ABA(応用行動分析)では「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」は基本的な用語です。
以前にもブログ内にて「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」について書いてきたのですが、
この5つの用語についてまとめてタイトルとしたブログページが無かったため今回、作成することとしました。

「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」の5つの基本用語を理解して、
日々のABA自閉症療育や日々のお子様の子育てのお役に立てればと考えていますのでどうぞよろしくお願いいたします。
まず最初に、簡単にABAは「オペラント条件付け」や「レスポンデント条件付け」の2つの学習の理論を用いて行うものであるということを述べさせてください。
そして「オペラント条件付け」や「レスポンデント条件付け」について簡単に解説し、
「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」の5つの基本用語を解説していきたいと思います。
ABAは「オペラント条件付け」や「レスポンデント条件付け」の2つの学習の理論を用いる
さて、まず「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」とはオペラント条件付けの言葉です。
Niklas Törneke (2009)は行動分析学(ABAのこと)のための2つの基本原理は、オペラント条件付けとレスポンデント条件付けであると述べました。
さて普段、聞き慣れないであろう「条件付け」とはどういった意味でしょうか?
「条件付け」とは「学習が成立する」ということです。
つまり「オペラント条件付け」や「レスポンデント条件付け」とは学習を成立させることができる理論、と言えます。
もう少し踏み込んで「学習が成立する」とはどういう意味でしょうか?
「学習が成立する」とは、ABAの回答としては「人間の行動を変えることができる」という意味です。
「オペラント条件付け」で学習を成立させることができる行動は「オペラント行動」と呼ばれ、
「レスポンデント条件付け」で学習を成立させることができる行動は「レスポンデント行動」と呼ばれます。
「オペラント行動」とは私たちが自発的に行っている行動です。
例えば「手を挙げる」や『「ありがとう」と言う』というものから、「問題解決する」や「芸術作品を作る」等の複雑な行動も含みます。
「オペラント行動」は私たちが誘発される行動です。
例えば「梅干しを見ると唾液が出る」や「拳を振り上げられると身が萎縮する」というものから、「恐怖を感じる」や「嫌な記憶がフラッシュバックする」等の複雑な反応も含みます。
またオペラント条件付けは基本的にヒトが行動したあとの結果に影響を受けて学習が成立する理論です。
しかし、レスポンデント条件付けでは基本的にヒトが反応(行動)する前の結果に影響を受けて学習が成立する理論である、という違いもあります。
Jon Baily・Mary Burch (2006) の推測によれば日常生活において私たちはオペラント行動とレスポンデント行動を20対1くらいの割合で使用していると述べました。

私の体感としても、特にお子様へ療育で何かを教えて行くときはレスポンデント条件付けよりも、
オペラント条件付けの理論の方を知っている方が貢献することが多いと思います
これが大人の対人支援やお子様でも「不安」とか「恐怖」等を扱う場合、レスポンデント条件付けの理論知識の重要度も上がってきますが、
今回のブログページではオペラント条件付けの基本原理「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」について学んでいきましょう。
さてここまで「オペラント条件付け」と「レスポンデント条件付け」について簡単に解説をしてきました。
ここからオペラント条件付けの基本原理「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」について解説をしていきます。
最初に「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」を紹介し、次項で「消去」について紹介していきましょう。
「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」とは?
「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」とはオペラント条件付けの言葉であると書いてきました。
「強化」とは「行動を強める」という意味を持ちますが、レスポンデント条件付けでもレスポンデント行動(レスポンデント反応)を強めるとき「強化」という用語を使います。
但しABAでは一般的に「強化」と言えばこれから紹介するオペラント条件付けの強化を指すことがほとんどですので、「強化 = オペラント条件付けの強化」と覚えておいても問題ないでしょう。
本ブログページでも「強化」と書いていきますが、オペラント条件付けの強化と捉えて読み進めてください。
さて「強化」とは「行動を強める」という意味を持つと述べましたが、以下、用語の意味を見ていきます。
強化・・・行動を強める。具体的には行動を増やす、行動の維持時間を伸ばす、行動の強度を上げる、行動を維持させる
罰・・・・行動を弱める。具体的には具体的には行動を減らす、行動の維持時間を減らす、行動の強度を下げる、行動を消失させる
まず「強化」と「罰」については上の内容の意味で覚えてもらって大丈夫です。
そして「強化」と「罰」という用語の前に、「正の強化」「正の罰」、「負の強化」「負の罰」とあるように「正」と「負」という言葉がついています。
「正」と「負」が持つ意味はなんでしょうか?
ABAのオペラント条件付けでは行動を扱う際、行動の「前」と「後」を含んで扱います。
「強化」や「罰」という言葉は真ん中の「行動」が増えたか減ったかを示す言葉でした。
以下、「正」と「負」が持つ意味です。
「正」・・・行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動に変化が起こる(提示型と呼ばれる)こと
「負」・・・行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動に変化が起こる(除去型と呼ばれる)こと
上で『ABAのオペラント条件付けでは行動を扱う際、行動の「前」と「後」を含んで扱う』と述べましたが、行動の前を「先行状況」と呼び、行動の後を「結果」と呼びます。
ここまでの内容をまとめると以下の「強化」「罰」そして「正」「負」は以下のイラストのような関係性と言えるでしょう。

ここまでの内容から、
正の強化・・・行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動が増加や維持すること(提示型の強化)
負の強化・・・行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動が増加や維持すること(除去型の強化)
正の罰・・・・行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動が消失や減少すること(提示型の罰)
負の罰・・・・行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動が行動が消失や減少すること(除去型の罰)
という意味を持つことになります。
以下、それぞれの例を見ていきましょう。
「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」の例
正の強化の例・・・行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動が増加や維持する例
○お腹が空いたとき、棚を開けるとお菓子があって、食べることができお腹がふくれた。そののち、お腹が空いたときは棚を開ける行動が増えた
○お母さんがいる部屋で、片付けをすると、お母さんが褒めてくれた。そののち、お母さんがいる部屋で片付けをする行動が増えた
このような感じです。
以下「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」についても見ていきますが、このように、
Aのとき、Bをしたら、Cになった。そののち、AのときBをする行動が増えた
という構文で捉えて考えて行くことがABAでは大切なので、以下もこのような構文にて解説をしていきます。
※上の例をこの構文に当てはめると@Aのとき(お腹が空いたとき)、Bをしたら(棚を開けるとお菓子があって)、Cになった(食べることができお腹が膨れた)。そののち、A(お腹が空いたとき)のときB(棚を開ける行動)をすることが増える」
上で紹介した正の強化の例では行動の前には無かった状況、「お腹の膨れ」や「お母さんの褒め」が行動ののちに出現していることで「そののち行動が増加」することが確認できているため正の強化の例と言えるでしょう。
負の強化の例・・・行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動が増加や維持する例
○歯が痛いとき、痛み止めを飲むと、痛みが少なくなった。そののち、歯が痛いときは痛み止めを飲む行動が増えた
○お母さんが宿題をしないため眉間にしわを寄せているとき、宿題をすると、お母さんの眉間のしわがなくなった。そののち、お母さんの眉間にしわが寄ったときには、宿題をする行動が増えた
上で紹介した負の強化の例では行動の前にあった状況、「歯の痛み」や「お母さんの眉間のしわ」が行動ののちに減少していることで「そののち行動が増加」することが確認できているため負の強化の例と言えるでしょう。

さて以下から「正の罰」、「負の罰」についてご紹介をして行きますが、
上のここまでの例で読んでくださっている方の中には「ん?」と違和感を感じた方がいらっしゃったかもしれません
「ん?」と感じる違和感は、例えば上で出した正の強化の例の中に、
○お腹が空いたとき、棚を開けるとお菓子があって、食べることができお腹がふくれた。そののち、お腹が空いたときは棚を開ける行動が増えた
という例がありました。
私はこれを「正の強化の例 = 行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動が増加や維持する例」と説明したのですが、少し記述を変えて、
○お腹が空いたとき、棚を開けるとお菓子があって、食べることができ空腹感が減った。そののち、お腹が空いたときは棚を開ける行動が増えた
と同じ状況を別の言葉で書き換え、これを「負の強化の例=行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動が増加や維持する例」と説明すれば、負の強化であるようにも見えそうです。

これは私自身も「確かに」と思う部分もあるのですが、どのように考えれば良いでしょう?
「正の強化」は「負の強化」と比較して行動に「拡がり」が多い、という特徴を持ちます。
例えば今後、お腹が空いたとき以外に例えば「爪切りを探す」等、似たような状況に対しても「棚を開ける行動」もしくはそれに近い行動(引き出しを開ける)が増加していったとき、
これは「正の強化の可能性が高いなと考える」という見方で良いでしょう。
記述を変えることで「正の強化」にも「負の強化」とも捉えられるパターンは考えていけば実はたくさんあります。
しかしそのようなときは、今、ここで書いたように「行動の拡がり」という観点から、「正の強化」と「負の強化」どちらの可能性が高そうかと考えることができるでしょう。
さて本題に戻り以下から「正の罰」、「負の罰」の例を見て行きます。
正の罰の例・・・・行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動が消失や減少する例
○病院の待合室でお母さんと待っている(お母さんの怒りなし)。病院で走ると、お母さんがお子様を怒った。そののち、病院の待合室で走る行動が減った
○部屋に石油ストーブがある(身体の痛みなし)。石油ストーブに触ると、身体に痛みが走った。そののち、部屋にある石油ストーブに触る行動が減った
このように正の罰の例では行動の前には無かった状況、「お母さんの怒り」や「身体の痛み」が行動ののちに出現していることで「そののち行動が減少」することが確認できているため正の罰の例と言えるでしょう。
負の罰の例・・・・行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動が行動が消失や減少する例
○道路を車で走っている(全財産20万円持っている)。法定速度のスピードをオーバーして走っていると、速度超過違反で捕まった。そののち罰金を5万円払い、道路を法定速度のスピードをオーバーして走ることが減った
○お母様と宿題をする約束をしている時間に、Youtubeを見ていたがバレて本来、宿題のあとは自由にYoutubeが見れたのだがその日1日Youtubeが禁止となった。そののち、お母様と宿題をする約束をしている時間に、Youtubeを見ることが減った
負の罰の例は少しややこしいかもしれません。
上の道路の例では自分が行動の前に有していた自分に取って大切な物がペナルティ(例では罰金)として減り、そのペナルティを受け直前の行動(速度超過)が減りました。
これは「レスポンスコスト」と呼ばれる負の罰の手続きです。
その下の例では自分が行動の前に有していた自分に取って大切な時間がペナルティ(例ではYoutubeの時間)として減り、そのペナルティを受け直前の行動(宿題の時間にYoutubeを見る)が減りました。
こちらは「タイムアウト」と呼ばれる負の罰の手続きです。
上の負の罰の例では行動の前にはあった状況、「財産」や「保障されていた時間の権利」が行動ののちに出現していることで「そののち行動が減少」することが確認できているため負の罰の例と言えます。
さてここまで「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」について見てきました。
「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」では、
「強化」と「罰」は行動が増えたか減ったかを示す言葉であり、「正」と「負」は行動の前後の変化を示す言葉でした。
続いて、まだ紹介をしていない「消去」はどうでしょうか?
次の項目で「消去」について見ていきます。
「消去」とは?
「消去」とは行動を行ったにも関わらず、行動の前後の変化が生じなかったときに起こる現象です。
「正」とは「行動の前になかったものが、行動のあとに出現して行動に変化が起こること」でしたが、
「行動の前に無しで、行動を行っても無し」であった場合は消去が生じます。
「負」も「行動の前にあったものが、行動のあとに減少・消失して行動に変化が起こること」でしたが、
「行動の前に有りで、行動を行っても有り」であった場合は消去が生じます。
これらは行動をしても前後の変化が起こらないことを示していますから、これは「行動しても意味がない」と言い換えられるでしょう。
行動は消去が生じるとそののち減少して行きます。
「行動が減る」ということで「罰」と同じなのかと言えば違って、この違いもABAの大きな覚えておいて欲しい特徴になりますので、この点も解説して行きましょう。
「消去」と「罰」では行動の減り方が違います。
「消去」は「罰」と比べて比較的に緩やかに行動が減って行くことを知っておきましょう。
「罰」は行動を即時に減らすことができます。
「消去」と「罰」の行動現象傾向の対比を作りました。
下のイラストをご覧ください。

上のイラストはイメージですが、消去と罰では上のような傾向の行動減少の違いがあることを知っておきましょう。
罰は一瞬で行動頻度が減少していますが、消去は比較的緩やかです。
また「消去」の線に「消去バースト」と「自発的回復」と記載がありますが消去を使用する際の重要項目ですので本ブログ内を読み進めていただく中でご紹介いたします。
こう聞くと例えばお子様の問題行動が出現した際はすぐに問題行動を減らすことができるので「消去」よりも「罰」の使用の方が有効そうに聞こえるかもしれません。
しかしABAでは「罰」の使用は推奨されておらず、問題行動が出現した際は「消去」の使用の方が「罰」よりも優先されます。
但し「問題行動」を減らすときのファーストチョイスは「そもそも問題行動を出現させず、代替行動を強化して問題行動が出現しない中で支援を行う」です。
お子様の「問題行動」に対応するとき、まず最初に検討する支援訪略は消去で問題行動を無くすではありません。

「もし消去や罰を使わなくて良いのであれば使わない方が良いの?」と聞かれた場合は「その通りです」が正しい回答になるでしょう
ただ、実際に支援を行ってみると「そもそも問題行動を出現させず、代替行動を強化して問題行動が出現しない中で支援を行う」と言っても、
「問題行動が出現してしまったときどうするか?」ということも考えておかなければいけません。
なぜなら「問題行動は出現させてはいけないんだ。だから支援が始まったら問題行動を出させないように!」と言っても、現実的ではありませんね?
問題行動が出ないように支援方略を組んで支援を行っても、問題行動が出るときは出るのです。
なので「そもそも問題行動を出現させないことを目指すのだけれども、もし出てしまったときはどうするか?」という考えの下、「そのときには消去を行う」ということが現実的なファーストチョイスになる、という感じで捉えてください。
このように支援の中で「罰」よりも優先して使用が推奨される「消去」ですが、「消去」を用いるときに絶対に知っておいて欲しいことが2点あります。
それが先ほど上でも少し出て来た「消去バースト」と「自発的回復」です。
ここから消去を使用する際の重要項目「消去バースト」と「自発的回復」について見ていきましょう。
消去を使用するとき知っておくべき「消去バースト」と「自発的回復」
まず「消去バースト」について見ていきます。
小野 浩一 (2005) は消去直後に消去バーストという急激な反応頻度の増加と反応強度の増加がみられる。
そのときヒトを含む生態はしばしば情動的な反応を示す。
また、近くに攻撃する対象があると攻撃行動が起こることがあると述べました。
消去バーストとは小野 浩一 (2005) が述べているような、消去を行った直後に生じる急激な反応頻度の増加や反応強度の増加などのことです。
個人的には消去が生じた際に必ずしも、周りから見て目にすることがある反応とは言えないかもしれないなとも思っているところですが(但し、本人の中では行動化されていないだけで、心の中では情動的な変化は起こっているはずです)、
消去を行うと消去バーストによってこのような一時的な急激な反応頻度の増加や反応強度の増加が生じる可能性があることは知っておきましょう。
例えばお子様がボールを投げる問題行動を行っていました
この問題行動の行動の前後を観察したところ、どうやら、ボールを投げることでお母様の注目を得る、という結果を求めてボールを投げている可能性が考えられとします
このとき、消去を行うということは、お子様がボールを投げてもお母様は反応しない(一般的な言葉で言えば「無視をする」)ということになるのですが、
そのとき消去バーストが生じた場合「ボールをいつもよりも強く何度も投げる」ことや「ボール以外のものを投げる」という行動が生じる可能性がある、ということです。
消去バーストの存在を知っていないと、お母様はお子様の上記の行動の変化を見たとき「あれ?以前よりも悪くなった」と考えてしまうかもしれません。
せっかく正しく支援を行なっているにも関わらず、そのように考えてやめてしまうのはあまり良くないでしょう。
他にも消去バーストでは行動が激しくなるのでお子様が怪我をしてしまうリスクがあります。
消去バーストを知っておくことで事前に部屋を片しておく等、お子様が怪我をするリスクも減らすことができるでしょう。
上で「ボール以外のものを投げる」という行動が生じる可能性があると例を出しましたが、これはここまで消去バーストだと述べてきた「反応頻度の増加」や「反応強度の増加」ではありませんね。
実は消去バーストでは「反応頻度の増加」や「反応強度の増加」以外にも「維持時間の増加」や「新しい行動が一時的に起きることがある」ということが見られる可能性があることがわかっています(参考 Raymond .G .Miltenberger ,2001)。

上で「ボール以外のものを投げる」という問題行動が生じる可能性があると例は「新しい行動が一時的に起きることがある」ということが見られたケースです
次に消去のもう1つの特徴である「自発的回復」について見て行きましょう。
Raymond .G .Miltenberger (2001) は自発的回復について、消去された行動が生じなくなってしばらく経った後に、その行動が再び生じることがあると述べました。
Raymond .G .Miltenberger (2001) は自発的回復が生じた時に消去の手続きが続いている場合にはその行動はそれほど長く続かないと述べましたが、自発的回復が生じたとき、その行動がもう一度強化されると消去の効果が失われるとも述べていました。
消去によって徐々に行動が減っていったとき、しばらく経ってからピョコッと消去したはずの行動が生じることがあります。
例えば上で出した例で言えば「ボール以外のものを投げる」という問題行動をお子様が行ったとき、消去する(一般的な言葉で言えば無視をする)ことを続け、
お子様も「あー、これボール投げてももう(お母様が注目しないので)意味がないな」と感じ、
お母様の注目が欲しいときにボールを投げなくなったとします。
しかしその4日後、何かの拍子にお子様が思い出したようにお母様の注目が欲しいときボールを投げることがあるのです。
これが自発的回復なのですが、Raymond .G .Miltenberger (2001) に従えばこのとき以前のように「○○くん、ダメよ」と注目を与えてしまうと消去の効果が失われてしまうので注意しなければいけません。
また消去の効果が失われてしまう以外にも、ヒトを含む生態がこのように一度消去によって見られなくなった行動がしばらく経った後に、その行動が再び生じることがあることがあると知っておくことは「自発的回復」が生じたときに持つ印象も違ってくるために大切でしょう。
もしそのこと知らないと「悪くなった(また問題行動が再発した)」と思ってしまうかもしれませんね?
ただ、私たちは一度消去によって見られなくなった行動をしばらく経った後、再び生じさせることがある生き物なのだ、と知っておくことで「悪くなった」と解釈違いをせずにすむかもしれません。
そのような解釈違いをしてしまうと「支援が上手く行っていない」と考えてしまい、せっかく上手く行った支援の方向性を変えてしまうことにもなりかねないでしょう。
以下のイラストは消去に伴う「消去バースト」と「自発的回復」が生じる時期を示しています。
イメージとして持っておくと良いと思います。
<イラスト 消去バーストと自発的回復 作る>
以上が支援の中で「罰」よりも優先して使用が推奨される「消去」について知っておいて欲しい2点、「消去バースト」と「自発的回復」になります。
さいごに
本ブログページではABAのオペラント条件付けの基本的な用語である「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」について解説をしてきました。
ABAではお子様の問題行動が生じた際、まずはその問題行動がなぜ生じたのかを観察を通して分析し、理解することが大切だと考えられます。
その理由は、例えば上で出した問題行動「ボールを投げる」を例にして考えれば、
・お母様の注目が欲しいときにボールを投げる
のと、
・何か嫌な活動を求められたときにボールを投げる
では「ボールを投げる」という同じ行動であっても支援方法が変わるからです。
このように「行動の型」ではなく、行動の前後の文脈を含んだ「行動の機能」に注目して支援を行なって行くことを前提としたABAの支援。
このABAの支援を行なって行く上で非常に重要なオペラント条件付けの「正の強化」、「負の強化」、「正の罰」、「負の罰」、「消去」について本ブログページでは解説を行いました。
皆様の日々の療育活動のお役に立てば幸いです!
では、またどうぞよろしくお願いいたします!!
【参考文献】
・ Jon Baily・Mary Burch (2006) How to Think Like a behavior Analyst : Understanding the Science That Can Change Your Life 【邦訳: 澤 幸祐・松見純子 (2016) 行動分析的 ”思考法” 入門ー生活に変化をもたらす科学のススメー】 岩崎学術出版社
・ 小野 浩一(2005) 行動の基礎 豊かな人間理解のために 培風館
・ Niklas Törneke (2009) Learning RFT An Introduction to Relational Frame Theory and Its Clinical Application 【邦訳 監修:山本 淳一 監訳:武藤 崇・熊野 宏昭 (2013) 関係フレーム理論(RFT)をまなぶ 言語行動理論・ACT入門 星和書店
・ Raymond .G .Miltenberger (2001)Behavior Modification : Principles and Procedures / 2nd edition 【邦訳: 園山 繁樹・野呂 文行・渡部 匡隆・大石 幸二 (2006) 行動変容方入門 二瓶社】