私は今主にABA自閉症療育を行い活動をしているわけですが、お子様からの要求場面は良い療育機会になると感じています。
また要求場面はABA自閉症療育を行う親御様にとっても療育に利用しやすい機会と言えるでしょう。
理由ですが、要求場面は「要求が叶うこと」自体がお子様の強化子となるため、比較的、要求が上手くできることを目的に練習をして行く要求場面はお子様がモチベーションを高く保ちやすい、
ということが大きいです。
要求の練習は「マンドトレーニング」とも呼びます。
マンドトレーニングについては「(ABA自閉症療育の基礎83)ABA自閉症療育で言葉・発語を教えるのに最適!マンドトレーニング(https://en-tomo.com/2021/03/18/aba-mand-training/)」でもご紹介をしていますので、是非ご参照ください。
お子様が全くモチベーションが乗っていないとABA自閉症療育はじめ、療育は非常に親御様・お子様双方にとって辛い時間となってしまうかもしれません。
そのため最初に要求語の練習、マンドトレーニングからABA自閉症療育を始める、ということも療育方針として良いでしょう。
さて、そのようにABA自閉症療育で利用しやすいと言った要求場面の機会ですが、ご家庭によっては「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ということで悩んでいらっしゃるご家庭もあります。
本ブログではそのようなご家庭で取り入れたらいいんじゃないかな、と思う1つのテクニックをご紹介して行きましょう。
「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ことに対する練習の方向性
例えばお子様が「Youtube みたい」と言ったとき、お母様がすぐにスマホを渡せばお子様は怒らなかったとしましょう。
ただお母様もスマホが必要なタイミングがあって、いつでもすぐにスマホを渡せるわけではありません。
また「Youtube みたい」と言ってくる頻度も高いので、全部叶えるとずっとYoutubeを見せ続けることになることも気になっていました。
お母様はずっと映像コンテンツを見せ続けることは教育上良くないかもしれない、という懸念を持っています。
加えて「いつもお子様の要求を叶えるのもどうなんだろうか・・・わがままな子に育ってしまわないだろうか」ということも心配でした。
もしあなたのお子様が「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」という傾向があったとき、少し以下のことを考えてみてください。
あなたがお子様の顔の前に手を出して「待って」と伝え0.5秒後にスマホをお子様に渡したとすればどうでしょう?
0.5秒であれば怒らずにお子様は待てるような気がしませんか?
もしかしたら0.5秒後にスマホをお子様に渡したら怒ることもあるものの、5回中3回は怒らなかった、などのことが観察できるかもしれません。
もし「待てそうだな」と思ったとすれば「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」という状態は「要求したあとに待てる時間が短い」という問題に変換できるでしょう。
前提として、
あなたが「スマホでYoutubeを一切観てはいけない」とは思っていない、ということは今回の支援手段の前提です。
例えば「夜19時から20時までの間は観て良い」と考えていた場合をイメージしてください。
この場合、20時から翌日の19時までの23時間「待てる時間」があればこの考え方は成立します。
そしてこの考え方が成立するのであれば今0.5秒待てるわけですから、その時間を伸ばしていけば良い、というターゲットが成立するでしょう。
またもう一つの前提として「適切な待てる時間を考えておく」ことも大切です。
例えば「あなたは今日、スマホでYoutubeを観たから来年まで我慢しなさい」というのは、私は適切な待てる時間では無いと思います。
それは私自身も「スマホでYoutubeを観たから、次は来年まで我慢しなければいけない」は辛いからです。
私は大人ですので、子どもの年齢の人よりも我慢する能力が育っていると思いますが、そんな私でもそれはしんどいと思います。
そのため「待てる時間を伸ばす」となったとき、現実的なラインを定めることは大切で、無限に伸ばして行くようなターゲット設定は不適切でしょう。
これから「要求したあとに待てる時間が短い」ことに対して伸ばして行く方法をいくつかご紹介をして行きますが、
以上の前提は大切なことかなと思いますので、以上の前提は意識しながら読んでいっていただければ幸いです
またお子様が現在育っている言葉の力や知識によっても少し方法が変わってくるでしょう。
例えば言葉が少し発達していて今我慢はできないものの「お菓子は家に帰ったら食べよう」や「あと5分したら食べよう」などの言葉が理解できるお子様の場合と、
まだ「待って」という言葉の理解が難しいお子様の場合では教えるときのアプローチを変えて良いと考えています。
まずは最初にまだ「待って」という言葉の理解が難しいお子様の場合から見て行きましょう。
言葉の理解があまりないお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす
言葉の理解があまりないお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす場合、まずは上で書いたように0.5秒待てるかどうかを確かめみてください。
このとき下のイラストのように視覚的に手で合図を出し、0.5秒後に渡す、と言うようにしましょう。
上のイラストのようにお子様の前に手のひらを出し、手のひらを引くと同時にスマホをお子様に渡すようにします。
練習の回数としては、最初のうちは例えば5分間練習するとすれば、30秒スマホをお子様が見る毎に行うなどのペースで始め、練習のペース間隔が短すぎるなと思えばスマホを見せる時間を長くし、調整をしてください。
多くのお子様は目の前に出された手のひらが視覚刺激として機能し、手のひらがなくなった瞬間にスマホが手元に来ることを学ぶでしょう。
もしお子様が手のひらがなくなった瞬間にスマホが手元に来ることがわかって来た様子(例えば手のひらが出て来ても動揺せず、手のひらを引くことを待っている様子に見える等)が出てくれば、1秒、2秒、3秒と秒数を伸ばして行きます。
3秒から5秒ほどの間隔、手のひらを出して待てるようになったとしましょう
次のステップは、お子様に1こ活動を挟んでからスマホを渡す、というステップです。
例えば、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいの?」
子:「うん」
私:(スマホを渡す)
と、お子様との関わりを入れるようにします。
今、上で例として「うん」を出しましたが、これは、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいひとー?」
子:「はーい」
私:(スマホを渡す)
でも良いし、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいひとー?」
子:(手を挙げる)※「はーい」という言葉での応答でなく行為でもOK
私:(スマホを渡す)
でも構いません。
何かしらのやりとりをすることを目指します。
そしてやりとりを増やして行き・・・例えば、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいの?」
子:「うん」
私:(手のひらは引く) + 「貸して欲しいひとー?」
子:「はーい」
私:(スマホを渡す)
そして・・・、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいの?」
子:「うん」
私:(手のひらは引く) + 「貸して欲しいひとー?」
子:「はーい」
私:(スマホを見せる) + 「このスマホで良い?」
子:「いいよ」
私:(スマホを渡す)
と言った感じです。
このやりとりを5秒ー10秒くらいかけて行うイメージで良いでしょう。
ここまで来たら、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいの?」
子:「うん」
私:知っている何かのカードを見せる+「いいよ!この名前なんだっけ?」
子:「スイカ」
私:(スマホを見せる) + 「このスマホで良い?」
子:「いいよ」
私:(スマホを渡す)
などのやりとりも成立する可能性が高いでしょう。
上の例の太文字のところは課題の活動が1つ(カードを見せてスイカという名称を答えてもらう)が入っていますね?
例えば少し先、慣れて来たとき、この活動が「パズル」や「プリント課題」になったとすればもっとお子様が「Youtubeを観る」要求を出してから叶う(実際にYoutubeを観る)までの時間を遅延させていけます。
このように上のように「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」・・・
とサンドイッチのように時間を挟んで行き「その他の活動」の時間を伸ばすことで「Youtubeを観る」という要求があったとき、要求が叶うまでの時間を遅延させて行くイメージです。
次のステップは、練習したこのルーティンを生活場面に般化させて行きましょう。
例えば食事の場面では?
いつもご飯中Youtubeを観ることの要求がお子様からあり、「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ということで悩んでいた場合どのように行えば良いでしょう?
お母様は食事中もずっとYoutubeを観ていることを気にしていました。
子:「(Youtube)観る」
母:テーブル拭いたら良いよ!
子:(テーブルを拭く)
母:「はい!」と言ってYoutubeを観せる + テーブルに食事を配膳する
子:(Youtubeを観ている)
母:(一度スマホを回収する) + 「またあとで観ようね」
子:「(Youtube)観る」
母:(からあげを指差す) + 「これ1個食べたら良いよ」
子:(からあげを食べる)
母:「はい!」と言ってYoutubeを観せる
・・・・・・・
と、ここまで来れば、パターンは形成されたようなものですから、あとは食べる量を調整し、
例えば「からあげを2個食べたら」などから伸ばして行って、「はんぶん食べたら」とか、時間を遅延させる方向性に向かって進んでいけば良いでしょう。
お子様がどこまで我慢できるかは塩梅を調整してではありますが、例えば、
『「ご飯を食べ終わる + お風呂に入る」、その後にYoutubeを見る』
などまで行ければ、「Youtubeは食事と入浴が済んでから」ということになり、かなり納得のいく形でお子様の生活パターンの中に「Youtubeを観る」という活動を溶け込ませることが達成できたと言えるのではないでしょうか。
このように、
「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」・・・
とサンドイッチのように時間を挟んで行き「その他の活動」の時間を伸ばす中で「Youtubeを観る」という要求があったとき、要求が叶うまでの時間を遅延させて行くイメージで、
「Youtubeを観る」という活動をお母様の容認できる範囲にまで生活の中に溶け込ませて行くことを目指して課題を行う、
というのが言葉の理解があまりないお子様に対しての練習方法となります。
このような方法は私も実際に行っている方法です。
また本ブログ記事を書くにあたってはTimothy R. Vollmer・John C. Borrero (1999) の論文も参考にしました。
Timothy R. Vollmer他 (1999) の論文は攻撃行動を行う2名のお子様に対して強化遅延を用いて攻撃行動を抑えようとした研究です。
研究の結果では「強化遅延の合図」があった場合、お子様は攻撃行動を行わずに要求することが多かったということでした。
今回ご紹介した支援方法では最初の「お子様の前に手のひらを出す」という行為が「強化遅延の合図」と考えられるでしょう。
そこからだんだんと般化を繋いで行って、という手続きです。
Timothy R. Vollmer他 (1999) の論文は「(ABA自閉症療育の基礎56)選択行動のABA療育応用研究、子どもの攻撃行動を減らす「衝動性と我慢」Timothy R. Vollmer・John C. Borrero, 1999(https://en-tomo.com/2020/11/10/timothyr-vollmer-johnc-borrero-1999/)」のページでご紹介していますので、気になる人は是非ご一読ください。
また今回、例として「Youtubeを観る」という要求を用いましたが、これは「クッキーを食べる」でも「おもちゃで遊びたい」でも、いろいろな活動で行うことが可能な練習だと思います。
少し時間はかかると思いますが、必要だなと思った人は是非、生活の中に取り入れてみてください。
次は言葉の理解があるお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす方法を見て行きましょう。
言葉の理解があるお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす
言葉の理解があるお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす場合も上で書いたように0.5秒待てるかどうか、そしてそれを伸ばして行くという考え方が基本線です。
言葉の理解があるお子様の場合は言葉の理解があまりないお子様と比べて現状で待てる時間が長いのではないかなと思います。
例えば「Youtube 観たい」と言われたとき、「ダメ」と言えば0.5秒待てないかもしれませんが、
子:「(Youtube)観る」
私:(手のひらを出す) + 「観たいの?」
子:「うん」
私:(手のひらは引く) + 「貸して欲しいひとー?」
子:「はーい」
私:(スマホを見せる) + 「このスマホで良い?」
子:「いいよ」
私:(スマホを渡す)
と言う、上でご紹介したやりとりは既に可能な可能性もあるでしょう。
またここまででご紹介をした「言葉の理解があまりないお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす練習」、
「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」・・・
とサンドイッチのように時間を挟んで行き「その他の活動」の時間を伸ばす中で「Youtubeを観る」という要求があったとき、要求が叶うまでの時間を遅延させて行くイメージで、
「Youtubeを観る」という活動をお母様の容認できる範囲にまで生活の中に溶け込ませて行くことを目指して課題を行う、
の練習方法は言葉の理解があるお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばすときにも使える方法です。
そのためここまでご紹介した方法を言葉の理解があるお子様に対して適用する、ということでも大丈夫でしょう
言葉の理解があるお子様の場合も言葉の理解があまりないお子様と同じような方向性を目指して進めていけば良いと思うのですが、
言葉の理解があることで支援方法(介入手続き)の手段においてもう少し幅広い選択肢を持つことができると思います。
そのため以下からは、
「その他の活動」の時間を伸ばす中で「Youtubeを観る」という要求があったとき、要求が叶うまでの時間を遅延させて行く方法で、ここまででご紹介をして来た方法とは別の方法をご紹介します。
ここまで「Youtube」を題材として来ましたので、今度は「お願いをしてすぐに叶わないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」お子様への練習方法の例として、
「スーパーに行ったとき お菓子を買って欲しい」ということを例題として考えてみましょう。
あなたはお子様とスーパーに行ったとき、お子様は毎回お菓子を買うことを要求して来ます
お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言ってくるのです
あなたがそれを「買わないよ」と拒否したり「また今度ね」と遅延させようとすると、お子様は泣いて癇癪を起こします
このようなことで困っている親御様もいらっしゃいます。
親御様からすれば、ここで買い与えてしまうことでお子様がどんどんと「わがまま」になって行くように感じ、少しご不安を持たれることが多い印象です。
家の中であれば、お子様が癇癪を起こしたとしてもお母様は我慢(心は痛むけれども、「今日は渡さない(例で言うと買わない)」を通す)することも可能かもしれません。
ただ、他者の目のあるスーパーや電車の中、病院などで癇癪が生じた場合はお子様の要求を叶えることでその場を収めようという気持ちが強くなり、お子様の要求を通してしまうことは共感できます。
さて、上のようなエピソードがあり、あなたは困っていました。
このようなとき、例えばですが、以下のような方法はどうでしょう?
お子様が買って欲しいお菓子は毎回、同じお菓子だったとしましょう。
そしてそのお菓子を今回は「ポッキー」としましょうか。
例えばあなたは事前にポッキーを買っておきます。
お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときに、あなたはお子様に既に買ってあるポッキーをカバンから出して見せて、
「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と言ったとしましょう。
もしかしたら「買ってもらえなくとも、ポッキーが食べられることは保証された」ので、お子様は泣いて癇癪を起こさず受け入れてくれるかもしれません。
今回、あなたはお子様に既に買ってあるポッキーをカバンから出して見せ「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と言うことで癇癪を起こさない状況を作っているのですが、他にも例えば、
・ 買い物に行く前に家でポッキーがあることを見せておく
・ スーパーに行く途中、ポッキーを食べながら行き半分くらい残しておき、スーパーから出てもポッキーがあることを暗に示す
・ 「ポッキー 買ってあるから 家帰ったら食べよう」と言葉でだけ伝える
など、いろいろな方法がお子様によって調整可能かと思うのですが、大切なことは、
お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときにあなたがそれを拒否した際、癇癪を起こさなかったという経験を積むこと
です。
お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときにあなたがそれを拒否した際、癇癪を起こさなかったという経験を積むシチュエーションを探し、
そして、癇癪を起こさなかったという事実を拒否したときやスーパーから出たときに強化するようにしましょう。
今までは(ほぼ)100パーセントの確率で癇癪を起こしていたとすれば、これは大きな一歩です
またお子様は少なからず拒否されたことに「嫌悪性」は感じるでしょう。
このとき「嫌悪性」を感じたけれども癇癪を起こさなかった、という経験が大切なのです。
「嫌悪性」は徐々に慣れてくる(適切に経験の回数を重ねればマシになって行く)という特性を兼ね備えています。
さて、お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときに、あなたはお子様に既に買ってあるポッキーをカバンから出して見せて、
「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と伝えたところ、お子様は泣いて癇癪を起こさず受け入れてくれたとしましょう。
2回ー3回それが観察できたら?
もしかしたらポッキーをカバンから出して見せなくとも言葉だけで「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と伝えるだけでお子様は泣いて癇癪を起こさず受け入れてくれるかもしれません。
2回ー3回それが観察できたら?
家に帰って手を洗いすぐにポッキーを渡して食べていたのだとすれば「手を洗って、カバンから洗濯するものを出して!そのあとにポッキー食べて良いよ」などの交渉が効くかもしれません。
2回ー3回それが観察できたら?
家に帰って手を洗いすぐにポッキーを渡して食べていたのだとすれば「手を洗って、カバンから洗濯するものを出して!そのあとにポッキーを半分だけ食べて良いよ。残りはごはんのあとね」などの交渉が効くかもしれません。
・・・・・・・
※ ここでは「2回ー3回それが観察できたら?」と記載しているものの、お子様によって回数の調整は必要
最終的に「ポッキーを食べる」という活動は例えば「残りの2本は明日のおやつの時間に食べよう」などでお子様が許容できるところを目指し・・・
最終的には「明日のおやつの時間に食べるようにしよう」と、お母様の容認できる範囲にまで生活の中に溶け込ませて行くことを目指して課題を行って行けば良いでしょう。
言葉の理解があるお子様に対して要求後の待てる時間を伸ばす場合は、
単純に「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」+「Youtube」+「その他の活動」・・・
とサンドイッチのように時間を挟んで行くというアプローチだけではなく、
ご紹介したように言葉で交渉を行い、お子様が納得できる状況を探し、癇癪を起こさないその状況を広げて行くことで、結果的にお子様が要求の「待てる時間を伸ばす」ことを目指すことも可能でしょう。
「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ことに対する練習のコツ
ここまで「言葉の理解があまりないお子様」そして「言葉の理解があるお子様」に対しての「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ことに対する練習方法をご紹介して来ましたが、
2つとも例えば目の前に手を出して視覚的に合図を出すとか、交渉をするとか、「癇癪を起こさない状況」についてフォーカスをしてきました。
ここから、コツとして一番大切なことだなと私が思っていることをお伝えします
ここまで書いて来たように「癇癪を起こさない状況」を作ることは大切でしょう。
その上でもっと大切なのは、「癇癪を起こさない状況」が作れたとき、お子様のその状況がしっかりと強化されることが大切です。
例えばお子様からすれば「すぐに手に入る」もしくは「後で手に入る」という2つの選択肢があった場合、普通に考えれば前者の方が有利だと思います。
でも、そんな中、私たちはお子様に後者を選んでもらいたいわけです。
だったら、後者を選ぶことによる何かしらの利益がないと後者を選ぶことが強まっていかない、ということは共感できるでしょう。
でもこれは、何か特別なオプションをつけろ、とかそういうことではないのです。
例えば上で出した、
子:「(Youtube)観る」
母:テーブル拭いたら良いよ!
子:(テーブルを拭く)
母:「はい!」と言ってYoutubeを観せる + テーブルに食事を配膳する←←ココ
何をするかと言うと、上のやり取りの最後「←←ココ」と書いてあるところでYoutubeを観せるとき、
「テーブル拭いてくれてありがとう!めちゃくちゃ綺麗になった!ママ嬉しい!」と言ってギュッとしてあげる、
などです。
例えば、お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときに、あなたはお子様に既に買ってあるポッキーをカバンから出して見せて、
「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と伝えたところ、お子様は泣いて癇癪を起こさず受け入れてくれたとき、
「いい子ね!お兄ちゃんだね!ママ嬉しい!ありがとう」と言ってギュッとしてあげる、
などです。
上でも書きましたがお子様は普段受け入れてられていることが拒否された瞬間、我慢している(癇癪を起こさない)ものの、少なからず「嫌悪性」を感じていると思います。
ここでお子様が「嫌悪性」は感じているものの、
「あれ?なんかわからんけど、お母さんめっちゃ喜んでくれているし嬉しい!!これも悪くないかも!」と思えることがとても重要です。
ここが行動を強める、以前は我慢できなかった状況でさえも我慢できるよう行動を拡張してくれる、といっても過言ではないでしょう。
だから、上手く我慢(癇癪を起こさなかった時間)をお子様が「それも、悪くないね!」と思えるように気持ちを乗せてあげる、褒めてあげることは私は重要かと思います。
このとき「できて当然」ではなく「頑張った!えらい!!私も嬉しい!!!」という心持ちが大切です。
このように「褒める」という結果によってお子様の行動を強めたいです
しかし、変形として例えば必要であればですが、
お子様はカゴのところまでお菓子を持って来て「買って」と言って来たときに、あなたはお子様に既に買ってあるポッキーをカバンから出して見せて、
「もう買ってあるから、家帰ったら食べよう」と伝えたところ、お子様は泣いて癇癪を起こさず受け入れてくれたとき、
家に帰ってから「今日スーパーで上手に我慢できたから、ポッキーとあと、プリンもあるよ(ゲームして良いよなども可)🎶」なども良いと思います。
この方がより行動を強めてくれるかもしれません。
但しこのような外付けの強化子に頼りっぱなしになってしまうと、今度は「家に帰ってプリン(ゲーム)がないと癇癪を起こす」という新しい問題が発生するようになってしまうかもしれません。
プリンやゲームがないと我慢できない、となってしまうのは本意ではないでしょう。
そのため外付けの強化子は一部、ここぞ、と言うときに使用するのは有効だと思いますが常用することは、また新しい問題行動の火種となってしまう可能性も孕んでいると思います。
※ 「外付け(そとづけ)の強化子」は私がそう呼んでいる造語です。本来、我慢は社会的な行動ですので、お菓子やおもちゃが結果として伴うのは不自然です。行動してもらうために交渉時、不自然な強化子を使用することを私は外付けの強化子と呼んでいます
さいごに
本ブログページでは『要求場面で要求を叶える時間を遅延させて我慢の練習をするー「お願いをしてすぐに叶わないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」お子様への練習方法』というタイトルでブログ記事を書いて来ました。
本ブログ内でも書きましたが、ご家庭によっては「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」ということで悩んでいらっしゃるご家庭があります。
そのようなことで困っているとき、本ブログページでご紹介したようにその問題を、
「お子様が要求したものがすぐに手に入らないと怒る」、「お願いが叶わないと怒る」という状態は「要求したあとに待てる時間が短い」という問題に変換をする
というアイディアをもとに本ブログページを書き進めて来ました。
本ブログページではまだ言葉の発達があまりないお子様と言葉の発達のあるお子様に対しての方法をご紹介したのですが、言葉の発達がある場合、支援の手段が多くなるという印象を持っています
本ブログでご紹介した支援の方法は上でも書いたように前提として、
・ お子様が要求したものを一切使用してはいけないとは思っていないこと(スマホでYoutubeを一切観てはいけないとは思っていないこと)
・ お子様が要求したものを例えば今回使用した場合、次回使用するのは来年であるなどの不自然な期間を設定しないこと(適切な待てる時間を考えておくこと)
が前提としてありました。
この方法は私自身がお子様に「我慢してもらう」という方向性で介入(支援方法)を組む必要があるとき、結構好んで使っている支援方法となります。
私は可能であれば、お子様も納得のできそうな、無理のない方向性で介入を組んでいくことが個人的には好みです。
少しずつできる範囲を増やして行く、そしてできたときしっかりと褒められてお子様も「頑張った」と嬉しくなる、そういった中で幅を増やして行くイメージでしょうか。
あなたのご家庭の教育方針と擦り合わせながら、本ブログページでご紹介した支援方法がもし参考となり、誰かのABA自閉症療育の手助けとなれば幸いです。
またどうぞよろしくお願いいたします。
【参考文献】
・ Timothy R. Vollmer・John C. Borrero (1999) EVALUATING SELF-CONTROL AND IMPULSIVITY IN CHILDREN WITH SEVERE BEHAVIOR DISORDERS. JOURNAL OF APPLIED BEHAVIOR ANALYSIS. 32, p451–466 No. 4 (WINTER)