私の経験では
子育てのストレスは低い方が良いですよ
あまり怒らず基本は褒めて育ててあげてください
と親御さんに伝えると
そんなことは頭ではわかっています
けれども、それがなかなかそれができません
と返されることが多い。
だから今はそういった言い方はあまりしなくなった。
親御様もイライラしてお子さんと関わってはいけないと思いながらもなかなか自分自身をコントロールできない。
そのために悩みを抱えてしまうケースも多いだろう。
ここからのページで紹介する研究はそのようなストレスをどう扱えば良いかの1つのヒントを教えてくれる。
いろいろな方法があるのだろうが1つ方法を知っているだけで強みになるだろう。
ここからのページからは新しく「マインドフル(Mindfulness)」と「PBS(Positive Behavior Support:ポジティブビヘイビアサポート)」という言葉が出てくる。
このページではまず簡単に「マインドフルネス」について解説をする。
マインドフルネスとは?
熊野 宏昭 (2020) によれば「マインドフルネス」とは「今の瞬間の”現実”に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる心の持ち方、存在の有様」である。
「マインドフルネス」の参考書が数点家にあるが「マインドフルネス介入」では上記のような「マインドフルネスの状態を達成」するためにトレーニングを行う。
一体何を言っているかわからないと思うかもしれないが「マインドフルネスという心の状態を作り出す」ことがマインドフルネストレーニングであると思ってもらって良い。
この状態はどうやらトレーニングで作り出すことができるようだ。
そしてこの状態を作り出すことが様々な精神衛生の向上につながるというエビデンスがある。
マインドフルネストレーニングの方法
Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008) は「マインドフルネス」とは新しい考え方ではないと述べている。実質的には全ての宗教的な伝統やスピリチュアルな伝統には「マインドフルネストレーニング」が含まれており、三千年の歴史が存在すると述べた。
参考書籍を見る中で、瞑想を通してマインドフルネスの状態を達成するものが多いように思った。
例えば写真に写っている本には、それぞれマインドフルネストレーニングの方法が記載されている。
例えばJon Kabat – Zinn (1990) はマインドフルネスのトレーニングとして8週間のプログラムを紹介した。
※写真に写っている「このへん」と書いてあるところにある「J・カバットジン」の本
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最初1-2週間は「ボディースキャン」というものを行いながら、毎日10分程度座り、自らの呼吸に集中する時間を作ることから始まるようである。また、加えて毎日の作業時間を通して「普段の瞑想トレーニング」を行う。「普段の瞑想トレーニング」とは、普段行っている行動の一つひとつの瞬間の「今」に意識を向けるトレーニングである。
3-4週間目には「ボディー・スキャン」と「ヨーガ瞑想法」を1日ずつ交互に行い、5-6週目に入ると「ボディー・スキャン」は行わず「静座瞑想法」と「ヨーガ瞑想方」を1日ずつ交互に行うようにする。
7週目は7日中6日間、今まで覚えた自由な組み合わせで1日45分の総合トレーニングを行い、8週目にはこれまで覚えたものを組み合わせ自分に合う独自のプログラムを作成し終了となる。
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私もまだ専門的にマインドフルネスを学んでいるわけではないので、詳しくは参考書を読んで貰えば良いと思うが例えばJon Kabat – Zinn (1990) はこのようなトレーニングを積むことによって「痛み」、「時間ストレス」、「対人ストレス」、「仕事ストレス」などの症状を見つめ、ありのままの自分を受け入れることができると述べている。
ちなみに他の本を読んでいて思うこととして、マインドフルネスのトレーニングはいろいろな方法があるようである。
強力なマインドフルネスのエビデンス
いきなり「瞑想」と言われると科学的というより、スピリチュアルなイメージを持つ人も多いだろう。
私自身もまだ瞑想を通して「マインドフルネス」を体感したことがないが、「マインドフルネス介入」にはかなり強いエビデンスが存在する。
下記にマインドフルネスをベースとした介入のメタ分析を1つ紹介しよう。
マインドフルネスにはこの他にもメタ分析が存在するので興味のある人はさらに進めて調べて欲しいと思うが、下記で紹介する研究1つでも既にエビデンスは強力と言えるだろう。
※ メタ分析については
「準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説(ABA自閉症療育のエビデンス4)(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-2/)」を参照
Simon B. Goldberg・Raymond P. Tuckerd・Preston A. Greenea・Richard J. Davidsonb・Bruce E. Wampoldc・David J. Kearneya・Tracy L. Simpsona (2018) は「マインドフルネスを使用した介入」のRCTを集めメタ分析を行っている。
原田 隆之(2015)は対象とした研究をRCTに限定したメタ分析によって得られた知見が現在のところ最も質の高いエビデンスであると述べており、この研究はこの章で出てきた研究の中で最高質のエビデンスであると述べた。
そのためこの研究は2020年現在において科学的な研究としてはヒエラルキーの最上位にある研究と言えるだろう。
強力なマインドフルネスのメタ分析
Simon B. Goldberg他 (2018) の研究では2000年から2016年の間に発表された172件の研究を含み12,005人が対象とされた。
研究にRCTのみを含んだという強みだけでなく、取り扱っている研究数や人数も今まで紹介してきたメタ分析と比較してかなり大きい。
参加者の平均年齢は43.63歳で64.38%が女性であった。
この研究では今まで紹介してきた「自閉症」という特定の対象のみを扱ったメタ分析とは違い、「うつ病」や「不安障がい」など様々な精神疾患に対して「マインドフルネスを使用した介入」の効果があるかどうかを研究したものとなる。
研究特徴として「マインドフルネスを使用した介入VS無治療グループ」から「マインドフルネスを使用した介入VS既に治療効果のエビデンスがあるとされている治療」という対照グループを段階的にランク分けし「マインドフルネスを使用した介入」のエビデンスの強さを求めている。
研究の結果「マインドフルネスを使用した介入」は「無治療グループ」と比べて、「不安」、「抑うつ」、「痛み」、「統合失調症」、「体重/摂食関連障がい」の結果に対して優れた効果を示した。
また「既に治療効果のエビデンスがある治療」と比較した場合「喫煙」に対して「マインドフルネスを使用した介入」の方が効果があり、「不安」と「うつ病」に対して同等の効果を示した。
彼らの研究から「マインドフルネスを使用した介入」は様々な精神疾患に効果があることがわかるだろう。
私自身まだマインドフルネスを専門的に扱って支援を行ったことはない
しかしこのエビデンスが示す結果をみれば
様々な精神疾患に効果を発揮するマインドフルネスは万能すぎる
このページでは簡単にマインドフルネスとそのエビデンスを紹介した。
エビデンスを調べると実に強力な介入方である可能性が高く私自身も今、興味を持っている領域である。
もっと勉強をしていく必要性を感じており興味のある人がいれば是非一緒に勉強して行きたい。
次のページではマインドフルネスと共に前の「親が自閉症児に与える影響(ABA自閉症療育のエビデンス20)(https://en-tomo.com/2020/06/16/parent-autism/)」
で触れた「PBS:Positive Behavior Support(ポジティブビヘイビアサポート)」を紹介していこう。
【参考文献】
・ 原田 隆之 (2015) 心理職のためのエビデンス・ベイスド・プラクティス入門 エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」 金剛出版
・ Jon Kabat – Zinn (1990)FULL CATASTROPHE LIVING 【邦訳:春木 豊 (2007) マインドフルネスストレス低減法 北大路書房】
・ 熊野 宏昭 (2020) 実践!マインドフルネスDVD 体験に気づき、反応を止め、パターンから抜け出す理論と実践 サンガ
・ Patricia A. Bach・Daniel J. Moran (2008)ACT in Practice Case Conceptualization in Acceptance & Commitment Therapy. 【邦訳 武藤 崇・吉岡 昌子・石川 健介・熊野 宏昭 (2009) ACTを実践する 星和書店】
・ Simon B. Goldberg・Raymond P. Tuckerd・Preston A. Greenea・Richard J. Davidsonb・Bruce E. Wampoldc・David J. Kearneya・Tracy L. Simpsona (2018)Mindfulness-based interventions for psychiatric disorders: A systematic review and meta-analysis. Clinical Psychology Review Vol 59, February p52-60