(ABA自閉症療育の基礎2)研究は現在も進行中

「(ABA自閉症療育の基礎1)ABAから見る行動の種類「レスポンデント行動とオペラント行動」(https://en-tomo.com/2020/07/11/learning-theory-respondent-operant1/)」

で、行動はレスポンデント行動とオペラント行動の2種類に分けられると書きました。

このページで伝えたいことはレスポンデント行動の研究、オペラント行動の研究については現在(2020年)も続いており、未だ全ての事象が分かっているわけではないということです。

当たり前のことかもしれませんが、例えば今インターネット技術は私たちの生活を豊かにしてくれています。しかし既にインターネット技術はもう研究する余地が残っていないのか?と言えばそんなことはなく、科学技術というものは常に進化の途中にあり、研究によって明らかになっていく中でどんどんと便利になっていきます。

同じようにレスポンデント行動の研究、オペラント行動の研究についてもまだわかっていないことや研究途中のことがあるのです。


私はABAを勉強していく中で「これってどうなんだろ?」と思って何冊も本を読んでも正解が載っていないのでモヤモヤするという経験がありました。

しかし「まだわかっていないこともある」ということを知ることで「まだわかってないところかも」と思うことができるようになりました。

ABAに限ったことではないかもしれませんが疑問を持って何冊か専門書を読みあさっても答えが見つからないことはあります。

あなたも私と同じような壁にぶつかることがあるかもしれません。

「まだわかっていない」ことがあることをこのページでは知っていきましょう。


現在も研究が続いています


レスポンデント研究とオペラント研究

原本まで手に入れられていませんがレスポンデント行動の研究はI.P. Pavlovが1927年、オペラント行動の研究は少なくともB.F. Skinnerによって1932年には既に始まっていました参考 B.F. Skinner, 1963 & 今田 寛・中島 定彦, 2003)。

今から100年ほど前から研究は始まっていました。

レスポンデント研究とオペラント研究と言われてもパッとしないかもしれません。

レスポンデント研究で有名なのは「パブロフの犬」というキーワードです。オペラント研究は「スキナーボックス」を使用したネズミを使った研究が有名でキーワードと呼べそうです。

もしかすると「パブロフの犬」や「スキナーボックス」というキーワードをGoogle等で検索してみると「あー、大学で心理学の授業でやったなぁ」と思い出す人も多いかもしれません。



レスポンデント行動

レスポンデント行動を引き起こすための方法の1つはレスポンデント条件付けという方法で、この方法は別名「古典的条件付け」とも呼ばれる方法です。

「古典的条件付け」と呼ばれるこの条件付け理論ですが、全く古くなく現在も研究が続いています。

I. P. Pavlovから始まったレスポンデント条件付けの研究ですがその後R.A Rescorla & A.R Wagner、N.J Mackintosh、J.M Pearce、R.R Millerなどの研究者がそれぞれレスポンデント条件付けモデルを考え発展をさせていきました(参考 今田 寛・中島 定彦,2003)。

比較的新しい2015年になっても神前 裕・時 暁聴・松井 大・ 新保 彰大・藤巻 峻 (2015) が古典的(レスポンデント)条件付けと時間との関連についての考察を論文で行なっています。

レスポンデント条件付けと時間との関係については、これから研究してわかっていくことが残っているという印象を持ちました。

私は基礎研究の分野については教科書レベル(論文を読み包括的に知っているというレベルには達していない)ですが、レスポンデント条件付けについて時間との関係以外にも残っている研究分野はあります



オペラント行動

オペラント行動を引き起こすための方法の1つはオペラント条件付けという方法で、この方法は別名「道具的条件づけ」とも呼ばれる方法です。

「オペラント条件付け」はB.F. SkinnerE.L. Thorndikeの発見した「強化の原理」(「効果の法則」)についての研究を行い「強化」についての基本的かつ重要な性質を多く発見し、強化を通じて行動が強められる手続きについて「オペラント条件付け」という用語を使用したところからはじまりました(参考 James E. Mazur, 2006)。

例えば現在もオペラント条件付けの基本ユニットである「確立操作(Establish operation)」というものの研究(参考 Kenneth W. Jacobs ・ Zachary H. Morford・James E. King,2019)が行われています。

また2015年、藤巻 峻・新保彰大・松井 大・ 時 暁聴・神前 裕 (2015) がオペラント条件付けにおいても時間との関連について論文で考察を行いました。

オペラント条件付けにおいても、レスポンデント条件付けと同じようにまだ今も研究が続いている分野があります



最後に

実際レスポンデント条件付けもオペラント条件付けも全てを説明する最適なモデルの解明はまだですが、既にわかっている知見を使って療育支援を行なっていくことで充分効果が期待できます。

N.Torneke (2009) は著書の中でABAの基本原理は「オペラント条件付け」と「レスポンデント条件付け」だと述べていました。

「オペラント条件付け」と「レスポンデント条件付け」を使いABA療育は今までエビデンスを蓄積してきました。

※ ABA療育のエビデンスは「ABA自閉症療育のエビデンス(https://en-tomo.com/aba-therapy-evidence/)」を参照

「学習理論」の章では「レスポンデント条件付け」からはじめ、次いで「オペラント条件付け」について学んでいきましょう。



【参考文献】

・ B.F. Skinner (1963) Operant behavior. American Psychology, 18, 503-515 【邦訳 スキナー著作刊行会 (2019) B.F. スキナー重要論文集 Ⅰ 勁草書房

・ 藤巻 峻・新保彰大・松井 大・ 時 暁聴・神前 裕 (2015) 条件づけにおける時間 II ―オペラント計時行動,および時間学習の神経機構― The Japanese Journal of Psychonomic Science, Vol. 34, No. 1, 78–90

・ 今田 寛・中島 定彦 (2003) 学習心理学における古典的条件づけの理論 培風館 p1, p1-178

・ Kenneth W. Jacobs ・ Zachary H. Morford・James E. King (2019) Disequilibrium in behavior analysis: A disequilibrium theory redux. Behavioural Processes Volume 162,197-204

・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店】

・ 神前 裕・時 暁聴・松井 大・ 新保彰大・藤巻 峻 (2015) 条件づけにおける時間ーⅠー古典的条件づけ The Japanese Journal of Psychonomic Science, Vol. 34, No. 1, 60–77

・ James E. Mazur (2006) LEARNING AND BEHAVIOR:6Th ed. 【邦訳 磯 博行・坂上貴之・川合伸幸,訳 (2008) メイザーの学習と行動 日本語版 第3版 二瓶社】