これまでページとして作成していませんでしたが、このブログの目的と私自身が達成したい目標について書いていきます。
本ブログも運営してもう4年が経過(R6.2.9時点)しようとしているので、私自身が考える自閉症療育の課題とその課題に対しての私なりの今後の展望、そして私自身の取り組み、そして達成したい目標について書いていきましょう。
ABA自閉症療育ブログエントモの目的
私自身、この仕事を始めてからもう10年以上が経ちました。
10年前は今ほど児童発達支援や放課後当デイサービスという公的なサービスの数も多くなく、私のような民間のセラピストに委託する、ということが今よりも盛んであったと記憶しています。
また民間のセラピストに委託すると言っても関東圏や関西圏には委託先はあったものの、地方に行けば委託する民間業者もほとんどありませんでした。
そして委託できたとしても基本的には「個別療育」となるため、料金もかなり高額です。
何度かブログで書いたこともあったかなと思うのですが、実は私はABA自閉症療育のブログを作ることは2回目となります
このブログももう4年目に入るのですがその数年前に1度目のブログを作った動機、それは、
『自閉症と診断されたが、「これからどうすれば、どう関わっていってあげるのが良いのだろう」、「自分の子どもにできることがあるのであれば、やってあげたいけど何をしてあげたら良いのかわからない」という方は多分、日本にたくさんいる
民間の業者が近くになかったり、料金が高額だからABA療育を受けられない人もいる
そう言った人たちに関わり方や方法を伝えたい
お子様への関わり方、何かやれることの見通しを持ってもらいたい』
という強い想いでした。
現在作っているブログにもその想いは引き継がれています。
現在は児童発達支援や放課後当デイサービスが増え、状況は当時と少し違うかもしれませんが、私が本ブログを作っている大目標は今も引き継いでいる以上の理由からです。
私が思っている自閉症療育の課題と今後の展望
今回の2度目のブログが1度目のブログと違う点は、私自身も一から勉強し直し参考文献も使用したことでした
勉強をし直し「ABA自閉症療育は自閉症のお子様に対してエビデンスのある支援方法だ」ということは再確認できました。
ただ私から見て4点、課題があることもわかりました。
この4点はまだ解決されていません。
その4点は、
1点目:ものすごく長い療育時間と期間
2点目:発達の遅れの大きなお子様への療育
3点目:親御様が療育を行う場合のモチベーションの維持
4点目:親御様の感情調節
です。
これらの課題と私自身が今、どう向き合っているか、どう向き合おうとしているのかについて書いていきます。
課題点1点目:ものすごく長い療育時間と期間
ABA自閉症療育は効果があるというエビデンスを持っているのですが、
強いエビデンスを出すためには条件がつき、その条件とは例えば「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」などの強い条件です。
※ 最低週5日、1日5時間とのことなので、5時間で充分とも言っていないことには注意
古くは1987年に刊行された論文の結果、
ABA療育を週に40時間以上受け結果「47%(19人中9人)」のお子様が知的に正常域にまで達し普通学級に通うことができるようになったというO. Ivar Lovaas (1987)の研究からABA自閉症療育は脚光を浴びることとなりました。
※O. Ivar Lovaas (1987)の研究まとめは「https://en-tomo.com/2020/03/22/ivar-lovaas1987/」参照
「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」などの強い条件は、
例えば全て専門家に委託すると1時間5,000円だとしても「125,000円/週」の料金がかかり、ほとんどのご家庭で現実的ではないでしょう。
そうなったとき、親がお子様に療育を行うという手段があるのですが、
・ 共働きで時間が確保できない
・ 夫婦で上手く協力できない
・ 兄弟児がいて時間が取れない
・ 親が先生となることに抵抗がある
など、それはそれで問題が積み上がってきます。
そして近年、「早期療育」の重要性も広く認識されてきました。
「早期の幼児期に介入を始めることが有効な効果を出す」、ということが分かってきたものの、お子様が自閉症や発達に遅れがあると知り、すぐに生活を変えて親がお子様に療育を行う体制を整えることは無理があるのではないでしょうか?
※ 「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」はIQや適応行動等の改善という効果に対してのエビデンスであり、例えば問題行動を扱う場合にはこれほどの長い時間を要さないことが多いです
ものすごく長い療育時間と期間に対しての今後の展望
私は今後の展望として療育の自動化という方向性を見ています。
例えば、
アプリケーションで1日2時間勉強をする
2時間はお母さんと買い物や遊びの時間を持ち、般化課題(スーパーで覚えたものの名前を言うとか)や社会的ルール(信号とか)を学ぶ時間や公園で遊び(運動)を行う時間にする
このとき「療育をやらなきゃ」という感覚ではなく、子育ての一環として療育的な関わりを親御様とお子様で行う
残りの1時間は家でお母さんと会話の練習やコミュニケーション(遊びながら目を合わせて微笑み合うなど)を取る時間にする
お子様の年齢にもよりますが園に通っていた場合はもっと柔軟に時間の調整も可能でしょう
自動化の選択肢があれるとすれば、「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」も少し現実的な気がしてこないでしょうか?
私は5時間全てを自動化、「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」を例えばアプリケーションのみで補填するのは「社会性」や「人への興味関心」などのことを考えると難しいのではとも思っています。
そのため全てを自動化するというイメージでは無く自動化しても大丈夫なところ、例えば知識の蓄積やルールの把握などを自動化したいという気持ちです。
私はそれだけでも大きな療育時間の短縮になると信じています
また個人的な立場として「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」の療育を絶対にやった方が良い、という強い考えを持っているわけではありません。
「親の教育方針」が前提にあり、その上で選択される人が無理なく選択できると良い、というスタンスです。
私の目指したいものは今貢献できているとは言えませんが、「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」の療育時間が多くの人にとって現実的に可能な形となることです。
課題点2点目:発達の遅れの大きなお子様への療育
ABA自閉症療育の自閉症療育に対してのエビデンスは研究によって証明されてきました。
これらの研究は「ABA自閉症療育を行うお子様のグループ」と「その他の療育を行うお子様のグループ」に分け、療育開始時に2つのグループに差がないことを測定し統計的に示し、
その後、例えば2年経ったタイミングでもう一度測定をして「ABA自閉症療育を行うお子様のグループ」の方が有効な改善を示した
という研究の積み重ねです。
これは私は素晴らしいことだと思います。
ただ課題点として「発達の遅れの大きなお子様への療育」と書きましたが、例えばGoods KS・Ishijima E・Chang YC・Kasari C (2013) は研究の中で、
過去、自閉症のコアとなる特徴を特定して、就学前の自閉症児たちへの効果的な介入は現在までに大きな進歩があった
しかしこれらの試みでは、一般的に最も発達の障がいの重い子どもたちは見落とされてきた
と述べました。
例えば研究の中で「カットオフ」ということが行われることがあります。
研究参加前の段階で「IQ40以下のお子さんは研究からは除外した」などが「カットオフ」です。
実際に上で紹介したO. Ivar Lovaas (1987)の研究でもCA(IQと読み替えてもらって大丈夫)から研究前に15%のお子様が研究から除外されました。
特に発達の遅れの大きなお子様に対して、どういった療育・支援方法が有効であるかについては今後の課題になると考えているところです。
発達の遅れの大きなお子様への療育に対しての今後の展望
発達の遅れの大きなお子様に対して有効な療育手続きの開発という大きな目標も必要と思いますが、
「多くの発達の遅れの大きなお子様に対して有効な療育手続きの開発」はとても時間がかかるかもしれません。
現在、この点で私自身が行っている活動として、ブログ内に「シングルケースデザインと機能分析」という章を作りました
もし発達の遅れが大きいお子様に対して未だはっきりとエビデンスのある手法が見つかっていないのであれば問題行動への対応も含めて、「お子様にフィットしたオーダーメイドの方法を見つける方法」の習得が大切です。
「シングルケースデザイン」と「機能分析」はこれらに貢献すると信じています。
「シングルケースデザイン」は今やっていることが効果的かどうか、つまりその支援方法はあなたのお子様に対して有効かどうかを教えてくれるツールです。
そして「機能分析」はあなたのお子様が特に問題行動を示すとき、何を教えれば良いかの答えを導いてくれるツールとなります。
今後の展望として、私はブログ章の完成もそうですが、そういった個々のお子様に対応したオーダーメイドのプログラム・問題解決の手続き書が作れるツールの開発、または専門家の増加に貢献がしたいです。
課題点3点目:親御様が療育を行う場合のモチベーションの維持
ここまで「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」という時間・期間を示してきましたが、
私の経験上例えば1年間を通して週に5日間、1日1時間の療育時間であっても継続して取り組む、でも達成できる親御様は限りなく少ないと思います。
もちろん親御様全員が取り組めないわけではありません。
実は毎日の療育時間を確保し、家で療育を行っている人もいます。
個人的な体感としては週5日、1日1時間でも療育を行うと違いはあると感じているところですが、取り組めない人の方が多いです。
私は取り組めていない人を悪いと言っていません。
例えば私自身は今「痩せたい」のですが、日々の生活は痩せることとは逆行した毎日を送ってしまっています。
健康のことを考えても痩せた方が良いと思うのですがなかなか行動に移せない、行動が継続できません。
「最低週5日、1日5時間の集中的な訓練への能動的な参加」、「2年間以上」はIQや適応行動等の改善という効果に対してのエビデンスがあるとわかってはいるものの、
私たちはなかなか継続して一つのことに取り組むことは難しいのだと思います。
私はここをなんとかしたいと考えています。
親御様が療育を行う場合のモチベーションの維持に対しての今後の展望
親御様が療育を行うモチベーションが維持しない理由はいろいろあると思います。
例えばモチベーションが上がらない、続かない1つの理由は「何をして良いかわからない」という見通し不全の状態があるなと考えています。
「最低週5日」「1日5時間」「2年以上」と言われてもそのような大量の時間にそもそも何をして良いかわからない。
「始めてみよう」と思ってABA自閉症療育をはじめたとしても途中から何をやって良いのかわからなくなってしまい、モチベーションが下がってしまうことがあるかもしれません。
現在、この点で私自身が行っている活動として、ブログ内で方法をご紹介したり、テクニックをご紹介したりしています。
このブログを継続、またブログ以外の活動を通して、今後ももっともっと貢献できればといったところです。
加えて、
療育で使用できる電子絵本を開発中でAmazonにて販売を考えています。
この部分もブログ以外の「療育で何をして良いかわからない」等に貢献していければという思いで作成中です。
また現在動いている今後の展望としては例えば、
オンラインになりますがご相談を申し込めるサービスも作っています。
ここまで「親御様が療育を行う場合のモチベーションの維持」の問題に対して「何をして良いかわからない」ということが原因になると書いてきましたが、
療育をしてもなかなかお子様に変化が生じない
となれば、これも親御様の療育モチベーションに影響を与えるでしょう。
ABAの理論的に考えても「やってもやっても結果がついてこない」と親御様の療育行動は消去され、その過程でモチベーションも下がって行くはずです。
100パーセント上手く行くとは言えませんが、オンラインにてご相談にお申し込みいただいた際にはお子様の行動が実際に変化するようご相談に乗らせていただければと考えています
課題点4点目:親御様の感情調節
親御様も人間です。
例えばお子様が問題行動を起こしたとき等、大きな声で怒りたくなることもあるだろうし、叱ってやりたくなることもあるでしょう。
しかしブログ内で何度か書いてきましたがこれらの多くはABAでは「罰」として機能することが多いです。
「罰の副次的効果」でブログ検索窓をググってみてください。
※ 例えば「(ABA自閉症療育の基礎29)オペラント条件付け−罰の副次的効果(https://en-tomo.com/2020/08/23/punishment-secondary-effect/)」のブログ記事などを参照
「罰」を使うことの多くのデメリット、これは「かわいそうだ」などの感情論を除いて多くのデメリットがあります。
親御様で「怒ってしまう」ことに自己嫌悪する方も多いのですが、なかなかやめることができません。
怒ると問題行動がそのときに一瞬で収まることを親御様は目にするため、親御様も罰の使用が常習化してしまうことがあります(罰の使用者の負の強化行動が強まる)。
「怒ることがやめられない」といおっしゃる方は、上の循環にはまっているのだと思いますが、一度はまると中々に抜け出せないかもしれません。
またABA自閉症療育を行なっていると上のような「怒り」の感情だけでなく、「なんでうちの子は?」と沈むような感情を抱くこともあるでしょう。
これらの感情をどう調節して行けば良いか、私はここも取り組んでいければなと感じています。
親御様の感情調節に対しての今後の展望
私が注目しているキーワードは「マインドフルネス」です。
私自身はまだ「マインドフルネス」について本格的に学んだことはなく、また本格的に体験したこともありません。
ただ、マインドフルネスによる発達に遅れのあるお子様の親御様や養育者に対してのエビデンスをいくつか目にしていて、かなり可能性を感じています
それは例えば過去「(ABA自閉症療育のエビデンス23)親のストレス対処:MBPBS(https://en-tomo.com/2020/06/19/mbpbs/)」のページで書きました。
上のページを作成する際、参考にした文献のデータはインターネット上で観覧可能なので、検索してもらい結果のデータだけでも見ていただきたいです。
例えばSingh NN・Lancioni GE・Karazsia BT・Myers RE・Hwang YS・Anālayo B (2019)の「Figure3」。
本ブログページ最後参考文献にもSingh NN他 (2019) を載せています。
参考文献部分をそのまま全コピ、ペーストして検索してみてください。
私自身「マインドフルネス」を支援するときの技術として習得したいなと思っているものの、できていません。
ここに関して誰か、「マインドフルネス」ができる人、助けてくれませんか?
私はお子様の問題行動を解決するための方法を伝えるワークショップができます。
「マインドフルネス」ができる人、私と協力しませんか?
エックス(旧ツイッター)よりご連絡をお待ちしております。
今後の展望として私は親御様が上手く感情調節ができるために「マインドフルネス」を活用した支援を視野に入れています。
さいごに
ここまで「このブログの目的」に続いて、「私が思っている自閉症療育の課題」と「今後の展望」について書いてきました。
本ブログページであげた課題は、
1点目:ものすごく長い療育時間と期間
2点目:発達の遅れの大きなお子様への療育
3点目:親御様が療育を行う場合のモチベーションの維持
4点目:親御様の感情調節
です。
現実にはここで紹介しただけではなく、福祉的な観点からの課題も山積みでしょう。
それは子供時代の療育だけでなく例えば、大人になった自閉症や発達に遅れのある人へのケア、親御様がお亡くなりになったあとの生活なども含めて。
私はABA自閉症療育をしていて、お子様を教えている中で知っている知識を増やしたり、会話を促したりもそうですが、身体の使い方、粗大運動や微細運動、口腔や発声の知識も必要だなと思います。
より幅広い支援を行うためには、作業療法士の先生や言語聴覚士の先生との協力も必要と感じているところです。
お子様の生活環境のプロフェッショナル、幼稚園教諭や保育士、栄養士の先生。
また、私以外のABA自閉症療育を行なっている先生も是非どうかお力をお貸しいただきたいです。
2024年、年始にITを仕事にしている高校時代の友達と話しているとき、私が話した内容なのですが、私はこんなことを言いました
ITの分野は旬でたくさんの人が市場に参加して来ている
でもITよりも参加人数の少ない心理学、その中のABAという分野、そして自閉症や発達障がいというニッチな領域とまでになると、参加している人数はITと比べてものすごく少ない
だからITが1年で100歩進んだとすると、俺のやってるこの分野は1歩か2歩しか進まないかもしれないと思ってる
私は今いるこの分野を進めたい
親御様へ
2024年現在、私から見ただけでも自閉症療育は4点の課題を抱えています。
そして悲しいことに「この課題は最近見つかった課題」ではなく、私から見てもずいぶんと前から、私が自閉症療育に関わる前から続いている課題です。
全ての方がではないと思いますが、自閉症や発達に遅れのあるお子様を育てて行く中で大変だなと感じることもあるでしょう。
私は専門家として何かしら貢献できるように動いていて、これからも活動を続けていきます。
偉そうに聞こえたら申し訳ないのですが、自閉症児・発達に遅れのあるお子様を育てる中で「楽しみを感じながらお子様を大切に育ててあげて欲しい」です。
子は「子宝」と言われるように宝物、あまやかすというニュアンスではなく、大切に大切に育てて行ってあげてください。
お子様の成長、それがたとえ小さな一歩でも、親御様にとって嬉しい瞬間だとこれまでの経験から体験して来ました。
そういった瞬間が増えお子様が成長する、あなた自身も幸せだと感じられる、そういったお手伝いができれば私はとても嬉しいです。
本ブログページを最後まで見てくださり、ありがとうございました。
<参考文献>
・ Goods KS・Ishijima E・Chang YC・Kasari C (2013) Preschool Based JASPER Intervention in Minimally Verbal Children with Autism: Pilot RCT. Journal of autism and developmental disorders May, Volume 43, Issue 5, pp 1050–1056
・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.
・ Singh NN・Lancioni GE・Karazsia BT・Myers RE・Hwang YS・Anālayo B (2019) Effects of Mindfulness-Based Positive Behavior Support (MBPBS) Training Are Equally Beneficial for Mothers and Their Children With Autism Spectrum Disorder or With Intellectual Disabilities. Front Psychol. 2019; 10: 385. Published online 2019 Mar 6. doi: 10.3389/fpsyg.2019.00385