療育のモデルは包括的治療モデルと焦点介入がある
Connie Wong・Samuel L. Odom・Kara A. Hume・Ann W. Cox・Angel Fettig・Suzanne Kucharczyk・Matthew E. Brock・Joshua B. Plavnick・Veronica P. Fleury・Tia R. Schultz (2015) は自閉症の療育を「CTMs:Comprehensive treatment models (包括的治療モデル)」と「焦点介入:Focused interventions」の2つに分けて考えた。
「CTMs」と「焦点介入」についての違いを以下に示した。
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(1)「包括的治療モデル:Comprehensive treatment models (CTMs)」
今まで紹介してきたような「X年」かけて前後比較した。比較的、全体的な能力アップを目指す
(2)「焦点介入:Focused interventions」
もっと短期的な、例えば「文字を書いて欲しい」、「叩くのをやめて欲しい」、「友達の輪に入って欲しい」などの「今抱えているトラブルを解決したり、新しくできるようになって欲しいスキルを教える手法」
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見てもらえればわかるが「CTMs」とは今まで紹介してきたような数ヶ月から年単位をかけて効果を測定する「幅広く自閉症児に色々教えました」というものである。
対して「焦点介入」はもっと短期的な「今、解決したい問題や覚えて欲しいスキル」を教える方法と言える。
Connie Wong他 (2015) は自閉症児および青年に対して科学的な根拠に基づく介入を特定するために、1990年から2011年までに発表された焦点介入論文の系統的レビューを行った。
※ 系統的レビューについては
「準実験/RCT /メタ分析/系統的レビューの解説(ABA自閉症療育のエビデンス4)(https://en-tomo.com/2020/03/28/hierarchy-2/)」を参照
研究の中でレビューされた論文は本質的に行動的で発達的、教育的でなければならなかず、例えばキレート化、ニューロフィードバック、高圧酸素療法、鍼治療や栄養補助食品、特別な食事のみを使用した研究は除外された。
彼らは「科学的な根拠を持つ方法である」と判断するため以下の基準を設置している。
上記の「科学的な根拠を持つ方法である」と判断するための基準をクリアすることができた場合、「科学的な根拠に基づく実践」とした。
27の療育エビデンスを持つ介入方法
彼らは上記の基準を満たした以下の27の介入方法を紹介した。
その27つとは以下のものである(順番はアルファベット順)。
(1) Antecedent-based intervention (ABI)
(2) Cognitive behavioral intervention(CBI)
(3) Differential reinforcement of alternative, incompatible, or other behavior(DRA /I /O)
(4) Discrete trial teaching(DTT)
(5) Exercise(ECE)
(6) Extinction(EXT)
(7) Functional behavior assessment(FBA)
(8) Functional communication training(FCT)
(9) Modeling(MD)
(10)Naturalistic intervention(NI)
(11)Parent-implemented intervention(PII)
(12)Peer-mediated instruction and intervention(PMII)
(13)Picture Exchange Communication System(PECS)
(14)Pivotal response training(PRT)
(15)Prompting(PP)
(16)Reinforcement(R+)
(17)Response interruption/redirection(RIR)
(18)Scripting(SC)
(19)Self-management(SM)
(20)Social narratives(SN)
(21)Social skills training(SST)
(22)Structured play groups(SPG)
(23)Task analysis(TA)
(24)Technology-aided instruction and intervention(TAII)
(25)Time delay(TD)
(26)Video modeling(VM)
(27)Visual supports(VS)
上記を見れば27通りのそれぞれ独立した別々の方法があるように見えるかもしれない。
しかしそうではなく少なくとも「赤色」で色分けしたものに関してはこのブログで勉強をしていくABAの基礎理論であるオペラント条件づけをベースとしているはずである(調べていけば、他にもオペラント条件づけの理論をベースとしているものもあるかもしれない)。
例えばいくつか抜粋すれば、
(6) Extinction(EXT)
(15)Prompting(PP)
(16)Reinforcement(R+)
(23)Task analysis(TA)
はオペラント条件付けを用いて介入を行う場合の基礎技法である。
上記27の方法についてもう少し詳しく知りたいと言う人はAutism Focused Intervention Resources & Models(AFIRM)のサイトへ下記のリンクから飛べば少し詳細が分かる。
(https://afirm.fpg.unc.edu/node/137)
※ただし、英語のサイトとなる
Connie Wong他 (2015) は学会から刊行されている論文に対して一定の基準を設け基準をクリアしたかどうかによって科学的な根拠に基づく介入の根拠とした。
このページまでで紹介してきた方法は「少なくとも、数ヶ月実施してくださいね!」と言われる気持ちになるものが多かっただろう。
もしピンポイントにもっとライトに「問題があってそれを取り急ぎ解決したい!」と言った場合にはこのページで記載されている名前がキーワードである。
このページを持って長々と書いてきた療育のエビデンスを終了することとする。
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
※2021年になって継続して作成して行く方針に変更いたしました。これからも継続してABA自閉症療育のエビデンスをアップデートしていきます
【参考文献】
Connie Wong・Samuel L. Odom・Kara A. Hume・Ann W. Cox・Angel Fettig・Suzanne Kucharczyk・Matthew E. Brock・Joshua B. Plavnick・Veronica P. Fleury・Tia R. Schultz (2015) Evidence-Based Practicesfor Children, Youth, and Young Adults with Autism Spectrum Disorder: A Comprehensive Review. Journal of Autism and Developmental Disorders 45:1951—1966