エビデンス・ベースド・プラクティス(ABA自閉症療育のエビデンス1)

エビデンスのある療育支援を選択する

この章では私が専門としているABA療育のエビデンスについて紹介をして行く。

この章ではいくつかのABA療育の手法が紹介されるが、その前にエビデンスとは何か?ということをこの章の序盤を通じて知って行こう。エビデンスを求める上で現在(2020年)のところ、一番強力な研究方法は「メタ分析」というものである。「メタ分析」についてもこの章で解説をしている。


この章で紹介される「EIBI:Early Intensive Behavioral Intervention (早期集中行動介入)」と呼ばれるABA療育の方法は2020年の現在、療育効果を上げる方法として一番硬いエビデンスを確立していると考えている。

章の中でEIBIのメタ分析を紹介し、EIBIの方法についても簡単に触れていく。

章の中ではその後「NBI(Naturalistic Behavioral Interventions:自然主義的行動療法)」という比較的新しいABA療育のアプローチの紹介を行う。

次に家族が抱える育児ストレスについての紹介とその対策方法について書く。

章の最後には「焦点介入」というキーワードを紹介する。

この章は以上のような構成となっているがこの章を作った目的は「療育を選択する際の選択基準」について、一度考えてみる機会を提供したいと思ったからである。

読み進めていってもらえると伝わると思うが自閉症療育は「療育開始時期が若ければ若いほど効果がある」という可能性を科学者たちが述べている。

そのために「どのような療育を選択するか」ということは実は大切なことなのである。選択にあまりにも時間をかけるのはもったいない

もし内容が難しすぎる場合はTwitterアカウントを作ったので、DMなどで直接連絡をいただいても構わない。

全てに対応できるわけではないと思うが、できるだけ尽力していきたいと考えている。

以下、本編である。



ABAは心理学の一分野

ABAは「応用行動分析学(Applied Behavior Analysis:ABA)」の略語であり、心理学の1つの分野である。そのためABA療育とは、心理学の知見を使用したお子さんへの療育方法である。

近年、対人支援職で働いている人なら耳にしたことがあるかもしれないが「科学的な根拠に基づく実践」の重要性が説かれている。

このような支援のことをEBP(Evidence Based Practice:エビデンスベースドプラクティス)と呼ぶ。


これからの時代はEBPが求められる

EBPは医療の現場で1990年代の初め、患者に行う検査や治療、処方する薬の選択などにしっかりとした根拠を求めようとするところから生まれた(参考 島宗 理,2019)

原田 隆之(2015)を参考にすれば、心理療法にも徐々にその流れが来ているようだ。

いろいろな心理学を用いた対人支援の方法こそあるものの、例えばこれからは医師が処方薬を選択する際その理由が求められる(例えば、この数値が高いのでこの薬といった)ように、心理療法でもその支援方法を選択した「科学的な根拠」を求められる時代になるかもしれない


Enせんせい

ABAはエビデンスを積み重ねることで、その効果を測っていこうとする心理学の一分野となる



親も療育に対して知識を持つ

私が療育を始めた頃、まだ少なかった児童発達支援事業と放課後等デイサービスというサービスがある。「児童発達支援事業・放課後等デイサービス」は発達に遅れがあるお子さんやニーズがあるお子さんに対して行う、公費(行政負担)による療育サービスで、厚生労働省が管轄している障がい児支援施策の中の一つである。

参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000117218.html

2020年現在、「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」では現状と今後の方針について親御様と話し合い、最低でも半年に1回、個別支援計画の見直しを行って療育方針を決定する。

個別支援の見直しの際、専門家が療育についての知識を親御様よりも持っていることは当然であるが、私は親御様側も療育についての知識を少し持っていると、さらに良い内容の療育が生まれると考えている。

ブログを通して学ぶことで、「効果的とは何か?」が判断ができることに役立つだろう。

この章では、私と一緒に療育のエビデンスについて学んで行こう。私自身もまだまだ勉強不足なところもあると思うが、頑張って書いていこうと思っている。

そもそも「エビデンスとは何か?」ということ自体、普段生活をしている中で考えることは少ないだろう。そのため、この章を読み終える頃には「ABA療育のエビデンスは、現在こういう感じか」と皆様が自分なりの答えを持てるような章にしたいと思っている。


次のページでは有名なO. Ivar Lovaasが行った、1987年の研究みて行く。

論文のタイトルは「Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children」。日本語にすると「若い自閉症児に対しての行動療法と通常教育、そして知的機能」と言った感じである。

この研究は当時アメリカで大きな旋風を巻き起こしたようだ。

いろいろな文献や海外の方が行う来演公演を見ていると、この研究は1つのターニングポイントとなっている。実際にアメリカではABA療育が保険適応になっている州も多い。

参考 Applied Behavior Analysis Edu https://www.appliedbehavioranalysisedu.org/state-by-state-guide-to-autism-insurance-laws/

日本でABA療育をネット検索した場合、このO. Ivar Lovaas (1987) の研究内容について目にすることは多いと思う。


そのため、なんとなく内容を知っている人も多いかもしれない。



【参考文献】

・ Applied Behavior Analysis Edu State-by-State Guide to Autism Insurance Laws

・ 原田 隆之 (2015) 心理職のためのエビデンス・ベイスド・プラクティス入門 エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」 金剛出版

・ 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000117218.html 

・ O. Ivar Lovaas (1987)Behavioral Treatment and Normal Educational and Intellectual Functioning in Young Autistic Children. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 55(1) p3–9.

・ 島宗 理 (2019) 応用行動分析学 ヒューマンサービスを改善する行動科学 新曜社