーリーを結果として返し練習し、上手くできるようになってきたら、
次に「無視をされる」という別バージョンのシチュエーションを練習することを紹介しました。
SSTでは以下の例のようにいろいろなパターンを練習していきましょう。
SSTで教えるエントリースキルのいろいろな分岐パターン
パターン1:エントリースキル成功パターン
太:「一緒に遊ぼう」
私:(笑顔で)「うん、一緒に遊ぼう!」
まず最初に練習するのがこの「パターン1:エントリースキル成功パターン」でしたね。
パターン2:エントリースキル無視をされるも、もう一度言うと受け入れられるパターン
太:「一緒に遊ぼう」
私:(無視)
太:「(さっきより大きな声で)ねーねー、僕も入れて」
私:(笑顔で)「うん、良いよ!」
例えば「一緒に遊ぼう」と言っても相手に聞こえていない場合もありますから、ちょっと大きな声でもう一度行ってみるのは良いと思います。
パターン3:エントリースキルを使用するが、受け入れられないパターン
太:「一緒に遊ぼう」
私:「今日は◯◯ちゃんと2人で遊ぼうってお約束だったからダメ」
太:「今度、また一緒に遊ぼうね」
私:(笑顔で)「うん、良いよ!」
受け入れられない場合はあきらめることの分岐を入れておいても良いでしょう。
あまり好みではありませんが「先生に入れてくれないと言う」というスキルを選択することもあります。
パターン4:エントリースキル無視をされもう一度トライするも、受け入れられないパターン
太:「一緒に遊ぼう」
私:(無視)
太:「(さっきより大きな声で)ねーねー、僕も入れて」
私:「今日は◯◯ちゃんと2人で遊ぼうってお約束だったからダメ」
太:「今度、また一緒に遊ぼうね」
私:(笑顔で)「うん、良いよ!」
無視されても一度トライし、それでも難しい場合は引くパターンです。
パターン5:エントリースキルを使用するも、攻撃的な反応をされる
太:「一緒に遊ぼう」
私:「うるさい。お前とは遊ばない」
太:「なんでそんなこというの?」←理由を聞くスキルは挟んだほうが良いと思います
私:「うるさい。あっちいけ」
太:「わかった」
私:「バイバイ」
太:(その後、先生に言いにいく)
このようなパターンも練習しておくのは良いと思います。
このようなパターンはお子さんにも負担がかかりますので「今から練習するのは太郎くんちょっと嫌な気持ちになっちゃうかもしれないけど、頑張ってみてね」
と事前に伝えるのは良いと思います。
最終的に子どものSSTでは「先生に言う」、「お母さんに言う」など最終手段は教えておきましょう。
お子さんが教えたいスキルを使用していない理由に注目する
SSTで社会的スキルを教えるときにもう1つ気をつけておきたいことがあります。
SSTではお子さんが今、行なっていない(使えていない)社会的スキルを教えることになるはずです。
お子さんが日常で社会的スキルを使用していない理由をざっくり分けると2つに分かれると思います。それは、
(1) そのスキルを使用すれば良いことを、知らないのでスキル使用しない
(2) そのスキルを使用すれば良いことは、知っているがスキル使用しない
の2つです。
特に(2)そのスキルを使用すれば良いことは、知っているがスキル使用しないの場合は、
1、他に良いスキルがあるのでそのスキルを使用している
→ 例えば、「一緒に遊ぼう」というのではなく「泣くこと」で優しくしてくれる女子(例「太郎くんも一緒に遊ぼうね」などの声かけがある)がいるため「一緒に遊ぼう」というスキルを持っていたとしても使用しない
2、スキル使用を回避している、または抑制されている
→ 例えば、過去に「一緒に遊ぼう」と言って失敗し傷ついていたり、ひどい目にあった友達を見たことがあるなど、スキルを持っていたとしてもスキル使用を回避していたり、抑制されており使用しない
3、頭ではわかってはいるけれども、実際にやったことがないので動機づけが上がらない
→ 例えば、魚の捌き方などを動画で見て知っていたとしても、実際にやってみようと思って実践することはハードルがあるでしょう。頭でわかっていても1回やったことがあるかないか、ということではスキル使用のハードルが違うと思います
の3点が考えられるでしょう。
(1) そのスキルを使用すれば良いことを、知らないのでスキル使用しない
場合はうまく教えていけばスキル使用をしてくれるケースも多いですが、
(2) そのスキルを使用すれば良いことは、知っているがスキル使用しない
場合はスキル使用のモチベーションを上げるための面接など他の手続きが必要になってくることもあります。
(2)の中でも、
3、頭ではわかってはいるけれども、実際にやったことがないので動機づけが上がらない
場合は練習をすれば良いのでそんなに重要ではないと思いますが、
1、他に良いスキルがあるのでそのスキルを使用している
2、スキル使用を回避している、または抑制されている
の場合は気をつけた方が良いかもしれません。
教えている社会的スキルをお子さんが使用しないのは「スキルを知らない」からなのか「スキルは知っているものの使用していないのか」は大切ですので、SSTを行うときに意識してみてください。
例えば簡単な方法としては「太郎くんってウノ好きじゃない?お友達がウノやっていて、僕もやりたいなって思ったらどうすれば良い?」など質問をしてきて適切なスキルを答えられるかどうか聞いてみて、
適切な答えが出てきたら「お友達に最近、言ったことある?」や「じゃあやってみようよ」と面接たロールプレイの中でアセスメントすれば良いと思います。
やっていくと上手くできるようになりますので、親御様側もトライアンドエラーで実際にやってみてください
さいごに
大人に対してスキルを使用するときと、対子どもでスキルを使用するときでは全然違うでしょう。
お子さん自身も感じているのか、やはり大人に対してスキル使用するときよりも対子どもにスキル使用をするほうが緊張するように感じています。
対子どもは適切なスキルを行なったとしても必ずしも、支援者側が想定した結果を返してくれるとは限りませんし、予想外の反応が返ってくることもあるでしょう。
そのためいろいろな分岐に対応できるよう練習を行い準備するようにしましょう。
また社会的スキルをお子さんが使用しないのは「スキルを知らない」からなのか「スキルは知っているものの使用していないのか」の見極めは大切ですので、SSTを行うときに意識してみてください。
次のページでもSST引き続きについて書いていきましょう。
次のページでは佐藤 正二他 (2006) の内容で示された内容の「モデル提示」や「練習とフィードバック」、「日常場面への般化推奨」を行なっていくプロセスを書いていきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
・ 金山 元春・後藤 吉道・佐藤 正二 (2001) 児童の孤独感低減に及ぼす学級単位の集団社会的スキル訓練の効果 行動療法研究 第26巻 第2号 p83-95
・ 小林 正幸・宮前 義和 (2007) 子どもの大人スキルサポートガイド 感情表現を豊かにするSST 金剛出版
・ 石川 信一・岩永 三智子・山下 文大・佐藤 寛・佐藤 正二 (2010) 社会的スキル訓練による児童の抑うつ症状への長期的効果. 教育心理学研究 58, p372-384
・ 佐藤 正二・佐藤 容子 (2006) 学校におけるSST実践ガイド 子どもの大人スキル指導 金剛出版
・ 高橋 史・小関 俊祐・嶋田 洋徳 (2010) 中学生に対する問題解決訓練の攻撃行動変容効果 行動療法研究,36(1)p69−81