今日はABA:応用行動分析学コラム第8弾では、自分の弱みを環境操作でサポートしようとする姿勢は大切!について書いていきます。
私自身も自分の弱みを充分ではないですが理解し、日々の生活の中で環境設定することで考えながら試行錯誤しながら生きているのですが、
例えば私のあまり得意でないことの1つがタスク管理です。
来月のいついつまでにこれをやらなければいけない、来週にはこれが終わっていなければいけない、来週のこの日はこのような出来事がある、など、日々のタスク管理があまり得意ではありません。
仕事で多くのタスクを並行して抱えることもありますので、もっと良いタスク管理の方法はないかと日々格闘しています
さて、このブログ内では私自身が行っているタスク管理の対処法と、そしてタイトルにあるように後半は前半の流れも受けて、近代化した支援研究についてもご紹介しましょう。
また私が行っているタスク管理はABAで言えば「環境設定」という介入方法にあたるのですが、
自閉症や発達障がいのお子さんもできないことがあった場合、
・ できるように練習する(スキルアップ)
・ うまくできないことは環境側からのサポートを受けてできるように適応する(環境設定による適応支援)
という2つの選択肢から方向性を選択する場面があるのですが、この辺のところも絡めながらブログ記事を書いていければと思います。
私のタスク管理遍歴と問題点
最初に少し私の話を書かせてください。
色々なタスクを抱えるということは、仕事があるということなので嬉しく思う反面、過去、私にとってはものすごくプレッシャーで不安になることでもありました。
個人的にはタスクを多く抱えることで生じる不安は2種類あると思っていて、
・ 自分にたくさんの仕事が上手くできるだろうか?
・ もし仕事を忘れたらどうしよう?
大きく分けるとこの2種類かと考えています。
私の場合、前者の「自分にできるだろうか」という内容よりも
特に「忘れたらどうしよう?」という不安に陥るタイミングが多いです
社会人初期のときのタスク管理
社会人になって始めた習慣は「手帳を買ってスケジュールをつける」ということでした。
とはいえこのときは会社員として働いていましたので、それ以外の仕事はなく、日々与えられた業務に勤しむということがほとんどでしたので、
あまり仕事上のスケジュールというものがガンガン詰まっていたということもなく、プライベートのスケジュールをちょこちょこと手帳に付けていくということをしていました。
この頃はこの方法で充分でした。
手帳に記載されるのは少ないスケジュールでしたが、これによってスケジュールを「忘れてしまう」という不安からはある程度解放されました。
私の場合は、
上のような手帳を使用しています。手帳によってはもっと細かく週間スケジュールで記載して管理するタイプのものもあるのですが、私は1ヶ月単位で1目で全体を見ることができないと、そこにストレスを感じてしまいます。
仕事上のスケジュールが多くなってきたら?
現在は仕事上のスケジュールが多くなってきていて、どのようにタスク管理をすれば良いのか試行錯誤の毎日です。
例えばプライベートな内容を手帳に書いて処理していた時期は、写真の手帳に記載する内容は、
「Uと飯、X駅、20時」や「電気代入金」など、短いキーワードで表記することが可能であったため今も使用している写真で載せた手帳で充分でした。
でも仕事のタスクが多くなってくると・・・1日のタスクが、
・ X様の領収証を作成
・ X様の次月スケジュールを調整するため、Y様の日程調整
・ ブログアップする、イラストを書く
・ オンラインカウンセリングの動作環境チェックの時間を打ち合わせる
・ 必要な物品を購入しに行く
・ 購入物品の領収証を発行しエクセルに金額を打ち込んでいく
など、上の内容は一例ですが、1日の仕事量がかなり多くなってしまい、スケジュール帳の枠に収まらなくなってきてしまいました。
特に「X時からー」など、上記の各スケジュールに時間指定まで入ってくるともうスケジュールは情報で溢れます。
さて、どうしようか?と毎日悩んでいるのですが、今のところ私が行っているのは、
A4の紙に1週間のスケジュールを打ち出し印刷し、できたものを赤線を入れて処理し、なんとかやっているという現状です。
もし紙をなくしてしまってもデスクトップにデータが残っているので、最悪そこから再印刷できることもメリットになります。
ただしこの方法のデメリットは、1週間分を1枚の紙に書き出してから持ち歩くため、修正がかかったり、スケジュール追加分が出現した場合、ペンで書き込むかもしくはスマホのToDoアプリに打ち込むのですが、
その場合はPC上のデータは更新されておらず、特に書き込んだ紙をなくしたらどうしようという不安が半端ないです
手帳と違って1枚の紙は非常に無くしやすいものだと感じていて、現状あまり満足できていませんし、また書き込んだものをPCのファイルにまた打ち込むのも非常に手間に感じています。
タスク管理がお上手な人、何か方法を教えてくれませんか?
Twitterからご連絡をお待ちしております。
以上の内容から療育で考えられること
ABA自閉症療育でもタスク管理がターゲットとされることがあるでしょう。
これからお伝えする内容は、
ご家庭によって考え方は違うと思いますが、ABA自閉症療育でターゲット行動を教えるとき、どのように何を教えるかということに関係している内容です。
例えば「タスク管理」を教える場合の指導法の方向性として、
・ 私のように記録に残す方法を教え、それを確認する習慣を強化する(環境設定によるサポート)
・ 記憶力を向上させる(スキルアップ)
の2つの方向性があったとします。
私がお子さんに療育を行う場合は、上の「記録に残す方法を教え、それを確認する習慣を強化する」を教えるでしょう。
「記憶力を向上させる」という方法はどのように行えば良いのか、あまり分かりません
例えば極端に親御様や学校の先生が、
「今から言うことを、書いてね ”おにく、たまご、ごはん”」と言ったときに、その言語内容を覚えていられず、書くことができない。
となった場合でも「記憶力を上げる」ということを教えるのではなく、
例えば書く前に「おにく、たまご、ごはん、おにく、たまご、ごはん、おにく、たまご、ごはん」と3回小さい声で反芻してから書くなどスキルを教えることが多いです。
「記憶力を上げる」ではなく、もっと焦点をあてて「具体的にできないことができるために必要なスキルを教える」ということになります。
「記憶力」という幅広いスキルを鍛えようとはあまりしません。
記憶力という広い範囲をカヴァーできる能力の底上げを狙うというよりはどのような行動を行えば、教えたい行動が達成されるか?
とピンポイントなスキルの向上を目指します。
他にも例えば「道を覚える」などがターゲットとされたとしましょう。
この場合はどうでしょうか?
・ 「道を覚える」ために、何度か一緒にルートを歩き徐々に一緒に歩いている人が離れていき(プロンプトフェイディング)、最終的に1人で行けるように練習する(スキルアップ)
・ 目印となる建物などの写真を持たせる(環境設定によるサポート)
などが考えられますね?
通学路など特定のルートを覚えるなどでしたらスキルアップを目指したプロンプトフェイディングは有力なトレーニングです。
でも特定の道を覚えるとかではなく、単に順路を歩くことの記憶力があまり良くないと言った場合は?
現代ではGoogleMapなどの道案内アプリがあることも忘れないでください。
私はGoogleMapを多用していますしあまり道を覚えることは得意ではありませんが、今では「道を覚える」というスキル自体がデバイスで代用されているため、何も不便はありません。
他にも例えば、
電話番号を記憶することは?ー電話帳アプリがありますね?
電車の時刻表は?ー電車の乗り換え案内アプリがありますね?
大きい数の計算は?ー電卓アプリがありますね?
私が子どもの頃は携帯電話は家族はもちろん持っておらず、固定電話の隣に手書きで連絡先が記載された電話帳が置いてありましたが、今は必要ありません。
私は比較的大人になってから電車に乗ることが多くなったのですが、電車の時刻表を利用して電車に乗ったことがありません。
例えば2桁+2桁の計算であっても、私は紙とペンを使ったり、暗算をしたりではなく基本的に電卓アプリを使用して計算します。それが間違ってはいけない計算であった場合は特に使用することが多いです。
このように何かを子どもに教える際、現在出現している科学技術で代用できないか?
こういった視点も持ちながら教えるスキルをどう教えるか?ということを考えることも大切だと思います。
例えば「GoogleMapでほとんど道案内しているから道を覚えることに特に困っていないな」という人はお子さんに、
(1)行き先の住所をサイトなどからコピーする
(2)GoogleMapアプリを開く
(3)GoogleMapにコピーした住所をペーストする
(4)案内開始のボタンを押す
(5)順路に沿って歩く
などGoogleMapの使用方法を課題分析し、現代でも可能なことを教えていけば良いでしょう。
課題分析はこういったところでも使用できます。
「(ABA自閉症療育の基礎60)オペラント条件付けー課題分析、行動のアセスメント方法(https://en-tomo.com/2020/11/21/aba-task-analysis/)」
近代化、i Pod Touchを使用した支援研究
Tony Gentry・Richard Kriner・Adam Sima・Jennifer McDonough・Paul Wehman (2015)は自閉症の労働者に対してiPod Touchを使用し、彼らの周囲からの個人的サポートを減らすことを目的とした研究を行いました。
Tony Gentry他 (2015) の研究では55人が参加し、49人が研究プログラムを完了しています。
男性と女性の比率は42:8で男性が多めで、ほとんどの参加者(42人)は両親と同居し、4人はルームメートと同居、2人はグループホームに居住し2人は一人暮らしでした。
参加者の年齢は18歳から60歳まででしたが、ほとんどが20代(全参加者の平均年齢は24歳)、
大学を卒業した参加者はいませんでしたが、34人は高校の正規の卒業証書を持っており、12人は高校の証明書を取得、1人は高校を卒業していません。
46人の参加者が少なくとも2年生レベルで読むことができると推定され、4人は読むことができませんでした。
彼らが就いていた仕事はさまざまで例えば、「商品在庫管理」、「オフィスのファイル係やメールの仕分け」、「レストランの食品加工」、「ペットショップのアテンド」、「ウェブデザイナー」などでした。
この研究はDelayed Randomized Control Trialという研究方法で行われているのですが、
実験参加者がランダムに振り分けられる設定のため、
エビデンスのヒエラルキーは高い研究だと言えるでしょう
研究ではiPod Touchを使用し、
デバイスの使用方法がトレーニングされ、デバイスの使用とメンテナンスに関する追加のトレーニングが行われ、トラブルシューティングが支援され、必要に応じて追跡監視が行われました。
これらを通して、
(1)タスクリマインダ(task reminders)
(2)タスクリスト(task lists)
(3)視覚プロンプト(picture prompts)
(4)ビデオベースのタスクシーケンスプロンプト(video-based task-sequencing prompts)
(4)行動的自己管理の適応(behavioral self-management adaptations)
(5)道探しツール(way-finding tools)
(6)職場で利用可能な場合、wi-fiを介した職務指導者との連絡、およびその他の支援(communication with the job coach via wi-fi, when available on the job site, and other supports)
がサポートされ、
実験に参加した人たちは職場でトレーニングされた通りにデバイスを使用するように依頼され、仕事の後でそれを持ち帰り、充電し、自宅で望むようにそれを使用することも求められました。
Tony Gentry他 (2015) の研究結果
研究の結果、iPod Touchを使用するようにトレーニングされた参加者の就職指導時間が大幅に短縮されそのことによって、
理論的にトレーニングを始めてから最初の12週間で379ドル、24週間では2025ドルの節約になることも試算されました。
自閉症者への支援研究ですが結果に経済効果を盛り込むところはアメリカっぽいですね
でもこれはとても大切で、
例えば研究から行政制度を動かしたいならやはり経済効果を示すことは大きいと思うのです
研究開始時には56人の登録者のうち6人のみがPDA、コンピュータタブレット、またはスマートフォンを所有または使用していたものの34人はどのような種類のデバイスも持っていませんでした。
あまりデバイスに馴染みがない人でも効果が出たことはこの研究の強みですね。
また研究に参加した人たちも体感として介入は成功したと判断しており、他の人にそれを推奨すると述べています。
この研究の限界についていくつか書かれているのですが、個人的にはその中から1点、
参加者は、時間とタスクの移行、タスクの順序付け、方法の発見、コミュニケーション、読書、仕事上の個人的なやりとりの管理など、さまざまな職業上の困難を示していたものの、iPod Touchが導入される前は直接の職務指導監督を受けて職務を遂行することができていたようです。
さいごに
Tony Gentry他 (2015) の研究について書いたり、電話番号、電車の時刻表、計算についてアプリケーションなどの使用を考えてみよう!
という内容で書いていく中で、冒頭で私が行っているタスク管理がかなりアナログなものであるなと再度自覚しました・・・。
もしタスク管理において便利なアプリケーション(できればPCと連動できる)を知っている人がいたらTwitterからご連絡ください。
私が現在使っているデバイスはアイフォーンとマックブックです。
また私はこの研究に出会う前から実は発達に遅れのある人のアプリ開発にも興味がありました。
このブログページで書いてきたようにテクノロジーの進化によって自分自身もサポートを受けているので、何か発達に遅れのある方へのアプリケーション開発ができないか?と思っていたのです。
興味があったのはひらがなやものの名前、数の概念などを勝手に学んでくれる知育アプリ。
私が勉強していた頃はアップル製品とアンドロイドで使用するプログラミング言語が別で、SwiftとJavaの2つが使う必要があるよ!
など言われて心がポッキリしたりとか、いろいろあったのですが、療育・知育アプリなどを作っている、リリースしている人、外注しているのか?など、もし良ければTwitterからご連絡いただければ幸いです。
話を戻して例えば私が中学校のころカーナビというものの存在を知り、その後高校の時にイージーナビウォークで道案内してくれる友達が現れました。
小学校のとき、家族で旅行に行くときお父さんは車を止めて、地図帳を広げて高速道路を運転して旅館まで行っていたとか、現代では考えられないでしょう?
私は一度も地図帳を使用して目的地に行ったことはありません。
時代はどんどん変わって行くものですね。
計算は電卓、イラストも電子、お金は電子マネー、切符はICカード、CDはストリーミング再生、写真はスマホ、電話で商品を買っていたのが今ではネットなど数えればキリがありません。
私たち大人も便利になっていく科学技術の恩恵を受けながら生活をしています。
ABA自閉症療育でお子さんに教えるときも、全部が全部、スキルアップを目指していろいろなことができる、ということではなく、スキルによっては科学技術の進化するデバイスに頼ってもいいじゃない。
大人たちもほとんど進化する科学技術の恩恵を受けているんじゃないかな?
このことがこのブログページでは書きたかったことです。
【参考文献】
・ Tony Gentry・Richard Kriner・Adam Sima・Jennifer McDonough・Paul Wehman (2015) Reducing the Need for Personal Supports Among Workers with Autism Using an iPod Touch as an Assistive Technology- Delayed Randomized Control Trial. Journal of Autism and Developmental Disorders 45 : 669-684