ABA自閉症療育のテクニックとして「雰囲気作りも大切」ということを書いていこうと思います。
ABA自閉症療育の核は「強化子」です。
「強化子」とは「行動の伴わせる結果」であり、そして「その結果が伴うとその行動が増加して行くもの」ですが、そう考えると「強化子」は「行動のあと」の部分となります。
本ブログページで扱う「雰囲気作りも大切」の「雰囲気」は「行動のあと」だけを扱ったものではないでしょう。
「楽しそうな雰囲気だからやってみよう(行動してみよう)かな」とか「優しそうな雰囲気だから頑張ってみよう(行動してみよう)かな」などの影響を受けるタイミングは「行動の前」に訪れます。
もちろん「やってみたら楽しくなって、気分も良くなった」とか、「頑張ってみたら(意外に嫌じゃなくて)、これならできそう」とか、
その場合は本人は雰囲気も良いと感じているでしょうから、「行動のあと」も雰囲気作りには関連していると思いますが、今日は「行動の前」の雰囲気作りのアイディアのお話です。
いろいろな方法があると思いますが今日はタイトルにある「お子様の好きなキャラクターを使って療育を行う」という点についてご紹介していきたいと思います。
全てのお子様にハマるというわけではないですが、療育を行なっていて詰まってしまったときとかに試してみて欲しい方法です
雰囲気の定義と本ブログページのスタンス
まず「雰囲気」とはなんでしょうか?
「weblio国語辞典」を参考にすれば「雰囲気」とは「その場やそこにいる人たちが自然に作り出している気分。また、ある人が周囲に感じさせる特別な気分。ムード」のことです(2024.3.22検索)。
調べてみて上の文章を見て私自身は特に意外だとも思わず「まぁ、そうだろうな」と思いました。
まぁそうだろうなと思ったものの、以上が雰囲気の定義だとすれば「気分」が大切そうです。
お子様が課題に取り組むとき、どういった気分でしょうか?
これまで課題を何度もこなしてきていて既に強化(たくさん褒められる)も受けていて、課題自体にモチベーションを持っている場合、お母様が「さぁ、今からママとクイズ(課題)しようね」などと言ったとき、
これまでもたくさん褒められてきているから「うん!今日もやろう!」という気持ちにお子様がなっていたとすればそれはもう「雰囲気は良い」と言って良いと思います。
でも逆に、
なかなか上手く課題がいってなくて強化も多く受け取ってきた履歴がない
とか、
今からやるのはまだ慣れていない課題だから少し億劫になっている
とか、
初めてやる課題で抵抗感が強い
などの場合はお子様の「気分」は課題に気乗りしていなくて「雰囲気が悪い」とまでは言いませんが、「雰囲気が良い」とは言えない状態の可能性があるでしょう。
もし課題をしていてお子様が気乗りしておらず、雰囲気が良くない、課題に取り組んでくれないと言ったときに是非本ブログでご紹介している方法を試してみてください。
療育に詰まったときにはいろいろなカードを持っていて状況によって切り分けられる方が支援をする側は有利かと思いますので、手持ちのカードの1枚に加えてもらえれば嬉しいです
雰囲気がどうして大切か?ー増やしたい行動を強化する必要があるから
本項ではABA自閉症療育において「雰囲気」がどうして大切か、私が思う大切な点を書きます。
理由は「行動が出現してくれないとそもそも強化できないから」です。
お子様が気乗りしておらず、雰囲気が良くない、課題に取り組んでくれないと言ったとき、行動を増やしたいと思ってもお子様が行動してくれないので強化するチャンスがありません。
行動が出現してくれないとそもそも強化できないとなると、増やしたい行動を増やすことが難しくなってしまいます。
本ブログ内で、
「やってみたら楽しくなって、気分も良くなった」とか、「頑張ってみたら、これならできそう」とかその場合は本人は雰囲気も良いと感じているでしょう
と行動のあとも雰囲気作りに影響しているだろうことに言及をしたり、
これまで課題を何度もこなしてきていて既に強化(たくさん褒められる)も受けていて、課題自体にモチベーションを持っている場合、お母様が「さぁ、今からママとクイズ(課題)しようね」などと言ったとき、
これまでもたくさん褒められてきているから「うん!今日もやろう!」という気持ちにお子様がなっていたとすればそれはもう「雰囲気は良い」と言って良いと思う
と書いてきました。
しかしこれらは「強化すべき行動が出現したのち」の影響を受けてそうなった結果です。
過去に出現してくれた行動を上手く強化することができて、今そのようによう状態となっています。
しかし「やってみよう」「やろう」とならず、そもそも「強化すべき行動が出現しない」場合、強化が難しいためそこで詰まってしまう可能性があるでしょう。
Ty W. Vernon・Anahita N. Holden・Amy C. Barrett・Jessica Bradshaw・Jordan A. Ko・Elizabeth S. McGarry・Erin J. Horowitz・Daina M. Tagavi・Tamsin C. Germa (2019)は研究で、
遊び心、魅力、子どもを感情的に刺激することができる指導が上手い人たちはそうでない人と比べて何が違うのかということについて4点紹介しました。
その中の1点に「非随伴性曝露(Noncontingent Exposure)」があります。
これは、
お子様が行動をしたのちにお子様の興味を惹く活動を行う人が多いけれども、上手い人はお子様の行動とは関係なく突然にお子様の興味を惹く活動を行うことがあり、こういった場面は新しい活動を有む可能性があり重要であるという内容です。
Ty W. Vernon他 (2019) は行動したのちだけでなくお子様の興味を惹く活動を行う人を「上手い人」と紹介しているのですが、
私は個人的に本ブログのテーマ「雰囲気」にもこのことは関連しているなと思っています。
さてここから本ブログタイトル「お子様が課題抵抗が強いとき好きなキャラクターを使って療育を行う」のアイディアについてご紹介して行きましょう。
お子様の好きなキャラクターを使って療育を行う
下記のイラストをご覧ください。
上のイラストのキャラクターは架空のキャラクターです。
お子様の好きなキャラクターであると考えてください。
使用するキャラクターはポケモンでも仮面ライダーでもプリンセスでも、お子様の好きなキャラクターの人形を選べば良いでしょう。
上のイラストではキャラクターがお子様へ「ねぇねぇたろうくん、一緒にお勉強しよう」「これは何かな?」と話しかけています。
お子様は好きなキャラクターの人形が出てきて話をするといった出来事そのものに興味を持ってくれるかもしれません。
変形としては好きなキャラクターがテコテコと歩いているところを見せて「あー、たろうくん、みっけ!」などと、最初に課題から入るのではなくてたろうくんとやり取りをするところから始め、
その後に「クイズ出すよー!」と言ったのちに課題を始める、ということでも良いでしょう。
お子様が「ん、なんか楽しそうなことが始まりそうだ」などと思ってくれることが狙いです
ここまでで雰囲気の定義だとすれば「気分」が大切、という内容を書いてきました。
「楽しそうな気分」を少し賦活させることができれば良いのです。
このとき、喋り方も少しキャラクターに寄せるか声のトーンを上げて気分が楽しくなりそうな演出を行うことは1つのコツだと思います。
またもしお子様が上のキャラクターを使った設定で課題を行ってくれたときは、キャラクターも一緒にお子様を褒めることも良いでしょう。
例えばヒーローもののキャラクターが「たろうくん!かっこいいぞ!クイズに答えられて、俺は嬉しい!」とか「たろうくんも頑張ったから、俺もこれから、悪い敵と戦うとき、頑張れるぞ!」などと言えば、お子様も気持ちが乗ってくるかもしれません。
慣れてくると「今日も⚪︎⚪︎(好きなキャラクター)が駆けつけてくれるよ」などというだけで、お子様のお勉強をする気持ちにワクワクを添えることができるかもしれませんし、
「このクイズを頑張ったら、次のこのクイズは⚪︎⚪︎も一緒にやってくれるよ」と好きなキャラクターと一緒にお勉強をする時間そのものを強化子として利用して、療育を行なっていくことに発展していける可能性もあるでしょう。
このように療育の中でお子様の好きなキャラクターを用い「雰囲気作り」を行なってお子様に行動してもらう可能性を上げる、支援をする側の手持ちカードの1枚としていかがでしょう。
本日はそういったことが書きたかったブログページ。
さいごに
今回ブログページでご紹介させていただいたのは「雰囲気」ということをテーマに、
お子様が課題抵抗が強いとき好きなキャラクターを使って療育を行うというテクニックでした。
ブログを読んでくださっている人は何度かブログ内で見たことがあったかもしれませんが、私自身はあまり趣味がなく、そのことに悩んでいる時期がありました。
今も趣味が多いとは言えないものの、最近はポケモン(ポケットモンスター)をして遊んでいます。
自分自身、無趣味なとき、気が付かなかったのですが、ポケモンを好きになってから感じることがあります。
例えば、街を歩いていてポケモンを目にするとちょっと嬉しいです。
また誰かがポケモンの話をしていると「その話、一緒にしたい」、と感じる瞬間もあります。
大人の私がこれくらい、「好きなもの」というものが視覚的、聴覚的に示されても少しワクワクするのです。
自分自身、無趣味なときはあまり感じることはなかったのですが、今、そういったワクワクを感じるタイミングもあり、
無趣味だった以前のときとも比べ、お子様が課題抵抗が強いとき好きなキャラクターを使って療育を行うというテクニックの有用性を感じています。
【参考文献】
・ Ty W. Vernon・Anahita N. Holden・Amy C. Barrett・Jessica Bradshaw・Jordan A. Ko・Elizabeth S. McGarry・Erin J. Horowitz・Daina M. Tagavi・Tamsin C. German
(2019)A Pilot Randomized Clinical Trial of an Enhanced Pivotal Response Treatment Approach for Young Children with Autism- The PRISM Model. Journal of autism and developmental disorders, 49(6)
・ weblio国語辞典 https://www.weblio.jp/